咲き誇る花々、掴み取る果実   作:MUL

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ありがてぇ、ありがてぇ・・・
UAも1000を超えたみたいです。
見てくれている皆さんありがとうございます。

鎧武VSヴァルゴバーテックス。戦闘開始です。


第5話

藍色のスーツを覆う、オレンジの鎧。

金の前立てがついた戦国時代の鎧武者の兜のようなマスク。

そして、手には鎧と同時に現れた、オレンジの断面を模した刀、”大橙丸”。

 

錠前により変身を遂げた紘汰は、猛る心をそのままに、バーテックスに向かって駆けだした。

地面を蹴るたびに、とてつもない加速がかかるのがわかる。

この鎧は、外見だけではなく紘汰の身体能力も上げてくれている。

 

迫ってくる紘汰を近づかせまいと、バーテックスは下腹部から連続して砲弾を打ち出した。

正面からやってくる弾丸に、しかし紘汰の足が止まることはない。

肩に担いだ大橙丸を走る勢いを乗せたまま振り下ろす。

振り下ろした刀はバーテックスの砲弾を見事に両断し、二つに分かれたそれは、紘汰のはるか後方で爆発した。

振りぬいた姿のままの紘汰に、次の砲弾が迫る。

紘汰は慌てず、変身と同時にベルトの左側面に現れた刀”無双セイバー”の柄を逆手に掴んだ。

掴んだ無双セイバーを、そのまま引き抜くと同時に振り上げる。

2発目の砲弾も、先ほどと同様に紘汰にダメージを与えることはできなかった。

 

「行けるぞぉ!!」

 

空中で、無双セイバーを順手に持ち替えた紘汰は、両手の刀を構えながらさらに敵に迫る。

苦し紛れに更に撃ち込まれた弾丸が、紘汰の足元に迫る。

それを紘汰はジャンプで避け、そのままバーテックスに突っ込んだ。

手にした二刀が、バーテックスの下腹部を大きく切り裂く。

 

切り込んだ直後、バーテックスの巨体を足場にして蹴りつけた反動で距離を取った紘汰は、少し離れた位置で、苦んだ様子を見せて後退したバーテックスの姿を見ていた。

 

「効いてる!・・・って嘘だろ!?」

 

紘汰の見ている中で、先ほどつけた傷が見る見るうちに傷が塞がれていく。

しばらくすると、初めからなかったかのように、傷は完全に消えてしまっていた。

その姿に驚くが、悠長にはしていられない。

通常の砲弾では効果が薄いと判断したのか、修復を終えたバーテックスは、卵型のボールを大量に生み出した。

バーテックスから生み出されるそれは、追尾型の爆弾だ。

自律的に動き回り、接触すると大爆発を起こす。

それが今、それぞれが個別の意志を持つように縦横無尽に動き、紘汰のもとに迫ってくる。

 

それでもやられるつもりは毛頭ないが、先ほどよりも厄介そうな攻撃に、紘汰は鎧の内側で冷や汗をかいていた。

紘汰が二刀を構え、爆弾が迫る。

来い、また全部たたっ切ってやる!

そう覚悟を決めた紘汰だったが、その覚悟は無駄に終わった。

 

射程距離まであと数秒といったところで、突如相手が爆発したのだ。

爆発の瞬間、紘汰の目が横合いから爆弾に突き刺さる青い光を捉えていた。

いったい誰が・・・。

そう思った紘汰の目に、またもや新しい飛来物が飛び込んだ。

それは、大きな光を纏う、桜色の砲弾。

 

「――勇者っ!!パ――――ンチっ!!!」

 

砲弾の正体は、見慣れない格好に身を包んだ、見慣れた少女。

結城友奈、その人だった。

 

気合の声と共に本体であるバーテックスに突っ込んだ友奈は、そのまま敵の巨体を殴り飛ばした。

衝撃で、敵の体の一部が砕ける。

少しよろめきながら着地した友奈は、安心して小さくホッと息を吐く。

 

「友奈!?」

「その声・・・もしかして紘汰くん!?」

 

紘汰の声に気づいた友奈がこちらに目を向ける。

友奈の目が捉えたのは、見たこともない鎧武者。

 

「「何その恰好!!??」」

 

お互いの姿を近くで認めた紘汰と友奈は、まったく同時に口を開いた。

 

「それが勇者の姿って訳か・・・。それにしてもすっげぇパンチだったな。」

「う、うん・・・紘汰くんが危ないと思って、必死だったから・・・。紘汰くんこそどうしたの!?それ、勇者なの・・・?」

 

友奈に殴り飛ばされたバーテックスは、未だに樹木の茂みに埋まっている。

感心する紘汰に、少し恥ずかしそうな友奈はごまかすように紘汰の姿について尋ねた。

 

「いや、これは、ちょっと違うと思うんだけど・・・。うん、なんか俺、変身できた。」

「へぇ~、そうなんだ・・・。実は私も・・・って、そうじゃなくて!紘汰くん!!」

 

紘汰の姿に、本来の目的を忘れていた友奈は、無事だった友達にひとまずは安心しつつも表情を引き締めなおして紘汰に向き直る。

紘汰に、言っておかなきゃいけないことがあるのだ。

 

「紘汰くん。私もね、嫌なんだ。」

 

怒っているような友奈の様子に、紘汰は黙って耳を傾ける。

 

「誰かが傷つくこと、つらい思いをすること。そして、友達が自分のために頑張ってくれてるのに、自分が何もできないこと。」

 

友奈の言っていることは、紘汰も常に思っていたことだ。

それが嫌だったから、自分の身を危険にさらしてでも、友奈達を守るために行動した。

 

「だからね、紘汰くん。もう、置いて行っちゃ嫌だよ。友達を守りたいのは、私も東郷さんも同じ。だから、一人で無茶しないで。私たちも、紘汰くんと一緒に頑張りたいんだ。」

 

紘汰の脳裏に、友奈の涙が思い出される。

そうだ。自分は自分のしたいことだけを考えて、友奈達の気持ちを考えていなかった。

何もできない苦しみは、自分がよくわかっていたはずなのに。

 

「・・・そうだな、ごめん友奈。俺が勝手だった。」

「わかってくれたならいいよ。ほら、約束!!」

 

そういって差し出された友奈の手を、紘汰の手が握る。

仲直りの、そして、約束のための握手。

 

「ところで友奈、東郷は?さっきのボール、倒してくれたのは東郷なんだよな?」

「え~っと、東郷さんは・・・少し遅れてついてきてるはずなんだけど・・・。」

 

そういって、あたりを見回す友奈の目が、紘汰の背後で固定される。

それに気づかず首をかしげている紘汰の肩を、背後から来た手が掴んだ。

そしてその手はそのまま、変身した紘汰の体中をはい回る。

 

「鎧武者・・・。流石、私が見込んだだけはあるわ紘汰君。ついに、大和魂に目覚めたのね。監督として私も鼻が高い・・・しかしこの姿、仮面をつけた鎧武者・・・国防仮面2号、いえ、それは何か違うような・・・そう、3号。あなたには国防仮面3号の称号を与えましょう。・・・それはそれとして!!!!!」

 

突如背後に現れ、体中を触りながら早口で何事かをつぶやく東郷に、完全に固まる紘汰。

ひとしきり触って満足した東郷は、動けない紘汰の顔を両手でつかみ、強引に自分のほうを向かせる。

足を動かせないはずの東郷だったが、青色の勇者服から伸びた装飾がそれを補っていた。

 

「だいたいは、友奈ちゃんが言ってくれたと思うからいいわ。私が言いたいことはただ一つ。紘汰君、あなた友奈ちゃんを泣かせたわね?」

「あ、あぁ、俺が悪かった。東郷も、ごめん。」

 

素直に謝る紘汰の姿に、フッと表情を柔らかくする東郷。

紘汰の頭を掴んでいた両手を離し、友奈の隣へと移動する。

 

「私のことはいいわ。でも、今度また友奈ちゃんを泣かせたら、承知しないからね?」

「あぁ。約束するよ東郷。」

 

そういって、今度は東郷と握手を交わした。

勇者部2年の仲良し3人組は、これで完全復活だ。

 

頷き合った3人は、改めて敵に向き直る。

バーテックスは、既に態勢を整えなおしていた。

友奈が与えたダメージも、すっかり回復してしまっている。

しかもそれだけではない。

回復と並行して、武器の大量生産も行っていたらしい。

バーテックスの周りには、今までにない量の球体が浮いている。

 

「歓迎の準備は万端・・・って感じだな。」

「ええ、そうね。でも・・・。」

「うん!一緒なら、大丈夫!」

 

大量のボールが、一斉にこちら向かって動き始める。

それぞれが武器を構えようとしたその時、またしてもボール達がひとりでに爆発した。

こちらはまだ誰も仕掛けてはいない。

と、いうことは―――

 

「皆!無事ね!?」

 

大剣を片手に、3人の元に飛び込んできたのは、やはり風だった。

纏った勇者服が所々煤けているが、目立った怪我などはなさそうだ。

小脇には、少し目を回しているようだが、元気そうな樹も抱えている。

 

「風先輩!」

「友奈、東郷・・・。そう、あなたたちも・・・。って、あんた誰!?」

 

勇者に変身した後輩二人の横に、見知らぬ鎧武者が立っていた。

ひょっとして二人の精霊?いや、そんなまさか・・・

 

「俺だ姉ちゃん。二人とも、やっぱり無事だったか!」

「俺だって・・・もしかしてお兄ちゃん?」

「ああ、そうだ。樹、お前もちゃんと勇者になれたんだな。その恰好、似合ってるぜ。」

「そ、そうかな・・・。えへへ・・・」

 

唖然とする姉の横で、以外にも順応が早かった樹が、兄の誉め言葉に照れている。戦闘中にも関わらず、そこだけ妙に空気が緩い。

しばらくして再起動を果たした風は、とりあえず脳内妹フォルダの『本日の一番』に今の姿を登録しつつ、気を取り直した。

 

「よくわかんないけど、とりあえず勇者部一同勢揃いね。お互い色々言いたいことはあると思うけど、後回しでお願い。まずは、あいつを何とかするわよ。」

「でも姉ちゃん。あいつ、切っても殴ってもすぐ回復しちまうぞ。どうするんだ?」

 

紘汰の疑問に、友奈も頷く。

まだまだこちらは元気だが、あの調子ではキリがない。

 

「バーテックスは、ダメージを受けても回復するの。封印の儀式っていう、特別な手順を踏まないと。」

「手順って、どうやるのお姉ちゃん。」

「説明は移動しながら!そのためにも、何とか隙を作るわよ!」

 

まずは、数を減らす。

勇者の中で遠距離武装を持つ東郷が、手にした短銃を連射する。

放たれた光弾は確実に標的に命中し、次々とそれを爆発させていった。

 

それを見ていた紘汰は、ふと自分の左手に持つ武器に目を向けた。

黒い柄の刀。しかし、改めてみると引き金がついている。

もしやと思い狙いをつけながら引いてみると、刀の鍔にあたる部分から発射された弾丸が前方の爆弾を爆散させた。

 

「おぉ!そういう事か!」

「それってただの刀じゃないんだ。いいもの持ってるわね紘汰。」

 

風の武器は大剣だ。

別に不満があるわけではないが、遠近両方に対応できる武器というのは中々魅力的だった。

 

「よっしゃ!行くぜ・・・ってアレ?もう終わりかよ!」

 

そのまま調子よく引き金を引き続けた紘汰だったが、5発撃ったところで早くも弾が出なくなった。

諦めきれずに何度も引き金を引いてみるが、やはりうんともすんとも言わない。

 

「紘汰君!援護はこっちに任せて!皆は本体を!」

「あぁ~もう仕方ねぇ!頼んだぞ東郷!」

 

東郷の援護射撃を受けながら、残る四人が本体の元へ向かう。

撃ち漏らしもいくつかあったが、中距離に優れる樹のワイヤーがそれの接近を許さない。

 

そのままある程度近づくと、今度は本体が体についた布のような触手を伸ばし、直接攻撃を狙ってきた。

初めて見せる攻撃に一瞬反応が遅れるも、何とか前方に割り込んだ風の大剣が、それを弾き飛ばす。

 

「封印の儀、行くわよ!紘汰、悪いけど時間稼ぎお願い!」

「わかった!任せろ!」

 

風の指示を受けた紘汰が、集団を抜け飛び出した。

彼女たちの準備が完了するまで、絶対に邪魔はさせない。

右手に持った大橙丸と、左手に持った無双セイバー。

無双セイバーの柄尻には、ちょうど何かがはまる四角い穴が開いていた。

 

「これと、これを・・・、こう!お、やっぱりくっついた!」

 

二つの刀が柄尻で連結し、一本の武器になる。

無双セイバー”ナギナタモード”の完成だ。

連結した二つの刃が、敵の攻撃を切り払い、勇者たちの元へは近づかせない。

紘汰の死角は東郷がしっかりと守ってくれている。

 

「そんで、こうだろ!」

 

『ロックオフ』

 

腰に装着していた錠前を外し、無双セイバーにもある同じ窪みにセットしなおす。

 

『ロックオン!』

『一、十、百、千、万!オレンジチャージ!』

 

紘汰の目論見通り、無双セイバーにエネルギーが集まっていく。

力の高まりを感じたのか、目の前の敵から排除しようとしたのか、バーテックスが紘汰のもとにすべての触手を向かわせた。

すさまじい勢いで殺到するそれを、紘汰は正面から迎え撃つ。

 

「おらおらおらおらおらおらおらぁ!!」

 

目の前で回転させた刃が、そのまま触手を切り刻む。

限界まで切り刻まれた触手の勢いが収まった。

今がチャンスだ!

 

「いっくぞぉ!!!!」

 

光を纏った刀身を、右と左に切り上げる。

振りぬいた刀身から光の斬撃が飛び、触手の残骸を切り裂きながらバーテックス本体に直撃した。

バーテックスが、オレンジの形をしたエネルギーに拘束される。

その隙に、武器を構えなおした紘汰が敵の元へと走り出す。

 

「おぉぉぉらぁああ!!」

 

拘束されたバーテックスの少し手前で跳躍した紘汰が、すれ違いざま直接刃を叩き込んだ。

胴体部分を切り抜け、着地する紘汰。

残心の構えをとる紘汰の背後で、大爆発が起こった。

体の下半分を失ったバーテックスが、ゆっくりと傾いていくのが見える。

 

時間稼ぎにしては、やりすぎたかな・・・。

錠前を腰に戻しながら、自分の攻撃の予想外の威力に内心、冷や汗を流す紘汰なのであった。

 




1話で終わらせるつもりだったのが、予想外に伸びたので分割。
次は今日中にできる、かも。

※処女作のアマゾンズの短編も投稿しました。
よろしければどうぞ見てやってください。
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