咲き誇る花々、掴み取る果実   作:MUL

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少し短めですが、キリがいいので投稿します。
全然話が進まない・・・


第8話

犬吠埼家のマンションからほど近い公園の広場で、紘汰はベンチに背中を預けながらぼんやりと空を見上げていた。

今日は疲れただろうからということで部活が休みになったので、かなり早く帰ってきたはずだったが、流石に日も傾いてきた。

先ほどまで元気に遊んでいた子供たちも、少しずつ帰り始めている。

 

姉には早く帰って来いと言われていたが、先ほどのやり取りで少し精神的に疲れてしまっていた。

今すぐに帰っても、家族を心配させるだけだろうと、気分を切り替えるためにこの公園に来ていたのだ。

この公園は、かつてダンスチームに所属していた時に練習場所としてよく利用していた。

自主練はもちろん、メンバーを呼んで全体練習もしたことがある。

チームをやめてからはなんとなく足が遠のいていたが、一人でしばらく考え事をしたかったため、久しぶりに立ち寄ってみた。

 

ポケットに手を突っ込み、その中のものを取り出す。

掴んだのは、オレンジのロックシード。

それを頭上に掲げ、じっと見つめる紘汰。

 

(天の神の力・・・か。)

 

戦極凌馬は、このロックシードについてそう言っていた。

正直、あの男については全く信用できないし、あの話だってどこまで本当か疑わしい。

だが、これが敵と戦うための力になるのは事実だった。

なら今は、とりあえずそれでいい。

 

そろそろ帰るか・・・と、怒った姉の顔を想像しながら立ち上がろうとする紘汰に、不意に声がかけられた。

 

「―――紘汰?やっぱり紘汰か!久しぶりだな!」

「裕也?お前、なんだってこんなところに!?」

 

そこにいたのは、空色のパーカーに身を包んだ銀髪の少年。

紘汰が所属していたダンスチームのリーダーにして、紘汰の親友の角居裕也だった。

 

 

 

「たまたまこっちに来る用事があってな。その帰りに久々にここにも寄ってみようかと思ってきたんだ。もしかしたらお前とも会えるかも、とも期待はしてたんだが、まさかほんとに会えるとはな。」

「そうだったのか・・・。」

 

上げかけた腰を再びベンチに下ろし、久しぶりに会った親友との会話に花を咲かす。

裕也とは幼馴染で、小学校まではずっと同じだったが中学で学校が分かれてしまった。

それでも去年まではダンスチームに所属していたこともあって頻繁に会っていたが、紘汰がやめてからは少々疎遠になってしまっていた。

 

「お前らの話、こっちの学校でも聞いてるぜ。勇者部、大活躍みたいじゃないか。」

「お前の方こそ、随分調子いいみたいだな。今度の大会、エントリーしたんだろ?どんな感じなんだよ。」

「ラットもリカもチャッキーも、頑張ってくれてる。この調子なら、かなりいい線まで行けると思うぜ。ま、期待しといてくれよ。」

 

やめた負い目があるとはいえ、色々と気にはなっていた。

こちらでも情報は集めていたが、やはりリーダーの裕也から直接聞くのとでは違う。

そっか、と嬉しそうな紘汰を見つめる裕也の表情が、真剣なものとなる。

彼が何を言おうとしているのかは、だいたい予想がつく。

 

「―――なぁ紘汰。やっぱり戻ってくる気はないのか?」

 

そうして裕也の口から出た言葉は、やはり予想通りのものだった。

それを聞いて、少し俯く紘汰。

 

「裕也、俺は・・・。」

「あの時のこと、まだ気にしてんのかよ。うちのチームの誰も、お前が悪いだなんて思ってない。むしろ全員、今もお前が帰ってきてくれるのを待ってる。」

 

一年前のある日、紘汰は事故に遭った。

車に轢かれそうになった子供を助けるために、自らその前に飛び出したのだった。

骨折を含む大けがだったが命に別状はなく、今も後遺症等もなく無事に過ごせている。

 

だが、タイミングが悪かった。

丁度その時期、ダンスチームは大事な大会を控えていた。

より大きな舞台に立つための、大事な予選大会。

そんな時期にチームのエースの片割れが負傷したのだ。

当然、二人を軸に考えられていた演技は修正を余儀なくされ、残るメンバーの健闘もむなしく結果は散々だった。

そんなことがあって、その後怪我が治ると同時に紘汰はチームを去った。

 

「お前がやったことは、すごいことだ。皆そんなお前を誇りに思っている。アレはお前が悪いんじゃない。ただ、たまたま運が悪かっただけだ。」

 

そう言って紘汰の肩に手を置く裕也に、紘汰はありがたさと申し訳なさを同時に感じていた。

皆がそう言ってくれているというのは正直とてもうれしい。

ただ、これは自分の問題で、悩んだ末に決めたことだ。

だが、それをちゃんと口にして伝えなければこの親友は納得しないだろう。

紘汰は意を決して、自分の気持ちを裕也に伝えることにした。

 

「違うんだ裕也。確かに、あの事故がきっかけではあったけど、俺がチームを抜けたのはそれが理由じゃない。」

「じゃあ、なんだっていうんだ。お前の家族のことか?」

「それもある。でも、それだけじゃない。あの事故の後、病室で色々考えていてわかっちまったんだ。俺は、ダンスを一番にできない。もちろんダンスは好きだし、皆のことも大切に思っている。でも俺は、この先何度同じことがあっても同じことをしてしまうんだと思う。」

 

車に轢かれそうになっている小さな子供を見た瞬間、紘汰の頭からは何もかもが抜け落ちてしまっていた。

自分の体とか、大会のこととか、いろんなこと全て消えて勝手に体が動いていたのだ。

自分がそうしたことに、後悔はない。

だが、そんな自分がいることで、今後もチームの皆に迷惑をかけると思うと、自分はこのチームにいるべきではないとそう思ったのだ。

 

「俺はもともと、お前に誘われてダンスを始めた。たぶん、そうじゃなかったらやっていなかったんだ。チームの皆は、ちゃんと夢を持ってダンスに打ち込んでいる。そんな皆の夢を、俺は邪魔したくない。」

「紘汰・・・。」

「それに今の俺には、やらなきゃいけないことがあるんだ。そしてそれは、俺のやりたいことでもある。皆の気持ちはうれしいけど、だから俺はチームに戻れない。悪いけど皆には、そう言っておいてくれ。」

 

そこまで聞いた裕也は、しばらく目をつぶると大きくため息をついた。

こいつがここまで言うならば、決意は固いのだろう。

こいつの帰りを首を長くして待っているチームの皆を納得させるには、色々と骨が折れそうだ。

 

「・・・わかった。皆にはそう伝えておく。何をすんのかは知らないけど、頑張れよ紘汰。」

「あぁ。ありがとう裕也。」

「気にするなよ。お前のそういうところには昔から慣れてる。・・・そろそろ帰るか。これ以上いたら遅くなっちまう。お前も帰らなくてもいいのか?」

 

その裕也の言葉に、はっと時計を見た紘汰の顔が青ざめる。

想像の中の姉の顔が、般若もかくやといった形相に変わっていた。

 

「やべぇ!俺も帰らねぇと!裕也、悪いけどまた今度な!落ち着いたらまた会おうぜ!」

「あぁ!―そうだ紘汰、次の大会見に来てくれよ!皆もきっと喜ぶ!」

「おう!絶対、皆もつれて行かせてもらう!」

 

そう言って、紘汰と裕也は分かれた。

去っていく親友の背中に、相変わらずあわただしい奴だなと苦笑する裕也。

そんな裕也の様子を知ることもなく自転車を飛ばす紘汰の胸からは、さっきまでのモヤモヤはとっくになくなってしまっていた。

 

 

 

 

帰宅後、姉からのありがたーいお説教を頂いた紘汰は、その姉が宣言通り存分に腕を振るった豪勢な夕食を家族と共に食べ、その後自分の部屋のベッドの上にあおむけになったまま、再びロックシードを見つめていた。

思い出すのは、先ほどの裕也とのやり取り。

まともに相談もせずにこちらから一方的にやめてしまったため、チームの皆に対して負い目を感じていたが、そんなことは気にする方が野暮だったという事だろう。

恵まれてんな、俺は・・・と独り言ちる紘汰。

 

バーテックスが神樹様にたどり着いたとき、世界が終わる。

そうでなくても、樹海がダメージを受ければ、現実世界に悪いことが起こるという。

ならば自分が戦うことは、今の勇者部の仲間たちを守るだけではなく、裕也達ダンスチームの皆を守る事にもつながるというわけだ。

 

皆の顔を思い浮かべた紘汰の体が熱くなる。

元々覚悟は決めていたが、より一層やる気がわいてきた。

その衝動を抑えることができずにベッドから飛び起きた紘汰が、戦極ドライバーを手に取った。

やる気があっても、敵が来ないのならばどうしようもない。

ならば今は、やれることをやっていこう。

そう、まずは―――

 

 

 

 

犬吠埼家のリビング。

片付けが終わり、テーブルに肘をつけながらなんとなくテレビをぼーっと眺めていた風のもとに、風呂上りの樹が声をかけた。

 

「あの、お姉ちゃん・・・。」

「んー?」

 

何か言い難そうな樹の様子に、しかし姉は振り返ることはなく、相変わらずテレビ画面を見つめていた。

樹が気まずそうにちらちらと視線を送るのは、先ほどから何やらバタバタとした音が聞こえてくる紘汰の部屋のドアだった。

 

「なんだか、お兄ちゃんの部屋から色々聞こえてくるんだけど・・・変身、変身って・・・。」

 

その言葉に緩慢な動作で振り向いた風が、少しの間紘汰の部屋に視線を送り、そしてまたもとに戻す。

 

「ほっといてやんなさい。」

「えぇ?」

「ほっといてやんなさい。樹、あのぐらいの年頃の男の子にはね、誰だってああいう時期があるもんなのよ。知らない振りをしてやるのが、いい女ってもんよ。」

「そ、そうなのかな・・・?」

「そーいうもんなのよ。ほら、樹ももう寝なさい。今日はもう疲れたでしょ?明日も学校、普通にあるんだから。」

 

そうして、色々あった一日が更けていく。

少年が、いい加減うっとおしくなってきた姉に再び雷を落とされたのは、もはや言うまでもないだろう。

 




生きている裕也君との会話回であり、外せなかった変身ポーズ研究回でした。
裕也君にはこんな感じで時々紘汰の相談に乗ってもらおうかと思っています。
他のメンバーは名前だけですが・・・。
鎧武原作では坂東さんの役割ですね。

次は風部長による説明と、二戦目突入!の予定です。
勢いで東郷さん変身させちゃったから、ちょっと大変・・・


※自分で読み返して書き方が気に入らない所や誤字などは、サイレントで修正しています。
物語の展開に影響しない修正の場合はそんな感じで。
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