砂糖菓子の弾丸は撃ち抜いた   作:杜甫kuresu

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指輪を貰う前、Karがオトされるまでのお話。

今回はいつもより更にえっちです!
苦手な人ガンバ! 応援してるよ私!


偽物は愛をかたる

「という訳で、貴方を襲いに来ましたの」

「そうか。俺逃げていいの?」

 

 眼の前のKarはニコリとして不思議そうな表情をする。コロコロと揺れる紅い瞳は確かに彼女のものだったが、本物だったら恐らく愛銃の銃床を俺を向けていたりはしない。

 

 夜に訪問者というだけで変な感じがしたが、開けてみれば騎兵銃を構えたKarがニッコリと一言目にコレだ。俺は世の中って広いから大抵のことは起きると思ってるつもりだが、これは中々エキセントリックな体験と確信がある。

 何となく予想はついていたが、一応聞くだけ聞いてみようか。もしかしたら、な。

 

「あの、君はもしかして…………」

「はい。Kar98k――――――の、ダミーです」

「彼女は俺を殺すつもりなのか?」

 

 はて、と何処と無く本物と似つかない柔和な笑みのまま首を傾げる。これはこれで可愛いな、アリだ。

――どちらにせよ俺を「そういう意味」で襲うならダミーじゃ意味なくないか? でもだからってKarが俺を襲おうだなんておかしいんじゃないか、何らかの比喩の可能性が――――

 

「それは存じ上げませんがとりあえず。ていっ!」

 

 ニコニコとしたKarの可愛い掛け声と共に銃床が俺の顔面目掛けて振ってくる。いや掛け声おかしいだろっていうかこれは流石に避けられな――――――い?

 

 頭に軽くストックのぶつかる感触。普通に小突かれるよりは圧倒的に痛いが、人形が振ったにしては痛くない。ギュッと瞑ってしまっていた眼をゆっくりと開く。

 Karが不思議そうな顔で自分の手を見ている。

 

「えっと…………殺らない、のか?」

「いえ、殺る気で振ったつもりなのですけど…………」

「マジだったらリアル箱入り娘だと思うんだが。むしろどうやって銃持ってんのってレベルのやつ」

 

 いや、こっちに「おかしいですね~?」とでも言わんばかりの無垢な視線を送られても俺は解決法なんぞ知らないから。

 というか会話があんまりにも物騒だ。殺るを連発する会話は俺達が幾ら立場を鑑みても少女とおじさんのするものではない。

 

――しかし何だ、改めて見てみるとKarと大差はない。相変わらずチャールストンは高そうだし、軍帽も少しブカブカとしている。

 コートやキャバリエブーツまでダミーだからとそっくりにすると高く付いている気がするが、表情がちょっぴり堅いのを除けば普段の彼女とあんまり違いがない。このポンコツさも、まあ本体もあまり変わらないと言うか。本人に言ったらポカポカされる、して欲しい。

 

「ではもう一度。ていっ!」

 

 ぽか。

 

「ていっ!」

 

 ぽかぽか。

 

「ていっ――――」

「もう諦めなよ。多分、何か分からんけど君は俺を殺れないみたいだから」

 

 仕方なくストックを手に持って言ってやると、途端にKarの顔がガーンとでも言わんばかりに落胆を帯びる。何だこの可愛い生き物は。

 アワアワとし始める。何でだよ。

 

「それではメインフレームの命令が達成できないではありませんか! 私にどうしろと仰る気かしら!?」

「俺にキレるのかよ!?」

「だって貴方が死んでくれないからこうなってるんじゃないですか!?」

 

 俺が悪いのか、そうか。いやそんな訳無いだろ。

 本体以上に空回り甚だしい言論を振りかざすダミーに血は水より濃いらしいぞ、とこの前のKarのボヤキに結論を付けてやりつつ取り敢えず部屋を見せてやる。

 

「よく分からないけど入れよ。女の子をこんな寒い廊下に置いておくのは駄目だろ」

「私は平気ですよ?」

「俺は平気じゃない」

「そうですか。では、お邪魔させていただきますね」

 

 変な所が従順なの、これがダミーの仕様なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、何であんなへっぽこみたいな振り方しか出来なかったのか。心当たりは?」

「分かりません、段々と力が抜けてしまって…………」

 

 何で俺は俺を殺せなかった原因を俺を殺そうとしたやつに向かって聞いて俺の殺し方についてアドバイスしてやろうなんて気になってるんだろう。お節介焼きも極まると狂人だな。

 

 ダミーと言うには彼女は非常に本体に似ているし、人間臭い。俺の部屋をキョロキョロとしながら萎縮してる。

 でも似なくて良い所まで似てるよな。

 

「気にするなよ。唯の上官だろ」

「そ、それはそうですね。はい、その通りですわ」

 

 何だか無理やり納得したように頷いてみせる。苦悶の表情を浮かべている辺り、言い聞かせている感じが半端じゃない。

 

――ああ、そうか。何だかんだKarも俺の冗談とか、話をちゃんと聞いてくれてるから違いを感じないのかもしれない。ダミーが彼女に似ていると言うより、ダミーぐらい俺への付き合いが良いという解釈もあり得る。

 そう思うと何だか急にダミーを見てると涙腺が緩くなってくる。色んな子にビンタされたり酷いこと言われてるから感覚麻痺ってるけど、ちゃんと俺を大事にしてくれる子もいるんだなあって…………。

 

「え、え!? どうかしましたか、私が何かしてしまったのでしょうか!?」

「違う、違うんだ…………というか殺す奴の機嫌伺いしてどうすんの…………おえっ」

 

 自業自得だが響くことも有る。

 何となくKarの頭を撫でてみる――――――しまった。

 

「ああ、悪い。嫌だったか?」

「いえ、嬉しいです。指揮官さんに触られるのは嫌いではありませんから」

 

 どういう意味だ、勘違いされるぞ。

 Karは頬を緩ませて心地よさそうにされるがままになっている。にへらと力なく笑っている姿は何処と無く懐いた犬のようで、何というか俺はアブナイことでもしてる気分がしてきた。

 

 仕方なく手を離すと、ちょっとだけ名残惜しそうな顔をする。駄目だぞ、くっ――――――俺だって辛いんだ。でも程度ってものが有るからな! 俺は弁えてる男なんだ!

 

「ところで、君はKarに「指揮官を襲え」って指示された。これで合ってるのかな?」

「はい!」

「元気よく返事しない。どういう捉え方しても碌な命令じゃないぞ」

「そうですか…………」

 

 ああもう、落ち込むなよ! Karの見た目でそんな顔されると何か凄く怒りにくいんだからさ!?

――とはいえ。普通女の子が男を「襲う」つったら、まあ。なあ?

 

 流石に勘違いも甚だしいかと言うのは躊躇ったが、可能性を提示してやるのはダミーが今後本体の指示の解釈に役立ててくれるかもしれない。そんな理由で言うだけ言ってみる。

 

「でさ、まあ勘違いだとアレだし言いにくいんだが。襲うってのは………………ひょっとして性的な意味じゃないのか?」

「――――――――はい?」

「いや何でも無いです」

「いえ、もう一回。早く」

 

 あれぇ? 何か食い気味に聞いてくるKar。

 そんな食いつくのは良いのだが可能性が高いことじゃない。まあ俺を殺しに行けってのも変な話だが…………眼を何時になく光らせながら俺の手に絡められたKarの細い指を振り払う。

 

「いやだから! 俺を「性的に襲え」って意味じゃなかったのかって聞いたんだ! 言わせるなよ、君はKarにそっくりなんだからさ!?」

 

 やけくそ気味に大声で叫ぶ。どうせ何度も聞かれるだろうし、せめて俺が自分で言った回数ぐらい少なく済ませたいものだ。数を重ねるほど自分で自分に悲しくなってしまうんだから。

 

「…………」

 

 ほら、ダミーなのに信じられないくらい惚けた顔してる。見てろ、次の瞬間には凄い軽蔑した目線が――――――

 

 

 

 

 

 

 

「成る程、その可能性が高そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

「――――はぁ?」

 

 言葉が終わる前にKarが俺を掴んでベッドに押し倒してくる。首元を掴んで舞うようにスルリと行われたその動作に俺は咄嗟に抵抗することも出来なかった。

 

 Karの鮮血色の瞳が妖しく輝く。先程の僅かな無機質ささえも残っていない、まるで魅了の魔法でも帯びたような惹き付ける眼に俺は顔を逸らせなくなってしまう。

 悪戯っぽいような、大人びたような不思議な微笑に鼓動が煩くなる。

 

「確かにそれは考えていなかったわ。それなら難なく遂行できそうではありませんか」

「――――――――ああ」

 

 思わず見惚れてしまっていたがすぐに正気に戻る。

 

「え、ま、ちょ、おい!?」

 

 さっきのヘッポコブローは何だったのか、Karの四肢を押さえつける力は強すぎて俺では抵抗が成立すらしない。

 片手だけ離されたかと思うと、コートの前まで伸びていた紐をほどいて軍帽と一緒に投げ捨ててしまう。動きが早ければ早いほど、それが冗談でも何でも無いことが理解できてしまう。

 

 冷や汗を流しながら策を打つ。それでも何か思いつけるのはお前の能力だ、誰かが俺をそう褒めたのをふと思い出した。

 

「ま、待て! 可能性が高いだけだ、確定じゃない!」

「でも、私はそれが正しいだろうと判断しました。彼女の命令を恐らく万物で最も多く受けてきた私が判断したのに、指揮官さんは其れ以上に信憑性が有る証拠を見せてくださるのかしら?」

「そ、それは………………」

 

 ダミーらしい、えげつなく理論的な外堀の埋め方をしてくる。しかしそれは何処かこじつけじみていて、態度にこそ出ていないが何か急ぎ足なものが有る。

 お腹のサッシュベルトに手をかけた辺りでもう一発。正直時間稼ぎだし、せめて優しくを願うばかりだがもう仕方ない。俺も逆らえないものに逆らって瀕死になるほど馬鹿でもない。

 

――それにまあ、別にKarならな。不本意だが、嫌ではない。

 

「待て待て! じゃあもう一つ! せめて聞かせてくれ」

「何でしょう?」

「それは良いとして、今君は俺を抑えつけられるだけの力が有るじゃないか。何でさっきはあんなに弱々しかったんだ!? それだけで良い、せめて考え事はすっぱり解決させてくれよ!」

 

 それは単純に気になっていたことだ。俺は考え事をしながら相手をしたくない、それは「一人の女性」に対しての対応として非常に失礼じゃないか。ポリシーに反する、許せない行為だ。

 

 Karがピタリと固まってしまう。時間稼ぎとしては有効なようだが、力が緩まっている感じはしない。空いた右手で何をしても人形相手では弾かれてしまうだろう。

 考えている様子は有ったが、何か思い当たったらしい。だが、ふいと顔を逸らされる。

 

「………………分かりません」

「じゃ、じゃあ具体的に力が抜けたタイミングとか!? 何でも良い、俺が納得できる理由をくれ!」

「困った人ですね…………」

 

 Karはこんな時だと言うのに、顎に手を当てたかと思うと大真面目な表情で考え込みだす。

――何だか、そういう真面目な所は本当にそっくりだ。

 

 思わずこんな時だと言うのに、それを思うと頬が緩んでしまう。何でだろうな、俺自身よくわからない。

 暫く考え込んだかと思うと、少しだけ顔を赤くしてKarが事に取り掛かろうとする。あからさまに逃げているのでもう一撃、すっきりしない。

 

「なあ、何で?」

「…………言いたくないです」

「それでも。もうこれは受け入れるから、せめてそれだけで良い。本当にそれだけで良いから」

 

 別にそれは嘘じゃない。どうせ抵抗は無理だ、力が万力なんてもんじゃない。俺じゃ勝ち目が無いだろう、せめて出来る限り悦ばせてやるのを願うばかりの状態だ。

 Karはまた俺の目をじっと見るが、段々とチラチラと目を逸らすと顔を赤くしてしまう。どういうことだかさっぱり分からないが、言いよどんでいるのは間違いない。

 

――そのまま数分ぐらい俺達は硬直状態に陥ったが、漸くKarがボソボソと答える。

 

「……………………見た時」

「え?」

「貴方の顔を改めて見た時です! 貴方を傷つけようと考えると、どうしても力が入らなくなったんです…………っ! もう良いですか、何だか凄くヘンな空気になったではありませんか!」

 

――ああ、そう。

 何だか、頭に引っかかっていた何かがスッと抜けていった気がする。それは疑問が解けたからと言うよりは、別のものに答えが出た感じ。

 

「そうか。嫌われてはいないんだな?」

「え、ええ!」

「今此処で愛してると言っても、拒まないでくれるか?」

「な、何ですか急に!?」

 

 今の言葉を聞いて確信した。今の言葉を聞いた俺のこの感情で、決着が付いた。

 

 俺、Karが好きなんだな。ずっとさっぱり気づかなかったがその癖…………多分、好きで好きで仕方ない。馬鹿だよな、でも今気づいたんだからセーフだ。

 ちゃんと応えてやれる。自然と笑えてしまう、それが幸せなことだと俺が思えているからだろう。

 

「…………分かった。好きにしてくれ」

「――――――え?」

「良いよ、君になら。何されても良い、何でもしてやる、それが望みだと言うなら――――――俺は君に応える」

 

 もしかしたら誤解なんじゃないかと思っていたから尻込みしていたが、今の反応は俺にだってちゃんと分かる。

――少なくとも嫌われてはないのなら。

 

 それで良い。実の所俺が気にしていたのは、Karがどう思ってるかだけだったらしい。思えば俺は自分の何かについて、これまで全く考えていなかったことに気づく。

 戸惑うKarを片手で抱き寄せてやる。踏み出せないなら俺が手を貸そう。君の求めるもののために何だってする決意なら、今つけてきた。

 

「なあ、どうして欲しい? 俺が何をしたら、君は喜んでくれる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、Kar。君が送ってきた刺客を返しに来たぞ」

 

 朝方、Karの部屋をノックしたのは柔らかく微笑む指揮官。それと彼に手を回されて子犬のように大人しくなった俯くばかりのダミーだった。

――まさか。いや、まさかですね。

 

 ダミーの様子を見て嫌な予感というか、吉報らしき何かの予感はしたが顔を振って誤魔化す。

 

「指揮官さん、その…………ダミーとは昨夜――――――」

「本人に聞くと良い。俺は彼女の望む通りのことをさせてやっただけだからな」

 

 そう言って背中を押してダミーを返すと、話をする間もなく振り返らないままに指揮官が手を振って戻っていってしまう。

 力なくKarの方に倒れ込んでくるダミーを受け止めるが、顔を真赤にして何も話す様子がない。しきりに何か思い出す度に頬を隠そうとしたり顔を覆ったりバタバタしたりと、かなり挙動不審が極まっている。

 

 取り敢えずKarは自室の中で珈琲を出して事情を伺うことにした。

 

「えっと、それで? どうなったのでしょうか…………」

「――――――――」

 

 何も答えないかと思ったら、一気に珈琲を飲み干してしまう。

 

――これは、ひょっとしなくても。

 思わず想像して顔を赤くするKar。しかし自分まであたふたしては会話になるまい、必死で押し殺して頬を紅潮させたままダミーに詰め寄る。

 

「………………その、途中で主導権は奪われましたが。と、とても、優しかった、です………………

「――――――――――――――――ッ!?」

 

 その時のKarの悲鳴にならない悲鳴は、同じRFの括りで寮に居た殆ど叩き起こす鶏代わりとなった。

 ちなみにダミーが渡されていた紙には

 

『君がそうなのかはともかく、彼女は色んな意味でとても正直な娘だった。ただ、まああんなに耳元で「好き好き」と言われると俺も抑えが効かないので、他の男が本命だとしても気をつけるように。男は狼だからな、愛され体質でそういう事をすると君が痛い目を見るよ』

 

 とそれはとてもとても、大変なことが書いてあったそうな。




 物書きのお知り合い、仮称マッさんと会話してる間にできた話の正式版です。インスピレーションの寄付、有難うございました。貴方やっぱり凄いですよ、天然でネタをくれる人って珍しいと思います。

 ずっと遊んで触ってると時々本気で怒ってくれるKarが好き。もっと怒って、可愛い。怒られてる意味ないですねコレ。
 ダミーが何故主導権を奪われたかはご想像におまかせします。人形だから逆らえないでも、満更でもないでも美味しい。想像させることの勝利というものです。お好きな方を。多分両方ですが。だって「望む通りのことをさせてやった」そうですし。
 それにしてもダミーって便利な設定だなぁ。ノリで抱いちゃっても本体は無事って、つまり五度指揮官さんは初めてを楽しめるわけです。羨ましいなあ、その調子でイチャついて――――――すみません、真面目にします。アレな話ばかりでしたね。
 でもこの作品って「R18同人の長めの導入」って感じ、しません? 私はしてるんですけど。使ってもいいですよ、私は作品をフリー素材扱いしてますから。

 指揮官が私の中で「抱いて欲しい男ランキング」にランクインしました。いや、カッコいいという意味。
 ドイツの話なんてしてる暇ないですよ。今回は出来が良い、もっといっぱい語りたいから感想沢山下さいね!?
 何というか、今まで興奮を抑えてましたけどこういうのが私書きたかったんです! 何もえっちな事書いてないのに凄くえっち! そして可愛い、完璧! 毎回この調子で行こうね!(恐らく駄目)

 では次回も可愛さに埋もれながらお会いしましょう! ひゃっふーっ!
――あ、えっと。その、引かないでくれると嬉しいです。はは。
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