悪役令嬢は百合したい   作:猫毛布

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短め。
ガソリンを沢山戴いたので走ります。


11.悪役令嬢は補いたい!

 魔法という物は自然界に存在している現象を書き換える方法である。

 当然、その方法を適応する為に通貨が必要で、その通貨を魔力と呼んでいる。

 現存する魔法は想像した現象を起こす為に詠唱し、その想像を明確化させて支払う魔力を軽減させているだけに過ぎない。想像が確固とした物であるならば支払う魔力は詠唱した物と同等になり得る。

 

 では魔法式とは何であるか。それは詠唱であり、想像であり、そして計算の上に成り立つ物だ。

 過程として計算が入ってくるだけであり、その実、現存している――便宜上【想像魔法】と結果は大差ない。魔力を自然へと支払い、現象を書き換え、施行する。

 けれど、過程に於いて大きく違う。現象は正しく計算された結果であるし、逆に言えば支払う通貨――消費魔力も予想できる。更に言えば、結果だけを先に置いて逆算方式として消費魔力を決定している【想像魔法】とは違い、消費魔力を増やせば増やす程その効力は増す。

 

 

 つまりである。魔力があればあるだけ強い力を行使する事ができる。この点も、ある意味【想像魔法】と結果は同じである。

 さて、ここで問題がある。

 自身の中に魔力がなくなればどうなるか。魔力を通貨に例えたと同じであるならば、自身は財布である。眠ればある程度回復する魔力は、つまり眠れば自然と財布の中に通貨が入ってくる訳である。なんて嬉しい事だろう。沢山お金がほしい、と侯爵令嬢らしからぬ事を思ってしまう。

 財布の中にお金がなくなればどうなるか。魔力の枯渇を意味しており、最悪死に至る。この世界の人間の体も上手くできているようで、魔力が枯渇すれば防衛機能が働くのか気絶する。した。

 調子に乗って「ひょっぁぁあああ!! 魔法しゅごいのぉぉぉおおお!!」ってしてたらいつの間にか気絶していて甲斐甲斐しくアマリナが俺の面倒を診ていたのだ。役得かな?

 

「貴女は……いえ、結構。教えていなかった私の不足です」

 

 とやや呆れ顔でシャリィ先生から言われたのも役得だろう。間違いないな!

 そこから体感時間二時間程度のお説教という名の個人授業をしっかりと受講した俺が気付いたことはシャリィ先生と俺の魔力量の違いである。当然、ハーフエルフであるシャリィ先生の方が多い。

 更に説教で発覚した事は俺の魔力量の少なさである。シャリィ先生が樽なら俺は試験管がいい所である。シャリィ先生が多すぎるので比較するのも烏滸がましいけれど。

 

 ここはさ、こう……沢山魔力を持った転生者がこう……ドカーン、とするような、そんな夢を少なからず抱いていた訳だけれど、その夢はあっさりと打ち砕かれた訳である。大魔法使って「ディーナ様格好いい!」がされない訳である。そんな事許せるだろうか? 否! 断じて否である。

 俺は百合ハーレムの為には努力を惜しまない男である。女だけど。

 学んでいたのが魔法式という点もよかったのだろう。自身で魔力量を操作する事のできる魔法式ならば少ない魔力で大きな結果を生み出す事ができる。実に運がよかった。

 その事で改めてシャリィ先生に感謝を伝えてみればむにゃむにゃと口元を緩めて、それを取り繕うように溜め息を吐き出された訳だが。可愛かったので小まめに感謝を伝えようと思った俺は悪くない。

 

 

 さて、結局の所。俺の魔力量の問題はシャリィ先生の照れた顔では解決しないのが現実である。それで解決するのならば一石二鳥だろう。

 魔力を使い続けると魔力量が増える、という野菜星人よろしくな方法を聞けば「それは自身の出せる魔力量を増やしているだけで総量は増えない」とシャリィ先生のお言葉を得た。これもかなり要約している言葉であり、実際は論文よろしくな長い言霊がシャリィ先生のお口から吐き出された訳である。早口で。

 総量として、器の小さい俺ではその訓練は意味が無いという事も確りと釘を刺された。倒れた俺よりも顔を真っ青にさせていたのは……お父様ですね、わかります。

 

 ともあれ、総魔力量は増やせない、という事が常識であり、法則である。「俺は人間をやめて、限界を超えるぞぉぉぉお! シャリィィイィィイイ!」 なんて事もできない訳である。石の仮面も無いのだけれど。

 ならばどうするか。現状を受け止めて百合ハーレムを諦めるか? 否だ。そんな事は認めない。ならばどうすればいいか。答えは簡単だ。

 

 魔力を増やせばいい。

 

 何でもかんでも直列に考えるからダメなのだ。直結したいのは女の子同士だけでいいのである。

 入力先を増やせばいい。多人数での魔法は文献……文献、と言ってもいいかわからないけれど、自尊心のインクを矜持の筆で書き下ろした文章群の中に存在している。儀式魔法とか、格好いいのでは?

 しかしながら、魔力の少ない俺の側にいるのはアマリナとヘリオぐらいである。その二人から魔力を借り受けて魔法を行使するのも気が引ける。

 なら新しい奴隷を魔力タンクとして買うか? それもそれで何かカッコ悪い。

 ついでに魔力タンクを購入して魔法を行使してると、ほら、ソレが無いと魔法が使えない事がバレてしまう。ディーナ様格好いいができない可能性が出てくる。それは避けたい。

 

 そうして出した答えが、俺の目の前に転がっている。

 表面に小さなキズが刻まれた透き通る石である。

 

「できた……ククク、ハハハ、アーッハッハッハッハッハッハッハッ! (ワタクシ)はやはり天才なのかもしれませんわ!」

 

 おっと、嬉しさのあまり笑ってしまった。興に乗って悪の三段笑いなんて披露してしまったあたり疲れてるのかもしれない……。魔力の使いすぎで頭も痛い……。寝不足も原因かもしれない。

 

 

 いつの間にか眠っていたらしい俺はベッドの上で目を覚まして、どういう事か一緒に眠っていたらしいアマリナの寝顔を眺めて現実へと帰ってこれたらしい。

 

 机の上に転がる透明の石をつまみ上げて、指の腹で傷を確かめる。問題はない。

 夢じゃなかった。ちゃんとできている。

 魔法式を組み上げて、入力の部分だけを変更する。外部入力として石を指定して、出力する。

 石を持つ手とは逆の手の先から小さな火が灯る。自身から出ていく魔力は、無い。

 

「っしゃあ!」

「ふぇっ!?」

 

 思わず声を出してガッツポーズしたらアマリナが起きてしまった。反省する。アマリナ可愛いぞ。今日もハグしような。

 

 

 

 

「先生、これをご覧ください」

 

 ドヤァァァ。と言わんばかりに消費した物ではなくて別の日に新しく作った石をシャリィ先生へと提出する。今の俺はイキれる。やっぱ転生者かなー、気付いたら異世界にいたし。

 シャリィ先生は「ふむ」と一息吐き出してから石をジィっと見つめる。

 

「……魔石ですか。それにしては随分粗悪な物ですね。込められた魔力も少ないですし、表面の傷も……」

 

 え、待って、魔石ってなんだよ……。ハァー、つっかえ。やめたら? この方法。

 マジか……今までの苦労も水の泡、というか代用品があったというか……ツライです。

 しかも粗悪とか言われてるんだぜ……。これでも俺の3日の魔力を全部込めた挙げ句に消費とか入力とか色々考えて式を刻むのに日数いるんだぜ……。

 

「ディーナ様、これをどこで手に入れたのですか?」

「私が作りましたわ……」

「……いえ、結構。ディーナ様に関して驚く事など慣れましたが……そうですか、結構、実に、結構」

 

 なんか酷い言いようですね先生。もっと俺を褒めてもいいんですよ? 褒めちゃっても、いいんですよ。

 マジマジと粗悪品と架空の値札が貼られた俺の魔石を見つめるシャリィ先生が満足したように一息吐き出してから優しく俺の手へと石を返した。おかえり粗悪品。ペッ。

 

「実に素晴らしい出来です。刻まれた文字も実に良い。先程は粗悪品と称しましたが、発掘された魔石程の魔力はありませんし、傷に見えた故の間違いです。訂正と謝罪をしましょう」

「先生、謝罪は必要ありませんわ。私達の仲ではありませんか」

 

 やっぱ魔石様様だな。大事にしなければならない。当たり前だよなぁ! つばを吐くなんてとんでもない。

 あと、先生、謝罪は必要ないけど軽くディスってくるのはなんで? 俺が魔力量で悩んでるって知ってるよね? 自然にある魔石とやらと比べるってそれこそ宝石と砂ぐらいの差があるんじゃないんですか? 知らないけど。

 

「所でディーナ様」

「はい?」

「この魔法式をどうやって?」

「? 私の風で刻みましたが……それが何か?」

「結構。では、ディーナ様。魔法式に関して知見を深めれば必ず私に報告するとお約束致しましたよね?」

「え、ええ。あの魔法で倒れた日に……」

「では、私の知らない間に魔法式の術式を解読しているのは、どういう事ですか?」

 

 ニッコリと普段は絶対見せない笑顔のシャリィ先生。俺、知ってるんですよ……これが狂人の笑顔だって……。

 魔力式の術式なんてシャリィ先生大体知ってるじゃないか。俺は入力式をちょっと弄っただけだぞ! 俺は悪くねぇ!

 

「そ、その、シャリィ先生?」

「結構。実に、結構。次のレポートを楽しみにしていますよ、ディーナ様。何、私達の仲です。期待していますよ」

「ま、任せてくださいまし……」

 

 くっそ、逃げ道がない。いいや、逃げるなんてできる訳がない。レポートがなんだ馬鹿野郎俺は勝つぞこのやろう!

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