悪役令嬢は百合したい   作:猫毛布

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またもやお竹先生(@taketi)から支援絵をいただきました!!
可愛い!! 好き!! 自慢したかったので置いておきます!!


【挿絵表示】

アマリナ

短めなのは私が自慢したかったからです!
決して新しい土地だし短めでいいか とかそんなの考えてません! いいですね!!
読者アンケ置いてますので、よろしくです!


35.悪役令嬢はハタラキタイ!

 カチイに到着してからというもの、俺は久しく忙しい日常を送っていた。

 リゲルの警護が忙しくなかった訳ではないけれど、長らく味わっていなかったデスクワークという単語が俺を忙しなく追い立てていた。

 前世では嫌々生きる為にしていたことであったけれど、今こうして街の為に仕事をするというのは中々に充実している。仕事をしたくない、という気持ちは変わりはしないけれど。

 

「あぁ、落ち着く……」

「お嬢様、口調が」

「ん、んんっ! あら、アマリナ。私はいつも通りですわ」

 

 思わず口調が崩れてしまった元々の日課に恋しさが溢れる。さっさと無くなってしまえばいいのに。

 アマリナの淹れてくれた茶を飲みながら書類と睨めつける。

 さて、カチイの財政というのはそれほどよくはない。悪い訳でもないけれど、都市の規模としては不十分にも思える。何より後々ここを継ぐであろうアレクの為に余裕は少しでもほしい。俺の研究費用も捻出したい。

 元々いた担当は引き継ぎを完了して早々に別の場所に飛ばされたし、残っているのは片手で数えられる程度の政務官と両手で数えられる騎士達だけである。騎士と言っても称号は得ていない雇われと言うべきか、兵士と言った方がいいだろう。

 その程度で政務は完了する。問題が起きないように元々居た政務官達が以前のまま動けるように調整しながらだけれど、問題は無い。ついでに暇もない。

 お父様はこの事を予見して俺をカチイに飛ばした可能性が……? いや、それは無さそうだな。

 政務というかデスクワークは非常に落ち着く。息抜き程度に残った騎士達の調練を行っているヘリオに混ざって運動も出来る。政務の空き時間でも机上理論を立てる事は可能であるし、今はまだ実験段階に差し掛かれないというのも事実だ。

 

 こうして政務に携わる事が出来て思った事がある。

 政務官共が自分の得になるように動いている。まあ当然と言えば当然であるが、書類情報の改竄などが主である。浮いた所得は自分の懐に入っているのだろう。カチイに来てここ数年の書類を全部読み通した時は乾いた笑いが出たものである。

 最終決定を俺に通すようにしてからは比較的減った。というか減らさせた。目に余る分は罰したがある程度は許した。それを少しずつ締め上げて行けばアレクが来る頃には無くなるだろう。

 あとエクセルが欲しい。非常に欲しい。なんだ俺以外の政務官は皆人型の計算機か何かか……? 魔法式導入したら俺よりも上手く扱える事は確実だろう。現実はやはりクソである。

 魔法式をどうにかしてエクセル風味に変換出来ないものだろうか。演算を魔法にして、結果を出力させればいけるだろうか……。演算が出来れば俺の魔法式の効率化にもなるだろう。エクセルは魔法。ハッキリ分かんだね。

 

 領事館とも言うべき館に泊まり込みで仕事をしている、と言えば社畜感溢れる現実であるけれど、その領事館は元々ゲイルディア所有の館である。他に自邸と呼べる物は無いし、あったとしても今現在は戻る時間すら惜しい。なんだよ、この仕事量……よく前の人は完遂出来てたな……。いや、出来てないからこの量なのか。クソかな?

 ともあれ、アマリナだけでは手が足りないし、他にもメイドは雇うにしてもメイドがいい。メイドがいいのだ。決して俺の欲望の為ではない。ああ、本当だ。他の政務官もきっと女の子を見ている方が仕事が捗るに違いない。

 ああ! 仕事って楽しいな!! クソが!!

 

「ゲイルディア殿はいますか?」

 

 さて、カチイに到着してからの問題を紹介しよう。

 今しがた俺の執務室へと入ってきた優男である。白い髪を短く切り揃えたホストよろしくの甘い顔面の優男である。

 名前をベガ。この名前を聞いた時はサイコクラッシャーが特技か何か? と思いもしたが誰にも通じないギャグなので口を噤んだ。アサヒならわかるかも知れないが、まあそれは置いとくとして。

 この男の何が問題かと言えば、俺の監視役である。

 なんで監視役が男なんですか、お父様。今すぐ女にしてください。こっちとらリゲルとの一件で男性恐怖症になっててもオカシクないんだぞ。なってないけど。

 

「何か用かしら」

「先日の書類です」

「……また仕事ね。えぇ、えぇ、ありがとう」

 

 ワーイオシゴトラー……辛い。

 いや、かと言ってサボる理由もないから政務が熟すけれど。渡された書類を端から端まで読んで、眉を寄せる。

 

「ここ、計算が間違っていてよ。それ以外はいいですわ」

「おっと、これは失礼を」

 

 こいつぅ!

 他の計算とかは完璧なクセにこういう見逃しそうな所だけ間違えやがって! あとそれがゲイルディアに得になりそうなのがまた厄介なのだ。自分の所得を増やそうとしているのは構わない、いや問題だが、俺の所得を増やそうとしているのが厄介過ぎる。

 自分の所得を増やそうとするヤツは他にもいるが、それなりに手綱は握っているから問題はない。俺に着いていれば甘い汁を吸い続ける事が出来るとわかれば制御出来るし、やり過ぎならば罰を下す事もわかっている筈だが、コイツは違うのだ。

 

 何を考えているかわからない優秀な男。というのがこの優男の評価である。

 

「調整が終わったら今日はもう帰りなさい」

「いいのですか?」

「えぇ。貴方にも少しは息抜きは必要でしょう?」

 

 それは嬉しい。と女に好かれそうな笑みを浮かべてから部屋から消えたベガを見送って俺は椅子に凭れる。あの男を相手にするのは面倒そうだ。

 

「それで、どうでしたの?」

「以前は王城で働いていた様です。街での様子も至って普通でした」

「そう……王城で働いていたのは文官としてよね?」

「はい。裏も取れています」

 

 背景には何も問題はない。文官として、というには最初に握手した時の剣ダコがどうにも引っ掛かる。さて、あの男は一体何なのか……。

 お父様を信頼していない訳ではないけれど、あのお父様の事だから俺のテストという可能性もあるだろう。

 監視役と言っても人間である。甘い汁を啜らせてやればこっちの思惑通りに動いてくれるだろう。けれど暫くは監視対象であるし、俺自身がアレを信用出来ない。男であるし、何よりお父様の使いである。

 

「私の気が休まる時間は無いのかしら?」

 

 そう呟けばアマリナが少しだけムッとしてくれたので苦笑してしまう。

 いや気持ちとしてはかなり楽になっている。リゲルの時よりも警戒度はそれほど無いし、何よりお父様の使いである事はわかっている。いざ魔法を使うとなれば報告がすぐさま行くのだろうけど、理論さえ組めれば魔法なんてこっそり発動出来るしし実験も可能だろう。

 アマリナもヘリオもいる。悲観するような状況ではない。問題はベガだけであるし、それはカチイには関係ない俺自身の問題だ。

 

 あとは、どうにかこの館にメイドを沢山雇うかだな……。アマリナが怒らない程度に沢山入れたい。アマリナが悪い訳ではないのだけれど、目の保養は大切なのである。そうだよな?

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