悪役令嬢は百合したい   作:猫毛布

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林田先生にディーナ様を描いていただいたので、共有するぞぉ^~!!


ディーナ様

【挿絵表示】


嬉しい!! 綺麗!! 好き!!!


57.悪役令嬢は開きたい!

 目を覚ましてからは非常に怒られた。

 どうにも今回は二日程で起きたのだから、許してほしかったけれどそうもいかないみたいである。

 アマリナには泣かれて今も俺にべったりであるし、シャリィ先生も俺がまた世界と契約した事を感覚的に把握していたのか「話の聞かない教え子」だの「何回言ってもわからない娘」だのと散々に言われた。

 当然、シャリィ先生の言葉には反論してみせた。あれが反論と言える程強いものかはさておいて。シャリィ先生の言葉は逐一覚えているし、理解もしている。それは当然のことであるし、立証するように彼女が俺と初めて会った時に滾々と語り尽くした魔法式の解説と愚痴まで暗唱してみせたが、溜め息を吐き出された。アマリナにもである。

 救いを求めてフィアへと視線を向けたならばニッコリと綺麗な笑顔を見せてくれた。俺の味方になってくれるかもしれない。

 

「主様は少し自重という言葉を学ばれた方がいいですね」

 

 俺に味方などいないのだ。悲しい。

 

「少しだけ一人にしてくださいます?」

「ディーナ様。改めて、再三に、何度でも申しますが」

「ええ、ええ。わかってますわ。魔法の行使も研究もしませんし、黙って外にも行きませんし、今日は大人しくしていますわ」

「……結構。結構」

 

 絶対に信じられてないなぁ。と思えるぐらいシャリィ先生は不承不承な表情であったし、溜め息まで吐き出された。それだけの事をした自覚はあるけれど、俺には前科がない。これが初めての無茶である。なあアマリナ。なんでジト目で見てくるんですか?

 

「なにかあればお呼びください」

「私がアマリナを呼ばなかった事があったかしら?」

「昨晩はヘリオとは一緒でしたね」

 

 こちらもこちらで俺を責めてくるのである。アマリナにはアマリナの役割があったし、ソレは彼女もわかっていた事である。俺の命令だから彼女は従っただけかもしれないけれど、俺の考えは先に伝えているし変に気が回らないなんて事もアマリナに限っては無い。俺よりも俺の事をわかっている節がある。

 

 アマリナと一緒にフィアも下げて、ようやく俺は一人になってベッドに横たわる。

 自分の中の魔力を操作して、指を弾こうとして、やめる。危ない。シャリィ先生に叱られるのはいいけれど、失望されるのは勘弁である。

 一つ溜め息を吐き出してから、痛む体を確かめていく。包帯の巻かれた箇所は切り傷が複数あるし、それなりに失血もしていた筈である。よく生きていたなぁ、と我ながら思う。

 

 ともあれ。

 二日で起きたというのは予想外であった。四日程起きていない予定だったのだ。

 ……つまり、俺は早く起きれたのだから怒られる要素はなかったのでは?

 

 そもそも最善はレーゲンが罪を認めて、俺が登場した時点で降伏することであった。それで一日寝たらスッキリである。そんな事は一切無かったのだけれど。

 俺としての最善は誰かにとっての最善などではなく、何より俺自身が最善の動きをする事は出来ないのだ。変化を絶やすことのない最善という物に俺は至る事ができない。それこそ、最善を自身の意思で握る存在など一握りであろうけど。

 

 ある程度の問題は解決したと言ってもいいだろう。まだ目に見えている限りの問題はあるが……。山のように積まれた問題を頭に思い浮かべれば酷い頭痛を感じてしまうが、それでも大きな山場を越えることができた。

 アマリナに泣きつかれ、シャリィ先生からお説教を受けて、フィアとヘリオからの呆れた視線を貰って、ようやく俺は帰ってきた事を実感できてしまう。これは新しい性癖の扉でも開いてしまったのでは? それもまた頭痛の種であるに違いない。

 

 殺してしまった友人。殺した友人。純粋すぎた友人。何かが違えば、きっと彼は裏切る事はなかったし、何かが違えば、彼の立場に立っていたのは俺だったかもしれない。当然、俺は彼のように上手く立ち回る事もできないし、相応の力もない。きっともっと杜撰な計画になっていたかもしれない。

 

 ――俺が上手く立ち回れていたのなら。

 

 そう思わない事はない。後悔というのはいつだって前に立ってくれず、後ろから手を引いてくる。

 過ぎた感想だ。イワル公爵は俺を排他したし、レーゲンはリゲルを裏切った。事実としてはソレだけでいい。

 

 そもそもどうしてイワル公爵は俺なんかを排除しようとしたのか。ゲイルディア、というだけの意味ならばもっと早急に排除できた筈である。

 彼の脳はもう亡くなってしまっているけれど、非常に気なる。ゲイルディアに個人的に恨みを持っていて、俺がリゲルの婚約者になった事も起因しているのだろうか? それともただ単純にディーナ・ゲイルディアという存在が目障りだったのか。そんな派手な動きはしていない……と思いたい。

 俺を狙う理由なんてそれほど無いと思う。ただ流れとしてディーナ・ゲイルディアが邪魔になった、という方が理に適っているかな。

 警戒されているという事実は主観的に見た結果に過ぎないし、そこまでして排除しようとした理由は不明である。

 

 レーゲンにしたって……いや、彼の思考を追う事は出来ない。彼が生きていたのなら、きっと難解である数式すら解けたであろう。余白は十二分にあるのだから。

 彼は本当に凄かった。戦ってわかる事があるという戦闘狂染みた発言はしないけれど。彼が戦闘をするという行為でようやく見えてきた論理もある。

 想像魔法の極地である。それは間違いなく、彼の事である。そしてそれは同時に、子供達にも言える事かもしれない。

 無知を無知と思わなければ、無知である事を知らなければ、愚かしくも世界という枠組みが存在していないと信じれば。自分が天才であると信じれば。自身が強いと念じ続ければ。それは際限なく叶える魔法だからこそ、想像魔法という規則性のへったくれもない奇跡であるからこそ。

 俺は真なる証明に驚愕すべき事実を見つけたが、俺には余白が足りない。

 

 だから、彼に勝てたのは奇跡と言い換えてもいい。何か一手間違えていたら、それこそ彼の一手が俺の予測通りに指されなければ。

 俺は新しい性癖にだって目覚める事もなかっただろう。こうして頭痛の種を噛み潰すこともなかった。不運ながら。

 

「ダメだな。考えすぎる」

 

 後悔している事は沢山ある。心の中の籠にまた一つ積み上げられただけである。だけ、というには些か積み上がり過ぎたけれど。

 

 一息吐き出して、自分の右手の平を指の腹で撫でる。確かに視界では正しく撫でているし、自分の意思に従って手は動く。ソレだけだ。包帯の感触も、指を押し込んでいる圧迫も、何も感じる事はない。

 左手では正しく感じる事のできる物が右手から消え去った。自分の手ではなくなった。しっかりと自分の肩から生えているのだけれど……。

 詳細に、自分の腕の感覚を調べていけば、右腕一本丸々、肩に少しばかり侵食される程度に感触が無くなった。

 代償として支払った物としては随分と安い。以前と同じ術式だったのなら右目もくり抜かれていたかもしれない。そう考えれば自分の成長も感じるけれど、それでも足りはしなかった。

 右腕の包帯を解けば、剣による傷跡が少しと魔力の流動によって内側から裂けたような傷跡が多数。実にグロテスクな状態である。毎回戦う度にこうなっているのだから、シャリィ先生のお叱りも納得である。もっと上手く立ち回らなければ。

 腕の感触は無い。けれども感覚として動かす事は出来る。不思議な感覚であるが、慣れるしかない。これは俺の代償である。

 

 そしてもう一つ、確かめておかなければいけない事がある。

 自身の炉に火を灯す。体内を循環し始める魔力を緩やかに流動させる。息を少し吸って、止める。細く、細く吐き出して右腕を伸ばし、指を弾く。

 頭の中で演算したのは簡単な火を灯す魔法だ。俺が魔法という物を最初に確かめる為に行使し続けた小さな魔法。

 指先に安物の燐寸(マッチ)程度にしか灯らない弱い火の魔法。

 

 俺の指先には火は灯らない。

 

 炎が出る筈もない。そこまでの魔力を送ってはいない。本当に小さな火を灯すだけの魔法である。

 それすら、今の俺には発動する事が出来ない。

 これは世界に持っていかれた()()ではない事は一番俺が理解している。これは、単なる確認でしかない。

 同時に、証明であった。無条件に言語を変換していたエルフの木環の複製に成功しない理由でもある。

 気持ちはデカルトである。もしくはタキオン粒子が発見されたそこらの学者か。

 

 何にせよ、俺の魔法が根底から覆された事に違いはなく、俺の計算が間違っていた事の証明であるし、そして俺がレーゲンに勝てた事に起因する。

 完璧な魔法式であったなら、俺が彼に勝つことなど出来なかった事を考えれば良し悪しを俺が論じる術はない。意味もない。

 また一からの再開である。答えがあるのだから、きっと余白は足りる事だろうし、三百云年も掛かりはしない。

 

「ディーナ様?」

「……あら、先生。何かしら?」

 

 扉からひょっこりと顔を覗かせたシャリィ先生を誤魔化すように右手を握って、包帯を巻きなおす。

 魔法を行使していないのだからバレやしないし、俺の右手の異常は彼女でも感知できないだろう。間違いない。

 ニッコリと笑う。何もしてませんよー。

 

「はぁ……次に魔力を練ればおわかりですね?」

 

 なんでバレるんですか?

 あと、何をさせられるんですか? それはそれで気になるんですが。

 溜め息のあと、思いっきり笑顔を向けられたけれど安心が一切できない。ゾワゾワする。コワイ。

 

 

 

 

 

 

 

 俺がシャリィ先生に脅されてから少し。ようやく日が落ちて、窓の外には月が昇る。

 あの日よりも、少しだけ欠けた月。

 

「ディーナ様。お体を冷やしますよ」

「あら、貴女が温めてくれるのでしょう?」

 

 薄手の寝巻は確かに肌寒いけれど、アマリナと一緒に寝るのだからぬくもりは足りている。

 俺の言葉にほんのりと顔を赤らめたアマリナは窓辺に座っている俺の傍に寄ってくる。かわいいなぁ、アマリナ。

 よーし、沢山撫でてやろう。

 左手で撫でながら、彼女の髪の感触を覚える。さらさらで、指の間をスルリと抜けていく深い色の髪。

 

「ディーナ様?」

「……なんでもないわ。アマリナ。温かいお茶を淹れてくれるかしら? ああ、私とアマリナ、あともう一つよろしくお願いしますわ」

「? 承りました」

 

 おそらく増えた数に疑問があったのか、小首を傾げたアマリナであったけれど、俺の命令だからその疑問を吐き出すこともなく了承してくれる。説明が省けて大変ありがたい。

 窓辺にある椅子に座って、部屋の隅を見つめる。影になっているそこを見つめて、微笑む。

 

「――クロジンデ」

「……やっぱりバレる」

 

 影の中。波打つこともなく、足音もたたせることもなく。まるで初めから存在していたように色白なクロジンデが月明りに出てくる。

 アマリナが出ていく時も居たのだけれど、アマリナが気付いた様子はなかった。その事でアマリナを責める気はない。

 そこまで彼女の隠密行為というものが群を抜いている。暗殺者としては一級品だ。

 ムスッとした雰囲気を作ってみせたクロジンデに申し訳なさが募る。これは彼女が悪いワケではないし、俺が優れているという事でもない。

 ただ俺が()()()()()()()()()()()()証明に他ならない。

 

「……起きたって聞いたから来た」

「起きた、と言ってもそれほど時間は経ってないと思いますけど?」

「うん。ディーナの予定より、早い」

「幸いな事に、ね。それで、誰かその情報を聞いたのかしら?」

「陛下」

 

 …………この娘は一体どこまで潜り込んでるんだ。俺はそこまで頼んでないんですけど?

 頭痛の種が増えた気がする。この少女を俺が制御できるのかという問題が出てきてしまった。制御できなかった場合は徹底して飼殺すつもりであるけど。

 

「変に王族に潜り込むのは褒められた行為ではありませんわ」

「呼ばれたから」

「……一応、聞いておきますわ。誰に呼ばれたのかしら?」

「陛下」

 

 先ほどの問題は無くなった。代わりに新しい頭痛の種が芽吹いた。

 陛下ァ! 何やってんだ!! コイツは元が付いても暗殺者だぞ! イワル公爵が半ば暗殺されてんだからちょっとぐらい自重しろ!

 彼女が呼ばれた理由は、なんとなく理解できる。それこそ裏側を僅かしか見せていない陛下が俺との接触の為に会ったのだろう。そんな事しなくても、呼ばれれば行くし、どうせ俺の口から説明を求められるのだ。だからもっと自分の身を大事にしてくれ。

 小首を傾げるクロジンデから目を背けるように頭を抱える。

 陛下の想定外行動はいつもの事だ。うん。俺をリゲルの婚約者にした時も、明らかに怪しいゲイルディアの娘を呼んだ時も、全てを俺に賭けてくれた時も。

 思わず溜め息を吐き出してしまう。

 

「ああ、アマリナ達もこういう気持ちなのかしら?」

「?」

 

 コテンと小首を傾げてみせたクロジンデに頭痛がして、額を指で押さえる。

 クロジンデが俺が思った以上の仕事をしてくれたという事で納得する。陛下には次に会った時に言おう。俺の忠言を聞くかはわからないけれど。少しばかりに心に残るだろう。リゲルにも言っておこう……。あの人たち親子だもんな……。

 

 戻ってきたアマリナはいつの間にか俺の部屋にいたクロジンデに珍しく見てわかる程の驚きを顔に浮かべて、俺が一つ多く頼んだ事に納得しただろう。

 同時にシュンとした雰囲気が伝わってくる。犬なら耳もヘタレてるし、尻尾も垂れている事だろう。あとで沢山撫でてあげなければ……!

 

 温かい紅茶を一口だけ飲んで、僅かにあった微睡を追いやる。

 クロジンデを見れば、一口飲もうとして口をつけてから眉間を寄せて舌を僅かに出している。そのあとはひっきりなしに紅茶に息を吹きかけて冷ましているのが実に愛らしい。

 愛らしさに微笑んでいればアマリナから冷たい視線を向けられている気がする。彼女は俺の後ろにいるから視線なんてわからないけれど。それにも苦笑する。

 

「さて、報告を聞きましょうか」

「うん」

 

 クロジンデには俺が眠っていた二日間。王城での動きをアサヒの隣から探ってもらっていた。アサヒの護衛としての役割もあったから、それほど自由には動けない筈だった。筈だったのになぁ!

 だからその場で見聞きできる情報を集めてほしかった。自分から動くことは禁じなかったけれど、どうやら俺が思った以上の報告が聞けそうである。

 

 イワル公爵に関して。予想通り、というべきか。結果としてそうなってしまっただけなのだけれど、彼は殺された。殺した犯人はレーゲン・シュタール。そして彼を殺したのは実の親であるレンベルト・シュタールである。

 親としての責務、息子の不始末を自身で補った形になる。当然、シュタール家には賠償がある。尤も、公爵を殺したという事実から考えれば少ない額であるけれど。

 それは俺も、シュタール卿も理解している事である。そういう取引をした。

 彼はきっとレーゲンを殺した後、自身も償いの為に一線から退いただろう。()()()()()()()()()()()()()

 そうなるとこの国は巨大な駒を落とした状態で短くない期間を経過させなければならない。致命的な隙にもなるだろう。どちらかだけならば、まだ耐えられる。

 国の事を考えるのならば、彼は退いてはいけない。退かれると困る。非常に、困る。

 

 イワル公を調べていた最中で今回の反逆の共謀者の名前は上がった。その中にレーゲンの名は当然あったけれど、彼の家名はそれ以外無かった。

 あとはシュタール卿の気持ち次第であった。彼はこれで汚名を被る。その為に彼にはレーゲンを殺してもらう必要があった。僅かでも汚名を雪ぐために。

 それでも彼は人である。俺ではない、別人なのだ。そしてレーゲンの親でもある。

 

「凡そ、予定通りかしら」

「うん、陛下が数日中に会いたいだって」

「ええ。イワル公の国葬が終わり次第、と返事をお願いしてもいいかしら?」

「…………」

「どうかしましたの?」

「どこまでがアナタの手の上だった?」

 

 きっとソレは陛下が聞きたかった話ではない。あの人はそれは聞かない。事実と、真実、そして冗談が好きな人だ。俺の過程という物はそれほど気にしないだろう。或いは、()()()()()()()()()()()()()()

 どちらにせよ陛下ではなく、この猫のような暗殺者がこうして疑問を提示してくれているのだから、俺は雇い主として応える必要がある。

 

「私の手は全てを転がせる程大きくありませんでしたわ」

「……そう」

「ええ。残念な事に」

 

 お茶を一口飲んで、視界を閉じる。

 どうしようもない感情を抑えつけ、飲み込む。

 

「そろそろ戻る」

「ご苦労様。アサヒの警護をよろしくお願いいたしますわ」

「……いい加減、アレどうにかならない?」

「そうね。近い内にどうにかしますわ」

 

 本当にどうにかしなくてはいけない。彼女の生活を考えてもそうであるし、リゲルとの仲を考えてもそうである。

 アサヒの頭の中という意味なら……諦めてくれ。俺にもどうしようもない。

 

 俺の言葉に満足したのかクロジンデはお茶を飲み干して欠伸を一つ零してから、窓の外へ消えた。

 それを見送って、俺もお茶を飲み干す。

 

「本当に、私が強ければ何も取りこぼすことは無かったのに」

「ディーナ様……」

「大丈夫だよ、アマリナ」

 

 クロジンデがいなくなったからか、甘えるように後ろから俺を抱きしめたアマリナの手に自分の右手を添える。

 後悔らしい後悔はすでに終わらせた。まだ悔いる事は沢山あるけれど、それで俺が変化する事はない。抱えて、背負って、それでも止まる事など許されない。

 

「……アマリナ?」

 

 俺の首筋に顔を埋めたアマリナが深く呼吸をする。こうしてわかるように甘えてくるのは珍しい。

 首筋に熱と痛みが貫かれる。噛まれた。噛まれた? なんで? 吸血鬼とかになったか?

 アマリナが落ち着くまで、彼女の頭を撫でてやる。頭の中は混乱しているけれど、彼女は俺と常にいたし、吸血鬼みたいになる要素は無いはずだ。眷属にされるにしても、伝承を考えれば不可能である事は間違いない。だから彼女は正常な筈だ。けど、噛まれてるし、噛んだ後を舐められている。

 本当に犬のようだ。

 

「アマリナ?」

「……」

 

 俺の声に反応せずに、ぺろぺろと自分が噛んだ痕を舐めてはもう一度噛む。噛まれているのは俺の首筋なワケだけれど。

 甘えてくるけれど、不機嫌でもある。不機嫌なんて事がわかるのは俺とヘリオぐらいだろうけれど。

 

「嫉妬か?」

 

 噛む力が強くなった。どうやら自惚れでもなく、正解らしい。

 俺がクロジンデを頼りにしているのがお気に召さないのか。それでも俺が出来ることも、彼女が出来ることも、アマリナにしてもらう事も、何もかもが違うのだから仕方がない。

 そんな事はアマリナもわかっている筈なのだけれど。

 

 こうして嫉妬という感情を持ってくれている事も、嬉しいことである。それにアマリナがこうして感情を露わにして俺に要求してくるのも、嬉しい事だ。他に人がいたのならしないだろうけれど。

 うんうん、と納得をする。だから、アマリナさん。俺の胸とかお腹に手を這わすのはやめませんか? 俺、怪我人ですよ?

 いや、嬉しいけどさ。ほら、安静って言われているの聞いてるでしょ? んん?

 

 アマリナの戯れが終わるまで、まだ暫くの時間が必要であったことは言うまでもないことである。

次挿絵のキャラは誰がいい?

  • リヨース
  • 騎士ディーナ様
  • シャリィ先生
  • エフィさん
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