常緑樹が多い町中だけど、全部がそうというわけじゃない。川沿いなら葉の色が変わり始めてる。もうしばらくしたら紅葉に染まるんだろうね。…君が大好きな紅葉に。
去年も一昨年も連れて行ってくれたよね。ネットとかSNSとか口コミとか、そういうのに載ってない所に。君が自分で見つけて、お気に入りの場所なんだって言って、他に人を連れてきたのは私が初めて、だなんて言っちゃって。でも、君がその場所が好きな理由は、なんとなく伝わってきた。不思議なことだけど、その場に君がいると、その場が"完成"されたように見えたから。
「あ〜!ゆり先輩!」
「あら?久しぶりだね香澄ちゃん。相変わらず元気そうだね」
「はい!自分でも分かるぐらい最近上達できてきましたし、次のライブも近いんですよ!もうキラキラドキドキしまくりです!」
「そ、そうなんだ」
戸山香澄ちゃん。中学、高校とエスカレーター方式で上がれる花咲川女子高校の1年生。香澄ちゃんは外部から来た子。私が3年生だから、二つ先輩ってことになって、香澄ちゃんの妹は私と同じ水泳部に入ってる。あの子は中学3年生だけどね。大会で活躍するのを期待してたけど、受験があるから辞退したんだよね。残念とも思うけど、同じ受験生だから気持ちがよくわかる。私は両方捨てないけどね。やりたいことも、やらないといけないこともやる。…これも君の口癖だよね。私が言うようになってからは聞かないけど。
「ゆり先輩はここで何してるんですか?」
「葉っぱの色が変わってきたなーって見てただけだよ。私、紅葉見るのが好きだからね」
「おぉー!大人っぽいです!」
「あはは、ありがとう」
川沿いのベンチに腰掛けて色の移りゆく葉を見てたら、そりゃあ何してるの?ってなるよね。…これって大人っぽい?なんかお祖母ちゃんっぽい気がしてきたんだけど。けど香澄ちゃんは正直だから、大人っぽいんだろうね。
「グリグリはライブしないんですか?」
「受験が目の前に迫ってるからね。みんなの受験が終わったらライブをしようって思ってるよ。勉強の息抜きでギター弾くし」
「そうなんですね!じゃあじゃあー、グリグリがライブする時に、また呼んでもらってもいいですか?」
「もっちろん!ポピパのライブも全然見れてないし、りみの成長も見たいからね」
「やったー!約束ですよ!」
「うん。約束」
私の前に立っている香澄ちゃんは、キラキラと目を輝かせながら手を伸ばしてくる。その手は小指だけ立てられているから、指切りをしようってことだよね。指切りをするのはいつぶりなんだろう、なんて考えながら香澄ちゃんの小指に私の小指を絡める。小さい頃はよくしていたことだけど、小学校高学年くらいからやる人が極端に減るよね。
「楽しみだなぁ〜♪」
「香澄ちゃんは本当にライブが好きだよね」
「はい!キラキラドキドキしますから!それに、有咲がいて、りみりんがいて、おたえがいて、沙綾がいますから。ポピパのみんなと一緒だから、すーーっごい楽しいんです!」
「なるほどね。たしかにみんながいるから楽しいって気持ちもあるよね」
「はい!」
私もグリグリのみんながいるから楽しいって気持ちがある。グリグリ、正式ににはGlitter*Green。それがバンドの名前、私の居場所。大切な友達と四人で組んでるバンド。
「そういえばゆり先輩!りみりんが言ってたんですけど!」
「何を?」
「ゆり先輩
「…ぇ」
「私ビックリしちゃいましたー!どんな人なんですか?いつ出会ったんですか?あ、もしかして関西の人ですか?」
「待って待って落ちついて。…香澄ちゃん。それ本当にりみが言ったの?」
「うーん、うっかりって感じで言ってましたよ。ゆり先輩に彼氏がいるってことを聞いて、いろいろ聞こうって思ったらこれ以上は話せないって言われちゃって」
「あ〜なるほどね。そういう感じなんだ」
「それでそれで!彼氏さんはどんな人なんですか?」
「グイグイ来るねー」
彼と出会ったのは、高校1年生の時で、しかも入学式の日だったね。…仕方ない。ある程度は教えてあげようかな。
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