彼と連絡を取れないようになって3週間。私はそのショックを今も少し引きずってる。けど、元々彼は私と関わろうなんて思ってなかったから、これが望んだ状態なんだ。私も彼を好きになったわけじゃなくて、ただ友達になりたかっただけ。
意地悪で捻くれてて、たまに見せる優しさが不器用で、
──それでも萩近くんと過ごす時間は楽しかった
男の子の友達なんて小学校の時しかいなかった。中学校の時からは、クラスで話すことがあっても放課後に一緒にいることなんてなかった。部活に行って、それが終わったら帰るだけ。友達と言える子はみんな女の子だけ。
だから新鮮だった。高校生ともなれば、男の子も女の子も体格的にも大人になる。彼は精神的にも大人びてるところがあって、私ができていないことを言ってくれて、いろんなことを教えてくれた。他の子と変わらないって思ってたけど、私は結構な箱入り娘だったみたい。関わりをなくしたいって言いながら、私の無知なとこを気にかけてくれる。それで、男の子の友達ができるって思った。
(でも君からしたら迷惑なんだよね……)
「ゆり、ちょっといい?」
「七菜?……うん、いいよ」
席に座って教室の外をボーッと眺めてたら七菜に話しかけられた。その雰囲気から楽しい話じゃないってことがわかった。ううん、きっと私がウジウジしてることを突っ込まれるんだよね。そしてそれはつまり、萩近くんと何があったかを話さないといけないってこと。
「話が話だし、屋上でいいかしら?」
「そうだね。その方がいいかも」
「それじゃあさっそく行こっか」
「うん」
私と七菜にしては珍しく移動してる時に会話が無かった。七菜の心境は分からないけど、私は複雑だった。誰かに打ち明けて楽になりたいって気持ちと、話したくないって気持ちがあって……、なによりも私が重く受け止めてる分口を開きにくい。
それでも、もう話さないといけないんだよね。七菜はずっと待ってくれてた。だけど私が自分から話せないから、こうやって聞き出すことにしたんだろうね。嫌な役回りをさせちゃってるよね。そう思ってたけど、屋上について私の目を真っ直ぐ見てくる七菜は、そんなことを露ほども思ってないみたいだった。
「私が何を聞きたいのかはゆりもわかってるわよね?」
「……うん。萩近くんとのことだよね」
「そうよ。どう転ぶかは正直分かりかねてたんだけど、週明けに会った時に分かったわ。
「彼に襲われたとかじゃないよ?」
「それは分かってるわよ。彼はそういうのするタイプじゃないもの」
彼に耳を攻められて、実は変な気持ちになっちゃってたことは話さないほうがいいよね。というか話したくない。あれはすっごい恥ずかしいから。
普段は見守ってくれる七菜が、わざわざこうやって聞き出しに来たんだ。私も話さないといけない。逃げるのはやめよう。友達に失礼だもの。そう決意しても、なかなか言葉を出せなくて、結局七菜の方から聞き出してくれるって形になっちゃった。
「まず、遊びには行けたのよね?」
「うん。集合時間に合わせて来てくれたよ。それで隣町のショッピングモールまで出かけたんだ」
「チョイスがデートみたいなのだけど」
「え……いや、だって男の子と遊ぶのってどうしたらいいか分からないし……」
「まぁそこは過ぎたことだからいいわ。私も分からないし」
七菜も分からないんだ……。あ、でもここの中等部も女子校だからそうなるのも仕方ないか。むしろ中学校が共学だったのに分からない私って……。そこはひとまず置いとくことにしよう。七菜が言ったとおり過ぎたことだもんね。
「事細かに聞けばいいってわけじゃないだろうから、最後に何があったかを教えてくれる?」
「──っ!……それは……」
「ゆりの気持ちが沈んでるのもそこに関係してるのよね?」
七菜から視線を下げて床を見つめる。話さないといけない。だってさっき話すって自分で決めたのだから。七菜も私を助けてくれようとしてるんだから、その気持ちを無下にしていいはずがない。友達想いの人を、友達の私が拒んでいいはずがない。七菜は余計なお節介をしてるわけじゃない。触れないでいてくれることもある。ちゃんと弁えてる人なんだから。
「彼に……萩近くんに…………連絡先を消せって……」
「本当にそう言われたの?」
「うん。私が……ね。彼に『満足してもらうから』って言っちゃって……そしたら、彼が『ならそうできなかったら連絡先を消せ』って……それで」
「そうなった時点で彼はそうする気だったのね……。それで連絡先が無くなったからゆりはショックを受けたと」
「ううん」
私は首を横に振って七菜の推測を否定した。七菜はそれに驚いてたけど、誰しもが驚くよね。だって、話の流れからして連絡先が消えたって思うのが当たり前なんだから。でも、私は彼の連絡先をまだ持ってる。これだけは守り抜いた……と言うよりも、彼が諦めてくれたって言った方が正しいかな。でも、萩近くんとは一切連絡を取れてない。電話は着信拒否されてるのか1回も出てくれないし、メッセージを送っても見てくれてない。こっちも本人が言ったとおりブロックされてるんだろうね。
「はぁ、生殺しね」
「そう……なるのかな」
「……ゆりはどうしたいの?」
「え……?」
「彼ともう会えなくていいの? 連絡取れなくてもいいの? 諦められる? ゆりが最初に言っていたお礼兼お詫びは、形はどうであれ終わったわけだけど」
「それは……」
どうしたいんだろう。萩近くんも連絡を取れなくなったショックで何も考えてなかったや。たしかに私が当初目的にしていたことはもう終わった。なら何を悩む必要があるのだろうか。……いや、答えなんてとっくに出てる。心の中で決まってることをちゃんと出してないだけなんだ。
「私は……萩近くんと友達になりたい。……こんなので……終わりたくないよぉ」
勝手に涙が出てくる。まるで私の心からの願いが飛び出したことに反応するように。止めようと思っても止まってくれなくて、手で顔を覆ってると七菜にそっと包まれた。柔らかい手でそっと頭を撫でられて、そしたらさっきよりも涙が溢れてきちゃった。止めることを諦めてもう全部出しちゃおうって、そう思った瞬間自分を止められなくなった。七菜に抱きついてすっごい泣いた。こんなに泣いたのはいつぶりなんだろう。
「ごめんね七菜……もう大丈夫だから」
「いいのよ。ゆりの力になれたのならそれでいいもの」
「あはは、ありがとう」
「どういたしまして。それで、これからどうするの?」
「……萩近くんと友達になりたいけど、私からは何もできないし……」
「それなら良い手があるよ!」
「えっ……リィ!?」
屋上のドアの方から突然大きな声が聞こえてきて、そこにはリィが立ってた。珍しく今日は人形を持ってないけど、たぶん鞄の中に入ってるね。鞄が不自然に膨らんでるし。
七菜はリィのことを知らないから、私が間に入って二人のことを紹介する。二人とも持ち前の人の良さがあって、すぐに仲良くなってくれた。挨拶が終わったから、私と七菜はリィが言う『良い手』が何なのか聞くことにした。
「バンドを組むんだよ」
「バンド?」
「それがどう関係あるのかしら」
「まず、ゆりちゃんからは萩近くんを誘えない。ならゆりちゃんと同じグループの人が誘えばいい」
「それでバンド……」
「そう! そこは単純にバンド組みたいからなんだけどね〜。でも、バンドを組めばライブするから見に来いって言えるでしょ? いい考えだと思うけど、どう?」
「私は賛成かな。せっかくギターも買ったんだし、バンドを組めるなら組みたいかな。七菜は?」
そう簡単にできるとは思わないけど、私だってバンドを組みたい。一石二鳥とまでは言わないけど、悪くない考えだと思う。できれば七菜ともバンドを組みたいけど、無理に誘うことはできない。そもそも七菜がバンドに興味があるのかも分からない。だけど、私の不安を吹き飛ばすように柔らかい笑顔を浮かべてた。
「私も協力するわ。キーボードならできると思うし」
「いいの?」
「もちろんよ。ゆりたちとバンドを組むの楽しそうだもの」
「ありがとう!」
「よーし! これで
またリィが疑問を持たせるような発言をしたけど、屋上のドアが勢い良く開いて、リィが言う四人目の子が現れた。見た感じ大人しそうな子なのに、滲み出てるテンションの高さが既にその印象を壊してた。
「わたしは
"ひなちゃんワールド"っていう独特な感性があるみたいで、いろんな子にあだ名をつけてるみたい。この子はドラムができるらしくて、リィがベース。七がキーボードで、私がギター。
「……ところでボーカルは?」
「わたしはドラムしながらとかできないからパ〜ス」
「私もキーボードしながらなんてとてもできないわね」
「二人はそうだよね。リィは?」
「え? ムリムリ。ゆりちゃんよろしく!」
「え……」
「おー! ギターボーカルの誕生だね〜!」
「ゆり、頑張ってね」
「えぇーー!!」
バンド名は今度決めることになったけど、とりあえず私がギターボーカルすることになりました。
〜〜〜〜〜
鰐部の話に付き合って、ライブをする時が来たら見に来いっていう面倒なことを言われた。この辺でやるとなれば
「……なんのようだ。二十騎」
「あはは〜、いやーわたしもゆりちゃんとバンド組むんだよね。そしたら君の名前が出てきたし、これは会って様子を見てないとな〜って」
「小学生の時しか絡みないし、しかもそこまで絡んでたわけでもないだろ」
「でもわりと萩ぽんのこと気に入ってるんだよ?」
「知らん。それと変なあだ名で呼ぶなって言ってるだろ」
「なんて呼ぼうとわたしの勝手でしょー。君もそういう人間なんだし?」
あー面倒だ。牛込とか鰐部以上に面倒だ。なまじ小学生の時に絡みがある分やりにくいんだよな。あの頃はまだ捻くれてなかったから、今との違いがあって余計に。
「ま、
「は?」
「捻くれてるけど、根本は何も変わってない。ゆりちゃんとのことは聞いたけど、本気になればゆりちゃんに恐怖を植え付けられてたはず。でも君はそうしなかった。それが証拠だよね」
「……本当にお前は嫌な奴だよ」
「えぇー。ひなちゃんは嫌な子じゃないよ〜? 用件をすぐに済ませるから堪忍してちょうだい」
「はぁ。なるはやで」
用件は言ってしまえば鰐部と同じだった。『ライブを見に来い』それだけだった。こいつもこの辺のことは分かっているから、ライブする場所が"SPACE"になることも分かっている。だからこそ、『オーナーが認めたら見に来てね』なんて言ったんだろうな。
──厳しい人だからこそ、認めたバンドは"それだけのモノ"があるって証になる
見に行って損することはないということだ。牛込周辺の人間で俺の素を一番正しく把握してるのは二十騎だろうな。だから、『君が来るのを楽しみにしてるね』なんて言って、返事を聞かずに走り去ったんだろう。
(ほんっっとに嫌な奴だよ。お前は)
グリグリのメンバー同士での名前の呼び方を把握してる方がおられましたら、感想の方で教えてください!
一応自分でもアニメを振り返って確認はしますけどm(_ _)m
もし作者が書く気が出た場合
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