同じ景色を見られたら   作:粗茶Returnees

43 / 55
 ラストは考えてたのに、三年生でそれまで何させるかは考えてなかったです!
 あとがきも読んどいていただけると。


第3部 高校三年生
1話


 

 春になって学年が上がる。私たち二年生は三年生へと。進路を確定させてそのためにひたすら努力する年だ。でも、私たちはバンド活動を中断させる気はない。受験が近づいたらもちろん一旦休止するけど、それでも卒業ライブとかはしたいしね。

 

 

「お姉ちゃん。どこかおかしくないかな?」

 

「大丈夫。似合ってるよりみ」

 

「そうかな? ありがとう、お姉ちゃん」

 

 

 3月まで中学三年生だったりみも、学年が上がって今年度から高校一年生。学校は私と同じ花咲川女子高校。また一緒に登校できたりするのかな。もちろん友達同士で行ったりするだろうから、そんなに頻度はないだろうけども。うちの高校はエスカレーター方式で中学から高校に上がれるけど、外から入ってくる子もいる。そんな子とも友達になるのかな。りみは少し不安そうにしてるけどね。

 そんなりみは今日が入学式。そこまで大きな変化もないだろうけど、こういうのは気持ちが大事。中学と高校で制服が違うのもきっとそういうことだろうね。意識を変えましょうってことで。

 

 

「入学式みんなで行くからね」

 

「え、恥ずかしいよ〜」

 

「いいじゃん。りみの晴れ舞台なんだから」

 

「大げさだってばー」

 

 

 大袈裟じゃないと思うんだけどな。だって私の時だって……私の時は私が迷子になってたね。先に家を出てみんなより後に学校に行ったんだった。懐かしいな。もうあれから二年経つんだ……。

 あの日にレオくんに出会って、それから本当に、本当の本当にいろんなことがあって、今は同じ家にいる。……うん、おかしいね。仕方ないし、私がレオくんを家に入れたんだけど、冷静に考えたらとんでもないことしてるね。

 

 無自覚って怖いなー。今じゃ意識し過ぎて絶対そんなことできないよ。バレンタイン以降、少しずつレオくんとの会話も戻ってきてるけど、私がまともにレオくんと話せないからまだ戻りきってない。あれに戻るのって無理なんじゃないかと思うぐらい、無意識の私は積極的過ぎた。よくレオくんに嫌われなかったよね。めんどくさがられてたけども。

 

 

レオくんと一緒にりみの入学式……私大丈夫かな?

 

「あ、お姉ちゃん。レオ兄ちゃんって今日バイトじゃなかった?」

 

「へ?」

 

「さっき準備してたよ?」

 

「なにしてんのレオくん!?」

 

 

 私は部屋を飛び出してレオくんの部屋のドアをノックと同時に入った。ノックの意味がないけど、一応したのはしたんだからいいよね。

 

 

「なにしてんだゆり……」

 

 

 部屋の中には呆れ顔のレオくん。たしかにバイトの用意を持ってる。ということはりみが言った通りなんだろうけど、なんでりみの入学式の日にバイトを入れてるんだろう。せめて入学式の後からとかでしょ。

 

 

「今日はりみの入学式だよ?」

 

「知ってる。みんな出席するんだろ? 俺はバイトしとく。おじさんとおばさんには話したぞ」

 

「……止められなかったの?」

 

「『ゆりに話したら止められるでしょうからゆりには黙っときなさい』とだけ」

 

 

 なんでそのへんレオくんのを優先しちゃうかな。そりゃあレオくんとは血が繋がってるわけじゃないんだけどさ。でも、同じ家に住んでるんだから、こういうのは一緒にやりたいじゃん。

 

 

「誰かに代わってもらお?」

 

「こんな直前にそんなの迷惑だろ。それに代わりなんぞ見つからん」

 

「わかんないよ?」

 

 

 私はスマホを操作して、ある人(・・・)に連絡を取る。『妹の入学式に萩近くんも連れて行きたいので、彼の代わりにバイトしてくれませんか?』と。いきなり過ぎて迷惑なことだとは思う。体のいいパシリみたいなものだって分かってる。断られたら素直に謝って諦めればいい。代わってもらえたらお礼を持っていこう。

 

 

「誰に連絡したんだよ……って、電話来たし」

 

『若! 事情は聞きましたよ! 入学式にご出席してください!』

 

「お前パシラされてることに気づけよ!」

 

『もしものためと予定を空けておいて正解でした! では俺は店に向かいますので!』

 

「待ておい! ……切りやがった」

 

 

 深くため息をつくレオくんにドヤってすると頬を抓られた。あの人に連絡したのは私だけど、二つ返事で了承してくれたのはあくまであの人の意思なんだけどね。でも、レオくんからしたらあの人を使うのは反則みたい。

 私の頬を抓ってくるレオくんの手をペチペチ叩いて離すように促す。でもレオくんは離してくれなくて、反対の手でも抓られる。強くは抓られてないから痛くはないんだけどね。でもちょっぴり跡ができそう。それはやめてほしい。

 

 

「どうやって連絡先を手に入れた」

 

「ほひへへふへふぁ」

 

「何言ってるか分からないぞ馬鹿」

 

「ららふぁはひへ!」

 

「なんて?」

 

 

 絶対伝わってる。私が何を言いたいのかは絶対レオくんに伝わってる。だってすんごいニヤニヤしてるんだもん。

 私はレオくんの足を踏んづけた。それで怯んだレオくんの手を自力で振りほどいて少し離れる。跡がついてないか気になって頬を触ってみるけど、鏡見ないと分からないね。

 

 

「いきなり踏むなよな。ビックリするだろ」

 

「レオくんが悪いんでしょ?」

 

「はぁ。で? どうやって連絡先を手に入れた?」

 

「教えてくれたの。向こうから」

 

 

 私が正直に話すとレオくんが額に手を当てて項垂れた。呆れて何も言えないっていうのと、なんでそんなことしてるんだろうなって思ってるのかな。私もいきなり教えられた時はビックリしたよ。

 

 

「過ぎたことは仕方ないか……」

 

「そんなわけで入学式行こうね?」

 

「はいはい」

 

 

 諦めたレオくんがだらけて返事をする。制服で出席しても落ち着かないし、正装はお父さん達だけ。私とレオくんは、目立たない程度の私服を着て出席。レオくんがりみに喜ばれた瞬間グーサインしたから頭叩いといた。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 りみの入学式に強制出席になり、ゆり達と一緒に保護者席から見てた。花女に入るのはこれで二度目になるわけだが、なんにせよ落ち着かなかった。まず女子校に入るという時点で、多少なりとも気遅れするし、俺は誰かの保護者でも家族でもなく来てるのだから。ゆりは家族だって言うかもしれないが、養子縁組してるわけでもなし、血の繋がりがある親族でもなし。つまり赤の他人である。

 そんな若干居心地の悪い入学式だったのだが、特に何かあったわけでもなく無事に終了した。強いて上げるとすれば入学式に欠席者がいたくらいだが、さしたる問題でもないだろう。うちの高校の入学式は欠席者が二桁いかなかっただけで教師陣が「快挙です!」なんてはしゃぐのだから。

 

 

「じゃ、俺ここで別れるから」

 

「なんで? りみと一緒に帰ろうよ」

 

「バイト」

 

「それは代わってもらったでしょ!」

 

「一日潰させるわけにはいかないだろ!」

 

 

 当日に急に代わってもらっただけでも悪いのに、一日全部潰させるなんて申し訳ない。嬉々として働いているのは容易に想像つくのだが、だからって甘えていいわけじゃない。だから俺はバイトに行くんだ。それにそれ以外にも理由があるしな。

 

 

「また痴話喧嘩してるの? 他の人に迷惑よ」

 

「鰐部。何を見ればそう見える? 迷惑なのは認めるが」

 

「あなた達のは基本的に痴話喧嘩にしか見えないわよ。そうじゃない時は拗れてる時ね」

 

ちわげんか……えへへ……

 

 

 たしかに拗れてた時もあるけども。拗れてる時は周りに多大に迷惑をかけているけども。そのせいで泣かせた相手もいるぐらいだし。だが、そうじゃない時は痴話喧嘩にしか見えないというのは遺憾である。これには抗議したいところだが、それよりもゆり。痴話喧嘩で喜ぶな。

 

 

「……あれ? 今のうちに行っとけばいいのか」

 

「あなたも大概酷い人よね」

 

「鰐部。あとは任せた」

 

「はいはい。フォローはしないから家に戻った時の言い訳考えときなさいよ」

 

「わかった」

 

 

 変に照れてるゆりを鰐部に任せて俺はバイト先へと向かう。家に帰ってからゆりにどう言い訳したものかと考えたが、よくよく考えれば俺が言い訳する必要もないな。俺は元々バイトの予定を入れていたのだから。 

 バイト先の裏口から入ると、困り顔をしている女子と不機嫌そうにしている女子がいる。予想通りだし、これがあるってわかっていたからこそ、俺は途中からでもバイトに来ようと判断したのだ。そして言い訳が必要なのはこっちである。

 

 

「おはよう花音、彩」

 

「おはようございます」

 

「説明を要求します」

 

「だろうな」

 

 

 花音は助かったと言わんばかりに安堵の表情を浮かべ、彩は頬を膨らませて説明を求めてくる。俺は膨らんだ彩の頬を突いて空気を吐き出させ、顔を赤くして叩いてくる彩を落ち着かせる。

 

 

「今日は花女の入学式だろ? ゆりの妹が今年入学でな。式に出させられた」

 

「それは聞きましたけど……、玲音さんバイト入れてたじゃないですか」

 

「俺もこっちに来るつもりだったんだがな。……いつも通りのパターンだよ」

 

「なるほど。では玲音さんは私のお願いを一つ聞いてくださいね?」

 

「なんでそうなる……」

 

 

 いつも通りのパターンと言えば、ゆり関連だと彩も理解してくれるようになった。というかこのバイトの人たちは、みんなそれで理解するようになってしまった。甚だ不本意なのだが、そうなってしまったのだからもういいや。

 それで、なんで彩のお願いを聞くことになるんだろうな。急に代わってしまったのは俺の落ち度ではあるのだが、それで彩のお願いを聞くことには繋がらない。だから花音に助けを求めようとしたのだが、花音はふわっとした笑顔を浮かべて首を横に振った。諦めろということらしい。

 

 

「はぁ。それでお願いは?」

 

「いいんですか!?」

 

「彩が頼んできたんだろ。無くていいなら無しにするぞ」

 

「いえいえ! それは駄目です!」

 

 

 彩のお願いを聞くと言ったら、彩は笑顔を弾けさせて喜び始めた。さっきまでの不機嫌さは何だったのかと言いたくなるぐらいだ。だがまぁ、彩が喜んでくれてるならそれでいいか。彩を振ったことを後悔してるわけじゃないし、引け目を感じてるわけじゃない。そんなの彩に失礼過ぎるし、俺もズルズルと引きずりたくはない。

 それでも、彩に甘くなるのは俺の性分なのかもしれない。

 

 

「えっとですね〜。今日うちに泊まりに来てください!」

 

「頭冷やそうか」

 

 

 この子に甘くなるのも注意しないといけないな。そう思った瞬間だった。

 

 

 

 学年が上がって高校三年生になった。人生の分岐点の一つだ。そして、予想してなかったが、この年度で俺の身の回りの問題が全て(・・)片付くことになる。

 




 
 少し遅れての投稿となりましたー。
 そして今後も投稿が遅れると思います。というのも、準備段階ではありますが、卒業論文の方に取り掛かり始めますので。息抜きに書いたりはしますが、区切りが付くまで投稿のペースは乱れると思います。申し訳ありませんm(_ _)m

もし作者が書く気が出た場合

  • 海外編(単発デート)
  • グリグリ全員との絡み
  • 陽だまりをくれる人とのリンク回
  • 結婚式
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。