今回のガチャのりみりんが当たりませんでした。ゆりさんいたから欲しかったのに!!:(´◦ω◦`):
俺が通ってる学校と花女の修学旅行先は同じで沖縄だったが、日程は若干ずれている。だから、俺が帰ってきた次の日にゆりたちも帰ってくる。そのはずだったのだが、天候が荒れたらしく飛行機が飛べないんだとか。それにより、ゆりたちの帰宅はさらにズレ込むこととなった。そのズレ込んだ日がSPACEでのライブの日なんだけどな。
「お姉ちゃんたち……間に合うかな?」
「さぁな。順当に考えれば間に合うんだろうが、一日経ったって飛行機が跳べてないとなると厳しいだろうな」
「そんな……!」
りみは本当にゆりが好きだよな。ゆりに憧れて、ステージで輝いてるゆりを見るのが好きだ。だからこそ、ゆりたちがライブに間に合わない可能性が出てきたことに、不安を覚えている。かと言って俺達でどうにかできるわけでもない。飛行機を運転できるわけがないからな。
「まだ間に合わないと決まったわけじゃない。飛行機もまだ飛んでないってだけで、今日には飛ぶはずだしな」
「……うん」
どうにも駄目だな。りみからは一応慕われているわけだけど、俺じゃりみの不安を取り除き切ることができない。引っ込み思案なこの子にいつも光を当て続けていたのは他でもない。姉であるゆりだ。詳しくは知らないが、ずっとそうだったんだろう。りみがゆりを慕い、ゆりはりみの期待に応えるために努力してきた。二人の絆も信頼も強い。その代わりに俺がなれるわけがない。
「ライブ会場には行くんだろ?」
「行く」
「学校から直接……は、時間が余るのか」
「うん。だから帰ってきて着替えていくかな。レオ兄ちゃんは?」
「……俺はSPACEには行かない。ライブハウスの前までは送るから」
「……うん」
見るからに気を落としてるな。考えてみればりみと一緒にゆりのライブを見たことはないか。りみは一緒に見に行きたいんだろうが、俺はSPACEに入るわけにはいかない。オーナーから出禁をくらってるわけじゃないし、他の誰かに止められてるわけでもない。ただ、俺が行こうと思わないだけ。ちっぽけなプライドだ。
りみとの会話をここで区切って家を出る。途中までは道が一緒だから、それまでは学校の話をして歩く。話題を変えないとりみの気が沈んじゃうからな。それに、最近りみが知り合った子がどうやら面白い子らしいし。いろんな子に話しかけて、自分を偽らないで活発に行動する子。振り回されたら大変なんだろうが、気を許せる相手なら一緒にいて楽しいだろうな。
「この前はいろんな部活の体験してたんだっけ?」
「うん。でも今はバンドメンバー探してるみたい」
「バンドね。りみは参加しないのか?」
「私は……」
「りみに足りないのはあとちょっとの勇気だな。悩んでる時点で向き合えてはいるんだから」
りみがそれを聞いて目を見開く。どうやら逃げてるだけだと思っていたらしい。たしかにそういう見方だってできる。強い人、厳しい人からしたらりみの今の状態は逃げてるだけなんだろう。答えを出せていないのだから。
だが、それは初めからできる人間の意見だ。そうではない人間だって当然いる。りみもそうだ。そして、りみはバンドをするかで悩んでいる。一度その子には断ったらしいが、断っておいて悩んでいるのだから、本音は見えてるようなもの。
だからこそ足りないのが"あとちょっとの勇気"なんだ。引っ込み思案な自分を奮い立たせる心。それを得るきっかけがあればバンドを始めるだろう。
分かれ道に着いたためにりみと手を振って別れる。学校まではあと10分程度だな。周りにはチラホラ同じ制服を着ている男女がいる。うちの学校は始業時間が遅めだから、この時間でも早い方だ。俺が早めに出てるのは、単純に人が少ないからだ。途中で歩道が狭くなる所もあるし、大人数だと窮屈すぎる。
「……もしもし?」
修学旅行明けの学校ってやる気が出ないな、なんてことを考えていたら電話がかかってきた。携帯を持ってきてることが教師にバレたら面倒なのだが、この辺はまだバレない。
『あ、レオくん。飛行機の出発の目処がついたから連絡したんだけど……』
「その様子だとギリギリそうだな?」
『うん……。それで、もしものためなんだけど
──
「お前は知っててそれを言うんだな」
俺がなぜSPACEに行くことを避けているのか。観客として行くことさえ避けているのか。それを知らないゆりじゃない。オーナーから話を聞いているのだから。それなのにゆりはそんな頼みごとをしてきた。これにはさすがの俺も思うとこがある。だからつい声が低くなってしまった。
『ごめん。でもSPACEで演奏したいから。ライブを諦めたくないから! ……お願い……!』
「お前は本当に自分勝手な女だよ」
『わかってる。何言われてもいい。何でも言うこと聞くから!』
「馬鹿が。そう簡単に"何でも"なんて言うなよ。また間違えるぞ」
俺はそこで電話を切った。もうそろそろ教師たちの目が届く場所だから。電源を切ってカバンの中にしまいこむ。カバンの中までは探られることはないからこれで大丈夫だ。
〜〜〜〜〜
学校から帰る時に「やまぶきベーカリー」に寄って、私が大好きなチョココロネを買った。その時に香澄ちゃんたちに会ったんだけど、二人も今日のライブを見に行くみたい。私はレオ兄ちゃんと一緒にライブハウスまでは行くから、その後に二人と合流するつもり。
「それじゃありみ。ライブ終わったらまた連絡して」
「うん。……レオ兄ちゃんはやっぱり入らないの?」
「……ごめんな」
レオ兄ちゃんが視線を反らして謝る。珍しいことだけど、だからこそレオ兄ちゃんがそれだけ気にしてることがわかる。詳しくは聞いてないんだけど、いつもレオ兄ちゃんを引っ張るお姉ちゃんでもSPACEだけは遠慮してるから、私も強くは言えない。
お姉ちゃんたちのライブを見たくないわけじゃない。最近だと時間を作るようにして、お姉ちゃんたちの練習を手伝ってるみたいだし。
「ううん。私こそ我儘言ってごめんね。また連絡するね」
「……ああ」
無理に笑ってレオ兄ちゃんと別れる。私が演技できないのもバレバレみたいで苦笑いされちゃったけど、でも手を振り返してくれた。
SPACEの中に入って入場料をオーナーに支払う。オーナーにお姉ちゃんたちのことを聞かれて、順番が最後でも間に合うか怪しいってことを正直に答えた。嘘ついたり、願望を言ったりしてもオーナーや出演者のみんなに迷惑だから。
「一応他のバンドの子に時間を稼ぐようには頼むけど、それもやり過ぎるわけにはいかない。ライブ全体のバランスが悪くなるからね」
「……はい」
「……玲音の奴は今日も入ってこなかったか」
「入るわけにはいかないって言ってました」
「そうかい。ま、仕方ないね」
オーナーも事情を知ってるみたいで、気にかけてはいても踏み込まないようにしてる。その線引きはきっと私もできるようにならないといけないこと。大人になるのに必要なことの一つだと思うから。
オーナーとの話が終わったら中に進んで、先に来てた香澄ちゃんたちと合流する。香澄ちゃんはお姉ちゃんたちのバンドを見てキラキラドキドキを感じたんだって。キラキラドキドキが何かは分からないけど、ニュアンスでなんとなくだけど伝わってくるものもある。
「二人とも。ライブが始まるみたいだぞ」
「あれ? もうそんなに時間経ったの?」
香澄ちゃんと話してると体感時間が短くなるね。私もまだそんなに時間が経ってないって思ってたんだけど、結構話してたみたい。
お姉ちゃんたちが間に合うかは分からない。でも、私がそわそわしてちゃいけない。私から香澄ちゃん達に伝わっちゃったら、そこからさらにいろんな人に伝わっちゃうかもしれないから。お姉ちゃんたちのバンド「Glitter*Green」は人気があるから、それを知ったらガッカリする人が大勢いる。
私にできることは、お姉ちゃんたちが間に合うと信じて、今演奏してる人たちのライブを見て、周りの人と同じように楽しむこと。
でも、それにも限界がある。だって、お姉ちゃんたちの出番がまだかまだかと待つ人たちが増えるんだから。それは香澄ちゃんと有咲ちゃんも同じみたい。
「あれ? グリグリの出番遅くない?」
「何かトラブルでも起きてんのか?」
「りみりんは何か知ってる?」
「え、えっと……」
私が返答に困ってると、香澄ちゃんに質問攻めされたんだけど、有咲ちゃんが香澄ちゃんを止めてくれた。だけどそうすると今度は香澄ちゃんが控え室の方に行っちゃった。
私と有咲ちゃんは急いでその後を追いかけたんだけど、追いついた時には香澄ちゃんはオーナーと話をしていた。しかも、お姉ちゃんたちが間に合わないかもしれないってことを聞いちゃったみたい。
「他の子が頑張ってくれてはいるが、ずっとそうさせるわけにはいかない。ゆりたちが来るのが遅すぎたら、今日のライブでのGlitter*Greenの演奏はなしだ。そして、どんな事情があれライブができなかった場合、もう二度とSPACEでライブはさせない」
「そんな!」
「……なんとかしなくちゃ……!」
「おい香澄!」
香澄ちゃんは一人でステージに飛び出しちゃって、それを追いかけた有咲ちゃんもステージに飛び出しちゃった。さすがにもうステージに出ちゃった二人をオーナーも戻せないらしくて、ため息をついて二人の様子を見てた。香澄ちゃんは、一度深呼吸してから「きらきら星」を歌い始めて、有咲ちゃんもそれの巻き添えにあってた。
それでも私は凄いと思った。たとえ歌ってる曲が「きらきら星」でも、巻き添えにあったとしても、それでもあれだけの人の前で歌えるのだから。
「私には無理だよ」
「りみはそれでいいのか?」
「え?」
突然男の人に声をかけられて、私はバッと後ろに振り返った。そこには来ないと言っていたはずのレオ兄ちゃんが立っていて。両手に楽器を持ってた。一つは私がお姉ちゃんから譲ってもらったベース。もう一つは、私の知らないギター。
「……玲音。
「仕方ないさ。ゆりの馬鹿には後で文句を言う。だから婆さん。やり切るから俺がステージに立つ許可をくれ」
「ふん。
「ありがとう。……りみはどうする?」
レオ兄ちゃんは私にベースを渡しながら聞いてきた。ベースを渡したってことは、ステージに立てって言ってるようにも思えるけど、優しい目をしてるから本当に私次第みたい。私はベースをギュッて握りながら顔を伏せた。
「私は……」
──ずっと憧れてた
みんなの前で演奏できて、みんなを笑顔にできるお姉ちゃんに
──ずっと目標にしてる
いつか私もそういう人になりたいって。お姉ちゃんに追いつきたいって。
手も足も震える。さっき観客席にいたから分かる。人の多さが。あれだけの人の前で、今最高潮に盛り上がってる人たちの前で演奏するなんて。そんなの私にはできない。怖い。
「りみ。
「っ!」
「今りみの友達が二人で頑張ってくれてる。先に飛び出した子は一人でもできちゃう子なんだろうが、二人でやってるからこそあれだけ楽しそうにできるんだろう」
「香澄ちゃん……」
「一人ではできないことをみんなでやるんだ。それがバンドってもんだろ? りみは一人じゃない。あそこにいる友達と、今回だけだが俺と一緒に演奏しよう」
「レオ兄ちゃん……」
ずっと無理だと諦めてきてた。私にはどれだけ望んでも叶いっこないって。でも、レオ兄ちゃんが言うことだって間違ってない。お姉ちゃんも『みんなとやるともっと楽しいよ!』って言ってたから。お姉ちゃんでも一人じゃ厳しいのかもしれない。
だから……!
「いく。私……みんなと演奏する!」
「よく言った。ほら、行くぞ」
ギターを片手に笑うレオ兄ちゃんの手を取って私はステージへと歩いていく。歌ってた香澄ちゃんと有咲ちゃんもこっち気づいた。二人の視線がこっちに向いたから、お客さん達の視線もこっちに向く。それがちょっと怖くて、足が竦みそうになるけど、レオ兄ちゃんが隣りに居てくれるから私は香澄ちゃんの隣に行けた。
「りみりん……」
「私も、頑張るよ……!」
「っ! うん! そっちのお兄さんは?」
「今は自己紹介してる場合じゃないだろ。さっそくだが、この歌歌えるか?」
「はい! これも好きな歌です!」
「ならこれをやるぞ」
レオ兄ちゃんがスマホを操作してある曲を香澄ちゃんに見せた。香澄ちゃんは知ってるやつみたいで、有咲ちゃんも知ってる曲みたい。最後に私も見せてもらって、それが私も知ってるやつだって分かった。しかも、それは私が家でベースを触ってる時に弾く曲の一つ。
偶然ってわけじゃないんだよね。レオ兄ちゃんは私が練習してる曲だと知っててこれを香澄ちゃんと有咲ちゃんにも見せたんだ。
「グリグリの演奏前の前座だ。お前ら、あいつらが演奏する前にここの空気を白けさすなよ?」
レオ兄ちゃんがマイクを使ってお客さんたちにもう一度火をつけた。お姉ちゃんたちの人気を利用しての言葉。さっきまでの盛り上がりも把握しての言葉。レオ兄ちゃんはライブをしたことがないはずなのに、お客さんの心理を理解してる。
お客さんの盛り上がりを楽しんでるレオ兄ちゃんが私の方に視線を向ける。本当はキーボードもドラムも必要なんだけど、今はギターとベースしかない。リズムを作って全体を支えるのは私のベースの仕事。
プレッシャーが凄いけど、この曲はベースとギターが同時に弾き始めるから。だからレオ兄ちゃんもこっちに視線を向けてるんだ。香澄ちゃんも有咲ちゃんも見てる。でも、みんなの視線はプレッシャーにならなかった。背中を押されてるように思えた。
──大丈夫だよ!
言葉にせず、ただ一度だけ頷いた。三人もそれに頷き返してくれた。さっきまでマイクがある場所に行くために、香澄ちゃんの横に立っていたレオ兄ちゃんが、私の隣に来てくれる。言葉もなく、アイコンタクトもなかったけど、私達は同時に弾き始めることができた。
レオ兄ちゃんの演奏は凄かった。ペースを保っているのに、演奏が引っ張られる。胸が熱くなって、気になってたお客さんの視線も全然気にならなくなる。そこに香澄ちゃんと有咲ちゃんの歌声も乗って、私達はこの一曲を無事に最後までやり切ることができた。お客さんも盛り上がってくれて、成功したことがわかる。
「いい演奏を聞かせてもらったよ」
「ぁ……お姉ちゃん!」
「ただいまりみ。レオくんもありがとう。それと……ごめんね」
「それは後でいい。今はやることがあるだろ」
「……うん。SPACE! 遊ぶ準備はできてますか?」
お姉ちゃんたちの決まり文句。それに答えるようにお客さんたちから歓声が上がる。やっぱりお姉ちゃんたちはすごいバンドなんだ。当たり前だけど、私よりずっとずっと遠いとこに立ってる。
「ねぇ、レオくん」
「どした?」
「君と歌いたい曲があるんだけど、いいかな?」
「……何歌う気だよ」
「"
「っ! ……調べたか」
『明星』。たしかお姉ちゃんがレオ兄ちゃんに一回だけ歌ってもらって、その時に初めて知った曲。それ以降お姉ちゃんはその曲が好きで、グリグリでも練習してたんだよね。
でも、レオ兄ちゃんが一回だけ披露したってことから分かるように、レオ兄ちゃんにとって特別な曲。大切な曲。もう一つの曲はお姉ちゃんが練習してるのでしか聞いたことがない。だけど、これはレオ兄ちゃんも教えてなかったやつ。きっと一番この曲が好きなんだ。
「……俺が拒む権利なんてない。歌いたいなら歌え」
「うん」
楽譜や歌詞が書かれてる紙をお姉ちゃんたちが取り出した。香澄ちゃんと有咲ちゃんと私が曲を知らないから。私はリィちゃんと一緒にベースを弾く。香澄ちゃんと有咲ちゃんが一緒に歌詞カードを見て歌う。お姉ちゃんとレオ兄ちゃんが一緒にギターボーカルをする。
「呑まれるなよ?」
「レオくんこそ聞き惚れないでね?」
ひなちゃんがスティックでカウントを取り始める。私はリィちゃんのベースについていくことに必死になるけど、でもすごく楽しめてる。明星は激しくする曲じゃない。だからお客さんたちも聴き入ってる。そんな中で目を引くのは、やっぱり真ん中でギターボーカルしてるお姉ちゃんとレオ兄ちゃんだった。
曲を壊さないように、大切に。でもそれぞれの個性を出してる。二人とも引っ張るような演奏なのに、ちょっと違う。若干レオ兄ちゃんの方が強引というか、熱い感じ。
間奏に入ると、お姉ちゃんとレオ兄ちゃんは同時に左右へと体の向きを変えて背中を合わせる。打ち合わせなんてしてない。合図なんて一切ない。だけど、二人とも同時に動いて全く同じ動作をした。きっとこの二人だからできること。
Emotional Daybreakの時にはレオ兄ちゃんはギターをどけて、片手をお姉ちゃんの肩に回して引き寄せた。反対の手で握ってるマイクを二人の間に持っていく。一つのマイクに二人の歌声が注がれて、それがライブハウスに響き渡る。この二人は間違いなくこの場で一番輝いてて、みんなを引き付けてる。この瞬間は間違いなく二人は同じ景色を見られてる。
この二人は早く付き合っちゃえばいいのにね。
でも
──この光景はもう見られないのかな……
これ最終回でいいんじゃね? って書き終わったときに思いましたね。(最終回じゃないですよ)
完結まで書ききってます。更新予約してますので、時間が来たら勝手に更新されます。どのタイミングで来るのか、お楽しみに!
もし作者が書く気が出た場合
-
海外編(単発デート)
-
グリグリ全員との絡み
-
陽だまりをくれる人とのリンク回
-
結婚式