ゆりさんの誕生日っていつなんでしょうね? 公式が決めてくれないと困りますね。まぁでも、ポピパ結成後で夏休み前でグリグリメンバーが受験勉強始める前と考えたら、わりと妥当な時期かなと思ってみたり。
中身は一年生編ですが、最後は完結後の時間軸になります。
あと、アンケートとは関係のない内容です。
牛込ゆり誕生日回
いつも通りバイトを詰め込んで働く。ギリギリの生活をしているのだから、働ける時に働いておかないと生活していけない。社員や先輩たちには心配されるが、事情も知っているからそこまで言われない。差し入れだったりご飯を奢ってもらったりと、申し訳なさとありがたさを同時に感じる手段でサポートしてもらってるけどな。
よくサポートしてくれる人の一人であり、このバイトのムードメーカーである先輩がニヤつきながら肩に腕を回してくる。上機嫌なようでその勢いが無駄に良くて体がぐらつく。
「レ〜オト! ちゃんと準備したのか〜?」
「作業中にちょっかいかけないでくださいよ……。てか準備って何の話ですか? この後予定ありましたっけ?」
「明日と明後日を一日中働く人間を連れ回すほど俺は鬼畜じゃないぞ? そうじゃなくて、今日が
「……なんで知ってるんですか」
「ひなこちゃんから聞いた!」
二十騎のやつ、よりによってこの人に話したのか。そこはもちろんあいつの自由だし、俺がどうこう言う立場でもないけどさ。この人に話した理由は、おそらく俺の逃げ道を塞ぐためとか、そんな理由なんだろうな。この先輩がこの手の話を聞いたら、俺の方に言及しないわけがない。
簡単な清掃作業と食材の補充をしながら先輩を横目にため息をつく。こんな対応は失礼なんだが、俺の性格を分かってくれているし、この人はこういうのを流してくれる。そこに甘えていては、この先が思いやられるのも分かってるんだけどな。なかなか変えられない。
自分から話を振らない俺の肩を叩いて先輩が離れた。相変わらずニヤついてるけど、揶揄ってるだけでその答えは真剣に知りたいんだろうな。
「プレゼントは用意してるのか?」
「なんでそこまでグイグイ来るんですか……」
「恋のキューピッド役って楽しくない?」
「それ先輩がやったら亀裂入れるだけでしょ」
「失礼なやつだな!?」
もちろん冗談ではあるんだけど、先輩はリアクションが面白いからつい揶揄い返してしまう。先輩ではあるんだけど、気持ちとしては友人。そんな感じがするんだよな。器が大きいってのはこの人みたいなことを言うのだろうか。……たぶん違うな。
「で、プレゼントは?」
「……はぁ。二十騎がしつこいんでちゃんと用意しましたよ。大して絡みもない奴へのプレゼントなんて、ハードルが高過ぎますけどね」
「はっはっは! それはたしかにな! でもま、それでも用意してるあたり、お前の人の良さが出てるよ」
「……そんなものないですよ」
「照れやがって〜。可愛い後輩だな!」
「照れてません! その腹立つ笑顔もやめてください!」
この人揶揄ってんな。俺がさっきやったことを実は根に持ってたのか。違和感なく自然な流れで揶揄ってきたぞ。しかも俺が本気では嫌がらない程度で。
これも話術の一つってことなのか。この人の相手をするの疲れるんだけど、嫌な疲れじゃない。純粋に楽しかったと思えるような疲れだ。
「ま、なんにしてもちゃんと渡してやれよ。今日が終わっちゃ意味ないし」
「分かってますって」
「それならよし! じゃ、玲音はあがりな」
「は?」
「渡して終わりってわけにはいかないだろ」
物凄い呆れ顔されたんだが、渡して終わりじゃ駄目なのだろうか。俺と牛込の関係なんてただの知り合いなのに。一応サポーターであるってだけで、実際には何もしていない。ほんのたまに練習を見に行くぐらいだ。強制連行の時もあるけど、それはほとんどないし。
そんな思考を読まれたようで、先輩は珍しく目を鋭くした。彼女持ちの人間からしたら、異性に対してのプレゼントでこれは見逃せないらしい。
「プレゼントってのは貰えると嬉しいだろ?」
「まぁ、嫌いな奴相手でなければ」
「そうだな。んで、あの子は明らかに玲音を好いてる」
「そこは断固として否定します」
「そんなにかよ……。とりあえず、Loveかどうかは置いといて、少なくともLikeではある。じゃないとそれだけコンタクト取ろうとしないだろ?」
否定する要素が見当たらない。この人はほとんど俺と牛込の絡みを知らないくせに、なんで当ててくるんだよ。監視でもされてたのかってぐらい怖いんだけど。監視されてるのは先輩の方なのに。あの彼女さん行動力半端ないし。
俺が押し黙っていると、先輩は作業をしている手を止めて体ごとこっちに向いてきた。作業を中断してでも話すほど重要なことのようだ。
「そんな玲音相手からサプライズプレゼントになるのが今回だ」
「まぁ、そうなりますね」
「それなのに渡して終わり、なんてなるわけがない。あの子なら玲音と話をしたがる。それに大人しく付き合え。本人の誕生日なわけだしな。……誕生日じゃなくても贈り物をする日は、本人に合わせるといいぞ」
「最後に遠い目するのやめてくれません? ご愁傷さまですとしか言えませんよ」
一番最後のだけは先輩の経験談だな。でも参考にはできるだろう。俺みたいな人間に彼女なんてできるわけがないし、そもそも作る気もないけども。俺がやってる人生設計は単独だし、相手をこの道に巻き込むのは嫌だからな。
その後は、黄昏れるのが終わった先輩に追い出されるように退勤させられ、俺は更衣室に押し込まれた。タイムカードはまだ切ってないんだが、そこはサービスで最後までつけてくれるらしい。給料泥棒になってしまうが、ありがたく貰っとくとしよう。
「プレゼント取りに家に戻らないとな……。まぁ隣だから近いんだが」
〜〜〜〜
「お姉ちゃん。今日はみんなにお祝いしてもらえてよかったね!」
「うん。りみもありがとう」
「私は何もしてないよ」
「そんなことないよ。一緒に祝ってくれたもん。だから、ありがとう」
部屋でりみをハグしながらお礼を言う。家族だからってお祝いの仕方じゃない。りみもお父さんもお母さんも、毎年毎年盛大に祝ってくれる。だから私もみんなの誕生日の時はそうしてるんだけどね。たぶんお互いにこうするから、毎年凄いことになる。
それに加えて、今回はGlitter*Greenのみんなも一緒に祝ってくれた。りみが声をかけて呼んでくれた。これだけでもりみは十分功労者だよ。ひなとリィは普段から手がつけられないことになるけど、その分こういう時の活力が凄まじい。盛り上げ役に向いてる。七も真面目そうに見えて、こういう時は全力で楽しむタイプ。
……彼はどうなんだろう
ふと脳裏を過ぎるあの捻くれ者の姿。呼んでも来ないだろう人物。高校になって初めてできた男の子の友達。彼はそうとは思ってくれてなさそうだけど。
彼の生活を考えたら仕方ないんだけどね。よっぽどの理由じゃないとその邪魔をできない。でも、彼にも祝ってもらえたらな、なんて都合のいいことを考えちゃう。
「お姉ちゃん?」
腕の中にいるりみが不思議そうに首を傾げる。私が彼のことを考えて、意識が逸れていたことに気づいたみたい。何でもないよと返事をして、誤魔化すように髪を撫でてからりみを離す。時間はまだ少し早いし、せっかくの誕生日なんだけど、早めに寝てもいいかもしれない。
「あれ? お姉ちゃんのスマホ通知来てるよ?」
「あ、ほんとだ。全然気づかなかったや」
机の上に置いてあるスマホを手に取る。ロックを解除してメッセージアプリを開くと、その一番上に
煩い鼓動が抑えられない。トーク画面を開くためにタップする指が震える。画面を押せそうで押せない。内容を見ないといけないのにそれが怖い。嫌がる彼をサポーターにしたのは私。我慢の限界とか言われたら引かないといけない。繋ぎ止めるのと首輪を嵌めるのとでは違うから。
「ぁ……」
指が震えてることで画面に当たった。当たってしまった。
トーク画面が開かれてメッセージの内容が目に入る。
『マンションの下に来い』
たった一言。ただこれだけの内容。頼みでもなく命令形。理由が分からなくてさらに混乱する。だけど言われたなら下りないといけない。彼のことだからどうせもう来てる。用件は直接じゃないと言ってくれない。
指の震えはまだ収まらない。心なしかさっきよりも震えてる気がする。止められないその震えを誤魔化すために、私はすぐに行動に移すことにした。
「りみ。ちょっと下に行ってくるね」
「へ?」
「彼が来てるみたいだから」
「彼? ……あ、萩近さん。お父さんたちには誤魔化しとくね」
「ありがとう」
彼はわざとお父さんとお母さんに嫌われるように動いた。私との繋がりを切れるように。結局は今の状態になってるんだけど、お父さんとお母さんは彼のことをよく思ってないまま。りみはそうでもないみたいで、私の味方をしてくれてる。
そんなりみがフォローしてくれると言ってくれて、私はお礼を言ってから上着を羽織ってすぐに家を出た。部屋着姿で上着を1枚羽織っただけ。履いてるのは靴じゃなくてサンダル。こんな格好で行ったらまた小言を言われそうだけど、今回は彼が悪い。いきなり呼び出してきたんだもん。
「来るなら先に言ってよね」
自動ドアを通って外に出た私は、柱を背もたれにして目を瞑ってる彼にそう言った。私が来たことに気づいた彼は、目を開けて眠たそうに顔だけをこっちに向けた。疲れてるなら後日でもいいし、まずバイトを減らして休んだらいいのに。彼だって体を壊したら元も子もないって分かってるはず。
「思ったより早かったな」
「いきなりあんな文面が来たらね。君疲れてるでしょ? ちゃんと休んでよ」
「お前には関係ないことだろ。……用件はあるけどさ」
「その用件って? 早く済ませられるならそうしよ。君の体調に響かせたくないし」
「そんなヤワじゃねぇよ」
相変わらず捻くれてる。こっちは純粋に心配してるのに、それを素直に受け取ってくれない。分かってきたことではあるけど、ムッてなるものはなる。
あくびをする彼をジト目で見るけど、特に効果もない。眠たげな表情から普段の表情に戻った彼は、その後すぐに嫌そうな表情になった。10秒以内に三つも見せるなんて珍しい。なんて的外れなことを考えつつ、いったい何をしに来たのか頭を悩ませる。
そんな私のことなんて気にせず、彼は彼のペースで話しかけてくる。予想していたことを。
「なんて格好で来てんだよ」
「これも君のせいだよ。こんな時間なんだしさ」
「それもそうか」
少なくとも私が不安に思った
「時間かけてもしゃーないか。お前の親に俺は嫌われてるし、こんな時間に娘が外にいるってのも思うとこあるだろ」
「全部君のせいだけどね」
「今回の場合で言うと二十騎と先輩のせいだけどな」
「え?」
なんでここでその二人のことを言うんだろ。ひなは彼と繋がりがあるけど、先輩さんとはそこまで繋がりがないはず。どうにもそこが結びつかない。
驚いてる私をよそに彼は小さな袋を突き出してきた。ぶっきらぼうに突き出されたけど、そこに苦言を呈する余裕が私にはなかった。それが目に入ったと同時にひなたちに帰る前に言われたことを思い出したから。
『ゆりちゃん今日はまだ終わらないぜ〜?』
『誕生日は23時59分までだからな! デベ子はプレゼント対象外だけど』
『ふふっ、二人ともそのへんで。ゆり、
「……固まってないで受け取ってくんね?」
「あ、ご、ごめん。……え、これ……」
袋を持ってる腕を突き出したままの彼が、嫌そうな顔で言ってくる。私は慌ててそれを両手で包んで受け取った。今日贈り物をされるってことはそうなんだろうけど、普段の彼からは考えられなくて確証が持てないでいる。そんな私に確証を持たせたのは、当然彼の言葉。
「誕プレだよ誕プレ。渡さなかったら強制的にバイト減らされるからな。二十騎が先輩経由で社員に交渉したせいで。社員もそれに乗っちゃったし──」
顔を逸らして愚痴を溢してるみたいだけど、私はその言葉が耳に入らなかった。最初に言われた『誕プレ』という単語。それを聞いた途端、混乱していた思考が停止したから。
手元にある袋の中身を覗き込む。わざわざプレゼント用に梱包されてる箱。中身が何なのかさっぱり分からない。エメラルドグリーンの包装紙を、白と青のリボンが括ってる。ワンポイントの装飾品には『Happy Birthday』の文字が刻まれてる。
パッと視線を上げたら、やっぱり嫌そうな、でもどこか照れ臭そうな彼がいて、開けていいか聞いてみた。不器用で捻くれてる人。たいていこういうのは「開けていいよ」とか言うだろうに──
「お前のやつなんだから好きにしろよ」
なんて言うんだから。
でも今はプレゼントを貰えたことが嬉しくて、袋からその箱を取り出す。袋は一旦彼に持ってもらって、リボンを解く。包装紙はリボンだけじゃなくてテープでも止められてて、私はそれを慎重に剥がす。こういうのは包装紙が破けるのも嫌なの。
包まれていたのは碧い箱。宝箱を開けるような気持ちになる。そんなはやる気持ちを抑えて箱をゆっくりと開ける。
「……きれい……」
箱に入っていたのは金色のブローチ。少し小さい花のブローチだけど、きっとこういうものなんだろうね。たしかモチーフにも意味があるんだっけな。七菜が詳しそうだし、今日のうちにメッセージでも飛ばしてようかな。
「微妙なセンスで悪かったな」
「全然そんなことないよ! すっごく嬉しい!」
「……ならいいや」
頭をブンブン振りながら彼の言葉を否定して、すぐさま気持ちを正直に伝える。何だかんだで彼も緊張してたのかな。表情が柔らかくなってる。それに気づいたら自然と私の頬も緩んじゃって、少し吹き出しちゃった。
「なんだよ」
「ううん。君も可愛いところあるんだな〜って」
「はぁ!? マジで病院行ってこいよ!」
「行きませ〜ん。私は正常だもん」
「こいつ……!」
不機嫌になる彼に反比例して、私は機嫌がよくなっていく。プレゼントを貰えたってだけで私としては十二分に嬉しいのだけど、彼を少しでも揶揄えるのも楽しい。いつも翻弄されるのは私だからね。
「? あれ?」
もう一度箱の中に視線を戻したら、ブローチとは別に紐も入ってることに気づいた。ブローチとしても扱えるし、紐を通せばネックレスにもできるみたい。いや、よく見たらピンもついてないから、これブローチってわけでもないんだね。自由度が高そうなアクセサリー。私次第で何通りかの使い方ができるってことかな。
今はとりあえず──
「ねぇ」
「……なんだよ」
「私に付けてくれる?」
「やだ」
「先輩さんに断られたって言うね」
「おまっ……! ……ちっ、付けたらいいんだろ付けたら!」
ぶっきらぼうに突き出された彼の左手に、花のブローチもといアクセサリーを渡して、箱に入ってた紐も渡す。それを受け取った彼は、難なくアクセサリーに紐を通した。彼女ができたことないはずなのに、なんで女性ものの扱いが上手なんだろ。
ネックレスとしてつけてもらうために、彼に背を向けて髪を上げる。後ろから手が伸びてきて、ネックレスが視界に入る。それも束の間、すぐに視界から外れて後ろで彼が紐を繋げてくれる。それが終わったら彼の手からネックレスが離れて、私の胸の前に花のアクセサリーが止まる。
それを見届けたら上げていた髪も戻したんだけど、そこで反撃された。前に回らず、私が振り向くのも待たず、彼は私の首周りに腕を回して私を引き寄せる。肩越しに顔を出して、チラッと下を見た。
「よく似合ってるよ
「っ!! ぁ……ありがと」
こんなことを耳元で囁かれたら心臓に悪過ぎる。跳ね上がってまた鼓動が煩くなる。今回はさらに頬まで熱くなってきた。そのせいでお礼を言うのも詰まったし、声も小さくなった。それもこれも彼のせいだね。
だから
お返ししなくちゃね
「んじゃ俺帰るから」
離れて颯爽と帰っていこうとする彼を追いかけてその手を掴む。止まって振り返ってくれた瞬間、その胸に飛び込んで体重を預ける。彼は優しいから私が倒れないように支えてくれる。必然的に距離は零。
「……いきなり何すんだよ」
「ねぇ、もう少しいいかな?」
「なにが」
「もう少し……君といたいな」
「っ!?」
「少しだけ──このままでいさせて」
視線は上げずに、彼の胸に手を添え、額を押し付けたまま我儘を言う。
頬が熱くなってくるのが分かる。胸が締め付けられて、心臓がバクバクになる。彼に聞こえちゃうんじゃないかって。伝わっちゃうんじゃないかって。
それは嫌なんだけど、胸の真ん中には温かいものが篭ってる。これが何かは分からない。
苦しい感じもする。
だけど
それ以上に心地良い。
彼の体調に悪影響が出ないように、なんて言っておきながらこんなことを言うなんて、我ながら無茶苦茶だと思う。だけど、彼はそんな我儘を許してくれて、黙って腕を回してくれた。
そのことに安心感を覚えて、自然と緩やかに肩の力が抜けていく。添えていた手を彼の背に回す。彼の温度に包まれて、私の温度で包む。りみとはやっぱり違う。彼とこうするとなんだか──
『花のモチーフの意味は"幸せ"や"美"よ』
翌朝、七菜から送られたメッセージにはそう書かれていた。
〜〜〜〜〜
「なんてことがあったよね〜」
ソファに座って彼から貰った金色のアクセサリーを手のひらに乗せ、当時のことを思い返しながら呟く。ずっと大切にしていて、手入れだって欠かしたことがない。私がアクセサリーを眺めているのに気づいたレオくんが、こっちに近づきながら声をかけてくる。
「ん? まだ持ってたのか」
「当然だよ! レオくんが始めてくれたプレゼントだもん! ライブの時にもつけてるんだから」
「まじか……」
失礼なことを言うレオくんに軽く怒るけど、それをサラッと流されちゃう。本気で怒ってるわけじゃないし、レオくんのあの言い方の本当の意味も分かってるからね。本当に捻くれてて素直じゃない人。今表情が少し柔らかくなったのこっちは気づいてるんだからね。
「あ、そうだレオくん」
ちょうどいい機会だし、前々から聞こうと思って忘れていたことを今聞くことにしよう。私の横に座って小首を傾げるレオくんに、確認のための質問をする。
「お店の人に選んでもらった、とかじゃないんだよね?」
「そうだな。自分で選んだ」
まず大前提として聞きたかったことはこれで聞けた。レオくんが選んでくれたって分かっただけで胸がいっぱいなんだけど、もう一つ確かめたいことがある。
「じゃあ次の質問。これってひまわりだよね?」
「んー、まぁそうだな。小輪だったかな」
「ふーん。そっかそっか」
「なんだよ」
「なんでもないよ〜」
絶対何かあるだろって不貞腐れるレオくんに抱きつく。レオくんが自分で小輪を選んでくれたってことが本当に嬉しい。ここでダメ押しというか、トドメを指すためにレオくんにネタバレをしちゃう。
「花言葉は分かってるんでしょ?」
「花言葉……? 小輪のだと『高貴』じゃなかったか?」
「誤魔化すの下手になったね〜。
「もう一つっていうと…………ぁ……いや、待てゆり! これを買った時はだな!」
「私はそういうことだと思っとくね」
騒ぐレオくんを黙らせるためにその口を私の口で塞ぐ。こうされたらレオくんも大人しくするしかないからね。
本人は否定しちゃうけど、でも私は構わない。だってもう受け取ってるんだから。解釈の仕方なんて私次第だもん。それに今はレオくんがこうして側にいてくれるから。
そっと口を離すと、レオくんにジト目で見られる。それに対して私はニコニコと笑顔で返す。言いたいことがあるみたいだけど、今日は私の誕生日だから私のペースに嵌ってくれる。それに甘えてこっちも遠慮はしない。
「今はもう一つの方なんでしょ?」
「……そうだな」
「えへへ、私もだよ、レオくん。……ずっと一緒にいてね? 私……もう
「あぁ。俺も嫌だからな。もう二度とゆりと離れないよ」
レオくんの瞳が力強くなる。決意の篭った瞳で、私はそれの虜になる。優しい引力に逆らうことなくレオと距離を縮め、もう一度唇を重ね合う。今度はさっきよりも熱く、深く。お互いの存在を確かめ合うように。
私にレオくんの想いが注がれる。私もレオくんに想いを注ぐ。
右手をそっと彼の頬に添える。その手の指に収まっているのは、
──お互いの気持ちを言の葉を紡がずに伝え合う
レオくんがくれた小輪の花言葉も、アクセサリーとしての花の意味も、どっちも──
アンケートは締め切りました。内容は結婚式ということで、書くのは気が向いた時です。
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