「あいさつ?」
そんな言葉が部室内で消えていった。
先日のライザー・フェニックスによるリアス・グレモリー婚約騒動が一件落着して、すぐのことであった。
「どこにですか?」
「町長よ」
「どこの」
「この町に決まってるじゃない」
いたのか町長、とイッセーは心の中で思う。
生まれた頃から住んでいるが、その存在に気づくことはまったく無かった。
隣に並ぶアーシア・アルジェントは手を挙げた。
「あの、どんな方なんですか?」
そんなアーシアの質問にイッセーは考える。
悪魔に転生してから数日。
アーシアの
そこでイッセーは一つの結論に辿り着いた。
――今までの流れからして絶対にろくな事にならない気がする……!
と、一人で勝手にビビり始める。
「んー、ドジっぽい?」
「なんですか?その可愛い感じ」
「あとツンデレって言うのかしら」
「ツンデレ!?てことは女の子!!」
イッセーはその完全にお花畑な脳内で巨乳のできるお姉さん系の美女を思い浮かべた。
「え、えへへ」
「イッセーさん!戻ってきてください!」
「え、あ、ごめん」
相変わらずの反応に、リアスは額に手を当て呆れてため息を一つ零した。
「そう言えば、なんで俺とアーシアだけなんですか?木場とか小猫ちゃんとかは」
「もうとっくの昔にしてるわよ、貴方達は新しい下僕、そしてオカルト研究部の新人だから、報告を含めて挨拶しに行くのよ」
そう言ってイッセーとアーシア率いるリアス・グレモリーはイッセーが転移魔法を使えないということで若干面倒くさそうにしながらも徒歩で行くこととなった。
♂♀
「……宝々蘭?」
辿り着いた場所は何処にでもありそうな中華料理店だった。中からは芳ばしい匂いが漂ってくる。
「えーと、なんで中華料理店なんですか?」
「お、おいしそうな匂いがします」
「えぇ、この時間帯ならここにいるはずよ」
――中華料理が好きなのかな?
イッセーはツンデレ、大人のお姉さんという勝手な想像をして、勝手に期待し始めていた。
三人は扉を開けて中へと入る。
中の内装は厨房とカウンター、そして何個かのテーブルと椅子というどこにでもある中華料理店という感じだった。
「いらっしゃい。てアレ、リアスさん?」
「あら鈴、久しぶりね」
店員だろうか。
ピンク色の服に胸元にワッペンを付けた少女がいた。彼女の名前は
この店の看板娘だ。
「町長いるかしら」
「あぁ、それならそこに」
鈴が指を指した先にいたのはマフラーを首に巻いた綺麗な少女だった。少女はラーメンを食べるのに夢中になっているのか、こちらを見向きもせずに食事し続けている。
「久しぶりね、ヒメ」
「ん?ふぉふぁ!!ひあす!」
少女は一気に麺を啜り、そしてスープを飲み干して手を合わせて席から立つ。
「久しぶり、コッチに来たってことは新人でも入部した?」
「えぇ、ちょうど二人いるわ」
リアスは後ろへ視線を向ける。
ヒメと呼ばれた少女はチラリと視線を後ろへ向けた。
「貴方達が新人?あたしは
「よ、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
イッセーとアーシアは差し伸べられた手を握り、握手をする。その数秒後。
「「……ちょ、町長ぉぉお!!??」」
中華料理店宝々蘭。
その空間に二人の驚愕の声が轟いた。