かつて、世界の始まりと終わりを“何度も”見届けた原初の神様は、何の気まぐれか、己の命を半分使い男女の子供を創りました。二人に1つの“世界”を与えた神様は、二人に与えた世界に手を翳し、世界を瞬く間に成長させました。星が生まれ、光と闇が生まれ、生命が産まれました。それを見届けた後、神様は二人に向けこう言いました。
「この世界を導き、我を驚かせてみせろ」
それを聞いた男女はまず、神様を模倣し、高位の生命体を創り、それらに役職を与えました。その生命体を総じて“神”と名付け、また個別に名前を与えました。数千年後、紆余曲折を経てやっと世界が安定してきた時、ついに“新しい可能性”が生まれました。男女はまるで、自分達の複製のような生命の誕生を互いに喜び、称えあいました。その生命体を“人”と名付けた男女はすぐさま原初の神に自慢げに見せに行きました。
しかし、原初の神は表情一つ変えずこう述べました。
「ならば、その可能性をお前らはどう導く」
男は意気揚々とこう答えました。
「神々と共に、人を育て、力の世を創ります」
女は意気軒昂としてこう答えました。
「神々と共に、人を信じ、知恵の世を創ります」
二人の答えに原初の神はクツクツと喉をならし嗤うと、再び世界に手を翳しました。するとなんと世界が2つ別たれたのです。神は男女に1つ世界ずつを与えると、それぞれの世界に“祝福”を与えました。男の世界には“力”があたえられ、すべての生命は生きるためにその力を惜しみ無くふるうようになり、世界はモンスターで溢れてしまいました。女の世界には“知恵”が与えられ、すべての生命は生きるためにその知恵を振り絞り、役立てるようになり、やがて行きすぎた知恵に人は人と争い始めてしまいました。男女が自分の世界を眺めていると、神は男女に告げました。
「より高位に導けた世界を我は認めよう」
そうして、二人は互いに敵視しあい、時に互いの世界を自慢しあい、時に喧嘩をし、切磋琢磨して行きました。
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「失礼します。大佐、またその絵本読んでるんですか?」
薄緑色の髪を揺らし部屋に入ってきたのは、黒で統一された戦闘服。
「あぁ、どうにも、この話が胡散臭くてな」
「その絵本がですか?」
「そうだ。どうも、この本続きがあるような気がしてな。仮に俺達が知恵の世界の人だとしたら、戦争が終わった今、この世界はどうなるんだ。とか他愛もない事を考えてみてたところだ。ところで呼び出されていたみたいだが、なんだったんだ?」
「そうでした、大佐。“流れ”がまた出ました」
リューが若干慌てるように報告すると、大佐は大きくため息を吐いた。ヨッコラセと叔父臭い言葉を発しながら立ち上がり、クローゼットに近づいて行く。
「また“流れ”か。戦争が終わったと思えば、今度は変な術使ってくる奴等の相手。老体をどこまでこき使えば、上層部は気がすむのかねぇ」
大佐はそう悪態つきながらも、クローゼットから、一着の真っ白な
「そもそも、お前の所の部隊はどうした?“流れ”程度ならお前らで十分対抗可能だろう」
「そうなんですが、その。“中将”からの命令で……《お前ほどの戦力を遊ばせている暇はない》だそうです」
「はぁ……またリヴェリアさんか。全くあの人も昔から変わらないな」
大佐は着替えが終わると、クローゼットの下の方にあるアタッシュケースを開き、70cmほどの銀に輝く棒と、銃身が銀にペイントされた全長40cmはある大型の
「じゃあいくか。
【銀閃】ことベル・クラネル大佐。10代の頃から憲兵として、戦争に参加、その功績は数知れず、御年60歳にしていまだ現役の“英雄”である。その圧倒的な戦闘センスと
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「あいつか、偉く大胆な奴だな」
時は進み。ベルが
(殺れ)
次の瞬間、まるで雷が落ちた様な轟音が鳴り響いた。その轟音が鳴るとほぼ同時に
「おいおい、嘘だろ」
あり得る話だろうか、男はその扱うには長すぎる刀で、超高速で放たれた弾丸を斬った。そう斬ったのである。それをみたベルは急いで
「
了解という言葉を確認したベルは、一度深呼吸すると、意識を切り替え、“演算”を開始する。脳が熱くなるのを感じ、視界が広がり、周囲の時間が遅くなった様な錯覚を覚える。
「
指示を出すと同時にベルはとても人間とは思えない速さで走り出し、右手の袖から棒を取り出すと、
「ずいぶん遅い剣筋だな、欠伸が出そうだ」
「ぬかせ
侍が神速とも呼べる、圧倒的な速さと、大木で押し潰されるような、まさしく人外の膂力でベルに斬りかかる。しかしベルは落ち着いて両刃光剣を、その刀に向けて振り抜いた。圧倒的な光熱に融かされる侍の刀はその斬擊を容易く通過させ、一瞬反応が遅れた侍の隙をつき、体に這わせるように回した両刃光剣のもう一方で侍の刀を根本から斬り壊し、左腕を斬り落とした。光熱により傷口は焼かれ、最早ベルにはお馴染みの、ジュッという嫌な音と肉の焼ける臭いが後に残った。侍は痛みのあまり叫んだ。
「アガァアアアアアアア」
「やはりだ、貴様ら、“流れ”は体に頭が付いていけてない。まるで素人が達人の体を使ってるような様だな。どうやらオレの妄想が真実になりそうだ」
「くっ……【―――
侍が魔法を詠唱すると、さっき壊した筈の刀が現れ侍の右手に握られる。が詠唱に気を取られた侍が前を向くと、ベルは消えていた。
「どこいっ「ここだ」た………ゴフッ………」
ベルは侍の後ろに現れると、背中から胸にかけて、電光剣を突き刺した。光熱に体を内側から焼かれた侍は、口から血を吐き出した。しかし
「舐めるなぁああああ!!!!」
侍は体を光剣を気にせず反転させると、全力で刀を叩き下ろそうと上段に構えた。
「こっちの台詞だ、坊主。《殺れ》」
しかし、侍の体は刀を振り下ろす前に、轟音と共に飛来した無数の弾丸に無数の風穴を開けられ、血反吐を吐いて倒れた。それを確認したベルはフゥと息を吐くと、インカムを触る。
「
しかしその報告は、突如ベルの横に高速で飛んできて地面に突き刺さり、爆発を起こした剣の爆風に掻き消された。完全に油断していたベルはその余波をまともにくらい、吹き飛び転げた。地面でまともに背中を強打し思わず肺の空気が抜けきる。ベルは咳き込みながら、剣の飛んできた方をみると、少し太った男が腹立つポーズで手を天に向け。なにやら喋っていた。
「【
「二人目だと?今日は運が悪…………」
ベルは言葉を失った。先程の剣を放出したであろう、金の波紋がこれでもかというほど空中に浮いていた。その数は100を越え200までたどり着くかもしれない。圧倒的な戦力差を痛感したベルは、覚悟を決め迅速に“ある指示”を本部に出す。
「《こちら、ベル・クラネル。プランEを発動》。俺が時間を稼ぐ、お前らは撤退しろ」
《駄目です!大佐!撤退すべきだ》
その指示を聞いた。リューが声を荒げる。
「上官命令だ。リュー中尉。撤退しろ。俺が止める」
《クッ……了解です……必ず帰ってきてください》
リューの通信が切れると暫くしてオペレーターの声が響く。
《リュー中尉の部隊、作戦領域から離脱しました。プランE、到着まで約1分です。》
「シル。悪いがリューに謝っておいてくれ」
《……わかりました。御武運を》
プツンと通信が切れた音がする。それを聞いた俺は体が軽くなった気がした。思えば他人の命を背負ってばかりの人生だった。最後くらい自分の為にこの体を使っても誰も文句は言えないだろう。ベルはニヤッと笑うと、隠しもっていた薬品の入った注射針を3本首に突き刺す。体が熱くなり、脳に激痛がはしり、体からグチグチと嫌な音がなる。
「行くぞッ」
ベルが男に向け、音速に届く速さで疾走を始めた。
「笑止!!」
金の波紋から数多の武器が放たれる。ベルは両刃光剣を体の周りで振り回し凌いでいく。飛来した剣を叩ききり、そのまま遠心力で回転、次々くる武器を斬り落とし、凌ぎきれなかった武器が自身の体に傷をつけるのを全く気にせず最速で駆ける。剣が頬を裂き槍が横腹を裂いた。しかしベルは止まらない。
「なら、これでどうだ!雑種!!」
突如、ベルの背後に金の波紋が現れ、前後から同時に発射された。それを確認したベルは落ち着いて、両刃光剣の真ん中から切り離し二つの電光剣に分解すると、まるでダンスでも舞うかの様に武器を振り回し斬り落として行く。前方の剣を叩き斬り、後方に半回転そのまま後方から迫る2つの武器を凪ぎ払う。双剣にしたことで効率が上がったベルは更に速度をあげる。遂に男との距離は10M以内に縮まった。しかし、ベルは気がつけなかった。死角から放たれんとする宝剣に。宝剣が射出され、ベルの真横に着弾。ベルは爆風で吹き飛ばされその結果、両刃電光剣の片方を手から離してしまった。もう既に気が付けば体はボロボロ得物は電光剣一本のみ。そんな様子のベルを見て男は嗤う。しかし、ベルもニヤッと口角を吊り上げる。
「終わりですぞ!」
男がまた手を天に突き上げ構える。ベルは男が手を挙げた瞬間腰の銃をクイックドロウし、引き金を引いた。轟音と共に弾が男に向け発射されたが大盾によって防がれれる。
「ひぃ危な!勝手に盾出てきた………くそっ!」
男が盾から顔を出すと、既にベルは走り出していた。もうすでに男との距離は2.3mまで迫り電光剣を突き出し男の体めがけて突貫する。男との距離はどんどん近づき、その距離を限りなく近づける。
(勝機!!)
「【
ベルは今までで一番の威力をのせた斬擊をお見舞いした。しかし、金の波紋からでた鎖がベルを巻き付け止める。あと数mmで届く電光剣を当てようと、体に更に力を入れるが、まるで動かない。そんなベルの様子を見た男はガクッと座り込み、汗だくの顔を拭った。
「ふぅあぶない。あぶない。全くおれが主人公なんだからこんな雑魚に手間とらせるなよ、俺は早くかわいい女の子と出会いたいんだ。それを!こいつ!こいつは!」
男は動けないベルをゲシゲシと蹴り殴り、憂さ晴らしをしていく。
「あースッキリした。あっそうだあれを使おう。なんだっけ?そうだ《宝物庫の鍵を開けてやろう》クゥーカッコい俺、本当、転生神様々だな。じゃあお前そろそろ消えん?……なんの音だ?」
しかし、そんな男を嘲笑うかのように空を切る音達が近づいてくる。本部が保有する、弾道ミサイルだ。本部からのピンポイント爆撃。相手にマーカーを撃ちこみ続けることで、絶対に外れない物となるミサイル郡はその周囲もろとも吹き飛ばすだろう。ベルは気付かれないように腰の拳銃からマーカーとなるレーザーを出し、男に当て続けていた。レーザーの射程距離5M。高精度の代わりに射程距離を捨てたこのポインターは現地の将の最終手段プランE。“自他共に”地獄へ送る。ミサイル郡の一斉掃射である。
発射音が鳴り響き、視界一面にミサイルが映る。
「ミミミミミミ、ミサイル??なんで?え???」
男は半狂乱になり、慌てて逃げようとするが、どうやら腰が抜けているようで、まったく動けていない。
ベルはそんな男を無視し、目を瞑り、今までの人生を振りかえる。両親の代わりに育ててくれた祖母の事、初めて戦場に立った時の事、様々な人種の頼もしい仲間との出会い、そして別れ。自分を好いてくれた異性達。そして“初恋”の相手。色んなことを思い出すベルはやがて轟音を耳にしたのを最後に、意識を手放した。
【銀閃】ベル・クラネル大佐。後に危険度S++とされた“流れ”を単騎で足止めし、プランEによる爆撃で討伐。同時に爆撃に巻き込まれ殉死。その偉業を称え2階級特進とされた。
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「へぇなかなかやるじゃないか」
「どうだ?私の子供も捨てたものじゃなかろう」
「よくも、まぁ人間の知恵だけでここまでやるよね」
「そうだろう?それでお願いがあるんだけど」
「あぁわかっているよ。僕が暫く預かろう。なんにせよ彼らにはあまり時間が残っていない。僕らにできるのは導くことだけだからね」
「そうね、信じましょう子供達を」
「あぁ、育てていこう子供達を」
「「●●●の日はもうすぐそこまで来ているのだから」」
長い