マツバラビリンス   作:倉崎あるちゅ

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前から構想を練っていた花音ちゃん弟モノです。
あらすじにも書きましたが、タイトルは効果音さんから案でもらいました。


花音ちゃん弟モノとしては薄いですがよろしくお願いします。


一話 ここ、どこ……?

 

 

 

ここは一体、どこなんだろう。

見覚えのあるようでないような道を、くすんだ水色の髪の少年が歩いていく。その背中にはギグケースが背負われている。

少年は目的の場所──ライブハウスに辿り着けず、だんだん紫色の目の端に涙を溜めていく。

 

「うぅ……こ、これ……やっぱり迷子……?」

 

少し大きな道路に出て赤信号になったので立ち止まる。左右を見渡して少年は誰かに道を聞こうと足を動かそうとするが、一歩も動けずに立ち尽くす。

 

「ふぇ……人に話しかけるの……怖い……無理ぃ」

 

──この少年、方向音痴に加えコミュニケーション障害なのである。

慣れた人でなければ喋る事すら出来ずにただ黙って終わる事になる。そして目も合わせられないという、方向音痴にとって致命的な要素だった。

うぅ、と呻いて、少年が青になった信号機を確認して横断歩道を渡ろうとすると、彼から数十メートル離れたところから全速力で少年を目指して、長い黒髪を揺らしながら走る少女がいた。

周りの歩行者は何事かと目をぎょっと剥いている。

 

「おぉぉ……とぉぉぉ……はぁぁぁぁ!!」

「ふぇ……? ……あ、あかり先輩!」

 

遂に知っている人物を見つけた少年はその人物に向かって走り出し始めた。横断歩道を渡りきり、少女に思わず抱き着きに行こうとすると、

 

「ふん!」

「ぐえっ!?」

 

走っている勢いのまま、少女は少年にラリアットを放った。

当然、ラリアットされた少年は倒れ、頭を地面にぶつける。ふえぇぇぇ、と情けない声を上げて頭を抑えて悶絶する。

 

「テメー、音葉(おとは)! 毎回毎回、なんでテメーは一人でどこへでも行こうとしやがる!? 誰かと一緒に行動しろって散々言ってんだろ!」

「ご……ごめんなさい……そ、その……一人で行けそうな気がして……」

「それで迷子になってたら元も子もねーだろ! あぁ!?」

「ふぇあぁぁ!? 痛い! 痛い!あかり先輩やめてぇ!?」

 

少女──長門(ながと)あかりは青筋を立てて少年──松原(まつばら)音葉のコメカミにぐりぐりと、拳をねじ込んでいく。

数秒間そのままねじ込んでいたが、あかりの後ろから人が出てきてその人物が彼女を止めた。

 

「あかりちゃんそろそろ」

「んあ? なんだ、奈緒(なお)か」

「ライブ遅れちゃう」

「やばっ!? もうそんな時間か!? これ以上あの()()()()()()()に借り作るのはゴメンだ!」

 

音葉を解放し、あかりは無理矢理彼を立ち上がらせた。そのまま彼女は奈緒──相坂(あいさか)奈緒の手を掴んでライブハウスに向かって走った。

ちなみに松原音葉は方向音痴、コミュ障に加えて運動音痴である。

 

「ふわっ!」

 

ビタン! と音葉はすっ転び、額に赤い痣を作る。

 

「あーもう! 音葉! テメーはもうアタシに背負われてろ! 奈緒、ケースもったげて」

「うん」

「うぅ……先輩ごめんなさい……」

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

「はぁ……はぁ……! 歩夢(あゆむ)泰人(たいと)! 悪い、遅れた!」

「ごめんなさい……歩夢、泰人先輩……」

 

ライブハウスの楽屋に着き、あかりの背中から降りて、音葉は目の前にいる少年二人に頭を下げた。

すると、頭を下げた音葉に、歩夢──切谷(きりたに)歩夢は右手に持っていたドラムスティックで頭を軽く叩いた。

 

「ホント、気を付けてくれよー? 今回()Roseliaの人達が長めに演奏してくれたからどうにかなってんだからさ」

「う……ますます今井(いまい)先輩に合わせる顔がない……」

「ふっ、そんなに重く捉えなくてもいいさ音葉。彼女達は快く受けてくれたからね」

 

歩夢の隣にいる少年──黄瀬(きせ)泰人がキザっぽい口調で落ち込む音葉を慰める。

 

「そうそう! 今井さんも結構心配してたぜお前の事」

「そう……だといいんだけど……。僕、今井先輩や(みなと)先輩に……迷惑かけてばかりで……」

「だぁぁ! うじうじしてんなよ音葉! つーか、あの女の名前出すんじゃねー!」

「は、はい……」

「あかりちゃん、ホントに友希那(ゆきな)ちゃんの事嫌いだよね」

「音楽の事を好きかどうか聞いた時に好きと答えなかっただけでこれだからね、あかりは」

 

嫌な事思い出したー! とあかりは長い黒髪をひとまとめにしたポニーテールを振り乱す。

まぁまぁ、と奈緒と歩夢、泰人で宥めて彼女にギターを手渡した。それぞれ、ライブする準備は万端だ。音葉もケースから出した、自分の水色のヴァイオリン型のベースを肩にかける。

 

「音くんいるー?」

 

楽屋の扉が開かれ、入って来たのは音葉の髪の色より明るい水色の髪をした大人しそうな少女だった。

 

「あ、姉ちゃん……うん、いるよ」

「よ、良かったぁ〜!あかりちゃん達と会えたんだね」

花音(かのん)、こいつに外出る時は誰か付けるように厳重注意しといてくれよ。探すのに一苦労なんだ。お前よりタチが悪い」

「あ、あはは……うん。音くん、お家に帰ったら覚えておいてね?」

「ふぇ……」

 

姉である花音にそう言われ、音葉は顔を青くした。

すると会場の方で一際大きな歓声が楽屋まで響いてきた。それを聞いた花音は、思い出したように口を開く。

 

「あ、そろそろ出番だよ皆」

「よし! 遅れちまった以上、すげー演奏しなきゃな! やるぞテメーら!」

 

あかりがパシッと拳を掌に叩き付ける。

音葉、奈緒、歩夢、泰人がコクリと頷く。この時ばかりは自信なさげな音葉も真剣な顔付きになった。

五人は楽屋を出て待機場所まで移動する。

ステージにはRoseliaのメンバーが『LOUDER』のアウトロを弾いていた。

曲が終わってお辞儀をした後、Roseliaのメンバーが音葉達のところまで来た。

 

「来たようね」

「あたりめーだ。もうこれ以上借りは作らねー」

「そう。……行くわよリサ、紗夜(さよ)、あこ、燐子(りんこ)

 

湊友希那とあかりは一触即発の雰囲気を漂わせたが、友希那の方が先に身を引き、楽屋に戻って行った。

 

「音葉くん頑張ってねー♪」

「ふぇっ!? は、はい! が、がが頑張りましゅっ!」

「「「ぷっ……」」」

 

去り際に紅いベースを手にした今井リサが振り向いてウィンクと一緒に音葉にエールを送った。返事をした彼は上ずった声を出して最後には噛んでしまった。

 

「ちっ、ホントいけ好かねぇ女……。にしても、音葉……お前ホント、今井目の前にするとそうなんのやめろ……笑う」

「ぷっ……く、くく……頑張りましゅ! だって……! ぷふっ」

「わざとなんじゃないかと思うぞ、音葉」

「憧れの人なのはわかるけど、上がり過ぎだぞ?」

「ぁ……ぅ……」

 

四人に弄られ、音葉は顔を真っ赤にして俯く。そう、毎回なのだ。彼が迷子になり遅くなってしまう時は、大抵Roseliaが時間を延長してくれる。その時に音葉がリサと会う時は、だいたい彼より背の高い歩夢の後ろ、一八〇ある身長の泰人の後ろに隠れるのだが、今回はあかりと奈緒に挟まれ、上手く隠れる事が出来なかったのだ。

一通り笑い終え、そろそろステージに上がらないと行けない時間になった。

あかりは体を四人に向け、拳を突き出した。四人もそれを見て全員拳をぶつけ合う。

 

「うし! 行くぞ、Quintet(クインテット)!!」

「「「「おう!!」」」」

 

五人はステージに上がり、歓声が上がる中それぞれの位置に着いた。

あかりはギターボーカル、音葉はベース、奈緒はギター、歩夢はドラム、泰人はキーボードと確認を終える。

 

「待たせたな! まーたこいつが迷子になってな! 遅れちまった分、すげー演奏するから、楽しんでくれよ!」

 

マイクを握ってあかりが観客に言い、次に演奏する曲の名前を口にし、今出せる五人の最高の演奏を行った。

 

 

 




音葉くんは花音ちゃんに似て可愛い系。身長も低い。それでヴァイオリン型のベースを持ってみろ。可愛いだろ。可愛いよな?
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