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ゴブスレに入るのは二話目からです(白目)
行けども行けども、私はこの島から出ることは叶わない。
名もなき神を何度倒せど、島の支配をしようと、深い深い井戸の底から外海へ出ようと。
気づけば、私はあの島にたどり着いてしまう。あの、凍える浜辺へ。老人がどこか嘲ったようにこちらを見定める、あの場所へ。
いつからだろうか。私が、この島から出ることを願わなくなったのは。最早この身は只人の範疇を大きく越えた。名もなき神をその嫉妬から解放し、私は支配も生存も望む事なく、この島に居続けている。
三神は忘れ去られ干からびた。鉄の民は神にすがる事もなく己の力を信じ突き進む。石の根はこの島の、何者の存在をも許容しない森との対話を続けている。光輝の家はその黄金を肴にワインを傾ける。火と空の守り人は、只その手品を発展させ、世の理を探求する。造反者たちは、最も暗い場所でその悪徳を広めんと画策する。
デヴァラは既に古びた信仰となった。けれど巡礼者は、その過酷な旅路をひたすら歩む。
─────けれど、私は。
「ソルトボーンよ。貴女がここに留まるようになってから、随分と経ちましたね。」
そうだ。私は、この薄暗い微笑みの村の底で、灯火の使徒に泣きついている。もう、どうしようもなくなってしまったのだ。何をすれどもこの島から出ることも叶わず、使命も無い。私は特別などではないのだ。その事が、私に絶望を押し付ける。
だから私は、彼女にすがってしまうのだ。ソルトボーンとは違う、炎のように揺らめく光から生まれた、女神を。
「彼の者を嫉妬から解き放ってから、私の光は抑えつけられる事は無くなりました。私を信仰し続ける貴女よ。この島を支配しうる貴女よ。道を見失った貴女は、巡礼者たることも出来なくなってしまった。」
私は、もう自分で歩く事が出来ない。道が無いのだ。傭兵として、他者の旅路に寄り添うことは出来るかもしれない。けれど、それすらも今は出来ない。私と同じ絶望を、押し付けたくは無かった。
「この島を抑えつけるはもうないというのに、貴女はそれからずっと抑えつけられている。他者の道は拓け、もしくは閉じた。けれど、貴女の道は忽然と消え去ってしまった。」
あの元気の無かった盗賊は、無事コーストロックにたどり着いているだろうか。暗い海は最早失せ、この島を包んでいたあの霧は無い。たどり着けぬ道理はないはずだ。私は彼女との約束を果たせそうに無いが、元気でやっていてほしいものだ。
主なき騎士は、どうだろう。暗い森の最果てで、彼は忽然と姿を消してしまった。また新しい使命という特別を、見いだせていればいいのだが。
あの年老いた魔法使いは、海へと自ら身を委ねていった。彼は名もなき神を恐れていた。今やそれは無く、彼の恐れは失せたというのに。溺死した者を集める者はもういない。彼の安らかな眠りを祈ろう。
島を築いた神が失せた今、この島の全ては塩となり、やがてその面影すら失せるだろう。島全体が白い灰となりつつある。と、女神は私に言った。
「ならば、私は貴女に道を与えましょう。貴女は私の光の触媒であり、器でもある。光とともにある貴女が、ここに留まっていてはなりません。支配すれども脱出すれどもこの島から逃れられないというのならば、もうひとつ道を作りましょう。私の光は、貴女の光。さぁ、行くのです。」
今私の前に、光輝く穴が広がっている。私は、また巡礼者となることを許された。