【完結】ゼロを虐めてやった   作:だら子

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お久しぶりです。
8/25 インテックス大阪開催の「SUPER COMIC CITY 関西25」にこのシリーズのリメイク総編集 + 番外編後日談本を頒布します。
通販もする予定なので、宜しくお願いします。詳細は活動報告です。




後日談(サンプル): 「降谷」

  1

 

 俺には嫌いな言葉がある。『緊急事態』という言葉だ。

 

 理由は簡単。自分の所属する公安での緊急事態とは大半が自分の死に直結してしまうものばかりだからだ。その上、仲間や国民の命まで巻き込むような事態だという時さえある。自分だけ死ぬならまだしも周りを巻き込むなんて屈辱の極み。だからこそ俺は『緊急事態』という言葉が大大大嫌いだった。

 

(その緊急事態が現在進行形で来ているなんてなァ…)

 

 俺はクソデカい溜息を吐く。今日はなんて災難なのだろう。そう考えながら公安で培った身体能力を駆使して全力で手足を動かす。どんどんと周りの景色が自分の後ろへと流れていく中、小脇に抱えている少年―江戸川コナンが顔をこちらに向けて叫んできた。

 

「安室のおじさん、もっと早く走って!」

「ンなもん分かってらァ! ちょっとは黙っとけ!」

 

 江戸川コナンに対して大声で怒鳴り散らす。自分でも大人げないとは思うが、叫ばずにはやっていられなかった。しかし、江戸川コナンは俺の怒鳴り声に堪えた様子は一切なく、いつのまにか地図に視線を向けているではないか。それを見てピキリと自分の額に怒りマークがつく。

 

(こ、このガキィ…! 無視しやがった…!)

 

 江戸川コナン、いや、工藤新一だったか? 通称、『黒の組織』の手によって小学生姿になったこのガキは大人への接し方がなってねえ。組織壊滅の功労者の一人らしいが、本来ならこんなガキを危険な事件に巻き込むのは間違いである。子供は大人しく守られとけってんだ。全く、最近のガキとくれば躾がなっていない。

 

(ガキを警察に預けて俺だけで任務を遂行してえ…)

 

 だが、そうも言っていられなかった。腹立たしい事に任務遂行の鍵を握るのは他でもない、この少年だったからだ。

 

2

 

 約二週間ほど前、俺は退院を果たした。本当なら一週間ほど早く退院できていたはずなのだが、勝手に病院から脱走したことにより入院期間が延ばされてしまったのである。この二週間、俺と医者との仁義なき戦いが繰り広げられ、ようやくこうして退院に至ったのだ。

 

(家に帰って休むと何度も言ったのに…)

 

 あのヤブ医者とくれば「降谷さんは信用なりません。貴方、絶対に無茶をします」と笑みを浮かべて俺の意見をガン無視。それだけで腹が立つというのに、息子の零まで医者側に回ったのである。奴は組織壊滅の代償として大怪我を負っているのにも関わらず、公安で培った経験を全力で活かして退院を妨害してきたのだ。流石の俺も零による無駄のない無駄な妨害に思わずブチ切れ、手負いのバカ息子に殴りかかりそうになったものである。同僚に組み付かれていたせいで何もできなかったけどな。ちなみにそれを見た零は笑顔でこう言ってきやがった。

 

「ざまあ」

「…。…ッ! ~~ッ! 零お前~ッ!!」

「ちょ、ちょ、降谷! 息子に向かってまた殴りかかろうとするな! 後、降谷の息子の方!! お前もイイ笑顔でサムズアップしてんじゃねえ止めろ!!」

 

 更に暴れる俺を同僚が抱きつく形で必死に止める。俺と同僚の攻防は数十分ほど続き、同僚の顔が死にかけたあたりで上司が登場。「お前ら何してやがる…。特に降谷二名…お前達は怪我人だったはずなんだがな…?」というドスの利いた声が病室に響き渡り、俺達は一瞬にして黙った。そして次の瞬間、零は無言で布団を頭まで被り、同僚は何事もなかったようにリンゴの皮をむき始め、俺はベッドの中へ潜り込んだ。この間たった十秒。公安での教育の賜物である。

 

 このような攻防を息子の零と繰り返した結果、俺は退院に至ることができた。たかだか退院するだけでかなりの労力を使ったと思う。

 

(あのクソガキ零は絶対に許さない)

 

 そう心に誓いながら久方ぶりに己の『巣』に戻り、職場への復帰を果たした。その際、多くの同僚、後輩、上司や先輩達に「おかえり」と言われて少し泣きそうになったのは自分だけの秘密だ。いや、優秀なあいつらにはバレているかもしれないが。

 

(それにしても、復帰後直ぐに『黒の組織』の残党狩りへ駆り出されるとは思いもしなかったな…)

 

 巨大な国際犯罪シンジケートの壊滅により、公安は深刻なまでの人手不足に陥っていた。そのせいで病み上がりのはずの俺を容赦なく事後処理に駆り出しやがったのである。長い間、仕事に拘束され、「もう無理…流石に辛くなってきた…」と死んだ目になった時――それは起こった。

 

3

 

「はァー〜?? 東都タワー周辺に爆弾を仕掛けたァ?? ふざけんなテメェ!!」

「爆弾にも気がつかねぇ無能警察が悪いんだろ」

「殺すぞ貴様」

「ちょっ、安室のおじさん何言ってんの?!」

 

 自分の眼前にいる男の胸ぐらをガラの悪いヤンキーのように掴む。この三十半ばの男は組織の残党であり、今回の事件の真犯人だ。俺が男に対して暴言を吐くと、隣から江戸川コナンが焦ったような声を上げる。それを受け、我が息子・零がスッと後ろから登場し、ガシリと俺の肩を掴んだ。

 

「父さん、落ち着いてくれ」

「零…」

「殺すならもっと具体的に発言しないと。それでは脅しにならない。後、殺すと言っても殺人はダメだぞ」

「そういう事じゃないよ安室さん‼」

 

 零が真剣な表情で物騒な発言をする傍ら、江戸川コナンが『ダメだこいつら早く何とかしないと』という顔で叫んだ。待てガキ。何でお前こちらも含めた。どう考えてもアウトなのは零だけだぞ。俺は「死ね」と言っただけだ。奴の発言に自分の責任は―あるのか? やはり義理でも俺は零の父親。ゆえにこちらにも責務が……って言っても息子は既に三十路手前だぞ? 俺は悪くないと思うんだが?

 

(…ちょっと待て。話が逸れている。今はそんなことを考えている暇はねえ)

 

 俺が今、胸倉を鷲掴みしている男は先程も言ったように元黒の組織構成員だ。現在の状況だけを見れば『息子との合同任務で組織の残党狩りをしている』と思うだろう。それに間違いはない。だが、厳密に言うと少し違う部分がある。元々零と俺は合同で仕事をする予定はなく、尚且つ、自分は休暇中であったという点だ。

 

(ハァ、休暇中に知り合いと東都タワーイベントに参加したら事件に巻き込まれるなんてツイてねーなァ)

 

 

 

 

 

 

こんな感じの本書のみ収録の後日談番外編

pixivで公開済み上篇・下篇リメイク総編集も収録

 

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