●孤立する戦場:後編
手持ちの艦はザンジバル改と旧型のファットアンクル一機。
航空機はドップの他はテスト中のドダイが数機で、とても爆撃なんか出来ない状態だ。
というか騎乗できるYSの方が欲しい。早く開発されてくれないものか。
モビルスーツに至っては合計で十三機、中隊程度しかない。
仕方が無いので総司令自ら戦場に立つというお寒い状況だった。
どうしてこうなった!?
最大でサンジバルが四隻も居て、ザクは旧型ばかりとはいえ三十を越えて居たと言うのに……。
まあ言っても仕方あるまい。占領したら護衛とかに戦力が居るんだ。
「間も無くフランス・エリアに入城します。しかし……こっちに来ますかね?」
「来るさ。……連中には支持基盤という余計なモノがあるからな」
ドイツ・エリアを陥した後、海が見えない程度の北部ルートで侵攻。
奇襲だけは避けながら、一路、パリを目指す。
出逢わないのが一番だが……『翼よ、あれがパリの灯』だ。なんて言うのは難しいに違いない。
「絶対に勝てないなら無理を言わんだろうが、モビルスーツがある以上は来る。でなければ派閥がスポンサーに文句を言われるからな」
「政治の為に生命を賭けるのは、お寒い戦争ですな」
ジオンの正義を信じているのだろう。
苦笑したくなったが、兵には信じるモノが必要だ。
忠告するのも野暮なので、適当に頷いて頭痛のタネである敵味方の戦力差を考えておく。
部下であるエースどもは言う事を聞かない。
ノリスに対する目が劇的に変わったが、あれは格上を認めたからに過ぎない。
彼を尊敬する事があっても、ガルマが御飾りという事実に変わりは無いのだ。
精々が話の判る上官くらいなもので、もしかしたら舐めている連中も居るかもしれない。
「先行するドップ部隊が会敵しました」
「無理はさせるな。ガウを微速前進させてパイロットは発進準備のまま待機」
もう落とされて居るかもしれないが、貴重な人材を無駄に殺す事もあるまい。
今回は様子見の意味が強く、ザニーの一部を移動させられれば十分なのだ。
「敵の陣形が確認でき次第にカタパルトで優位地形へ展開する。総数によっては私も出るぞ」
「了解です! 即刻、発光信号を解読します!」
その間にファットアンクルに連絡を入れておく。
相手の動きに合わせて牽制を入れる為で、敵の総数が不明ならば後衛としてガウを守らせなければならない。
とはいえ相手がこちらを上回ることはあるまい。
まずは一戦して、戦力を確かめようと……この時だけは思っていた。
●予想外デス
敵の総数を確認して、私がまず想ったのはジオニック社と情報部の連中は馬鹿だと言うことだ。
どこの世界に敵国へ、これだけの戦力を提供するアホが居るのかと言いたい。
それとも何か、見合うだけのナニカを提供してもらったというのか。
馬鹿とは鹿を馬と言いくるめられる独裁者の事で、阿呆とは壮大過ぎて付き合いきれない奴という冗談を思い出した。
「何故、こちらと同じだけの戦力があるのか理解に苦しみますな」
「半分寄こしてくれたお陰で、ユーリの主戦線が楽になったと思っておこう」
敵は正面に十機と、大型戦車が二台。
これに加えて二機が大型戦車一台と共に高台に位置し、指揮車両が後方に控えている。
合計でこちらと同じ十二機居る上に、母艦が基地の方で荷降ろしを行っていた。
当然ながら、その護衛に通常サイズの戦車が多数付いている。規模としてはこちらと同レベルだ。
「しかし、モビルスーツ母艦まで完成させているとはな」
白い馬と言うかスフィンクスというか、ペガサス型がそこに居た。
まあ、こっちにザンジバルがあるんだから、居てもおかしく無いよね。
そう言えたら良いのだが、自分の生死が関係するだけに笑い話にはしたくない所だ。
(どうする? 勝つのは簡単だが、同数の敵と戦って無傷と言うのは絶対に無理だ)
無いとは思いたいが、ペガサスにまだ載って居る可能性があった。
よほど相手が弱ければ別だが、基地の占拠は難しいだろう。
無理して攻めても危険なだけ。ここはデータ収集に専念した方がクレバーな筈だ。
何しろ敵は防げばよいが、こちらはまだ次の戦場があるのだから。
「作戦の優先度を変更する。第一に敵モビルスーツの性能把握、次にMS母艦の構造を確認しろ。撃沈せずとも構わん」
「はっ! 可能な限り基地に接近して撮影します!」
専用機に装備されたオマケのハルバードを眺めて溜息を吐いた。
場合によっては自ら接近し、これを叩き込んで装甲強度を上回る必要性があるだろう。
ガンダ……この時代はルナチタニウムか。
もしそうならコレくらいしか、圧倒出来る火力が無いのだから。
まさかバルバトスみたいなことをやらせるために、コイツを装備したんじゃないだろうな。
「いよう。司令!」
「無礼だぞ貴様!」
「……なんだ? 私は忙しい、用件を言え」
お肌の接触回線を使わずとも通信に割り込める相手……。
指向性レーザー通信を使える、エースの一人が連絡を寄こしてきた。
いまだにノリス以外には懐かないが、話しかけて来るとは珍しい。
常識外の事態ではあるが、見えない所でやってくるのだ。何か提案があるならば聞くのも悪くないだろう。
「カッケー機体に乗ってんだろ? 俺らと勝負しようぜ」
「私はグレーデンに全部『投げる』から勝負には成らんぞ? アシストに徹して、確実に一機ずつ潰すからな」
戦う前から雑魚だと侮るのはアホかと言いたい。
しかしながら、話を出来たことは大きいと想うことにした。
コイツは問題児の中で一番の小物。
他の二人に対抗意識を燃やして居るのに加えて……。
一番常識を弁えているからだ(総司令に直接話しかけてるけどな)。
ここでルナチタニウムの事を念押ししておくのは悪くないだろう。
「小せえなあ。もし勝負に勝ったら、オヤジ以外でも話を聞いてやるってのはどうよ?」
「貴様ぁ!?」
「良い。奴らはザクマシンガンを基準に、装甲を盛って居る可能性があると伝えた筈だ。その上で……」
舐められているのだから、まともに相手していても仕方が無い。
勝負に勝ったら言う事を聞くと言うのも怪しいが、話の通じる相手と思わせておくとしよう。
「お前たち三人をチームと見なして、私たち三人よりも戦果が上なら、一週間ほど呑み放題でも約束しよう。お前はサポート役でも指揮官役でも構わんぞ?」
「マジかよ!? 本当だろうな?」
約束すると言いながら、コイツの武装に目を向けた。
コイツはハンドバルカン二丁流で、三人の中で一番火力が低いと言える。
だからこそ、実は不安に思っていたのではないだろうか?
小物だと自覚して居るから三人の中では常識があるし、ノリス経由で『仕事』を任せると大抵はサポートに回るし、爆撃機に関しては最も数を落として居た。
「良かったのですか?」
「あれでやる気を出してくれるならば……な。それに数で無く戦果、個人では無くチーム戦と誘導できたならば上々だ」
いざとなったらジャコビアス・ノードを三人目と言うことにしよう。
集中攻撃を前提に、三人で頑張れば戦果の方は何とかなるだろう。
というかルナチタニウムで弾かれるなら、火力は集中しないと駄目だ。
「ひとまず連中は無視して高台のスナイパー気取り共を潰す。適当に擾乱しておいてくれ」
「司令自ら動か無くとも……」
話を聞いてくれるお前は良い奴だよ、イアン・グレーデン。
苦笑いと感謝を伝えることが出来ればと思うが、そんな暇は無い。
「この機体が向いているだけの話だ。他にできる機体があるならば、ワザワザ私が行かんよ」
「しかし……」
「判りました。私とグレーデンで連中の足を止めます」
二機目のS型がこちらに割り込んで来る。
IDからするとこいつがジャコビアス・ノードなのだが、コッソリ話を聞いていたのだろう。
私の突入を支援すると共に、向かってくる敵部隊を止めてくれるらしい。
分野は違えど二人とも教官クラスなので、その辺は安心できた。
「繰り返すが攻撃が通じない可能性がある。それに大型戦車も居るからな。前衛の連中の面倒も頼むぞ」
「やれやれ、これは難儀な仕事ですな。しかし、だからこそやり甲斐があるとでも言っておきましょうか」
「……判りました。私も気を付けておきます」
そうして戦闘命令を下し、徐々に接近を始めることにした。
ザニーは腕が砲になった簡易量産型なので、接戦になれば向こうの方で引くだろう。
それはそれとして、RPG系の雑誌でこんなコラムがあった。
指揮官というものは、自分の力量と声望を正しく把握せねばならない。
ヒロイックに『我に続け!』とか言うセリフを口にしても、部下が付いて来てくれるとは限らないのだ。
それに人には適性というものがあるので、出来ないしない事をやろうとしても駄目なのだとか。
「とはいえ、この状況だと動くのは私か」
先行量産されたマゼラトップ砲の砲撃が始まり、私も移動を開始した。
手持ち火器はザク・マシンガンなので、装甲を抜ける自信は全くない。
あくまでも牽制用と割り切って、高台に向かって回り込みながらキャノンザックの砲門に火を吹かせた。
「ノリスの真似は不可能だが、今は専用機の性能に感謝しておくとしよう」
何か埋まって居そうな場所にマシンガンをばらまきながら、徐々に接近。
案の定、地雷が埋まって居たのでその上をカっ飛んだ。
この機体に付いているホバーモドキの連続使用は、せいぜいが回避用で二歩か三歩。
イフリート・ステップとでも言うべき、ゲーム中に出てきたアレを再現する程度の性能しか無い。
だがそれでも十分に、地雷原を越える程度の事は出来る!
「まずはお前達だ!」
『宇宙ネズミが! 連邦にもモビルスーツはあるぞ!』
オープンチャンネルで話し合う必要などまったくないので、何を言っているのか判らない。
だが言っているだろうなーという事は、だいたい予想できる。
ホバーモドキで段差を越えて、脇へ脇へと移動しながら牽制。
同じ様にこちらに向かって牽制して来るザニーを無視して、まずは横腹を晒す大型戦車を狙った。
スナイパーをやって居るのはこちらなので、当然の選択だろう。
「相変わらず堅いな。まあ、時間の問題だが」
キャノンザックを遠慮なくぶっ放し、大型戦車に数発続けて撃ち込んだ。
正面から高台を攻撃して居る味方と合わせて、暫く後にようやく沈黙させる。
もしかしたら私が倒せるかと思ったが、公約通りグレーデンに戦果を献上してしまった。
「まあ良い。向こうが微妙だが……」
主戦場では十、いや九機が陣を組んで盾をかざして居る。
これに高台や後方から援護が来るので、戦果が上がらないのは仕方あるまい。
当然ながら撃破しても精々が中破、たちまちの内に後走されてしまう。
「高台に陣取ったのが災いしたな! テルシオを抜けなくとも、お前達だけ潰せればいい!」
『うおおお!』
あそこを落とせばサンプルを確保出来るだろう。
酒を奢る歯目に成らずに万々歳だ。
そう思って攻撃し続けるのだが、こちらも中々潰れてくれない。
一機が本陣からの援護を防ぎ、もう一機がこちらのキャノンを防ぎながら必死に耐えて居た。
「やれやれ。総司令が白兵戦とはな」
仕方ないのでマシンガンをポイっと捨てる。
エースならばジャンプしつつ武装変更が出来るのだろうが、私には無理だ。
ハルバードに持ち替えて徐々に近づき……。
ホバーモドキを吹かして、一気にジグザグに接近してする事にした。
「ぬうん!」
『来るな、来るな!』
ハルバードを一閃して一機目の頭越しに振り降ろした。
移動し続けて居たのでこちらの被弾量は大したことは無い。
やはりビームライフルが一番の懸念材料なのと、モビルスーツは白兵戦が一番強力だと言う事を確認した。
「始末は任せる! 私は援護に徹する事にしよう!」
「了解! お任せください!」
まずは目の前の一機を引きずり落とした。
そして残り一機に体当たりを掛け、高台を奪って高地を占領。
キャノンザックに物を言わせて、高台のスナイパー役を強奪する事に成功する。
やがて戦況は優位になったところで、敵が戦闘を中断。
徐々に後退して、基地の中に戻って行った。
基地施設や通常サイズとは言え戦車隊を利用して、防御に徹する気だろう。
戦果で勝ったのは詐欺みたいなものだし、サンプル持ち帰ったお祝いに皆で祝宴でもするかと思っていたのだが……。
「司令。昨日の戦いで倒した筈の敵機が……」
「流石は連邦の工業力だな。予備パーツくらいは十分に用意してあったか」
恐ろしいことに残り十機が再び陳列されていた。
あるいはペガサスに搭載して居た機体が、基地で組み上げられただけかもしれない。
だが米帝よろしく、倒しても倒しても増え続ける可能性が頭をよぎった。
「一進一退でこのままジリジリと時間を稼がれるのは巧くないな」
「はい。時間を掛ければベルファストからの援軍が到着するでしょう」
接近してしまえば大したことは無かったが……。
時間を掛け過ぎればまた補充されるどころか、物量差で蹂躙されてしまうだろう。
それでなくとも戦車や航空機もあるのだし、戦線がここで止まってしまう。
とはいえ突破し、基地を落とすには戦力が必要だ。
ノリスと合流し、アフリカから戻って居る筈のマダガスカルを加え、可能であれば損傷したリリーマルレーンも欲しい。
戦場で有利なだけでは無意味。
基地を潰し、少なくともパリまで進出せねば、ベルファスト攻略の目途も……。
(ん? 何か大きな勘違いをしてないか?)
戦力が無いと突破できない。
相手にペガサスが居り、こちらはザンジバルの数が居ないから、回り込む事も難しい。
時間を掛ければ相手は戦力を補充して、こちらは磨り減ってしまう。
だが、逆に言えば……。
(勘違いして居た! 戦力が増える? 圧倒される? 別に良いじゃないか!)
根本から勘違いして居た。
その事に気が付いた私は、通信室に向かうことにした。
「ユーリを呼び出せ。パンゲア作戦を繰り上げる。アバドンの壁を破るぞ」
金蝉脱殻と行こうじゃないか!
ニュータイプという言葉が、戦闘力を指すのでは無い事を連邦に判らせてやる!
と言う訳で、戦場で苦労しました。
ノリスが居たら、簡単に高台を占拠。
一気に基地まで行けたかもしれませんね。ペガサス級は逃げたでしょうけれど。
こんな話があります。
第二次世界大戦の時代に、エースを含む百機の部隊がありました。
敵国の百機を全部潰しましたが、八十機になりました。
次の月にまた百機が来たので、五十機が頑張って全部潰しました。
その次の月にまたまた百機来たので、必死に頑張って壊滅させましたが、こちらも壊滅してしまいました。
まあ、そんな状態です。
●ザニー軍団
どの道、データ収集と足止めが目的なので遠慮なく使い潰す予定です。
その内に陸戦ガンダムが建造されて、コジマ大隊が組織されるでしょう。
もしかしたらテネス・A・ユングとか、ベアさんとかがダンス踊るかもしれませんね。
武装は砲そのものの腕で、口径は強力なマシンガンくらい。
とはいえ戦い慣れて居ないのと、本体の性能が悪いので強くありません。
必要部分は堅いですが、構造上の問題で弱い部分もあるので、接近慣れると大変です。
そこで方陣を組んで正面に盾をかざして耐えるのが御役目。
ちなみに述べ三十機くらいあるので、初期のガルマさんの手持ちくらいはあります。
米帝……じゃなくて連邦凄いですね。ジオニック社もある程度を提供したと思いますが、それをモノにしたのは連邦ですので。
●ペガサス級
ジオンにザンジバルも居るし、当然の様に存在します。
少なくとも五・六隻は居るんじゃないでしょうかね?
まあMS母艦ではなく、航空機・戦車を運ぶ強襲揚陸艦としてですけれど。
なので現在は改修中で、前線に出ているのはそれほど数は居ないと思われます。
●ガルマの能力
前にも書きましたが、練習と実戦で強くなる上限くらいです。
エースにはとうてい及びませんし、こうやれば勝てる……という戦い以外ではまず勝てません。
このストーリーのコンセプトは、憑依で強くなるどころか、下がっていく傾向にありますので。
なので今回は無理せずに、考え方を変えて、高台の敵だけを潰しに行っていました。
ちなみにガルマのスコアは無しで、イアン・グレーデンとかノードさんのスコア。
我儘なエース達の方が、航空機や戦車込みでスコアが上の筈ですが、前述した通り『戦果』としては戦線に影響を与えて居ません。
サンプルを手似れたガルマの勝ちですが、いまいちスッキリしない戦い無いので、認めてくれるかは微妙な所。
まあオフレコの日なら、酒宴を開いて馬鹿話できるくらいの仲には成ったかもしれませんね。