カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第九話(前編)

●金蝉脱殻の計

 根本的な考え違いをして居た

モビルスーツはどこまで行っても歩兵でしかない。

昨日の時点で破壊すべきはペガサス級とミディア、その後は放置してユーリと対峙するもう一隊のザニーを包囲するべきだった。

 

 しかし時期は逸して居る。

会敵した時点で実行し、その日の内に移動するべきだった。

だが今更遅い。

基地に押し込めて居る以上は、母艦を中心に守りを固めてしまうだろう。

 

「一戦して捕獲にも成功したんだってな。どんな塩梅だ?」

「戦車を歩行させたような感じでしたね。足は遅く格闘には向きませんが、正面からの射撃戦闘では厄介です」

 だが作戦の根本その物を変えるという意味ではまだ遅くない。

此処で動きを止め、連邦の思惑通りにズルズルと戦う訳にはいかないのだ。

ユーリに説明しながら、どうすれば説明できるか考えを整理して行く。

「そいつは確かに厄介だな。しかし格闘戦に持ち込むとしても、だ。方陣を組まれたらどうしようもない」

「まともに戦うのであればヒートホークでは駄目です。ジャンプしたとしても、盾を掲げられたら終わりですからね」

 回り込もうにも大型戦車が睨みを利かせている。

ザクバズーカやマゼラトップ砲でも、それほど戦果は上がらなかった。

連続して直撃すれば別だが、堅い上に盾があるので被弾率が下がるからだ。

 

「ということはグフ・スタイルか。さすがに対MS用装備って売り込みは伊達じゃ……ん? まともに戦う場合?」

「ええ、そうです。真面目に消耗戦を勝ち抜くなら、マ・クベが好きそうな中世の騎士団でも率いる必要があるでしょう」

 オリジンのマ・クベはギャンに乗って、グフの集団を率いていた。

あれならば確かに、量産型ザニー軍団のテルシオに競り勝てるだろう。

今から大量にサーベルやヒートロッド用意できるなら……の話だが。

「基本的な対策案は斬撹で間違って居ないと思います。そして、連邦に想像させる戦略もです」

「あくまで対処療法。だからそう思わせるだけで、本命を別に作るのか?」

 概念は間違っていない。

だからこそ切り込み隊を組織しておくのは無駄にはならない。

しかしこちらが考えつく方法など、相手も想像できることだ。

戦車を増量するなり、爆撃機で頭を抑えるなりやって来るだろう。

 

「そちらと私のどちらかが、少し引いて戦線を立て直し、引きずり込まれた状態から仕切り直すと思わせます。あるいは側面を突くのでも良いでしょう」

「その程度だと増援を呼ばれて終わるぞ? 回り込めなきゃそれで終わりだ」

 もし私が下がった場合はどうだろうか?

あるいは補給をギャロップやファットアンクルに任せ、ザンジバルを下げたら?

そんな事をしても、ユーリの援護に向かう事に気付かれない訳は無い。

では、それを囮にして、ペガサス級を狙う?

それはそれで増援を呼ぶことで対処されてしまうだろう。

「良いではありませんか、援軍など幾ら呼ばれても。艦隊の飛び出る魔法の壺でもあるならば……ですが」

「あるじゃねえか。此処で時間を稼いで戦力を整え……まさか……」

 ユーリはこちらの言いたいことに気が付いて、考え始めた。

おそらくは採算について計算して居るのだろう。

こういう時は自分が説得力のある理論を立てられないことや、呑み込ませるカリスマ性が無いことが残念に思われる。

 

「……この案は一度持ち帰るぞ? 参謀どもが首を振ったらナシだ」

「それで構いません。博打でこれまでの勝利を捨てる気はありませんからね」

 防諜の問題でそれ以上の話はしなかった。

無いとは思いたいが、通信ケーブルを使っているだけに盗聴の可能性はゼロではない。

グフ・スタイルによるサーベル・ヒートロッドでのザニー対策は、速攻性のある対策案が必要だからだ。

その意味で盗聴されても構わない。

「まあ、俺個人としちゃあ嫌いじゃないがな。可能とする戦力が整うか次第だ」

「こちらの参謀も同じ言葉を言うと思います。気になさらず」

 それがユーリが告げる忠告であり、見せてくれた誠意なのだろう。

当然の事だと返しておき、自分のところの参謀を呼び出し、本国やアフリカ方面に要請を回す事にした。

 

●ヘル・ダイバー

 結果から言うと、Goサインが出た。

当然ながら十分な戦力が集められたことと、相手に気が付かれた場合の二次作戦案が出来たからだ。

我ながら迂闊だが、相手が気付く事もあるので、その場合に無理して集めた戦力をどうするかも問題だったのだ。

 

「ウルフ・ガー隊。これよりガルマ・ザビ中将の旗下に入ります」

「よくぞ来てくれた! 君たちの事は、姉上やビッター司令からも聞いている」

「光栄です。連邦軍にひと泡吹かせてやりましょう」

 予定通り到着したヘンリー・ブーン以下のウルフ・ガー隊とマダガスカル。

そして彼らをオデッサまで送った後で、物資を回収して引き返す筈だったロイ・グリンウッド。

そして慣熟訓練が終わったノリスらの、JS型とJ型。そしてケルゲレンが第一の戦力増強だった。

「それで……『彼ら』は?」

「此処には来ない事に成っておりますので、カラーリングを変えて後ほど。仮のコールサインは『パープル・メイデン』となります」

 第二の戦力増強は、突貫工事で修理中のリリーマルレーンと、秘匿戦力だ。

彼らは本来、此処に居て良い部隊では無く、キリマンジャロ攻略の戦力が足りないから、護衛だけではなく攻略に参加して居た。

乗って居る機体はS型だが、彼らの雷鳴は絶大。

それを借り受けることで、何とか参謀団が頷けるだけの戦力を捻出したのだ。

 

 これだけの戦力ならば作戦が博打ではなくなるし、気が付かれて防備を固められたら……。

改めて、ザニー軍団を『後ろ』から突けば良い。

 

「……正式に軍人に成ったそうだが、構わなかったのかね? なんなら私からサハリン少将に一言掛けるが」

「いえ。私もジオンの……宇宙市民独立の為に戦わせていただきます」

 公式の会話なので改まった口調で、順番通りに話すしかない。

本来ならば戦って欲しくなかったというか、せめてギニアス付きの軍属で居て欲しかった。

「そうか。ではこれ以上は君への無礼になるから止めておこう」

「ありがとうござます」

 アイナは堅い表情で敬礼を返し、そのままヘンリー・ブーンの後ろで直立不動の態勢をとった。

 

「それでは作戦までそれぞれの隊長の元で指示に従ってほしい。……ただ、アマダ中尉にはすまないが、少しだけ時間をもらおう」

「「はっ!」」

 個人的にでないと、声を掛けるのも不自然なので時間を取っておく。

といっても大したことでは無く、ちょっとした挨拶なのだが。

「楽にしてくれ。……アイナ嬢のフォローをしてくれて助かった。彼女はギニアスの妹でね。兄妹ともども助けられてばかりだ」

「いえ。自分は当然の事をしたまでです」

 シロー・アマダは原作通りの正義感だった。

サイド2が味方に成ったので、そこの士官学校出身であり、名家である彼はこちら側に志願したそうだが……。

持ち前の正義感で、戦場での危険の他、ウルフ・ガー隊の揉め事に首を突っ込んでくれたらしい。

 

「それでも君に感謝をしない理由にはならないよ。それと……」

「それもそうですが、自分としても当然の……どうされました?」

 謙遜する彼の表情からは、今のところアイナへの思いは窺えない。

もちろん可愛いことは理解して居るし、一緒に戦えば少しずつ親睦が深まるだろうが……。

ナンパする性格ではないし、死の危険ゆえの吊り橋効果が無いのも大きいのだろうか。

「いや。君もサイド2を背負って立つ身らしいじゃないか。身近にそういう人間は居なくてね。良かったら仲良くしてもらおうかと思ったのさ」

「そう言うことでしたら。不肖な身ですが、よろしくお願いします!」

 くだけた態度で良いと思うのだが、あくまで生真面目だった。

その姿に一計を思い付くが、そこまでするべきだろうか?

彼の為にもなるし、何より私の為に成るwin-win。シャアと違って、信用が置けるのが何よりも良い。

加えてアイナから心理的に引き離す事も出来るが……。

 

 問題なのは、私の気持ちだろうか?

ガンダム・ワールド全般を通して五指どころか三本の指に入るレベルで、好きなキャラなのだが。

真面目で兵のことを思いやり……いや、それは原作での姿だな。

やはり憑依してから、一番身近で接した女性と言うのもあるだろう。

誰かのために必死になれる人で、とか、色々理由を付けてしまうが……。駄目だな、今は結論が出ん。

 

「ではここまでにしておこうか。原隊に復帰して、ベルファスト攻略作戦に向けて備えて欲しい」

「了解っ! 全力を尽くします!」

 心に結論を出せないままに先送りにする事にした。

同じ隊のトーマス・クルツの性格を考えると、色々面倒になりそうでもある。

今は無理に引き抜くよりも、彼を緩衝材にしてアイナの安全を図っておこうと思う。




と言う訳で最終話である第十話に向けて動き出します。
これがシリーズ終了に向けてなのか、第一部の区切りなのかは判りませんが。
ザニー軍団とペガサス級をフランスに引きつけて、最終目的であるベルファスト攻略の方を先に行います。

●金蝉脱殻
 戦力を増強すると見せて、精鋭を引き抜きます。
そして前線を少し引き下げて、罠を掛ける……と見抜かせて戦線の膠着を図ります。
元から連邦はソレを望んでいる筈なので乗ってくる可能性が高いので、後方から増強された戦力と共に、一気にベルファストまで進出。
一気に最終目的地を攻略し、生産施設を抑えつつ、ヨーロッパ確保の最大の邪魔な拠点を落とす事に成ります。

まあそこまでやっておいて見抜かれ、増援が派遣されなかったら、ザニー軍団の後ろに回り込むだけの作戦になります。
周囲から包囲撃滅を図る……というやつですね。

●戦力的に可能なのか?
 初期に持って居た四隻を再び結集。
必要ならばファットアンクル等も使って、囮にしたり、兵員など地上戦力も連れて行きます。
基本的には一時的に増えたエース+新型で、トーチカやザニーや戦車が居ても圧倒出来るだろうと言う目論見ですね。
まあ参謀団は「無理だったら正面だけ攻略しても良いんじゃよ?」くらいの採算なのですが。

●シローくんへの計略?
 これは単純に、彼を引きぬいて副官・参謀の一人として迎えようかと言う物です。
そうすればアイナと引き離せるし、このストーリーでの彼は名家のボンボンなので話の通じる友人もできる。
ギレン閥でもキシリア閥でも無いので、そこそこに信用は置けるだろうという思い付きですね。
アイデア的にはアリなのでしょうが、主人公はアイナをどう思っているのか本気で考えて無かったので、結論が下せないで居ます。

ちなみに、モブ女性とキシリアを除くとガルマが親しい女性は
アイナ > シーマ様 >> メイ・カーウィン くらいに成るんじゃないですかね。
放っておけばシーマ様がアイナよりも出会うでしょうけれど。
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