カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第十話:(前編)

●ハードラックと踊りたい

 最初の視点は連邦サイドより。

砲火の見え始めた基地を眺めて、頭を抱える男が居た。

 

「くそっ。地上に降りたばっかりだってのに、また俺のせいで……」

「ボヤくなサンダース。一方的に奇襲されるよりも、オレたちが居るだけ幸運だ」

 三機編成の小隊は、新型機と共に四機編成に改められていた。

サンダースたち四人は慣熟訓練、他の仲間に先駆け様々な訓練を行っていた。

それがジオンの襲撃から免れる事と成り、ミノフスキー粒子散布によって戻って来たのだ。

もし運だとしたら、強運というべきか凶運というべきか。

「少尉……」

「ビームライフルが間に合わなかったのは痛いが、予備武器も山ほどあるからな。十分にやれる」

「エイガーの言う通りだ。見ろ、絶好のロケーションじゃねえか。基地の救援に向かう」

 新型は二種二機の四機で、カラーリングは白青二機に黒灰が二機。

前衛である二機がコンテナを背負った同じ構成で、ロケットランチャーやバズーカといった予備武装を入れている。

後衛の二機は白青が火砲で長距離戦仕様、黒灰がミサイルランチャーで中距離支援という試験的な武装差を施して居た。

 

「向こうは強襲揚陸艦が四隻ですが、間に合いますかね?」

「オレ達は全員が砲戦が出来るのが大きい。戦車隊以外にも動かすのが間に合ったジムが居る筈だ。協力して当たろう」

「おーおー。エイガーは俺なんかより、よっぽど隊長してやがるなぁ。この調子で頼むぜ」

 演習場からの道を急ぎながら、別れ道に差しかかる。

そこには非常用の地下通路があり、此処を逃すと地上を通るしか無くなる。

だが一端地下に潜ると、上の様子が判らないままに目隠しで移動するしかないのだ。

「それでよ、何処に行くのが一番だと思う?」

「反撃の為の戦力確保が必須です。念の為に母艦からベルゲ・ジムを出した上で、兵器工廠へ救援に向かうべきです」

「本部へは向かわないんですか?」

 エイガーの説明にサンダースが疑念の声を上げる。

本拠地であり、最も戦力のある場所の筈なのだ。常識で言えば本隊をフリーハンドにして、全員で当たるべきなのだ。

 

「オレ達の利点は全員が砲戦出来ることだといったろ。本部は厚い防壁で囲まれているし、イザとなったら兵器工廠からでも撃ち込める」

「逆はマズイからなあ。それにザニーじゃ荷が重い、陥落が免れない場合もある。だから一応な」

 将校ではないサンダースは聞かされていないが……。

こういう場合に備えて、命令ではイザと言う時の順番が決められている。

最先端の試験小隊であるモルモット隊は、ジャブローに戦闘技術の蓄積を持ち帰る必要があった。

「悩むよりも急いだ方が良い。やれることを全力でやるべきだ」

「おっ。珍しくユウが喋りやがったな。まあコイツの言う通りだ。さっさと救出しに行くぞ!」

「「了解!」」

 今まで無言で従っていた残りの一人が口を開くと一同は地下に潜った。

大型のエスカレーターが斜めに下る中、間に合ってくれよと切に祈る。

 

 そして彼らの向かう先では、実に予想通りの展開が起きていた。

ここで視点は兵器工廠の側に移る。

 

「マサド大尉! 起動前に抑えるのに失敗しました。何機か出て来ます!」

「足止め班を置いて任務を続行せよ! 追加が出るのは避けねばならん!」

 量産型ザニーならば良い。

接近戦が不得意な機体ゆえ、地形を利用して飛び込めば楽勝だ。

だがこの場所にあるのは新型、彼らは名称を知らないがジムと呼ばれる機体であった事が大きい。

「互角……いや、格上として見よ。とおっしゃられたな。損害が出るのは避けられんか。一本目の狼煙を焚いておけ」

「はっ。状況レベルを引き上げます」

 格上であっても足止めならば問題無い。

やはり地形が味方をしてくれるし、稼働して居ない相手を潰す方が重要だ。

上司であるノリスが居れば別の選択肢もあったかもしれないが、彼は早期制圧の為に本部へ向かっていた。

 

 そして同じことを連邦側も弁えている。

無理に討って出ようとはせず、稼働準備に入った仲間を守る為に盾を構えて牽制していた。

 

「早く炉心に火を入れろ! 黒い死神が戻ってくるぞ!」

「ウワー、モウダメダー! 俺達は巻き込まれて全滅するんだー」

「HAHAHAHA!」

 笑えないジョークを口にしながら、整備兵たちは必死で手を動かして居た。

待機状態のジムに火が点き、動き出したのを見てから次の機体に移る。

時折りにマシンガンで掃射されたり、バズーカでハンガーごと吹き飛ぶもあるが、それでも棺桶に乗り込んだパイロットの為に動いていた。

「班長! 敵が紫色の発煙筒を焚き始めました!」

「ほっとけ! それよりも一機でも多く動かせ! 担当が終わった連中はくたばる前にとっとと逃げろよ!」

 動かせたのはようやく新編・一個小隊の四機。

元から警備に付いているザニーが旧編成・二個小隊六機で、合計しても十機しかない。

パイロットが逃げるか死ぬかした物はともかく、動かせる機体は全て動かす必要があった。

 

 そして彼ら整備兵が必死の作業を繰り広げられている間に、紫色の発煙筒は数を増して居たのである。ペガサス級を抑え終わったドックでは一本のまま、兵器工廠では二本目が……。

その意味の半分は、脅威度をミノフスキー粒子下でも現す為の物だ。

 

「マサド大尉! 隠し通路から敵の増援が! 此処で見て居ない機体もあります!」

「追加の狼煙を焚け! ケルゲレンには近づけさせるなよ!」

 隠された通路を二重に移動し、容易く発見されない場所からモルモットたちが現れる。

ただしこいつらは死神憑きのモルモット。

そこらの宇宙ネズミなどよりも、よほど恐ろしい相手である。

「少佐! 敵は予定通りに母艦のカバーに回りました」

「ようし! このまま味方の救援に向かう。ハードラックと踊るんじゃねえぞ!」

「了解!」

 エイガーの読み通りにケルゲレン隊は戦力を振り向けてしまう。

判断ミスかもしれないが、回り回ってこれが母艦を。そして味方の整備兵たちを守り切ったと言うべきか。

死神達からすれば、ケルゲレンを潰してからハンガに向かうと言う手もあっただろう。

まずは、お互いに大切なモノを守りつつ、時間だけが過ぎて行くことに成った。

 

●警告の一射

 その様子は本隊であるこちらからも見えた。

紫色の上がって居た場所はドックと工廠だが、後者の側で発煙量が大きくなっていく。

 

「ケルゲレンが……」

「未知の敵はあちらを優先したようですな」

「……放っておくわけにはいくまい。パープル・メイデンを向かわせろ」

 戦術からすればむしろ良いことだ。

敵司令部の直撃に成功しつつあるし、母艦を沈めた以上は運ばれる心配も無い。

連中が連れている母艦が向かっているとしても、それはそれで兵器工廠に居る戦力を回収する方が先だろう。

「良いのですか?」

「どのみち此処は陥落する。ならば無駄な犠牲を出す事もあるまい」

「ガルマ様……」

 更なる増援対策や、トドメに使うべきではないか?

ノリスは窮地にあるのが自分の部下と知ってなお、戦術目標を確実に確保すべきではないかと尋ねる。

 

 厳しい事を言うと思ったし、あるいは試す事でアイナとの仲を考慮したのかもしれない。

八方美人で決めたのに、ちょっぴり感動してくれてるのが、少しストレスを鎮めてくれた。

 

「いずれにせよ、ヨーロッパの戦いを終わらせる。半地下式の司令部を完全に露出させるぞ」

「はい、ガルマ様! 射程距離に入り次第、準備しますね!」

 戦車を叩いていたハルバードをアイナに渡し、ザニーは完全にノリスに任せる。

そして予備電源である盾を構え、ビームキャノンザックの砲門を前方に展開した。

やってることはザメルとサイサリスの中間だが、ビームバズーカにすら到達できていないので仕方あるまい。

油断しない様に少しずつ進みながら、片手でホバーのスイッチを、片手でレーザー通信機を操っていく。

「こちら地球方面総司令官、ガルマ・ザビである。基地司令に降伏を勧告する」

『何を馬鹿な。総司令自ら前線に出る筈が……。居たとしてもお飾りに過ぎん!』

 あちらからの返信は無いが、おそらく私の想像と大差あるまい。

最大射程に入った段階で、どこまで行けば確実に撃ち抜けるか、そして相手の迎撃システムに引っ掛らないか。

冷静に探りながら徐々に近づき、セッティングを始めた。

 

 いわばこの会話は単なるセレモニーであり、時間稼ぎだ。

降伏勧告はしたということ、それでも反撃して来た相手に脅しを与えると言うポーズに過ぎない。

 

「聞きいれられないと言うならば、これより警告射撃を行う。

 ……確認するが、隔壁はちゃんと降りて居るな?」

『はあっ? 何を馬鹿な事を……』

 ビームランチャーの砲身展開確認、ターゲットロック。

シールド内エネルギー・チャンバーとの接続良好。

アイナが確認して行く言葉を静かに聞きながら待つと、乱れていたグラフが安定して行くのが見える。そして私の恐怖心もだ。

「エネルギーの充填が完了しました。いつでも行けます。タイミングはそちらに、諸条件の調整はこちらに」

「判った。ありがとう。……願わくばこの一撃で終わりにしたい物だな」

 アイナに感謝を送ると、他の方面への言葉を考え始めた。

そしてトリガーを引き、司令部への砲撃を放ったのだ。

 

「これは警告だ。速やかに降伏なき場合は、第二射を行う! てえっー!」

『なんだ? この光はまさか、戦艦用のメガ粒子……』

 閃光が敵司令部を覆い隠す防壁を切り割き、近くにあった砲塔を誘爆させて行った……。

 




 と言う訳で、作戦は大詰めです。
実際にこんな風に奇襲できるかは別にして
ドムx2を伴ってジャブローに攻め入るサイサリスのムービーみたいな事をしたかったのでやってみました。
本当はガルマにまともな戦いをさせるつもりだったのですが、ビームランチャーの事を思い出したので、その辺もオマージュポク修正。

●モルモット部隊
 踊る黒い死神・死神サンダース、砲兵長・無口さんの四人。
何故か一年戦争時の旧編成三機態勢から、既に新編成の四機態勢に成っています。

●マサド大尉
 今日の死に番。
彼はノリスの代わりに犠牲に成ったのだ。

●ビームランチャー
 まあスキウレ砲レベルなので大したことはありません。
シャア専用リックドムやガトー用リックドムが持っている、ビームバズーカの劣化互換。
どっちかといえば脅し用というか、連邦よりも先にMSサイズのメガ粒子砲を使ってやったぜという脅し用です。
「装甲だけ溶解」になるので、「これは警告だ」と最初に行っている感じですね。
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