●状況のビリヤード
もう一人の介入者は内通者でもあった。
出し抜かれている事を理解するにつれ胃が痛くなるが、同時に面白さも感じていた。
地球連邦と戦いながら、根を上げるまで何とか戦い抜く。
そんな地味な作業はつまらないし、本当に講和が可能かも判らないからだ。
(だが内通者達が一騒動してくれれば状況が変わる可能性がある。……何より変わったイベントって楽しいもんな)
SLG系のゲームで一番楽しいのは群雄割拠だ。
いわば、ガルマの野望と言うところだろうか?
もちろん信長ならぬ連邦相手の、圧倒的な相手を何とか迎撃するのもアリだが、ワクワク感の点において大きく劣る。
「考え方を変えるんだ。出し抜かれて追いつけない事を嘆くべきじゃない。むしろ悲劇が起きたり、取り返しのつかない大失敗になることを未然に防ぐべきだ」
そう思えるならば覚悟が決まって来る。
今の状況を最大限に楽しめばいい。二度目の人生だ、短く太く後悔の無いように生きたいしな。
ゆえに悲劇が起き得るならば、それを回避し、大失敗を防ぐべきなのだ。
「悲劇を防ぐ……ですか?」
「口に出してしまったか、すまないアイナ。……単なる考え方の問題無いんだけどね」
トントンと机を叩きながら考えをまとめる。
さすがに現状を愉しむとか不謹慎だし、言い方を考えないと正しい理論でも悪になるものだ。
それこそシャアの正体なんて、ジオンにおけるラプラスの箱だしな。
反乱予備罪みたいなもんだから黙って居ることが罪になるが、ダイクンの子が英雄として帰って来るなら大したことでも無い。
誰が公表するかで大義名分にも、反乱容疑の証拠にもなってしまう。
「例えば内通者が権力闘争しか考えていない場合。放置して連邦に負けるのは困る。しかし功績争い程度ならば別だ」
「それはそうですけど、その程度にしては規模が大き過ぎます……よね」
放置しても良いレベルでありえない例を出してみるが、当然ながら頷く筈も無い。
ワザとお出したと判って居るからこそ、アイナも否定として返したりはしなかった。
「逆に総帥閣下自らが一時的な優位の為に企画されたとしても……。目的がルナツー落としやソロモン落としならば、かなり条件が変わってくる」
「隕石落しですか!? 総帥閣下自ら内通などあり得ませんが、確かにソレが目的ならば……」
ブルリとアイナが顔を青ざめる姿を見て、我ながら意地悪を言ったと反省する。
大虐殺どころの話ではないし、総帥自ら内通する筈が無い……という理屈を根底から覆す案でもあるからだ。
逆シャアやギレンの野望を見ている介入者ならまだしも、普通の人間であれば驚くどころではないだろう。
「もっとも、そこまで総帥閣下……いや兄上が地球人類に絶望していないと思うし、ジオンの理想を追い掛けては居ないと信じたいところさ」
「脅かさないでくださいガルマ様……」
まあ介入者の話抜きで、シャアを説得する時の理論だからな。
キシリア以外にもギレン自ら内通して居る理論としては、他に考えられなかった。
同時にギレンがジオン・ズム・ダイクンの理想に準じる狂信者だと言えば、少しは恨みも下がるかと思っただけの話だ。
「でも、もし、もしです。その時があった場合はガルマ様はどうされるのですか?」
「私は私の大切なモノの為に戦うさ。全てを守り切れるほど私の手は広くない。……これでいいかな?」
発見できてない盗聴器があるかもしれないので、余計なことは言わないでおく。
ここまでは聞かれても、ギレンがジオンの理想に共感して居るかもしれない。と言う程度の推論だし……。
あれ、なんでアイナが顔を赤らめて居るんだろう。
……まさか。アイナ(達)を護れる方に付くと聞こえたんじゃあるまいな。
いや、あながち間違いでも無いが。聞くのは躊躇われる。
「ゴホン。次に他の誰か……キシリア姉上や、他の将軍である場合だな」
「……は、はい。他の将軍閣下達ですね」
少しだけ見つめ合った後、くだらない話をしたとでも言う様にワザとらしく咳をしてしまう。
返って恥ずかしくなるが、無視しておこう。
それになんだ。その気は無いと確信されて、シローに走られるよりは良い。
アイナと添い遂げる! なんて劇中のシローほど素直になれそうにない自分が恨めしい。
「一番まずいのは、焦って我々自身が反乱軍にされること。内通者と違って、その準備もないからね」
「……では準備があれば、その可能性もあり得ると?」
無いという結論の為に、アイナは聞いてきた。
もちろん首を振って否定しつつも、可能性がゼロではないことは示しておく。
尼子の新宮党ほか、忠義があるのに反乱分子にされた例は割とある。
いや、讒言によって内部対立を利用されるというのは、良くある話だと行っても良いだろう。
「事前に総帥閣下へ申し送りして、反乱分子に対してカウンター・クーデターという意味では可能性も無くは無い程度かな」
「現状では総帥閣下と連絡を取るのも不自然ですものね」
まあ、その意味であり得ない方向だろう。
キシリアの可能性が高いとは言え、強行してギレンを速攻で討たない限り無い選択肢だ。
「では、ガルマ様が考えられておられる本命はどのような可能性なのでしょう?」
「内通者が連邦側の内通者と手に手を取って、第三勢力を作ることかな? この場合に避けるべきは、消耗して連邦に負けることだと思う」
ZやZZに始まって、ギレンの野望におけるIFルート。
それらでは第三勢力、第四勢力などが群雄割拠する可能性がある。
こういってはなんだが、キシリア……と推測される内通者が考えているのはコレだろう。
「第三勢力……その様な可能性があるのですか?」
「可能性としては……ね。だけれど、流石に何を目的にするかはサッパリ考えつかないんだけど」
連邦側の介入者があちらの内通者であれば、実現する可能性が高い。
もちろん純粋な反乱ではなく、ティターンズやエウーゴのような、命令系統からの離脱である可能性の方が高いのだが。
アニメやゲームで見たから可能性がある……と信じているかは別にして、連邦が倒せる目が出て来るからだ。
「連邦がジャブロー以外で掌握して居る重要な基地を拠点にしたらどうだい?」
「……っ!? 確かにルナツーが連邦政府から離れれば、状況は一変します。そう都合良くは行かないと思いますが、インド亜大陸であればこちらが有利になる事も……」
キシリアがグラナダとオデッサのみだと仮定しても……。
例えばルナツーを連邦側の内通者が奪ったら?
あるいはインド……いや、オーストラリアの方が怪しいだろうか?
あそこには刈田狼藉を行うハラスメント部隊が居る筈だが、キシリア閥である。
アデレードなり今回は生き残ったシドニーを拠点にするティターンズもどきが出来上がった場合。
連邦の食糧生産は、ジャブローに大きく依存する事になるのだ。
そうなれば連邦政府も命令系統を離れた部隊を黙認せざるを得なくなる。
すくなくともその場合は、北京・インドからの部隊がヨーロッパ・アフリカを奪還するまで続くだろう。
そしてオデッサにマ・クベが居るならば、オーストラリア方面軍は動かない可能性すらあった。
「オーストラリア方面軍の内情が知りたい所だな。もしそこの司令官が協力者であれば、マ・クベの処分は考えた方が良い」
「確かヨーロッパ方面の敗残兵をまとめられた方の筈です。ケラーネ少将がお会いしたかと」
そういえばベルファスト陥落後に速攻で交渉をまとめたんだっけ?
こうなって来ると怪しくなってくるな。
ユーリもキシリア側なら少し話も変わってくるが……どうだろ?
流石にそこまでキシリア閥が浸透しているとも思いたくない。
むしろギレンが本当に隕石落としを目論んで居て、殉教者を買って出ている方があり得ると思う。
「ユーリにはそれとなく聞いてみて欲しい。それと同時に、今言った可能性をこちらに付いた将校たちにも検討してもらってくれ」
「了解いたしました! 目立たぬよう、早急に連絡を取り合います」
お互いに頷き合いながら、スケジュールの確認をする。
この後で例のフレームに関して、ギニアスと話をする筈だ。
たしか陸戦ジムをバラす前に、シローやノリスに乗らせてみるという話だったはず。
「ギニアス達にはこの後で私が話をする。残りのメンバーを頼んだぞ」
こうして渡した予定を繰り上げ、アイナと二人っきりで事務を片付ける作業を早急に切り上げた。
もし私が迂闊だったとするならば、アイデアというものは思い付いた段階が終了ではないということだ。
料理漫画で良くある様に、そのアイデアを踏み台にして更なる改良をせねばならない。
もし、この時に発展するアイデアに気が付き、キシリアに出し抜かれない様にしておけば……。
随分と話は違った物になっただろう。マ・クベの件を思いつけたように、判断材料はゼロではなかったのだから。
●ビーム脳
もしこれがSLGであれば、軍師が提案して来るシーンだろうか。
知力90を越えているが知謀はそこそこのギニアスのことである。
内通者の件は頷くだけ頷いておいて、さっさと技術開発の話を始めてしまった。
「この間のフレームなのだけれどね。載せれるだけ強力な炉心を載せて、ビームキャノンを試そうかと思うんだが」
(そんなにアプサラスが好きかー!?)
このアホはせっかくの戦利品を使って、全力で自分の実験がしたいらしい。
いや、まあビームキャノンならばゲルググのキャノンザックとかあるから、言いたい事も判るけどな!
「構造ごと決定してしまうのはまだ早いでしょう。ですが……そうですね、キャリフォルニアから水冷式の提案があったと思います。水中用モビルスーツのデータを回してもらいましょう」
「ああ……。確かに水冷式の方が早いか。確かに水中用ならばフレームは必要ないし……であれば……」
駄目だこいつ、早く何とかしないと。
ギニアスを味方に付けたものの、自分本位な性格は全く治って居ない。
もし宇宙に居た頃から地道に話し合っていれば、もう少しまともな性格をして居ると思うのだが。
いかんせん、時既に遅しである。
「水冷式エンジンを使った機体で、陸戦を考慮するもの。水際で砲支援を行う物など考えて居るはずだ。こちらで砲支援型の担当を申し出るのはどうかな?」
「ああ、良いですね。それならば得られた成果を他に回せると思います」
こう言う感じで誘導すると乗って来るし、即座に提案できる辺りは流石ではある。
できるならば最初にそっちを思い浮かべてほしい所だが、まあジオン水泳部を知らなきゃ難しいか。
ただ、こちらでも開発しておけば、キシリアが独占する事は無いだろう。
こちらの情報欲しさに、反乱前ならばあちらで開発するモノと交換出来る可能性は高い。
「それとフレームに関しては三案をまとめました。今まで通り、可能な限り高性能機を組み上げてから、ハードポイントで研究をしましょう」
「ふむ。それに異存は無いが、どのような案かな?」
かなり疲れた気がするが、ここで黙ったら次の時には勝手に決まっている可能性がある。
仕方無くアナログ用紙を用意して、簡単な説明付きで話す事にした。
「一つ目は可能な限り機動性を高め、エース用にしつつ、一般兵の時はオートバランサー強化型のザックを取り付けます」
「完全な性能重視型か。まあノリスならば使いこなせるだろうし、バランサー以外のザックを取り付ければ色々と試せるな」
「はっ! 鋭意努力いたします!」
ノリス!
いや、お坊ちゃんを助けるのが爺やの仕事なんだろうけどな。
仕方無いので隣で直立不動して居る、シロー君の方に目を向けて見よう。
「あの……。連邦の新型が使っていたビームサーベルを使える程度を基準にしてはいかがでしょうか?」
「それだ! ノリスならばビームサーベルでも良し、あるいはジェットパックでも良しだ。うん、良い感じだな」
シロー裏切ったな……。
というか、お前の意見をくれ……じゃなくて、ギニアスを止めて欲しかったんだが。
まー。ノリスにビームサーベルなら鬼に金棒だから基準としてはいいか。
本家グフカスこと、B3グフのやや上くらい?
あるいはギャンの高機動型ってとこかな。……ケンプファーの試作型でもいいけど。
「次はビームキャノンまたは、ビームバズーカが使える出力を前提にした物。そこを基準に余裕が出来るごとに、他のビーム兵器を試しましょう」
「そういえば連邦は既にビームライフルの試作を始めているそうだからな。無理に片手持ちを目指すよりも、その方が堅実だろう」
既にモノがあるだけに、これは安定化・確実化だけですむ。
アプサラス計画で得られるデータとも共有できるし、ギニアスも乗り気の筈だ。
現状は延長砲身・追加ジェネレーター・専用ザックの三つが必要だが、せめて二つにしたい。
こちらはゲルググやハイザック……といきたいが、むしろ路線的にはゲルググ・キャノンや、ゲルググ・イェーガーの試作型というところか。
何故いきなり砲戦型を目指すのか意味不明だが、ギニアスの興味の延長線なので仕方あるまい。
「三つ目は?」
「今までの技術の集大成で、生存性を高める装甲を前提に、様々な武装が使える機体を目指しましょう。低出力化が実現すれば、ビーム兵器も使えるのが理想的ですが」
こちらはドム・トローペンから、いずれはゲルググ・マリーネや、ゼク・アインだ。
マシンガンやバズーカを使い分けながら、ビームライフルは可能だったらで済ませる。
最も現実的な姿であり、もし炉心の開発が上手く行けば、これが基本的なラインになるだろう。
そうなった場合は、最終的にギラ・ドーガに繋がるコンセプトと言えよう。
「あまり面白味は無いが仕方無いな。まあ現在のJSよりは高性能になるはずだ。キャノンザック次第でビーム兵器も撃てるだろう」
(あくまで第二案は砲戦用のテスト機にするつもりかよ……。第三案は小型化にしとけ)
とはいえ連邦が高性能機体を出してくるのは確実だ。
ドムの設計もそろそろ終わる筈だし、ビーム兵器を前提にしても良いのかもしれない。
とはいえ本家ゲルググみたいに、生産が間に合わないってのは避けたいけどな。
「いずれにせよ、残ったフレームの数はそうありません。陸戦ジムを分解するにしても、同じ機体を使い回せるようにしておいてください」
「そうだな。ノリスに一機、アイナ……いやアマダに一機としておこうか」
そこはグレーデンにでもしておいてください。
そうは思いつつも、イアン・グレーデンにするとやはりビームキャノンを前提にされてしまう。
やはり一般人に近いレベルで、シローが良いのだろうか。
一通りの話が終わった後で、慌てて反乱軍の可能性を伝えたかどうかを思い返して行く。
そして三人に伝えた事をちゃんと思い出し、安堵したのであった。
と言う訳で、状況整理回です。
無理に勝たなくていいんだ。
悪化を避けながら、勝利条件を探して妥協できる結末を探そう!
とガルマが理解した感じです。
第一部で言うと「ベルファスト攻略すれば優位に立てるよ
ね」と指示されたことを
自分で理解したと言う感じでしょうか?
もっとも反乱がまだ起きて無いので、何をすれば良いのかはまだ未定なのですが。
なお、内通してる人やその協力者に関しては
反乱を起こして、状況を利用する。他のメンツにはそれで黙認させる。
とうのは既定路線。そこから何を思い付くか……が重要な状態です。
ガルマは料理漫画でアイデアを思い付いただけであり、この面で劣っている感じになりますね。
あとはアイナってやっぱ好きだなー。
でも告白って難しいよなーと学生レベルでは自覚した感じです。
でもザビ家なんだし、声掛ければかなり可能性高いとか気が付いても
家の名前と地位で押すなんて外道だよなー。と自分で自分を縛っている感じですね。
●新型開発
第一部でギニアスとの会話を適当に済ませてしまった事と、妙な妥協をした為に
押せ押せで行けば、ガルマはその内に折れる。
というのを学習されてしまっています。
アイナを差し出して居るというか、妹婿だからこのくらい聞くよね?
くらいに割り切っている感じですね。
現状はMS-09の設計が終了。
設計図と、先行生産ガワを送って来始めているので、それをフレームに被せる予定。
もちろん、それまでにザクのガワを被せて、B3グフに近い形状でテストはしてると思いますけど。
今のところ、シャア専用リックドム・ガトー専用リックドムみたいな感じです。
(B3グフに近いモデルは、エース以外操れないし、ビームバズを目指した方が早いので)
さっさとビーム対応の、ジェネレーター強化型ドムを試作する。
小型化が進めば良し、無理ならそのまま大型砲を使うよ……という時間を重視した路線とも言えるでしょうか。
まともに作り始めると、設計もまだなゲルググとか、ビームライフルって絶対に無理ですしね。