カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第二部
第二部プロローグ


●決起の日

 物事と言う物は予想外になる事もあれば、予想の内にしか行かない事もある。

技術の進歩は後者にあたり、政治的な驚きは前者にあたるのだから歯がゆいばかりだ。

フレーム採用型のテストに立ち会って居る時に、その衝撃は訪れる事になる。

 

「同じモビルスーツを見ている気がしませんね」

「私には同じ様に感じられるが……。君らからするとそうなのだろうな」

 当たり前だが、進歩のペースが速まってもドムは最初の実機が完成もして居ない。

ガワと炉心だけ送ってもらうにせよ、まだ輸送中とのことだ。

仕方無いので先行して機動力にガン振りした試験機に、ザクのガワを被せた機体を眺めている。

「森での戦いで、連邦軍は木々や傾斜を含めて地雷の速度を計算して居ました。平原と同じ様に設定して居ては、いかにパッカード大佐でも怪しかったと思います」

「ああ、シローの言う事が何と無く判って来た。今のノリスであれば、平原設定でも地雷の爆発を置き去りに出来ると言うことか」

 もっとも、それも見越して即座の爆発だったら駄目なんだろうが……。

その場合はノリス以外の機体に対して、前面で爆発する可能性もあるからな。

08小隊でノリスが高速道の上で見せた、あの走行速度で走って居ると言えば判り易いだろう。

頭悪い表現だが、足音がズシンズシン! からズシズシズシ……と、言うくらいの差が出ている。

 

「ビームサーベルも外部ユニットに頼って居るし、流石に一朝一夕には行かんな」

「その辺の技術では連邦に劣って居ますからね」

 腕部のハードポイントに、ワイヤーアンカーの代わりにケーブルがある。

これが手持ちにしたビームサーベルへと延びているのだが、それでも陸戦ジムの未完成ビームサーベルと同じレベルだ。

まだ始まったばかりだとお互いに苦笑して居ると、アイナが血相を変えて飛び込んで来る。

「ガルマ様! 大変です! キシリア様が!」

「とうとう起きてしまったか! 試験はここで中止する!」

「了解です!」

 先ほどのどこか和やかな空気を置き去りにして、緊張が私達を押し包んだ。

事情が呑み込めない一般将校や兵士たちの間に、キョトンとした表情が見える。

何をそんなに驚いているのだと言う新人に近い連中も居れば、連邦が来たのかと僅かな間にスクランブルを整える熟練兵まで様々だ。

 

 いずれにせよ、連邦軍とだけ戦って居れば良い時間は脆くも過ぎ去った。

そして私は、自らの甘さと見当違いを呪うことになる。

こんなことならば、さっさと行動しておけば良かったと後悔する事になるのだ。

 

●行く先の差

 駆け付けた時に垣間見た映像。

そこにはゲームの中で見慣れた機体が映って居た。

もちろん細部は違うし、技術的には未完成だろう。だがその異様は忘れ難いものがある。

 

「あのモビルスーツは……まさか……」

「ガルマ様。『彼』がダイクンの遺児だったのですね……意外でしたが正直、納得もできます」

 電波ジャックによる放送の中で、キシリアは鬼札を切って来た。

己の反乱に正当性を与える為に、シャアをキャスバル・レム・ダイクンとして擁立したのだ。

それは良い、出遅れたが私も考えたことだからだ。

問題なのは……。

「ガンダム……。さしずめキャスバル専用機というところかな……しかし、何故」

「本国送りにした鹵獲品の陸戦ガンダムを改造したと思いたいですが、大いに怪しいかと」

「やはり連邦製力と繋がっているのでしょうか。これではギレン総帥も迂闊に動けないのでは?」

 まさか連邦側とのパイプを、これほど露骨に示して来るとは思わなかった。

確かに意外で驚きもしたが、これでは相手側も動き難くなるのではと疑うほどだ。

 

 とはいえ驚いてばかりはいられない。

さっさと現状把握を務めて、ダメージを最低限まで抑える必要があるだろう。

 

「キシリア派に付いたのは何処の基地だ? オデッサのマ・クベは軍を動かして居るのか?」

「いえ。それが……意外なことに地上軍にはありません。アクシズが同調したのには驚きですが」

「案外、総帥の派遣した調査隊に追い詰められてのことかもしれませんね」

 グラナダとアクシズを除き、大した拠点は無い?

追い詰められての暴発ならば、条件交渉での降伏で最低限の混乱で済むかもしれない。

そんな甘い事を考えていられたのは、連邦側の協力者の事を思い出すまでだった。

「……やられた! まさか木星航路を抑えるとは……。キシリア派の政治主張は何だい? 教えてくれないかアイナ?」

「あの、ガルマ様? 追い詰められての事では無いのですか? ……少々お待ち下さい」

 ホっとした表情に変わったアイナが、私の剣幕に押されて元の緊張感を取り戻す。

本当であれば、彼女の方が正しい。

ギレンは無能どころか恐ろしい相手だ。大規模な内通を働いておいてバレない筈は無い。

 

 だが、その時に備えてもう一枚手を打っていたらどうだろう?

連邦の監査部次第だが、内通者同士でそのまま独立後に合流する気なのだ。

表向きは敵対しないだけ、他のジオンとは戦う程度の緩い表明だろうが。

 

「要約しますと、人類同士の内輪もめを止め、本腰を入れて宇宙開発を行うべきである。人類はみなニュータイプとなって、戦争ではなく新天地の開発競争にこそ力を割くべきだと」

「後は御定まりの独裁政権や権力腐敗について。だそうですよ。民主受けしますが……」

「違う。それはジオン国民に向けた言葉じゃない。……連邦側の内通者が同調し易い話題にしただけだ」

 私はプリントアウトされた資料を手にしたまま、地図を指差した。

最初はルナツーに指を置いていたが、暫くしてゆっくりとグラナダ方面に動かして行く。

正確には、月面へ……だ。

「ルナツーで反乱を起こすのが上策だが、無理だった場合は何処に行く? 連中の宇宙軍はどこを落としてキシリア派と合流すればいい?」

「まさか……フォン=ブラウン!?」

「馬鹿な。大義名分がありません! フォン=ブラウンは中立都市の筈です」

 私は首を振って、今度は先ほどのプリントアウトした資料を掲げる。

その大義がコレだ。

良くある民衆に向けてのプロパガンダ。

コレを鵜呑みにして、敬うべき大義であると堂々と行動するのだ。

 

「あるじゃないか。一部の商社と繋がる権力の腐敗から始まって、やはり一部の名家を中心とした連邦政権」

「……その粛清に乗り出すと言うのですか!? 無茶ですっ」

 流石に腐敗した連中ばかりではないが、言い訳くらいには成る。

本部が商人どもと手を組んで、戦争を金の道具にして居るから従えない。

「だからこそさ。腐敗が無くなれば再び命令に服しても良いと、適当に妥協しておけば良い。そして同調が出易い状態で、弁護人も用意しておくんだ」

 もちろんその時は政治取引で、反乱ではないという扱いにする必要があるだろう。

後は自分達よりの政治家や軍人の一部を連邦内に留めたまま、後で弁護させれば良いだけの事。

無茶かもしれないが、エウーゴの様な前例があるのだから不可能性は無い。

他の連中には思いつかないが、介入者であれば十分に考えつく裏工作だ。

 

「それに……。連邦側の基地にはオーストラリアがある。食料と鉱山資源をジャブローだけに依存する訳にはいかない」

「あ……そうなれば連邦に残るのは、中国エリアとインドエリアです。鉱山資源はともかく……」

「もしかすると木星航路における連邦側の基地でも、同様の動きがあるかもしれません」

 つまり介入者達の連合は、月面から木星まで。

そして鉱山資源と食料生産力の高いオーストラリアを、効率良く所持して居ると言う訳だ。

宇宙でも地上でも主戦力は集中して居るし、場合に寄ったら序盤の核弾頭で被害を受けなかった連中を率いているのかもしれない。

「少なくとも、これで連邦政府の本部は我々と同じ土俵に立たされることになる。そうなれば戦局は一変する可能性は高い」

 厳密に考えれば基地周辺以外もあるのだから、そこまで国力は落ちて居ないかもしれない。

だが与えるインパクトは強烈だ。

特に政治家にとって汚職は爆弾であり、フォン=ブラウン占拠と共に出て来る資料次第ではかなり変わってくる。

 

「では連邦側にその推測を流さず、こちらも利用すると言うことですか?」

「隕石落としでも無い限り、敵を利する意味は無いな。それよりもマ・クベを呼び出してくれ。場合によっては奴と取引が必要だ」

「はっ!」

 こんなことならばマ・クベを放置するんじゃなかった。

連邦側の内通者と慣れ合いの戦いで、足止めしてくれるなんて勝手に思っていた自分を殴ってやりたい。場合によっては連邦政府の本軍が、オデッサ目がけて戦力を集中するかもしれないのだ。




 という訳で、第二部の開始です。
キシリアはギレンに尻尾を掴まれる前に、用意して居た第二プランで決起。
自分の正当性を高める為に、ジオンの遺児を担ぎあげる形でシャアを政治面での当主に。
戦力はグラナダに集中させつつ、連邦側の内通者と手に取る形で反乱を目論んだ感じです。

 まあそれがスムーズに入ったキッカケも、連邦側で内通者が上手く主流派になれなかったこと。
ルナツーとかインドとかでも司令官人事を奪えたら話は別だったのでしょうが、こちらはこちらで万全ではないので、第二プランと言う感じ。
まあ政治家や軍内の同調者が居た、エウーゴという実例があったので思いつけたのですが。

 オマケですが、シャアは早めに説得してればガルマに付いた可能性はあります。
しかしながらガルマの視点と立ち位置ではあ、匿う以外に使いようが無い。
ギレンにキャスバル探してきてから、キシリアにぶつけるとでも提案すれば別なのでしょうが、そんな時間も無いのでこうなりました。

●エリア
連邦本部:
南米、東アジア、インド、インドシナの一部、アフリカの南部、ルナツー

ジオン公国:
サイド3、ソロモン、ア・バオア・クー、パックス・ローマナ(ヨーロッパ全域・ロシア・北部アフリカ含む)、北米

連邦別派:オーストラリア、フォン=ブラウン、火星・木星方面
キシリア派:グラナダ、火星・木星方面
(アクシズは移動させてません。というか、イザとなれば逃げ込む候補)

各サイド:ジオンよりというよりは、アンチ連邦に傾きつつある
(心情的には、キシリア派の掲げた大義名分を信じたいが……というところ)

●主力
連邦:ザニー、先行量産ジム、陸戦ガンダム・ジム(最大数に限りあり)

ジオン:ザクJ型、ザクR型(F型が無いので、原作ほどエース寄りではない)

連邦別派:先行量産ジム、陸戦ガンダム・ジム(少数だが、フレーム採用)
キシリア派:ザクR型、ザクR型改(少数だが、フレーム採用)

●技術
連邦:
 ガンダムの開発に成功の目途が経つ、大量に作ったガワを使ってデータ収集中
ジムの開発そのものは、早期開発に成功する目途がたった

ジオン:
 ドムの早期開発に成功。今から組み上げて試験、上手く行ったら量産する所
ゲルググの開発は、原作と違う意味で間に合うか不明

連邦別派:
 独自開発はフレームのみ。後はコレを既存技術に使って応用予定
余計な事をする余裕は無いし、する必要も無い

キシリア派:
 フレームの概念を手に入れた所。割り切ってドムにフレームで妥協予定

こんな感じですね。
細かい所は色々あるでしょうが、あくまでガルマの把握できる範囲でということで
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