カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第二部・第一話

●マ・クベという男

 通信でマ・クベを呼び出した。

まずは彼が信用出来るのかを確かめなければならない。

もちろん真っ黒に違いないのだが、計算に基いてこちらに協力してくれるかが重要だった。

 

 地上に拠点を設けず全てをグラナダに集中。

マ・クベの役目はこちらとのパイプ役であり、同時に情報その他の収拾役ではないだろうか?

そしてオデッサでちょろまかした資材や、ジオンの技術などを連邦側の内通者経由で送るのだ。

そのコネクションを活かす為には、ガルマ率いる地上軍が簡単に潰れては困る筈。

 

『私は知らなかったのです……』

「そうだとも。長年の付き合いがある私ですら、もしかしたらと思う程度だったからな。眼力やメンツに関して、君が気にする事は無い」

 複雑な表情は嘘とは思えない。

もしシャアの事を知らなかったら、その演技に騙されたかもしれない。

「それよりも、だ。オーストラリア方面で足止めさせている部隊の回収を急げ」

『……私を信じてくださるのですか?』

 私は肩をすくめるしかない。

信じるも何も、最初から既定路線だと思う他ない流れなのだ。

キシリアが私を都合良く利用し、上手くコントロールする為にこいつが居る……と。

 

「信じているさ、姉上の先を見る力を……ね。私を支える為に君を残してくれたのだろう?」

『ガルマ様……』

 何とも言えない表情をマ・クベは浮かべている。

まあ、そうだろう。

私は相手を信用させるカリスマなど持っておらず、だからといって無知とも思えない。

何を持って自分を説得しようとしているか、頭が良いからこそ判らないのだろう。

「君が私を支える限り、ドズル兄さんは姉上よりも連邦を優先するだろう。ほら、君の献身を疑う余地など無いさ」

『確かにドズル閣下には、その様な所がおありになります』

 ドズルは身内に甘い所があり、特にガルマには相当甘い。

キシリアが反乱を起こしても、最初の通信は秘密裏に投降を促すだろう。

もしそこでキシリアが、今ならばガルマと戦わずに済む。

マ・クベは補佐として残した。……とでも言えば、信じる可能性はあった。

どのみちドズルの手持ち戦力で、ルナツーとグラナダの両方とは戦えないのだから。

 

 自分の中の甘さを断ち切る為とかあながち嘘でも無い事を言いつつ……。

前述した様に、連絡役を置いておきたい、情報収集をさせたい。私をコントロールしたいという目論見である可能性は高いのだが。

 

「真面目な話。それを期待するかは別にして、君を切っても軍の経営が厳しくなるだけだ。役に立ってくれるならば、総帥閣下から君の安全を買おう」

『……おできになるので?』

 ここにきてマ・クベは挑戦的な目を向けて来る。

こいつの目論見を見抜いているからでは無く、命運を託せる器であるか確認している訳でも無い。

ギレンと渡りあうことになるのだが、大言壮語ではないか、ちゃんと計算があるのかを確認して居るのだろう。

「連邦は内部の意見次第でオデッサへ攻め入る可能性がある。しかし連邦司令部とて馬鹿ではあるまい。部隊の数が整うまでは待つ筈だ」

『防備が万全であればもう数カ月は問題無い。だが私を切れば、好機と見る者も居るでしょうね』

 これは単純に答え合わせでしかない。

原作でオデッサの戦いが遅れたのは、単純に小出しにして負けたくないからだ。

時間を掛けて戦力を整え、大戦力を投入するのが負けない戦いの第一歩なのだから。

だがマ・クベを切り捨てて、防備を整える時間が無くなれば話は変わってくると言う訳だ。

 

 ……そして、こいつの態度で核心が持てた。

やはり連邦側内通者の蜂起はあり得るのだと。連邦の内部対立に核心を持って居るのがその証拠だろう。まあ単純に、エルラン辺りを利用するだけかもしれんけどな。

 

「ああ、そうだ。君が何発所有して居るのかしらんが、最低でも三発は回収させてもらうぞ? でなければ方々を説得できん」

『っ!? ……わ、判りました。準備しておきます』

 初めてマ・クベが本当の意味で顔色を変えた。

まさか水爆を一発どころか、数発以上所有する事を知られているとは思わなかったのだろう。

『しかし……どこでその情報を? 万全を期して居たと思ったのですが』

「機密に万全は無いよ。まあ単純な算数の問題だけれどね。連邦を思い留まらせるのに一発、他の誰かに殿軍を任せるのに一発、もう一度戻って来る時の為に一発というところか」

 と適当な理論を述べておく。

実際には原作・08小隊・ゲームか何かのネタで知ったんだけどな。

 

 本当のところを言えば、人の良いガルマを演じるべきなのだろう。

しかし偽物である自分には、信じ続けさせるだけのカリスマを持って居ない。

それなりに頭が切れる、くせ者であると思わせておかねばなるまい。

 

『……御命令の復唱ですが、オーストラリア方面の順次撤収で良かったでしょうか?』

「ああ。こちらの混乱に乗じてゲリラ討伐の可能性が増える。今後は潜水艦隊に期待するとして、装備と戦力はインドシナの足止めに使いたいからね」

 内通者が本当にオーストラリアで蜂起するか、しないかにせよ。

連邦の戦力は拡充して行くだろう。ならば戦力を無駄にする必要は無い。

そして遠方でゲリラ戦を行う者達に、即座の命令を出すのは難しい。今の内から用意しておいた方が良いだろう。

「北米司令部がハワイを攻略するのに前後して、アゾレス基地から香料諸島のラインを完成させる。当面の攻勢計画はそれで打ち止めだな」

『承知いたしました。手配しておきます』

 アゾレス・ユカタン半島・ハワイ諸島・インドシナの香料諸島。

これを繋ぐ潜水ラインができあがれば、大規模な海上輸送は封鎖できる。

航空機はどうしようもないが、空母を通過させないだけでもかなり変わってくるだろう。

 

占領地と戦力を絞った分だけ潰してない連邦基地も多いが……。

海上戦力を徹底して叩き潰せた効果は大きい筈だ。

まあ、だといいなーでは済ませられないので、オデッサを護る為の準備は必要なのだが。

その意味でもマ・クベを処断する訳にはいかなかった。

 

●落とし所の策定

 連邦政府に殴り勝つのは難しい。

生産地を抑え、逆に人口の多い場所は占領しないでおく。

そうすることで消耗戦で有利に立とうとはしているが、計算通りに行ったら苦労はしない。

 

「何処を落とせば決着がつくって目安が、ジャブロー以外に無いんですよね」

「ベルファストみたいな次点の目標があれば良いのですが」

「まあ、そう都合良くはいくまい」

 ベルファストを落とした意味は大きかった。

ヨーロッパ戦線はさっさと諦めてくれたし、海上封鎖も始めたことで、同じ様に孤立したカナダも降伏して居る。

「とはいえ中国やインドは罠だ。あの広さを維持するには相当な戦力が必要になる」

「こちらが戦力を分散しないと維持できず、連邦が戦力を充実させているのに逆行してしまうと言う訳ですね」

 何か上手い手を思い付いて、戦局を逆転しないとマズイ。

内通者が蜂起するかもしれないというのは、あくまで予想にしか過ぎない。

それこそ最後まで反乱はせず、ティターンズがやったように戦後の行動かもしれないのだ。

(ボヤボヤしてるとV作戦とオデッサも始まるしな……。そうなると手が出せなくなる)

 史実通りにエースがバンバン落とされることは無いだろうが、大戦力はそのままだろう。

そうなれば物量で押し潰されるだけの話である。

例えマ・クベから取り上げた水爆を全て使っても、せいぜいが足止め。かわりに各サイドが反発するのでは割に合わない。

 

(こんな状態で連邦の反攻……オデッサの戦いが始まったら、ジリジリと消耗戦で……ん?)

 予想される進路、予想される戦力を眺めて青くなる。

だがその予想表を眺めて、とある事に気が付いた。

「待てよ。連中が長駆どこかへ……例えばオデッサ作戦に投入する戦力そのものを叩けば良いのではないか?」

「迎撃ではなく、積極的な反撃策ですか? 確かに基地に籠った敵よりはやり易いですが……」

「逆にこちらも籠って戦うことができなくなります」

 オデッサ作戦が始まる前で、囲もうとした一部の戦力を徹底的に叩くのだ。

場合によっては動きが予想できた所で、横合いから殴り付けるのも良いだろう。

例えば五倍の戦力差だとして、第一段階で三倍差までに落とし、その後に重要な部隊を集中的に叩くのだ。

 

「完全に包囲戦が始まる前。たとえば表向きはロシア戦線かキリマンジャロに送って居ることにして、後ろから叩かせるのはどうだ?」

「ワザと手薄にするのは問題だと思いますが、隠した機動戦力で叩くのは悪い手ではないと思います」

「インドシナで足止めする戦力を増強する案。ロシア戦線にザンジバルを派遣して、早期に戻る案が考えられますね」

 あくまで思い付いただけなので、穴は大きいだろう。

だが何もせずに待つよりは良いし、他の作戦と比較して良い方を採用するのもアリだ。

鹿の角を抑えて足を払うとか、何かの計略を思い出す。あくまで籠城以外での戦闘法にしか過ぎない。

参謀たちも口では否定しつつ、止まって居た議論が活発に動き出すのに乗って来て居た。

「この作戦を予備案として、もっと良い作戦を探せばいい。例えば敵がインド大陸に差し掛ったところで、分断を図る手もある」

「オデッサで待つよりは良いと思います。スレ違う可能性もありますが、時間を区切ればなんとかなるでしょう」

「いずれにせよ、全面的に攻められる状況では旨くありません。いずれかの戦線を、軽く押し上げて見るのはいかがでしょうか?」

 攻められることを前提にする場合、作戦は途中で止まらない可能性はある。

ましては相手は五倍どころか、七倍、十倍以上の可能性もあるのだ。

だが何も思い付かないよりは良い。新たな作戦を見出したことで、希望を見出す事が出来た。

 

「ハワイの攻略が間も無くです。北米に送ったマダガスカルとリリーマルレーンも戻って来るでしょう」

「では両艦の復帰と合わせ、何れかの戦線で押し上げることを次の目標に定める」

「どこを落とせば安定するか、あるいは硬直状態を作り出せるか、策定に入ります!」

 こうして愚にもつかない案から始まった、第二案が策定され始めた。

私が考えたオデッサで迎え討つなど最低限の策だ。

活性化を始めた参謀団と共に、新たな局面が動き出したのである。




 と言う訳で第二部の一話になります。
マ・クベを味方につけつつ、どこを落とせば有利になるかを考え始めた所。
今までの計画は上層部の誘導もあったのですが、キシリアの独立でオジャンになりましたので。
もっともガルマの地上軍は宇宙にいるキシリアとは関係ないので、あくまで全部自分で考えないといけなくなっただけですが……。
その辺を担当する参謀団の数が足りて無いとか、上層部に任せて正面だけを担当すれば良いとかで、頭が硬直して居た状態です。
今回の『次の目的』を決めることで、彼らの頭も回転し始めた感じですね。

 とりあえず戦局的には、ハワイの攻略とカナダが降伏して終了。
これ以上の戦線拡大は行わず、あくまで一時的な優位を造り出す為の進出になります。
船の方はU型を改装してユーコン、二個一でリリーマルレーンの改修が終了。
モビルスーツは水泳部の創設と、ドムのガワ・炉心が届いた程度。
ハワイでの戦いで水泳部の実験を行いつつ、ドム・ベースの試作品を地上でも組み上げているところです。
あんまり企画とか設計ばりやっても楽しくないので、サクサクと次の戦いに移行する予定です。
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