カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第一話

●思ったよりも綺麗な一週間戦争

 連邦との戦線は双方の繰り出す核弾頭で幕を開けた。

何故か知らないが、お互い遠慮なしにぶっ放すので生きた心地がしない。

御曹司であるガルマだから、前線に志願こそしたが安全地帯かと思っていたが……。

 

 待機中に戦力の一部がいきなり消えたので、貴重な前線司令官の一人として絶賛期待されている。いきなり少佐待遇へ昇進したのは嬉しいが、所詮は戦時特例による野戦任官。更に言えば、それだけ上級将校が居ないのだから仕方無い。

 

「なあに少し持ちこたえれば直ぐに援軍がやって来る! それまで此処を維持するぞ!」

「了解です、少佐!」

 要するに、きっとドズル兄さんが助けてくれるよ。という言葉でしか無い。

情けないがザビ家という以外に頼るモノが無く、今後を考えると自分から逃げる訳にも行かない。

せめてシャアが居れば大いに頼るのだが、生憎と他の方面に割り振られているのでそれもできない。というか本来の予定では、戦わずに占領作戦の予定だったのだ。

(うーん。核や毒ガス作戦とかで一気に攻めると思ってたんだけどな)

 連邦がいきなり核弾頭を使ってくるとは思わなかったが……。

やはり私は甘いのかもしれない。

歴史が違うという以前に禁止条約などまだ結ばれておらず、有効な兵器であれば使わないという手は無いのだ。

こういう欠点だけ本物に似なくても良いと思うのだが、まあ戦争経験なんてないしな。

 

「このコロニーは連邦よりだと思ったが……遠慮なしに核を使うとは。何を考えて居るんだ」

「地球のエリートどもからすれば、スペースノイドは皆……潜在的な敵と考えて居るのでしょう」

「先月もどこかのバンチで暴動が起きたそうですしね」

 原作知識と違って、この一週間戦争では何故か他のコロニーが協力的だった。

全てではないが味方も居るし、そうでない場所でも中立を決め込んでくれている。

だからこそ毒ガスも使わないのかと思ったが、別の理由が影響しているのかもしれない。

「少佐! 援軍です!」

「シャアか?」

「いえ! 遊撃編成されていた一部の艦が、こちらと挟み討ちを申し出て居ます!」

 不安を紛らわせるために話を続けながら交戦して居ると、予想よりも早く援軍が到着。

こんなことならば男は黙って頷いて居れば、部下達の心象も違っていたのに……。

まあ過ぎた事なので、無事に終わって良しとする他あるまい。

それよりも友人であるシャアに頼っているなんて思われて居ないか、そっちの方が問題か。

 

「別部隊が? ならば指揮権はこのまま私が管理する。別名あるまで挟撃に専念!」

「了解です!」

 でしゃばりと思われたくないので上官が居れば指揮系統を返すべきだ。

しかしながら軍には命令系統と言う物があるので、直属の部隊司令部でなければそうもいかない。

責任を押し付けたいと思われて無いか内心でビクビクしながら、可能な限り笑顔を張りつけて士気を維持しておくことにした。

「しかし残念だな。こうも早く援軍が来るのであれば、私のザクを回すのでは無かった」

「ははっ。少佐はエースの地位もお望みですか?」

「色男にそこまで揃えられちゃあ自分らの顔が立ちません。そのまま座って居てください」

 モビルスーツの数が無いので席は持ち回りだ。

これがエースかそれに準ずる戦績をあげれば、自分用の機体を持つことが出来るらしい。

そうなれば晴れて専用のカラーリングに塗れるのだろうが、残念ながらそこまでの腕前は無いので、自分用にと回されたザクは一番操作が上手い部下へ回して居たのだ。

 

 いや、もしかして……。

スコアを稼ぐ、千載一遇のチャンスを逃したんじゃあるまいか?

エースとしての腕を持たず、今後は指揮官の道を進むのであれば、もう機会は回って来ないかも。

 

「それは君らの顔を立てておくとして……よくこっちに回ってくれたな」

「上からの要請かもしれませんが……。少佐が陳情した物資の礼じゃないですか?」

「今回は占領のみ予定で、戦闘に成ったのは急でしたからね。準備不足でしたらあちらも危険だったかもしれません。十分にありえる話でしょう」

 他へ回っても良かったが、縁がある方を選んだということだろうか?

ならば情けは他人の為ならず、回り巡って自分の為と誇ることにする。

後で聞いたら、やっぱり向こうの上官がザビ家に気を利かせたらしい。

しかしこの時点では知る由はないし、兵たちくらいはそう思ってくれていると思うので気にしないことにした。

 

 何しろ観戦モードで楽勝かと思ったら、いきなりの実戦。

それも直属の上官が死んだとあっては、気を抜いても仕方があるまい。

ちなみにシャアはこの戦いで優秀な戦績をあげ、士官学校出身者の通例を待たずに中尉に昇進を果たした。

専用機も手に入れたそうだが、私は嫉妬を覚えるよりも自分の命の無事を喜んでいたので、ついでとばかりにシャンパンを贈って贈られて共に祝い酒を愉しむことにした。

 

●意味と予定の違うブリティッシュ作戦

 景気良く核弾頭を撃ち合った結果、コロニーの態度が変わった。

当たり前だが容赦なく巻き込まれて嬉しい者は居ない。

ある程度は覚悟して居た憑依者の私でさえ、どうしようかと迷ったくらいなので仕方あるまい。

 

 さて、この時まで気が付かなかったのだが……。

コロニーがこちらに付き易い土壌があり、連邦が遠慮なくやった土壌というのが存在する。

理由なしにそんな事にはならないし、単に盲点なので私が調べそこなっただけである。

 

(まさかラプラス憲章が普通に発行されていたとはな。……しかもあんまり意味が無かったとか)

 またしても原作知識の役に立たない展開であった。

どうやら憲章の準備稿が早い段階であちこちに出回って居たらしい。

テロリズムの容疑者扱いはともかく、憲章の理念は受け継がれ、コロニーと連邦に微妙な空気を醸成したらしい。

(まあファンの間でも議論でも秘密にされたから問題であった。陰謀じゃなかったら、公表されても困らなかったとか良く言われるしな)

 たまたまサイド3の潜在的な味方が生じたから良いが……。

アースノイド至上主義者や、スペースノイド嫌いがいなければ変わって無い可能性もあった。

よくよく考えれば『そんな凄い新人類が出たら、任せても良い』程度の受け止められ方をする可能性だってあるのだ。

 

 ともあれ暴動は大きくなり、あるいは戦闘の前後でジオン軍に協力する者も出てきた。

これを避けて連邦軍はコロニーを離れ、主力はルナ2の防衛と、打ち上げ地点の確保に走る。

おそらくは地球からの援軍を待ち、一気に攻め立てる予定と思われた。

 

「コロニーの移動。最後まで見送られないのですか、大佐?」

「中佐のお気遣いはありがたいのですが……」

 上官が大きく欠けた為、少佐への昇進が確定したものの、そのまま中佐待遇ということになった。だから中佐扱いでも良いのだが、大佐に敬語混じりで話されても困る。

ちなみにこの人物はこの間に来てくれた援軍の指揮官なのだが……。

「記録には撮っていますし、問題ありませんとも」

「ならば構いませんが……周辺警戒ならばこちらでも可能です。いつでもおっしゃってください」

 どうにも部下の心が判っているとも思えない。

今回移動させるコロニーは、彼の部下たちの故郷なのだ。

 

 事の始まりは意味は原作と違うのだが……。

ブリティッシュ作戦の実行に当たり、コロニーが必要になったこと。

そして他のコロニーがジオンに付いたり中立化した手前、身を切る必要性が出てきた。

そこで老朽化し、連邦軍からのハラスメント攻撃で損壊したという、サイド3の3バンチであるマハルが選ばれたのだ。

しかしハラスメント攻撃で壊れたというのも怪しく、適当な理由で選ばれた可能性もある。

それを考えれば海兵隊の連中には最後まで、故郷の雄姿を見届けさせても良いと思うのだが……。

 

(まあいいか。今はシーマ様とお近付きになれただけマシだな。しかも綺麗なシーマ様)

 先立つ戦いの前、コロニー制圧作戦に先だって補給物資を都合した。

どうせ自分は参加するだけで昇進するし、自分の盾にするつもりだったので、先行してくれそうな連中に行き渡るように要請しておいたのだ。

どうやらその縁でアサクラ大佐は私に近づくことにし、部下であるシーマ様たちは多少なりとも恩義を感じてくれているらしい。

(ドズル兄さんには無茶をするなと言われたが、先行投資ということで勘弁してくれたし。ここまでは良い介入が出来たと思っておこう)

 横車を押して、無視される筈の陳情を強い要請に変えた。

その件で上から文句を付けられたらしいが、もう死んでいるので無問題だ。

キシリア姉さんとかに目を付けられたかもしれないが、ドズル兄さんと一緒で、良い成長だとか、自分を救うきっかけになったのだから良しとしてもらえると思う。

(あれ、あの二人に兄さんとか姉さんって呼んだっけ? まあいいや)

 憑依による影響がこちらにも出て来ているのかもしれない。

しかしこの程度ならば問題無いだろう。

それに自分の行動で良い影響が出て居るならば、ガルマ本体の精神が蘇っても悪い様にはすまい。

 

「それにしてもコロニーを要塞として利用しようとは。流石はギレン閣下です」

「……そうですね。マハル在住の方を思えば辛い決断だったと思いますが……。しかしこれで我軍の損害が減るのも確かです」

 驚いたことに、ブリティッシュ作戦の意味合いが変更されていた。

廃棄コロニーを盾に使用し、自衛用の砲塔を固定砲台として利用するのだ。

確かに設置初期のまま輸送用のノズルは付いているし、砲塔も増設が可能ではある。

加えて言えばソーラレイ程の火力は望めないが、現時点で大きく劣る戦力を補うには突貫工事でも十分可能だ。

(でもなあ……。作戦名が作戦名だし、これ絶対に落ちるだろ)

 作戦プランを読むと、スペインやフランスそしてナチス・ドイツすら封じ込めたイギリスをモデルにしているらしい。

ソロモンを動かすわけにもいかないし、ドロスやドロワも木星航路に使って居た資源運搬船から改修中。確かに意図は理解できるが、原作知識を考えれば落ちると思わざるを得ない。

 

 というか打ち上げポイントに入る戦力を蹴散らす為の簡易要塞である。

確実に近くまで持って行くし、場合によっては砲塔を活かす為に押し出す事もあるだろう。

そうなれば事故じゃなくても阻止限界点を越えてしまう可能性の方が高くなる。

 

(というかソレを目論んでる? もし核弾頭をバンバン使った挙げ句、コロニーが落下すれば自業自得ってことにできるからな)

 原作でアイランド・イフィッシュが壊れたのは連邦の中途半端な成果。

そして地球の防衛力低下で終わったのは、ジオンの中途半端な成果だ。

だが続くルウムでは最初から囮であり、コロニー落としは考えてなかった説があった。

(そう考えれば見えて来るな。マハルは攻撃を受け止める盾であり、連邦の士気を落とす為の仕掛けかもしれない)

 最初からコロニー落としを目指せば、ジオンの悪名だ。

しかし偶然そうなったのならば連邦のせいだし、落とすのを失敗しても公表して無いから名誉も傷付かない。

 

「シ……」

「……」

 既に決まった作戦であり、画面だけでも上層部が頭を下げた結果である。

もはや作戦を覆すことはできないし、せめてシーマ様に声を掛けようとして失敗した。

どの顔下げて顔を合わせるというのか。

そして今考えた事を伝えようもないし、証拠も無いのだ。

掛ける言葉もなく、敬礼する事すらできずに軽く目礼だけをしてその場を離れることにした。

 

 こうしてブリティッシュ作戦とルウム戦役を合わせたような、奇妙な戦いが待ち受ける。




 と言う訳で鉄は熱い内に打てということで、二話目です。
ラプラス憲章が普通に発行された影響で、コロニーの一部はジオン寄り。連邦の強硬派がバンバカ迷惑なことをやったので、他も中立よりに移ります。
そしてブリティッシュ作戦とルウム戦役に相当する戦闘が、地道に同じ場所で行われる予定。

●ガルマの闘い
 特に何もしてません。
上官が吹っ飛んだので、その場で一番地位のあるガルマが野戦任官しただけです。
しかも占領部隊としてMS数機の他は空挺部隊なので、椅子に座っていただけという。
ですがまあ、指揮官の役目は責任を取ること、各種手続きを行うことがメインなので、まあ評価されてはいます。

●援軍の海兵隊
 コロニー突入前にガルマの手配した物資を受け取り、縁が出来ていました。
物資不足だったことで多少は感謝していますが、アサクラ大佐が気を効かせて援軍なった感じ。
というか原作と違って占領とかやる前に部隊が吹っ飛び、かつコロニー側でも核にキレた一部が暴動を起こし混乱が起きたのも一因です。
(そのまま占領してもいいけど、自治に任せて向こうから声を掛けてもらう……ということで、ガルマを助ける為に上層部が援軍許可を出したのかもしれません)

 なのでアサクラ大佐がすり寄ってきており、シーマ様達の好感度は微妙に上昇。
原作通り毒ガスを押しつける予定だった場合は、後から計画が場合はもうちょっと上がるかもしれません。

●ブリティッシュ作戦
 ナポレオンやヒトラーすらも封じ込めたイギリスがモデル。
マハルを武装化して移動させ、要塞であり後方基地にする予定。
と言うことになって居ますが、実質コロニー落としですね。
ジャブローからの打ち上げポイントだし、偶然行ってもええやろ? という目論見です。
まあ出来なければそれで別に良いのですが、ただの要塞として置いた方が名目として楽。
もちろん落下軌道に陥ることなく、無事に済めばルナ2にでもぶつけるだけでしょうけれど。

 実際にそんな強度があるかは別にして、原作と乖離する為に補給基地にはなるとしております。
(連邦側も序盤から核を使っているので、あっちの戦力が残っており、何らかの戦闘補助が必要だというのも理由です)

●ガルマの地位
 最終的に、次回の戦いで出世と野戦任官が続きます。
そして中将待遇の大佐ということで折り合いをつける予定。
野戦任官なら上官が死なないと駄目だろ……という制限は、結局ガルマがその方面に回されるので問題無くなる予定。
(安全な場所で待機 = 遊撃隊として投入予定)
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