カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第二部・第三話

●幕間はそのうちアッサリと

 シロー達が悪目立ちしながら進む影で、本隊は後方から徐々に侵攻を掛けていた。

というよりもポイント毎に資材や設置する為の砲塔を降ろすので、タイミング的には跳び跳びになる。

 

「ガルマ様。何をご覧になっていらっしゃるのですか?」

「姉上はプロパガンダで主張して居るのかと思ったが、随分と本気だと思ってね」

 荷降ろしの間に、まとめてプリントアウトしてもらった資料を眺めていると、アイナがコーヒーを淹れてくれた。

こればかりはザビ家と言えど宇宙では中々手に入らず、悪くない気分だ。

「一通り目を通しましたが、何かお気になる点でも?」

「これだが……。木星圏内での生活を豊かにするために、アクシズを改造するプランだよ」

 原作を知って居れば笑える筈も無い。

何しろジオン公国が敗北した後に、アクシズへ逃げ込む事になるのだ。

ハマーンは寒いとか言っていたし、居住区であるモウサの拡充や、要塞施設の追加は今の内から計画して損はないということだろう。

 

「まあイザとなれば逃げ込む事になるだろうし……。仮に戦争責任をザビ家が取る場合は、処刑ではなく追放刑なら受けると言う妥協を選択しても良い」

「捲土重来を期す……あるいは新時代の宇宙開発に未来を賭けるということでしょうか」

 アイナの答に私は頷いた。

今から準備すれば、Zの時代にアクシズで地球圏へ戻ってくることはやり易くなるだろう。

要塞を二つ分に増やしたりする事も可能だろうし、場合によっては0083の時代に戻ることも可能かもしれない。

もっとも地球圏が平和になって、火星で地道な惑星開拓や、木星で気楽に資源を採集する生活でも良いのだが。

「その時は私も姉上たちと仲良く行くことも成るかもしれないな。アイナも付いて来てくれるかい?」

「……考慮させていただきます」

 ジオンが敗北したら逃げ込むし、アイナは秘書役だし……。

と思って気軽に口にしたのだが、良く考えたらプロポーズみたいに聞こえなくもないよな。

かといって結婚を申し出ている訳でも無く、思わせぶりに行っている様にも、字義通り他愛ない言葉にも取れる。

 

 ……なんというか今更訂正するのも、どっちに受け取ったのか聞くのも恥ずかしいな。

それにOKだったら望む所だし、訂正したい訳でも無い。

 

「ゴホン。そろそろ次の作戦に付いて周知しておきたい」

「承知いたしました。みなを集めて来ます……」

 気まずいのを誤魔化す様に作戦の説明会を始めることにした。

とはいえこのまま宙ぶらりんでもマズイし、どこかで決断する必要があるだろう。

だがフラグを立てるのも嫌だ。いい機会とは言わずに、適当なタイミングで一気に終わらせるべきか。

 

 そんな馬鹿な事を考えながら、長引く迷いに決断を付ける。

 

●アラビア半島攻略戦

 士官たちが集うといつもより会議室が狭くなった気がする。

民族解放戦線のメンツが加わり、パイロット以外にも屈強な漢たちが増えたからだろうか。

もっとも、その内の何人かは立場が変わるのだが。

 

「いよいよバンダレ=アッバースを攻略し、この半島を連邦の手から斬り取ることになる」

「「おお!」」

 説明の序盤で太い胴間声が響くのは、やはり地元民の方からだった。

ロイ・グリンウッドやイアン・グレーデン、そして問題児の一人は黒人系だが……。

こうして眺めて見ると、民族解放戦線の連中と並べて遜色は無い。

意外と親和性を発揮しているのかもと思いながら、ラカン・ダカランやヨンム・カークスでも補充兵に呼ぼうかと、くだらない考えが頭をかすめる。

「次の戦いでは戦いに勝つのは当然として、今後の為にも諸君らとの団結で勝ち取りたい」

「異存は無い。俺達は選ばれた戦士だ!」

「そうだ! 臆する者など一人も居ない!」

 ザワめく一同を制するのに、しばらく時間が掛る。

説明の途中なので、できれば次の言葉を待ってほしかったのだが……。

 

「勝つのは当然と言ったよ。重要なのは集めた情報を、休む為の塒を、戦う為の牙を共に共有するのだ。もちろん私も前線に立つ」

「総司令が共に戦うと言うのか?」

「俺達と一緒に?」

 頷きながら本来は不用な駆動キーを持ってこさせる。

これはモビルスーツを始動させるのに使うと言うか、用途は逆で使わせないようにする為の鍵だ。

「それだけではない。モビルスーツも渡そう。必死に訓練している若者たちに、これを渡して欲しい」

「おお! あの巨人をくれるのか!」

「素晴らしい!」

「功績を立てたら、俺達にも巨人をくれ!」

 鍵はそのまま印章みたいなものだ。

ジオンが協力すると言う証であり、鍵の数が限られているということは全ての部族に行き渡らないと一目で判る。

務めて協力的である必要はないが、できるだけ穏健に物事を解決できる部族へ優先して渡す事になって居た。

功績争いとかはともかく、血で血を洗う抗争にならないでいて欲しいものだ。

 

 ガウは艦長に任せ、イザという時の指示はアイナに伝える段取りで戦いに赴く。

ペルシャ湾を渡り、一度迂回しながらバンダレ=アッバースへ辿り付くと、アマダ隊に砲列を向ける敵部隊が居た。

簡単に図解すると……。

 

アマダ隊(10) → ←連邦(40~) ←ガルマ隊(12)

 

 と言うところだろうか?

「数が多いですね」

「予定通りだ」

 そこに居たのは陸戦ジムを隊長機に、ジムを主力とした大部隊だ。

数を重視したのだろう、大型戦車は少なく61式が主体だが四十を越えている。

まあシロー達に目を引きつけさせ、そのまま北上させたのだから当然と言えた。

「グレーデン、援護射撃は任せる」

「直ぐにグリンウッド少佐の隊が駆けつける筈です。お気を付けて」

 判っているさとポーズを付けて出撃するのだが……。

実のところ、三方から囲むので問題無い。

敵の主力はシロー側に向いているし、どちらかといえば味方を傷付けさせない為の戦いだ。

 

 特に解放戦線の連中を落とす訳にはいかないし、突っ込むタイミングや距離の方が難しい。

そこで射撃の上手いグレーデンを後方に置いて、その援護の及ぶ範囲で攻勢に出る。

同じ様にジャコビアス・ノードをグリンウッドに付けて、こちらに近い位置でイザとなれば援護させる予定だ。

 

(陸戦ジムじゃない方の先行量産……ならばやれるはずだ)

 既にザニーは旧式化しており、ジムが配備され始めたようだ。

とはいえ装甲はルナチタニウムではなく、武装もビームスプレーガンじゃなくてマシンガンとバズーカ。

ビームサーベルは良く判らないが、まだ火力が上がって居るほどの時間は経ってないだろう。

頭では理解できるが実際に戦った訳じゃない。

操縦桿に伝わる震えを握り締めることで隠しながら、マイクをオンにして声を張り上げる。

「行くぞ諸君! 栄光は地球でもジオンでもなく、いま我ら達と共にある!」

「「おおー!!」」

 ハルバードを指揮杖代わりに振り降ろし、進軍を命じた。

慣れない解放戦線の若者たちは、移動中よりもちゃんと止まらせられるかが問題だ。

迂闊に飛び出て蜂の巣なんて、宇宙世紀でも新兵ならよくある話だ。

彼らを殺しては面倒な手間が無駄になるので、慎重に距離感と心理状態を見極めながら移動する。

 

 指揮官率先という訳ではないが、引率の問題で先頭に。

適当な所で足を止めキャノンザックを展開して砲撃準備を整える。

 

「戦友の残弾に気を配ってやれよ? 打方よーうい! 撃て!」

「構え、撃て!」

「「わー!」」

 少し近いかもとは思いつつ、大型戦車は居ないので問題無いだろう。

それでも威力の問題でジムではなく61式を狙いつつ、射撃戦を始める。

戦い慣れない新兵がそうであるように、歩兵としては熟練して居る筈の解放戦線の有志たちすら無駄弾を盛大にバラまいていた。

「ここでは当たらない! もっと前に!」

「駄目だ! ……それに直ぐにこっちに向かってくるさ。罠に掛るのを大人しく待って居ると良い」

「本当なのか!?」

 こっちは二十ちょっとで向こうは四十。

よく前に出る気になるなあとか思うが、モビルスーツを与えられて強気になって居るならそんなもんか。

 

「別動隊の出動により囲まれた事を理解したら、どこかの突破を図るだろう。ならば総大将である私に向かってくるに違いない」

「おお! そこまで判って居て迎え討つと言うのか!」

 そんな訳は無い。

こちらがインド方面であり、彼ら素人に毛の生えた連中が居るからこそ、突破しようとするのだ。

まあ最後まで撃ち続けて射耗して行くと言う可能性も無いではないが。

(まあ奴らにとって問題なのはモラルが持つかの方だな)

 何しろシロー達を援軍ともども叩き潰すつもりで来たのである。

更なる援軍込みで三方から囲まれて士気を保てるだろうか?

まだ囲まれる前、練度が低そうなこちらに向けて戦力を集中させれば、急げば来れる距離に居る援軍と合流できるかもしれない。

 

 その場合はドップとマゼラ・アタックの隊で足止めを掛ける手筈だから、来ないけどな。

できれば来てくれた方が、近くの基地ともども制圧できるのだが……。

 

「ガルマ様! 予定より早く敵が脱出を開始しました!」

「ふむ。グリンウッドが見つかったかな? まあ良い、二機一組で迎え討て! それと逃げたい奴は逃がしても構わん!」

 困った……が逆に考えれば好機だ。

どうせこの戦いは解放戦線に向けてのパフォーマンスだし、撤退戦が一番倒し易いのはこの時代でも同じだ。

逃げながらこちらを積極的に葬れるような奴が居れば、今の内に遠距離から潰してしまおう。

「砲門は邪魔だな。君達はここで待って居てくれ」

「おおっ! 跳ねたぞ!」

「あの数に向かっていくとは何と言う勇気!」

 実際には戦車の正面に居るよりも、回り込んで突入した方が安全だ。

ホバーモドキでステップを入れ、右から左に近接戦の準備をして居ない奴の脇を駆けて行く。

倒す必要など無い。驚かして足を止め、相手の陣形をくずせれば勝ちなのだ。

 

「総大将に続けー! 連邦の連中を生かして返すな!」

「「おー!!」

(あっ……)

 厳命しておけば良かった。

気が付けば解放戦線の連中が飛び出しており、突出させない為に連動して突撃してしまっている。

仕方無いので慌てて踵を返し、ビームサーベルを持ったジムや大型戦車を特定する。

「シロー! 居るならグリンウッドも手伝え。火力のある連中を掃討する」

「了解! 今行きます!」

「はっはっはっ! まさかこうなるとは思いませんでしたな」

 同じ様にホバーモドキを付けた機体が駆け付けて来る。

グフスタイルのザクはともかく、ドムはシロー達以外には無い。

急いでジムの部隊に追いついて、殿軍に残った陸戦ジムを迂回しながら再突入して行く。

 

 いささか妙な方向に進んだ物の、こうしてアラビア半島を巡る戦いは終了した。

顔を真っ赤にして怒るアイナはレアだったので、良しとしておこう。




と言う訳でアラビア半島を確保。
ここの両脇を要塞化しつつ、半島全体に監視網と小規模な陣地を。
現地民と友好関係を築きながら、オデッサの南ルート・キリマンジャロの東ルートに当たる位置を強化します。
もちろんキリマンジャロ基地周辺は見える形で大幅強化するので、あえてこのルートの上へ誘導する感じですね。
今から落としに行くイラク~インドルートも似たような感じです。
問題は……原作だと複数のルートから四倍(?)の戦力が個別に来るのに対し、このままだと五倍以上の敵が来そうなくらいですかね。

●アイナ関連
 いいかげん長いので、そろそろケリを付けないとなぁ。
という感じなのと、キシリア様が微妙な事をなさってる報告。
そのうち火星のテラ・フォーミングでもしようと言い出すんじゃないですかね。

●連邦のMS
 量産型ザニーは終了。
次に出て来るとしても、腕部とかを改良したというか、本来のザニーでしょう。
まあジムが生産され始めたので、もう必要ないかもですが。
そろそろ数が出そろうので、温めの戦いは終了します。
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