カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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外伝:フラグブレイカー

●強襲作戦

 イラクに入って暫くは、快進撃が続いていた。

誘き出し作戦に懲りた連邦軍は、陣地戦を行いつつ徐々に後退。

最大の被害は砂塵で起きる電子回路の不調、最大の功績は防塵フィルターの開発とまで言われた。

 

 それが劇的に変わったのは、月を越えてからの事。

半壊したザクと砕けたシールドが、何よりの証拠を見せつけてくれた。

 

「アレにやられたのか?」

「丘陵に掘った塹壕へ籠っての砲撃戦です。思えば緒戦でも苦労したと聞きます」

 双眼鏡を降ろすのと舌打ちと、どっちが早かっただろうか。

舌打ちは自分自身に向けての事か、それとも苦戦し始めたことにだろうか。

「あの……」

「違うよシロー。勝ち戦に慣れ過ぎたなと思って。私もだがジオン軍は本来、劣勢の筈なのにな」

 忠告しようとするシローを制して、怒ってはいないと告げた。

聞けば損害だけで死んでは居ないそうじゃないか。ならば叱りつける必要などどこにもない。

 

 ……まあ連戦連勝を傷付けられた御曹司であれば叱責の一つもするだろうが。

ジオンがいつか負けると知っている私にとっては、楽勝ムードを終わらせる幕開けに過ぎない。

 

「ザクはまた作ればいいが、人間はそうもいかない。全軍への教訓になるならむしろ安いものさ」

「そうですね。しかし、教訓ですか?」

 ホっとした表情のシローに頷いて、丘陵の周囲を指差す。

そこにはモビルスーツは居ても少数で、主力の全てが戦車や砲座であることを教えてくれる。

「我々がやろうとしている陣地防御を、連邦が教えてくれたわけだ。意図して試してみたのなら、パイロットには勲章を申請しても良い」

「ははっ。そこまで都合良くは行きませんけれどね。無茶をしないように言い含めておきます」

 ……無理やり良い話にしたが、どうしよう。

現実問題としてザクは良いんだ。少しずつ更新するし、半壊でも残っているなら再利用できる。

ザクタンクは優秀だな……じゃなくて、ここをどうやって突破するかだ。

 

 丘を無視して迂回する?

そうしたら大部隊が狭い道で待ち受けているとか、普通にありそうだ。

ではザンジバルやファットアンクルに格納して、戦場を移す?

それをオデッサ戦の前哨戦でやる気なのだから却下。ここで教える必要は無い。

解放戦線の連中を使うのも同様の理由で却下。故郷と尊厳を守る戦い以外で、無駄死させる気は無い。

 

「第一案は曲射攻撃。しかし対策くらいはしていそうだな」

「待つ側ですからね。塹壕の傾斜やベトン・セメントによる防護くらいはしていそうです」

 現地民の感情とか考えて無いのだろうか?

考えて無いからできるのか、それとも私達と同じ様に問題の無い場所でも選んでいるのか。

「第二案は爆撃。ないし質量兵器」

「搭載型を優先した為、爆撃型のドダイは配備が遅れてます。それに時間を掛けると危険です」

 斜めでは駄目なら直上からの攻撃は?

できなくはないが、時間を掛け過ぎると敵の航空戦力が飛んでくる。

ドダイYSを注文したのは自分なので、無い物強請りは厳禁だそうだ。

 

「仕方無いな。やりたくはないがカタパルトで直接降下しよう。ホバーモドキを付けた機体を至急、集めてくれ」

「はっ! ……ところで司令も降下されますか?」

 アイナに怒られるのでやりたくなかったが、他に速攻で抑える手段が無い。

シローに頷いて見せながら、誰が居たかを思い出し始める。

三馬鹿のうち一人はあのザマなので(だから生き残ったとも言うが)、残り二人。あとはシローくらいか。

砲兵屋のグレーデンは付けて無いし、グリンウッドは別方面に行ってるからな。

ノリスをヨーロッパの備えに残して居るのが、非常に残念だ(だからこそグリンウッドを借りているのだが)。

「命がけでやれと言うのに、指揮官が後方では付いて来んよ。無意味に前に出る気は無いがね」

「今回は対空砲座が無いから大丈夫だと判って居ますが、あまり無茶はしないでください。俺も怒られるんですから」

 すまないが一緒に怒られてもらおう。

なんて思っていたのだが……。アイナさんは無茶苦茶御立腹だった。

 

 現時点で四機しかないと思ってたのに、なんで五機目があるんでしょうかね。

 

「アイナ……。君まで参加する必要は無いと思うのだが」

「これでもパイロットです。御下がりになるとしたら、ガルマ様の方ではないでしょうか?」

 非常に正論です。

しまったな。使って無かったアイナ機を忘れていた。

普段は予備に回してるんだが、三馬鹿の一人がやられたんで補充の時に用意したんだろう。

まあギニアスが用意したもんで、他人に渡して無かったから、直ぐに持って来れるからな。

「大将の負けだぜ。とっとと始末すりゃあ良いじゃねえか」

「そうそう。四機と五機じゃ掛ける時間が違うもんな」

「……くっ。仕方あるまい。アイナ……あとで少し時間をくれ」

 他の連中はみんなアイナの味方だった。

女神さまには逆らえませんよと言った風情で、肩をすくめるばかりだ。

 

「なんでしょうか?」

「できるだけ怪我はしないでくれ」

 なお、この後、無茶苦茶怒られた。

……と続けても良かったのだが、長引くのは良くないのでここで終わらせよう。

フラグを立てるのは嫌なので、強敵の居ない今の内に押し切ってしまおう。

「他人を我儘に付き合わせるのは好きではない。……こんな時に言うのはなんだが、地獄じゃなくて未来に付き合ってくれないか? 君と一緒に歩いて行きたい」

「……ガルマ様。それって……私の勘違いではありませんよね?」

 惚れた女の為になら命を賭ける……じゃなくて。

自分の女でも無い相手に命を賭けさせるのは嫌だというか、まあ、なんだ。

話が繋がらないな。

駄目だ、パニクって来た。出撃前にやるんじゃなかった。

 

「好きだ。一緒になって欲しい。兄さん達は説得する。……ああ! これじゃあ伝わらない。愛して居る!」

「ガルマさま……私でよろしいのですか?」

 よろしいも何も他人間では嫌だ。

というか、今更北米に行ってイセリナも何も無いもんだ。

それにずっと一緒に居てくれたのはアイナだし、吊り橋降下かもしれないが……。

アイナが満更ではないのも知っていたしな。もしその気が見えなかったら一生言えなかったかもしれん。

「私は他の誰よりもアイナが良い。もし、愛ではなく隣人として好きなのならば時間を掛けて、私の事を知って欲しい」

「私もお慕いしております……」

 お互いになんだか陳腐な気がするが、それもまた良しと言うほかあるまい。

もしかしたらギニアスの指し金で、婚活に引掛っただけかもしれないが、今更後には引け無い。

あとはギレン達に政略結婚を押し付けられない様に、何とかするだけだ!

 

「ではみんなが待って居る。行こうか」

「はいっ。ガルマ様」

 できれば呼び捨てにして欲しい気もしたが、仕方無い。

憑依した以上は名前なんか記号みたいなもんだ。

今はOKもらえて良かったと思っておこう。

「……司令、おめでとうございます!」

「貴様ら……」

「貴方達……」

 なんというか私の行動は読まれていたらしい。

シロー以下全員がそこに待機しており、花束と酒を用意して居た。

というかこの花束、経年対策処置がしてあるじゃないか。

何年掛ると思ってたんだよ!!

 

●フラグとの戦い

 祝砲が盛大に上がり始めた。

イアン・グレーデン他、キャノンザックやマゼラトップ砲を持つ機体によって援護の砲撃が始まる。そしてマゼラアタックからは五分しか飛べないというのに、マゼラトップが飛行して牽制を始めた。

 

「アマダ大尉たちのマリーネ・タイプが先行します。ドム試験型発進!」

「私達も続くぞ!」

 カタパルト発進でドム二機が先行する。

ホバーモドキで減速しながら降下し、黒い三連星がやったことを再現する。

続いて我々も降下して、敵が待機する丘の直上を奪った。

「ガルマ様! ジムです!」

「やはり居たか! シローとアイナは掃射を続けろ!」

「はい!」

 これを予想して居た訳ではないだろうが、歩いて登って来た時に備えていたのだろう。

ジム二機が起動し、長距離砲を投げ捨てながらビームサーベルに持ち替える!

 

 そして問題児達が迎え討ちに行った時……。

アイナとシロー目がけて動き出す影があった。

 

『宇宙ネズミが!』

「陸戦ガンダム!? やらせん!」

 ザクマシンガンで射撃しながら、体当たりを掛ける。

厚い装甲は本家RX-78ほどではないが、それでも130mm程度では焼け石に水だ。

だがこいつはフレ-ム対応型ではないし、エースでも無かった。

「なんとか行けるな! アイナから離れろ!」

「いけませんガルマ様!」

 頭のバルカンを警戒しては居たが、良く考えたら胸にランチャーがあるんだった。

だがそれでも右手への注意は反らして居ない。

咄嗟に二の腕へザクマシンガンを叩きつけ、こちらもシールドから抜刀態勢に入る。

 

 ガンガンと装甲を削る弾に焦りもするが、幸いにもその挙動は思ったよりも鈍い。

後から思えば、リミッターが掛けられていたのだろう。

先行ジムより早い程度、ザニーと比べれば遥かに早い程度だ。

 

『効かんぞ!』

「ガンダム倒せぬは、先刻承知!」

 時折に御肌の接触回線で聞こえた様な気がする。

だが戦場で相手に通信等すまい。ただの勘違いだと思いながらヒートサーベルを振るう。

ビームでこちらの刃が削れるが、それでもまだ、サーベルが斬られるほどの威力ではない。

「私が刻むのはお前ではない! 時間だ!」

『なに!?』

 サーベルはあくまで相手の胴へ、余計な事を考えずに当たり易い場所を選ぶ。

打撃兵器を兼ねたシールドを強打しつつ、丘の上に居るという優位を活かして押し込んで行く。

時間を掛ければ内のエースが駆け付けるのだ。

重要なのは倒す事じゃない、自分にもアイナにもビームサーベルを向けさせないことだ。

 

 やろうと思えば勝てるのに、後ろ向きだと笑いたくば笑え!

今は名誉よりも、女の無事(アイナ)が欲しい!

 

「ちゃお! お・ま・た・せ!」

「酒でもたらふく呑ませてもらおうか」

「酒保ごと買ってやる。ビールしかないが呑み切るまで文句は言うなよ」

 冗談めかして駆け付ける二人にガンダムの相手を任せ、私は周囲の確認を行った。

倒したつもりのジムがロケット弾を向けているだとか、サーベルを投げるとかやられたらたまらない(投げたら機能止まるが)。

「アイナ、君は無事か!?」

「モビルスーツ隊が麓を攻略しました。その……私は、私も無事です……」

 抱きしめたかったが、かえってフラグが立ちそうな気がする。

拳銃で撃たれるとか、実は融解し始めていた融合炉に巻き込まれるとかは嫌だ。

せっかく両想いになったのだし、今日はさっさと引き上げてラブラブしたいが……。

兵士たちの手前、ローテーションでの休日まで待つか。

 

 せっかくフラグも折ったし、時間のある時にイチャイチャしよう。

そう思った時、今更ながらにユニコーンのトリントン戦を思い出した。

良く考えればファットアンクルのハッチを開けて、ビームランチャーで撃てば良かったな。

先行量産の前面ハッチ型なら、無理な態勢にしなくても撃てるのだから。




 と言う訳で、アイナに告白回。
長くなったので、ここで決着を付けておきます。
戦争なので日常回以外では、表面上は自粛するんじゃないでしょうかね。

 本当は予約に失敗して昨晩のうちに出してしまったので、今朝は出さない筈でした。
しかしアイナに告白回を書きたいなあとか、ネタとして長くなったので中学生みたいなのはさっさと終わらせたくなったので、書いてしまいました。
まあ恋愛物は書いたことなかったので、寒かったらすみません。

 思い付きもあって、今回は純粋に戦術上の事以外は特に何もありません。
インド方面に進行し、オデッサ対策を始めるのは次回になります。
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