●連戦、また連戦
まだ敵の残りは状況を把握はして居ない筈だ。
補給や修理も惜しく、一番損傷した三機を追撃された場合の備えに残す。
手持ちの弾薬を融通し合って、交戦しているもう一隊を連戦で潰す事にした。
「この戦い如何によっては、インドでの戦いも一気にケリを付けることができる。諸君らの奮戦に期待する!」
「おおー!」
いくら連邦の国力が強大でも、毎日十機の補充などは無理だ。
いや、オデッサに向けて投入予定の戦力をスリ潰してくれるならば、それもアリだが。
(ともあれインド中部の戦いを制すれば、当初の目的を体面上だけでも成功させることが出来る)
そうなれば連邦はオデッサ作戦を前倒しで実行するか……。
それとも当初の予定のまま、インドシナやオーストラリアまで下がるかの二択だ。
前者であれば五倍の戦力と戦う事を避けられるし、後者であればオデッサに至るまでの道に出丸を築ける。
いずれにせよ、原作よりも勝算のある戦いを挑むことが可能。
なおかつ一年戦争という単語を越えることが出来る。
総合力では連邦の方が上でも、経済・工業・農業の主要地帯を抑えている事もあり、来年以降の戦いはガラリと変わることになるだろう。
「司令! 左翼のグリンウッド隊が見えました!」
「押されて……いや。あいつらも戦力を隠して引きつけたのか。挟み討ちにするぞ!」
「了解!」
ようやく追加された試作型ドムを中心に前衛を築き、地形を利用して臨時の防壁にして居る。
損傷した機体を後ろに下げて防戦しているように見えるが、上から見れば時間稼ぎなのが丸判りだ。
時々中衛を交代しながら、手持ちのシールドを前衛に渡してやるほどの余裕があった。
「場合によっては三連戦もありえる! 無理をするんじゃないぞ!」
「無理を言ってるのは大将じゃねえか! んじゃ降下するぜ!!」
「言った端から……。申し訳ありません、自分も参ります!」
怪我してないもう一人の問題児が苦戦していると見て、良い恰好を付けようと馬鹿が降下する。
そのままでは孤立するので、仕方無くシローもホバーモドキを吹かして降下した。
通信をファットアンクルの操縦士に入れつつ、近くの整備用ケーブルを機体に設置。
そして改めて部下に命令を伝達する。
「お前達は確実に降りろ。私はこのまま空中から援護する!」
「了解です!」
「流石にアレはできませんや」
カークスの真似をしてマゼラトップ砲で砲撃。
前面扉なので横倒しにはせずに、艦砲代わりに攻撃するだけだ。
まずはシロー達に砲火を集中させようとする連中の鼻先に向かって、目立つように撃ち込む事にした。
「グレーデン隊は位置の占有を優先! 合流後は臨時にグリンウッド隊の指揮下に入れ!」
「了解っ。暫くお任せします!」
いきなりの曲芸飛行しながらでは正確な指揮が取れないし、援護も驚かせる程度だ。
本格的な攻勢はイアン・グレーデンが砲撃位置を取り、グリンウッド隊が挟み討ちの為に前へ出てからだろう。
今更ながらにこの状態から直撃させたり、仲間に指示を出せるカークスすげーなーと思う。
しかし、ファットアンクルの前面扉はジオンの地上知らずを示す一端だったが……。
こんな時に妙な活躍ができるのが面白い。
前にも思ったことだが、こういう特徴を活かせれば面白い装備もできそうだ。
(というかアプサラスの試作って、ファットアンクルに乗っけられる三機の融合炉で良いよな)
ルナタンクから無理に発展させなくても、融合炉の機体、砲撃の機体、管制の機体。
この三つに分散させてテストしつつ、複数の融合炉を試すのは後で良かったんじゃなかろうか。
(あるいは劇中作だからモビルアーマーで、正史ではファットアンクルがアプサラスⅡであり、ケルゲレンでやったのがアプサラスⅢって可能性もあり得るよな)
その段階で段々と融合炉の出力、そして搭載量が上がるのだ。
確かめようがないが、その方法でビームキャノンと砲撃システムを試せば何とかなりそうではある。
もちろん装甲の問題はあるし、高速飛行は難しいので、ジャブローを攻めるのは難しいかもしれない。
だが重要拠点を護る為の戦力としては、十分に可能性があるだろう。
そんな事を思いながら援護砲撃を掛けていたら大変な事になった。
当たり前のことだが自分達が考えることを敵が考えない筈は無い。
流石にミデアでもう一隊が来るとかは無いが、急遽編成されたらしき航空機部隊が彼方に見えたのだ。
「やれやれ。楽には勝たせてもらえんらしい。お前達は下がるか着陸して難を避けておけ。私はグレーデン隊と共に対空迎撃を行う」
「申し訳ありません」
これまでは序盤以外は見なかったんだがなあ……。
ドップ部隊とザンジバルで退けた筈の航空機部隊がアッサリと再編成されている。
その事に脅威を感じつつも、相手の拠点が近い事を思い出した。
(こっちが連戦で基地も行けるかもって思ったけど、同じことを向こうも警戒したって事かな。今ならば地上部隊と連携して守れるとか)
これまでは一定の数が居ないと効果がないので、下がって居ただけなのだろう。
数を重視し、確実な戦いを行う連邦なのだからある種当然のことだ。
それに機種転換訓練を行って、モビルスーツ乗りに成る者は一年戦争の序盤に多かった筈だ。
これからは十分に人数が達したと見なして、無理には後方に下げないつもりなのかもしれない。
「タイミングは専門家に任せる。やつらの鼻先に叩き込んでやれ」
「了解です。マーカーを送ります」
元々キャノンザックは砲撃よりも、対空攻撃に備えられていたらしい。
それが援護にも使える事に気が付いて、ザクキャノンの役目が変わったのだとか。
火力小隊を任せているイアン・グレーデンも、元はと言えば対空任務で名前を馳せていたらしい。
手元に居るのがとてもありがたい存在だった。……我儘も言わないしな。
「護衛の戦闘機隊は隊列を乱すだけで構いません。爆撃機をやりますよ!」
「了解した!」
ファットアンクルは低空飛行に切り替えて、TINゴットから逃れようとしている。
ここで隊列を乱せば逃げ切る可能性の方が高いだろう。
それに危険性はフライマンタの方が……。
っ!?
私はここで原作知識を思い出して居た。
馬鹿だ……。ホワイトベース隊のことを覚えているならば、当然思い付ける筈なのに!
「ジャンプジェットザックを付けた機体があれば跳べ! 当てる必要は無い! 隊列を乱せばこちらの被害は激減する!」
「その手があったか! 付いて来い!」
「無茶を言うなよ。ドムは重いんだぜ」
グリンウッド達の機体が空を舞う。
ガンダムがやった様に高度はないが、強襲作戦やホバー実験を兼ねて強化したジャンプジェットザックだ。
機体を空に飛ばし、マシンガンやバルカンを放つ程度の余裕はある。
そして爆撃の為に高度を下げた機体へ、ワイヤーロッドを引っ掛けるのは流石の腕前だろう。
「私としたことがこの程度の事を思い付かないとはな。これまでは不要だったが、戦術の一つとして考えるのも良いかもしれん」
「勘弁してください。この状態じゃまともにゃ当たらんでしょう」
私はニヤリとしてグリンウッドに笑い返す。
アムロはガンダムだから出来た話で、ザクでは無理だ。
そんな事は先刻承知の上。飛行試験型グフの二の舞をする気は無い。
「ファットアンクルから降下する時ならどうだ? もちろん下からの対空砲火が無い場合に限るがな」
「まあそのくらいなら可能ですか。オプションとしちゃあ、できないより出来た方が良い」
私が思い浮かべたのは、パラシュートを背負って降下中に射撃して居るシーンだ。
ジャンプジェットのザックは飛べるほどじゃないが、降下時に落着を和らげる効果がある。
ホバーモドキも使えばかなりの高度からでも可能で、無理に飛ぶよりもそっちの方が確実だろう。
そんな話題を終えて敵部隊を掃討し、すごすごと引き返す航空機部隊を見送りながら合流を果たした。
「よくぞ無事だった。その上でまだ動ける機体と弾薬量を教えてくれ。無理ならば引く、可能ならばこのまま基地を叩く!」
「グレーデン達を中心に十機ってとこですかね? まあ相手の規模に寄るとだけ言わせてください」
砲撃屋のグレーデン達は当然損傷が少ないが、残りはそうもいかない。
景気良くバラまいて援護射撃を行ったり、相手の突撃を止めたことで弾薬も残り少ない。
結局のところ前面に十機、残りは後衛に立たせるだけで圧迫すると言うことになった。
相手の司令官が戦力の払底を嫌ったこと。そして闇夜のフェンリル隊の接近を確認して居た事。
そして連邦内の作戦もあり、早期に後退を決めたようだ。
表面上だけはインド亜大陸を制したが、……とうとうオデッサ作戦の弾き金を引いてしまったようである。
と言う訳で、サクサクとインドを占領?
次回からオデッサ作戦に至る連続作戦、キャンペーンの開幕です。
相手の数をジオン側が把握して居るのもおかしいので、次回の冒頭は連邦側からになると思います。
久しぶりに死神部隊の出番ですが、向こうも新兵を加えて頑張ってるんじゃないでしょうか。
●量産型アプサラス
ファットアンクルにビームキャノンを搭載した機体を乗っければいいんじゃね?
と思い付きましたが……。残念ながら時間が無いので間に合いません。
もしインドを来月に攻略して、その次の月くらいにオデッサ作戦だったら可能だったかもしれませんが。
思い付いたのが遅すぎるんや。せめてザンジバルでアプサラスⅢというアイデアを思い付いた時に、思い付いて居れば……。と言う感じですね。
●対空作戦
半分くらいは味方を鼓舞する為のジョークです。
ザンジバルの砲撃で蹴散らし、ドップで制空権を取る方が確実ですし
攻め込まれている時は、普通に対空砲座で守った方が安全ですから。
アムロみたいに出先で母艦が襲われない限り、やることは無いでしょう。
●ガルマの新専用機
設計だけは開始。
非匿名はガンダルヴァ、表向きのコードネームはギャン・La・ハットになる予定。
まあ設計だけで、実際にオデッサまで攻め込まれるまでは、完成どころか素材もありませんけどね。
アイナ専用機は最初からアプサラス。アンダルヴァが音楽家の旦那さま、アプサラスは女性の天女なので。