●二階にあげて、階段を外せ
連邦軍の大部隊、胎動す。
その方を掴んだジオン軍も、にわかに動き出した。
「諸君! 連邦の総数は三百を越える大軍らしいぞ。大したものだな」
「これを百に満たぬ数で迎え討つとは、物語の主人公にでもなった気分ですなぁ」
「司令! 如何いたしますか?」
サクラを頼まずとも、グリンウッドはニヤリと笑いグリンウッドは生真面目に確認する。
既にそういう役割ができており、兵士達もいつものように受け止めている。
「来ることは判って居た。ならば対処する手順が多少変わるくらいだな。シロー、目標の地図を」
「はっ! これが最初に攻める敵拠点と、相手の戦力です」
「攻める……? しかも総数が既に判っているのか?」
迎撃作戦の伝達をする筈なのに、なぜ真逆の言葉が出て来るのか?
しかも相手の総戦力が、事細かに表示されて行くのだ。
「あれ? これって……?」
「そうだ。迎撃作戦に先だち、動かせる全力を持って、旧パキスタンで踏ん張る連中を掃討する」
表示された地図は以前に戦った拠点。
そして籠る戦力は、陸戦ジムを隊長機とするジムの軍団が二十機ほどだ。
あれから半放置して拘束だけして置き、飛んで移動しようとすることだけを避けて居た。
内部に籠って邪魔をする事に意味があるので、相手も無理に付き合わずにズルズルと長引いていたのだ。
「理屈は判ります。……ですが、それでは前線への到着が遅れてしまうのでは?」
「そうなればせっかく確保したインドを、易々と取り返されてしまう可能性が……」
「判って居るとも。だが無視しえない条件が三つあるのだ」
一つ目は言うまでも無く、後方を突かれること。
二つ目は連中を囲んで居る戦力で、これからの戦いには重要な力になる。
地上戦力主体でザクも損傷したものも多いが、それでも連邦との戦力比を改善するには必要だ。
ということにしておく。
これから話す三つ目もだが、実のところそれほど意味は無い。
連邦から真意を隠す為に、味方からも隠しているに過ぎない。
「攻略したばかりの前線で万全の防御などできまい。私は無駄に君達の命を散らす気など無い。既に遅延作戦は不用と伝え、無防備都市宣言も準備させている」
「ということは、防衛はインド中央部からということですか?」
「それなら迎撃できる可能性も上がりますね」
これこそ仕込んでおいたサクラによる発言だった。
一番困るのは『放棄するなら、なぜ攻めたのか?』とか、『我々の血で購ったモノを捨てるな』と言われることだ。
最前線は連邦が捨てたり、後方撹乱のついでに回収した場所が多いので大丈夫だと信じたいが、それでも理想論を言われるのが困る。
「仮に連邦が百機のモビルスーツを計算するとしよう。だが先に後方の二十を叩き、占領に二十から三十を使用させれば互角に持ち込める」
「それなら勝てるか?」
「納得です。ですが……」
そんな訳は無い。
連邦の国力ならば、旧パキスタンの連中無しで百揃えられるだろう。
というかそもそも、新型やザニー込みで百を越えている可能性すらあるのだ。
だがここでは士気を上げるため。
上層部の努力次第で、何とかなると思えるならば最後まで戦いぬけるだろう。
どうせ誰も彼もが死地に赴くのだ、そのくらいの安心感くらいは与えてやりたい。
「仮に相手が全てのモビルスーツを移動させたら?」
「当然の疑問だな。その為にフェンリル隊は合流しなかった。そしてロシア戦線に残した海兵隊を投入する」
それでも疑問に思い、後から後から不安に思う物だ。
だから此処もまた、最初から仕込んで居るサクラとの答弁で乗りきっておく。
まあこれが続いて、大本営みたいな官僚答弁になっても困るけどな。
「そういえばゲラート少佐はモビルスーツと補給物資を受け取ると、そのまま移動したな」
「確か海兵隊は一足先に新型に乗り変えている筈だ」
「おお……」
後方の連邦戦力が二十消滅し、質の高い戦力が相手の背後に潜む。
イメージ的にも判り易く、そして前後から挟み討ちされるのは、自分達では無く敵だと言う認識は強い。
仮にスパイがこちらの情報を流したとしても、それなりに信じてくれる筈だ。
基本的にはこれが建前、あくまで表向きの理由だ。
本当の所は……。
(チェスや将棋でもあるまいに真面目に戦って居られるか!)
なんでジムが百機も居るんだよ。連邦チート過ぎじゃね?
これに陸戦ガンダムまで居るし、もしかしたらガンダムだって間に合っているかもしれない。
そいつらに付き合って正面から打撃戦とか、頭おかしいだろう。
(どうせ全部の局面で勝つのは無理なんだ。最初の一手は安全に後方を綺麗にしつつ、捨てた前線で相手の布陣を確認してやる)
予め撤退せよと伝えてあるので、無駄に損耗する必要が無い。
同時にこちらの偵察要員や機材を残す事ができるので、丸判りとはいわないが、数と構成くらいは判る。
無防備宣言した町や拠点を破壊するとも思えないし、本当に戦力を残してくれたら儲けものだ。
構成を把握したら勝てる場所にだけ挑みに行けばいい。
数が足りなければ、拠点を捨ててそこに置いた戦力も回収するまでだ。
それこそホワイトベース隊が結成されて居たら、マグマに水を注ぎに行くようなもんだ。
勝てない相手には挑まない。
勝てない相手がやってくるなら、モビルスーツ以外の戦力で足止めするまでだ。
だからこそ、フェンリル隊以外の後方撹乱要員には、新型や戦艦なんて大物よりもディッシュのような偵察機を潰せと伝えてある。
後は……補給部隊を叩ければ最高なんだけど、流石に三国志や銀英伝見たいにはいかんよね。
●専用機再び?
そうこうして攻撃の準備を整えていると、ギニアスから連絡があった。
補給物資やドムの件は終わらせているが、世間話をするつもりでもあるまい。
「そちらも順調なようだね。今日は君へ渡す持参金代わりの品を見せようと思ってね」
「こちらが用意できる引き出物としては、分解した木馬の使用許可くらいですか」
ペガサス級は分解して技術検証に回しているが、パーツは幾らか残っている筈だ。
アプサラス計画の為に使って良いか、確認しにきたのだろうか?
この時はその程度に考えていたのだが……。
「それはありがたい。さっそく使わせてもらうよ。君へ渡すのは、新しい専用機の設計図だ」
「ガルマ様。こちらです。兄からこの場でお渡しせよと預かって居ました」
「ありがとうアイナ、見せてもらうよ」
この野郎、勝手に使用して居たな……。
腹は立つが、そうでもしないと間に合わないなら仕方無い。
できればインド戦線に持ってこれれば良いが、それは贅沢というものだろう。
とはいえオデッサ戦までには完成してくれないと、地味な勝負の連続になる。
胃が痛くなるし、もし相手に隠された切り札を持って居た時に対処が不可能になるからだ。
そう思って設計図を確認すると、どこかで見た『キット』の図面がある。
何と言うかビルドファイターズ・トライで見た、アレとアレの合いの子と言う感じだ。
「これはギャン……スロット? いや、Rギャギャ……」
「うん? ああ、ギャンのイメージにランスロットを見たのか。確かにリファインしたギャンをベースに考えているが……君も随分とロマンチストだな」
ロマンチストなのはお前の頭だよ。
そう言いたくなる気持ちを抑え、ギャンスロットとRギャギャの中間というしかない設計図を眺めた。
肩のバインダーは可動式で前面展開するのは、こちらの要望通りだから構わない。
現在の専用機にあるショルダーバインダーは、制御できないので飾りだからな。
「手持ちが槍なので、以前にみたギャンの高機動プランを思い出しましてね。結局、ゲルググのコンセプトを採用と知って忘れていましたが」
「キシリア様の所で見た資料だね? 私も参考にはして居るよ。ビームサーベルの実用化を図るより、大型化の方が簡単だしね」
それも良い。
無理に小型化を目指して本当に間に合わなかったから問題だ。
それにルナチタニウム合金の装甲を考えれば、効率良いサーベルよりも大型武器の方が助かる。
しかし……。
完全にキリシアのイメージがギャン子のイメージになってしまったな。
紫ババアの頬がこけた姿から、ふっくら柔らかなボディになってしまう。
「それはそれとして、この頭上にある円盤は? 片方がレドームなのは判りますが」
「そう! それこそがこの機体の肝さ。指揮官機に必要なのは戦場の把握、そして防御力だ」
これは良い盾だ……と言うべきなのか?
だがサカザキ家のアレほど、強固な盾を作れるとも思えんのだが。
「この機構は通常はビームランスと同時には使用できまい。しかし! ひとたび稼働すれば、その辺りの粒子を遮る力があるのだ!」
「……まさかっ。I・フィールドを完成させたのですか!?」
そういえばアプサラスはビグザムっぽいけど、I・フィールド付いて無いんだよな。
ということはこいつ、アプサラスを護る為に私の機体に無理やりくっつけたのか。
そういえば正式名称は『ガンダルヴァ』になってるんだが、これってアプサラスの旦那様なんだよね。確か音楽の神であり、香りが好きなんだったかな?
言われてみれば試験型とはいえI・フィールドと、レドーム型レーダーあるならそれっぽいか。
ビームランスに接続されたコードの群れも、楽器に見えない事も無い。
「その通りだ! まだ未完成で試験機では動かす事もままならんがね。だがオデッサ戦までには間に合わせて見せよう」
「ということは……やはり計画は最終段階ということですか。それはありがたいっ」
ギニアスがこんな手間を掛けると言うことは、アプサラスが完成間近ということだろう。
でなければオプションに過ぎない……それも完成するか怪しい技術に手を出すわけがない。
そういう意味では、やはり技術的に優れた連邦の技術を流用した結果かもしれない。
「そうですね。秘匿名はこのままとして、表向きはギャン・La・ハットとでもしておきましょう」
「かの騎士が持つ、聖なる盾、聖槍、そして……聖杯と船か。良いだろう」
半分くらいはパーシヴァルの伝承らしいけどな。
まあこの場合はガンダルヴァという本来の名前、ワンセットであることを隠す程度だ。
丁度良い名前なので利用させてもらおう。
「しかしガルマ様。兄の事です。完成そのものはさせるでしょう。……ですが本当に、連邦軍の大軍を薙ぎ払えるのでしょうか?」
「陸戦ガンダムとか言ったか。アレに使用されているルナチタニウム合金を考えれば、不安なのは判る。……切り札の使い道を考えないとね」
実際の話、ビグザムは強力だったが戦局は覆らなかった。
アプサラス計画が完成したとしても、ザンジバルを利用した間に合わせであって、大軍を打ち破るのは難しいだろう。
だが何とかなる筈だ……持久戦で勝つ為の一環という作戦が、これで勝負できるかもしれない。
その意味では勝利の切り札になるかもしれないし、相手の切り札に対抗できるかもしれない。
完成するのがオデッサの本戦だとしても、それがあるのとないのとでは大きな違いがあった。
と言う訳で、ジオン側の逆襲計画です。
ジム100が120になる前に、先に潰してしまおう。
それを100を80にしたと言うことで、味方へのプロパガンダに使用しつつ、連邦に対しては前線に兵を送れなかった理由の作成です。
●ガルマの目論見
手持ち30弱、現地の防衛隊10程度
場合によってシーマの海兵隊6と、フェンリル隊(機数不明)も合流。
これで相手の戦力が薄い場所を叩くと言うのが、表向きの作戦になります。
これを支えるのが、前線を捨てて相手の戦力を把握する事。
感覚的には、ギレンの野望とか後衛ゲームの白紙地形をNPCに提供して、戦力分散を図るアレ。
まあコンピューターみたいに無意味な占拠はしないはずですが、何処に何機のジムが居るのかが判って居れば、話が違ってきます。
更にインドは広いので、運が良ければ繰り返せるかもしれない、あるいは連邦の方が、司令官の判断や派閥の指示で分散するかもしれない。
という計画になって居ます。
勿論、これが上手く行くとは限りませんし、連邦は普通に補充するでしょう。
仮に月生産30、これが今まではバラバラに配備だったとしても、この戦いの間は20ずつ送られてくるでしょう。
この為に勝つのは難しい。全てはオデッサ周囲の準備が整い、色々な開発が終わるまで待つ為。
そして原作では不可能だった、持久戦そのものが、連邦政府へボディーブローの様に効く筈だと言うどちらかといえば後ろ向きな計画になって居ます。
●ガルマ専用機『ガンダルヴァ』 = 『ギャン・LA・ハット』
ビルファイターズ・トライに出てきた、ギャンスロットとRギャギャの中間みたいな外見。
実際にはドムとかゲルググのガワを弄るので、完成時にこうなっているのかは不明。
主兵装はビームランスで、射撃は既存兵器。肩のバインダーは回転して射撃戦時の盾になる。
オマケに付いている日傘・帽子の様な存在は、レドーム状のレーダーとI・フィールドになる?
しかしながら現状では完成の目途も立っておらず、まともな方法では動かす事も出来ない。
最低でもアプサラスと合体し、メガ粒子砲を撃たない時に展開できる……かもしれないロマン防具。
●アイナ専用モビルアーマー『アプサラス』
原作のアレと違って、センサーその他をガルマのガンダルヴァに丸投げして居る。
更に大型火器としての性能はザンジバルであるケルゲレンが行うので、小型化・実用の為の検証機に過ぎない。
感覚的に言えばアプサラスよりは、ZZのメガライダーとか、ZのGディフェンサーを大きくした感じだろうか?
いずれにせよ未完成であり、やはり完成してもオデッサ戦の予定。
●アプサラス計画
ハイメガ粒子砲として、成功仕掛けて居ます。
しかしながら、完成してギニアスの思い通りに役立つかは別。
I・フィールドのあるビグザムで無理だったんだから、アプサラスも無理だよねという結論。
とはいえ戦略兵器であることには限りなく、戦局を変える為に使用するか、連邦の切り札対策には成る予定。
(ガルマが思い付くのは前者予定で、連邦の切り札はそのカウンターに使ってくるだろうと言う目論見で妥協)
●MS-09ドム
先行量産が配備され始め、本格的な生産も始まるとか。
原作と違ってバックパック式で、かつハードポイントに追加装甲や様々な装備が付けられる。
その代わりにホバーが未完成のままで、このままでも強力だし、いつでもホバーしないから良いんじゃない? ということになった。
なお今更の話だが、ホバーがいつまでたっても完成しないのは、ハードポイント式にした悪影響と思われる。
そりゃ本体全部使って、莫大な搭載量で実験しないと浮かせられないよね。
ただしグフなどの実験をハードポイントで済ませた為、配備は原作よりも圧倒的に早く、J型の次がいきなりドムである。
逆に言えば原作のドムが遅くなった理由は、ホバーにあるという説。(これはゲルググも同様)
各種ザック
1:ノーマル:バランサーやハードポイントの追加
2:ジャンプジェットザック:一瞬だけ高速ホバー、降下作戦用など
3:キャノンザック:いわゆるドムキャノン用。ザクと違ってS型やJS型意外にも可能。
4:ビームザック:ビームバズーカを使用する場合に、使う為の物。
なおビームバズーカの完成そのものは未定で、設置兵器のビームランチャーを使うしかない