カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第二話

●宇宙突撃艇ジッコ

 作戦ルームを待合室に使うと言う贅沢。

大きなスクリーンに映し出される詳細情報を見て、今更にガルマの立ち位置は恵まれていると思った。普通の士官はこんな物は見れないし、見れるとしたら後ろ暗い作戦を任せられる時だけだ。

 

「少数のジッコをこんな配置で……なるほど」

「ほう……。判るか、ガルマ」

 奇妙な情報を目に止めたのだが、口に出してしまったらしい。

野太い声に振り向きながら、頭の中で考えをまとめておく。

ガンダム系の資料や描写、そしてまったく関係ない漫画の似たような使い方を思い浮かべて、徐々に整理して行った。

「ドズル兄さん……聞こえてしまいましたか」

「構わん。それよりも続きを聞かせてくれないか? 俺もガルマの成長は知っておきたい」

 案の定、肉親に甘いドズルがそこに居た。

予想された言葉が返ってきたので、ゴホンと咳を入れながら簡単に説明を始める。

 

「専門家である兄さんに言うのは恥ずかしい限りですが……ジッコはミサイルの運用を主体とした宇宙突撃艇です」

「そうだ。奇襲攻撃や強襲攻撃に使っている」

 私が運用と言ったのに対し、あえて攻撃に使っているとドズルは口にした。

思考誘導して居ると言うよりは、ストレートにヒントを出して居るのだろう。

「数が少ないのは別の場所へ配置して居るからです。しかし、残った数では艦隊の嵩増しにも特定ポイントの襲撃にも使用できません」

「ふむふむ。それで?」

 ニヤニヤしながら頷く姿は、よくできましたと褒めているのだろう。

まんざらでも無いので照れてみせながら、先に別目的の方を終わらせておく。

大凡の検討は付いたが確信が持てる訳ではないので、少しでも考える時間が欲しい。

 

「此処に存在しないのは本来の用途で使用し、ルナ2からの援軍へ遅滞攻撃をする為でしょう」

「その通りだ。宇宙突撃艇の戦力などたかがしれているが、奇襲攻撃ならば艦隊の足を止められる。少しでも戦力は欲しいが、時間の方が惜しい」

 戦力に劣るジオンにとって、時間は何より貴重なリソースだ。

ルナ2に振り分けられた艦隊が後ろから迫っても、サイド3を狙われても問題になる。

だがジッコ程度の戦力で足止めできるのであれば、願ったりかなったりだろう。

更に言えば補給艦を潰したり、セイバーフィッシュを積載して居る簡易空母を損傷させられれば理想的である。

 そういえば何処かの銀河英雄の世界で、独眼流女史がそんな使い方をして居たような気がする。

 

 では、此処に残った少数のジッコは何に使用するのか?

後方から強襲させようにもそこは地球である。

敵の方が数が多いのだし、打ち上げ中の艦を狙おうにも簡単に阻まれて、特攻すらできまい。

 

「では残りは何のために存在して居る?」

「ミサイルの運用はガトルよりも得手としております。ならば特殊な弾頭を使いこなす為でありましょう」

 もちろん核弾頭やガス弾ではない。

それならばモビルスーツで十分だし、実際に連邦よりも良い成績を上げているそうだ。

「最初はビーム撹乱膜かと疑いましたが、間にあっているならばマハルを出す必要は無いでしょう。おそらくはアンチミサイル散弾ではありませんか?」

「フハハハ! 言い当てられてしまったな。ガルマならば将来、オレをも使いこなす参謀……いや将軍に成ってくれるだろう!」

 相変わらずの身内贔屓で恥ずかしくなりそうだ。

だいたいあんたは中将で、私が出世するよりも先に最高位まで行くだろうと言いたい。

 

 ……しかし予想が当たって居て安心した。

核弾頭の脅威にビクビクしていたが、対ミサイル用の散弾で撃ち落とすならば安心できる。

それならばジッコを艦隊に薄く広く配置して、ミサイル攻撃の雨が来た時にだけ前に出せば良いのだ。同じ使い道でガトルを使えば射程の問題でもろともに散華するしかない。しかしジッコならば、もうちょっとマシな射程があるだろう。

 

「ビーム撹乱膜は一応使い物になるらしいが、マハルに塗る分だけで精一杯だそうだ」

「おお! ならば我方の損害は更に減ることに成るでしょう!」

 おそらくだが、素材しか完成してないのだろう。

それを程良い射程で放つことも、散布して一時的に留め置くこともできていない。

だから特定の領域に……ミラーだけかな? に塗って後に開発されるビームコートみたいな価値を持たせているのだろうか。

「そういえばドズル兄さん。今回お呼びに成った件は?」

「おお、そうだ! お前の成長が嬉し過ぎて忘れておった」

 口に出してしまった思い付きに始末を付けたところで、私は本来の用事を訪ねることにした。

一介の少佐……戦時特例を入れても中佐が、ワザワザ呼び出される筈も無いのだ。

 

「ガルマよ。お前に専用の船をやろうと姉貴と相談しておってな」

「私はまだ少佐に過ぎません。巡洋艦の艦長席ですらまだ早いと思っているのですが……」

 というか、この間にムサイを預かったばかりだ。

まあ不幸な前任者が受け取る予定だった艦を、繰り上げで借りているだけとも言えるが。

「お前もザビ家を背負って立つ身ならば、我儘はいかんぞ!」

「それを言うならば兄さんだってファルメルに載って居るじゃありませんか。……ですが陸上戦艦か何かであれば、ありがたくお受けしたいと思います」

 どこが我儘だよ、常識を口にして居るんだよ。

そうは言いつつも、男のロマンとして自分の専用艦が欲しくないという訳ではない。

いや、銀英伝ファンでもあるので、むしろ欲しい!

 

 そんな多愛の無い事を思っていると、ドズルは神妙な顔を浮かべた。

急に引き締まった表情に、こちらとしても不意をつかれてしまう。

 

「お前はそんなに地球に行きたいのか? ザビ家に属する者が前線に立つ必要など無いのだぞ?」

「だからこそです。血を浴びる位置に、誰も送らぬ臆病な支配者を誰が望みましょう。それに……ザビ家の誰かが前線に行く必要があるのであれば、私こそが適任であるはず」

 支配者階級の誰かが前に立ち、将兵と生死を共にする必要がある。

死にたくは無いが、絶好の立ち位置なのはガルマなのは間違いがない。ギレンは言わずもがなとして、ドズルやキシリアも既に無くては成らぬ身なのだ。

「もちろん死ぬ気などありませんよ。ですが、これは心構えと私なりのプライドの問題なのです」

「お前も言う様になりおったな。やはりザビ家の子はこうでなくてはならん」

 ドズル兄さん、これで28歳なんですよ?

諸説あるけど、紫ババア23歳説の場合は、もっと若いんですけれどね。

 

 それはともかく、理論的にも、自分の出世的にも死なない程度に前線に出るのは間違っていないと思う。

というか、原作では自分でホワイトベースを仕留めに行こうとしたのが問題と言える。

余計な事を考えないのであれば、地球方面軍の司令官とか、凄い出世ではないか。

 

「まあ……その希望は聞いていたからな。だからこそ姉貴と相談して決めたのだ」

「姉上まで……」

 基本、仲の悪いはずのザビ姉弟が団結している。

思わず感動するとともに、改めてガルマがジオンの鎹であったことを理解させられた。

他に仲を取り持つ者がおらず、むしろ対立を煽るのだから分裂は必至であろう。

「それでな。地上向きの艦をあつらえるなら、お前に自分で名前を決めさせてやろうと思ったんだ」

「ということはネームドシップでないにしても、公式の登録名ですか?! ありがとうございます!」

 この感動は説明するに困る。

銀英伝でいえばブリュンヒルトは名前も素敵な艦であったが、それでも自分で決めた訳でも無い。

ヴィルヘルミナの様な例を除いて、自分で名前を付ける事は稀なのだ(技術者が趣味でとか、監督者が形式で決めるしな)。

 

 おおっとつい興奮してしまった。

ガンダムの世界なのだから、ガンダムの世界らしく決めないとな。

 

「どんな名前にしたい?」

「では『ガウ』でお願いします。

 なんというか、結局、ガウにしてしまった。

この世界にはガウ攻撃空母が無いらしいし、せめて自分くらいは覚えていないと寂しいだろう。

それにガルマと言えばガウであるし、地上にガウがあるのは相応しい気がした。

 

 ジオン公国に栄光あれ!

 

●今更な定石戦闘

 そして作戦が始まり、艦列が陣形を整え始めた。

グワジンを始めとして戦艦・重巡が被害担当艦として、マハルよりも前面に出る。

核弾頭の撃ち合いを考えれば愚策だが、こちらにはアンチミサイルがあるので、一周回って定石展開になっていた。

 

 陣形は斜線陣。

斜めに相手の攻撃を受け流すと同時に、手持ちの戦力で相手の弱い場所を突く構えだろうか?

当然ながらザビ家の御曹司であるガルマは、戦略予備として温存されている。

暫くは安全地帯であるし、優勢になれば急所を突きに行くので手柄立て放題だ(予定)。

 

「エマニエルより伝達。グレタ・ガルボ、マレーネ・ディートリッヒ、マリア・カラスを指揮して待機すべし」

「了解したと伝えろ」

 戦隊旗艦のファルメル型から予定通りの命令が来る。

三隻のパプア級輸送艦を率いて必要な場所を抑えるのが与えられた任務だ。

現在位置は斜線陣の後列にあたり、何処にでも駆け付けられると同時に、相手の突撃を受けない位置なので安心できる。

「ガルマ中佐。グレタ・ガルボより電信です」

「繋げ」

 ケーブルによる直接通信がパプアよりもたらされる。

すると不機嫌そうな顔が微妙に崩れたのが判る。

無理して笑おうとしたのか、それとも知った顔を見て緊張を崩しただけか。

 

「ギニアス・サハリン中佐以下三隻。ガルマ中佐の指揮に入ります」

「止めてください。私は臨時で任命されているだけですよ」

 まあ形式的な会話ではある。

技術系のギニアスは本来の命令系統には属して居ないし、戦時特例であろうとも階級が並んでいるならばこちらに従って見せるのが筋だ。

もちろん無理を言えば、逆に命令系統が違う事を理由に拒否されてしまうのだろうが。

「ふふ……。君のヒキでアレを持ってこれた。礼を言うくらいは構わないだろう」

「それならばマ・クベ中佐に言ってください。自分は間を取り持っただけですよ」

 以前に技術部に顔を出して、色々聞いて回った時があった。

あの時は既に開発予定だったり、取り止められた計画があったりして驚愕したものだが、お陰でコネを得られた。

面白兵器の提案もできたし、どうせ間に合わないのだから、時間潰しとしては有意義だったと今ならば言える。

 

 ちなみに自分で上に掛けあわず、マ・クベに丸投げした。

ギニアスの精神状態を知って居ればお近づきになるのは躊躇われたのと……。

そもそも要望がアプサラス計画であれば、アッザムを開発中である突撃機動軍の方が向いているというのもあるだろう。

 

「しかしアレと言うとルナタンクも持ってこられたのですか?」

「いや。それはマハルの強化用に提案させてもらった。機会があればお目に掛けるとしよう」

 言いながらギニアスが指をパチンと弾く。

するとケーブルを伝って機密情報が送られて来た。解凍した画像に描かれていたものは……。

「ビームランチャーの開発が間に合ったのですか!?」

「形ばかりだがね。しかし君のアイデアのお陰で色々と研究が進んだよ」

 ビームランチャーと言えば格好良いが、ぶっちゃけスキウレである。

拠点防衛用のビーム砲塔を引っこ抜き、エンジンとブースターを付けただけ。

最初からビームライフルの実用化なんぞ考えず、まずは振り回すことを考えずにビームランチャー。

小型化が可能ならば、ビームバズーカで良いじゃない。

 

 タンクに組み込もうとするから完成に時間が掛る。

だからビーム砲だけ先に実用化して、徐々に小型化・安定化を図れば良いのでは?

私が提案したのはそれだけだのだが……。

 

「そのアイデアを分割し、目的別に三種類に分けた。後は実用試験を経て、フィードバックに励むのみだ」

「流石はギニアス中佐ですね。私ではそこまで考えませんでした」

 そもそもスキウレが頭にあったし、ザグレロやビグロだって早い段階で完成して居る。

リックドムに装備されたというビームバズーカも、それほど差が無い時期に完成して居るらしい。

そう思っていたら、専門家は更にステップを上げてきた。

「性能重視と小型化重視は相反する物だが、それぞれ独立した技術では無いからな。完成してしまえば補い合うのは簡単だ」

 ギニアスが用意したのは、射程・威力・小型化の三つ。

前二つはパプアの直衛に回して、残り一つをフレキシブルに使うらしい。

成功しようが失敗しようが、その結果が次の開発に活かされるのは決定して居る。

ビームバズーカはともかく、スキウレとして完成するのはそう遠くないだろう。

 

 成功した新兵器を抱えての戦闘とは心が躍る。

失敗作を押しつけられたら目も当てられないが、今回は期待が出来そうだ。

試作品といえばヨルムンガンドだが、残念ながら試験はとっくに終わって研究用に成っているらしい。

もしこの戦いにヨーツンヘイムやムスペルヘイムが参加して居るとしても、おそらく別物が搭載されているはずだ。

 

(……しかし、ギニアスがランチャーを完成させたなら、ヨルムガントとシナジー効果で活躍できたんじゃないか?)

 ヨルムガンドが長大な射程で撃った後に、近寄る相手にランチャーで牽制するのだ。

あるいは長射程モードのランチャーを複数用意して、偏差射撃でも試せば良かったかもしれない。

それこそ専用の船を用意して、測距させても良かっただろう。

(あの時点で思い付いて、提案したら間に合ったのかなあ? ったく何が原作知識が活かせないだよ)

 要するに自分がそこまで思い付かなかった。

色々と派生して考えることができなかったということだ。

今更ながらに憑依した自分が、天才でも何でもない事を自覚させられた。

 

 そうして反省しながら事態の変化を待ち続ける。

そうして判ったのは巡洋艦よりも戦艦の射程が長大である様に、砲はサイズに寄るということ。

専用の要塞という訳でもないが、マハルの自衛用についてる砲台は戦艦よりも射程が長い。

旧式なので凄いと言うほどでもないが、それでも大戦艦であるグワジン並みだ。

数の上では劣勢であるものの、戦いはマハルのお陰で優位に進んでいるようであった……。




 と言う訳で三回目です。
一回が短いとやはりペースが早まりますね。
その分、山場とか伏線も入れ難いのですが、まあ相手にモビルスーツ出て来るまではピンチも少ないので、こんなものでしょうか。

●戦いの趨勢
 連邦側の核弾頭を散弾で処理しつつ、コロニーを盾に設置された大型砲で戦力が増強しています。
壊れても困らないモノなので、連邦が頑張って壊している間に少しずつ戦力を削いでいる感じ。
ルナ2からの援軍があると余裕こいているのですが、ジオン側も足止め戦法で時間差勝利を狙っております。
 なお、ジッコに関してはドズルがガルマを甘やかして居るだけ。
正解ならばそこに資料があったでしょうし、不正解ならば及第点なので黙って居るだけです。

●ガウ
 ガルマが中将待遇で降下するのは既定路線なので、専用艦が贈られます。
改ザンジバル級ガウ攻撃空母と後に呼ばれるかもしれません。
臙脂色と紫で塗られたザンジバルが地球に降下する事でしょう。
まあ声優的にベイオウルフでも良かったんですけどね。

●思い付きと、思い付かなかったこと
 スキウレが頭にあったので、ちょっとした提案で可能な事として提案してました。
これがコネ以外に入って居た成果のことです。
その時点でギニアスと仲良くなっていれば、アイナが婚約者にでもなっていたかもしれませんが……。
残念ながら原作を知って居るので、お兄様には近づきたくなかった模様。
「ルナタンク! あれは良い物だ! キシリア様に伝えてくれ!」
「チ~ン♪」

 と言う感じでスキウレもどきが完成。
まあ砲台をぶっこぬいて、ザクが先っぽを動かすだけの未完成品ですけれどね。
逆にその時点で思い付いていれば、長射程モード量産とか
試験を終えたヨルムガンドを引っ張って来れたのかもしれませんが、思い付いて無かったので存在しません。
(この世界では試験が既に終わって、役に立たたない。あるいは次の為の実験機になっているので)
ギニアスと仲良くなって居れば、彼が三分化を提案した時点で思い付いた可能性もありますが
残念ながらその選択肢も、仲良くなろうと思わなかった分だけ遅れて居ます。
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