カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第二部・第八話:後編

●伏せ札

 硬軟を使い分ける戦略で、ガンダムの居る南部は足止め、北部は攻めるということになった。

もっとも建て前としてはちゃんと意味があり、中央を叩くよりは意味がある。

囲まれ難い相手だし、ロシア戦線から回された為に海兵隊の奇襲に慣れているから正面から倒すしかない……程度の物だが。

 

 しかし他愛ない意味から始まったとしても、参謀団はアイデアを肉付けし、推敲してくれる。

気が付いたら頼んだ事とまるで違う場合も多いのだが、足を向けて寝る訳にはいかんだろう。

 

「全機を出して来ませんね? こちらと違ってそんな必要は無い筈なのですが」

 足止め部隊と合わせて、こちらのモビルスーツは四十近いが、出して居るのは三十機。

敵も大隊の三十六機は存在して居る筈だが、シローの言う通り、三十前後が参加して居た。

これらが平面で様々な地形を挟んで睨みあい、時々前に出ては叩き、叩かれ合っている。

「戦略予備を早期に出すべきではない。という鉄則のほかに、海兵隊を警戒して居るんだろう」

「シーマ様たちをですか?」

 手元に戦力が無いと、イザという時に対処が出来ない。

フリードリヒ大王の時代から一部の例外を除いて、軍学上の基本概念として知られる……らしい。

 

 まあ前世は日本人だったので、越後の軍神さまみたいな例外の方が好きなんだけどな。

しかしガンダムといいギアスといい……。一部の突出した相手のお陰で戦略が狂うのも良くある話だ。趣味には少し控えてもらって、予備は多めに持っておきたいと言う理論には納得しておく。

 

「ここはロシア戦線から直ぐだからね。連中から見れば警戒してしかるべき相手なんだろう。実際、此処に居ないだけでそうして居る訳だし」

「それはそうなのですが、あれほど重戦車が居るのであれば、十分なのではありませんか?」

 奇襲対策になら、本部付きの重戦車で十分ではないか?

そうかもしれない。だが、連中がそれで満足出来るだろうか?

ビームライフルを持つ精鋭部隊があれば戦線が簡単に突破できるのは、連中が証明してしまった。

それを防ぐには遠距離砲の数しかないと、ジオンが証明して居る。その状態で戦力を迂闊に手放したいとも思えない。

「第一条件は情勢の対処なのは間違いないよ。その上で、第二条件があるんだろう。もしかしたら、私たちと同じ使い道かもしれないな」

「ということはまさか……」

 予備はあくまで使うから予備だ。

自分の護衛に使うだけならば戦車でも十分かもしれない。

だが向こうの参謀がソレを許容するだろうか? 自分のプライドは?

ならば、何かしらの使い道があると考えるべきだろう。

 

 たとえばジオンが、戦局の第二局面を見据えている様に。

 

「大将! 出番はまだかよ! こうしてる間にも……」

「貴様は変わらんな。しかし覚えておいた方が良い。スコアの数が同レベルならば、質や状況の方が重要だとな」

 近くで控えている問題児が不満を唱えるが、その時に備えて抑えておく。

此処でこいつを動かしても戦力が一機前に出るだけだ。

戦線を構築した以上はいかにエースと言えど、それ以上でもそれ以下でも無い。

弾丸をばらまきあって動きを止める地味な戦いに忙殺されるだけだ。その効率が多少良いとしても意味はあるまい。

「もっと楽しんで行こうぜ! 好き勝手とはいわねーが、自分で面白くしなくてどうするよ!」

「その楽しい時間はもう直ぐだ。……間も無く敵の方から勝手にやって来る。……だが、自分で面白く、か」

 北部方面に私直下の部隊が来たということは、他には行けないと言うことだ。

ということは足止め部隊だけを相手にして居る中央はどうするだろう?

 

 そのまま全部隊で中央部を突破する?

それとも……。もっと大きな獲物を求めて行動するのでないだろうか?

 

「ガルマ様! 予定通りに中央部の敵が出て来ました! ですが北部方面の予備隊が……」

「判って居る。こちらも予定通りに計画を進めよ! まずは出てきた連中を迎え討つ!」

「おっしゃ!」

 中央の敵部隊から抽出された連中が、こちらの側面に回り込んで来た。

同時に北部方面軍が取り置きしていた機体も出撃を始める。

当然ながら戦線全体が攻勢を強めるので、こちらの各機も身動きが取れない状態だ。

まあこうなるだろうなと判って居るので、特に慌てる事も無い。

「暫くはシロー達に任せる。グレーデンの援護も回すから持ちこたえろ!」

「「了解!!」

 そちら側にはドムを中心とした部隊が盾を構えて待ち受けている。

これに本部に残して居るグレーデン隊の砲支援で先制攻撃を行えば、十分に戦線を保つことは可能だろう。

 

●カード・オープン!

 先に手札を晒したのは連邦の方だった。

側面に回った中央部からの援軍に合わせて、手持ちの予備隊を投入。

これに対してこちらも予備隊を投入。数の上では負けているが、質と射程の問題で足を止めることに成功した。

 

「さて。相手にもう一枚札があっても手間だ。先にこちらが動くことで様子を見ようか、アイナ」

「御供します。ガルマ様」

 当然のことながら、連邦の方が戦力は多い。

モビルスーツの数が同レベルであっても、戦車の数で負けているのだ。

押し込んで来るのはあちらだし、もしこの戦いで引き分けようとも、補充速度の面であちらが圧勝するだろう。

「接続完了。第一射、いつでも行けます」

「それでは一撃食らわせるとしようか。だが二射撃目は不用。おそらく敵が遮二無二に突っ込んで来るぞ」

 危険なのでガウに居て欲しいのだが、止めても聞かないのと、戦力が欲しいのは確かなのでどうしようもない。

ビームライフル対策で久々に持ち出したビームランチャーの相方を頼み、予め調べておいた場所で砲撃態勢。

高台のスナイパーを気取って、戦車めがけてビームを食らわせる。

 

「目標。敵戦車群の先頭! 設定終了次第、放て!」

「3、2、1。砲撃開始!」

 メガ粒子が放出され、敵戦車を焼いて行った。

敵がビームライフルを開発した以上は、それほど強力と言うほどでもないだろう。

だが、それでも射程と範囲は元固定兵器だ。相手が61式やジムくらいならば問題は無い。

「ガルマ様! そちらに更なる増援が!」

「……やはり出てきたか。思い通りではあるが、これは面倒だな」

「砲撃態勢を解除。迎撃に移行します」

 連邦の方が数が多いのに、こちらと同程度の予備隊とおかしいとは思っていたのだ。

こちらのビームランチャーに対し、敵は隠しておいた数機を、本部の重戦車と共に投入して来た。

グレーデンからの砲撃が横槍を入れるが、それでも止まりはしない。

そしてシロー達を放っておくこともできず、もし優先順位を定めていなければ、散発的に砲撃先を振り分けるしかなかったろう。

 

「せっかく敵本陣がガラ空きですのに、突け無いのは残念ですね」

「突けても予備隊を戻せる位置に固定しているさ。だからまあ……ここは一度下がろう。ジムはともかく、重戦車に吹っ飛ばされたくはない」

 予め探した場所ゆえに、幾つか迎撃ポイントは想定してある。

敵に重戦車が居る場合、陸戦ガンダム居る場合。

そして……考えたくないが、ガンダムその物が居る場合もだ。

相手が三機と思ったよりもジムの数が多いが、それでもガンダムよりはマシだと思えるくらいの余裕があった。

「牽制します!」

「思い通りだが当然の展開過ぎてつまらんな。確かに面白い流れを自分で作ってみたいものだ」

 着地と同時に迎撃態勢を展開。

アイナがマシンガンで追いつこうとする敵を薙ぎ払い、私がヒートサーベルで白兵戦を挑んだ。

 

 盾の影響もあって撃破とはいかぬものの、大きく態勢を崩す事に成功する。

そのまま軽くステップを掛けて、射線を空けて回避と同時に道を譲る。

そこへアイナの二射目が直撃。私は仲間を助けようと向かってくる新手を引き受けて、ヒートサーベルでビームサーベルを受け止める。

 

「もう少しで一機目を落とせます。もう少しで……」

「あまり気を使わずとも構わないよ。このまま時間稼ぎでも良いくらいだ」

 実際のところ、そこまで余裕がある訳ではない。

だが、我々には有利なポイントが二つある。

一つはこの連中の役目は砲撃システムを黙らせることだ。

こちらに直撃させるよりも、ビームランチャーを破壊する事を最優先にして居る。

ランチャーは肩に設置して居るし、本体を狙う突きならまだしも、袈裟斬りで両方を狙うのは防御もし易いのだ。

「ソレは惜しいがアイナとは比較にならんのでな! もらった!」

 ガンダムとかビームライフル持った機体だったら、一目散に逃げていただろう。

最初にそう言う算段だったが、今のレベルのビームサーベルならまだ大丈夫だ。

それにグレーデンが一発当ててくれている分だけこちらに有利。これが二つ目のポイントだ。

 

 しかし、有利な流れを造っているとはいえ、先に何かを放棄して得た物だ。

面白くは無いし、自分がシャアやアムロとはいかなくとも、エースとしての腕前があればもっと話は違っていただろう。

今頃はさっさと一機撃破するか、ビームランチャーを当てるから良いと言っていたかもしれない。

 

「もう直ぐ『こちらの第二段階』が始まる。総員突撃準備!」

「了解です! 来援が到着次第、そちらに向かいます!」

 そう、今回の真の目的は北部方面を叩くことでは無い。

北部方面画持つ予備隊を潰す事も含めて、こちらを狙う為に突出して来た部隊を潰す事だ。

だからこそ、予め相手の動きを計算して居るし、予め迎撃ポイントを定めているのである。

「来ました! リリーマルレーンです!」

「待たせたな諸君! 総反撃だ!」

 損傷したザンジバルを元に、ザンジバルⅡに近い艤装を施したリリーマルレーンが空を切り裂いた。大型ミサイルの代わりに設置したカタパルトを使って、海兵隊の機体が次々に降下を始める。

そしてシーマ専用機であるドムは唯一、マリーネタイプではない。

 

「当たると痛いよ! 死にたくないなら、とっとと逃げちまいな!」

『め、メガ粒子砲がもう一つ!?』

 シーマ機だけはカタパルトを使用せず、ザンジバルに乗ったままビームランチャーを放つ。

ドムをベースにした事もあり、もう一機のサポートは不用。

とはいえ嵩張るので移動攻撃には向かないので、カークス戦術を踏襲し、船の上から射撃である。

「気が反れているぞ! 本部が気になったか! それが命取りだ!」

『くそっ!』

 二対二で戦っていたこちらに、大きなアドバンテージが出来た。

これでポイントは三つ目。士気が崩れ、逃げ出そうとした相手を討つのは難しくも無い。

サーベルをへし折る程の強度で斬りつけ、二機目を倒す事に成功した。

その後に駆け付けた援護のお陰で三機目も無事に撃破だ。

 

「よくぞ来てくれた。お陰で助かった」

「いえ。これも御役目ですから」

 結果的に、作戦の失敗を悟った連邦が引いて勝利をもぎ取った。

最終的に十機以上のジムを撃破し、それ以上の機体を小破以上に追い込んだ勘定になる。

中央部が援軍を寄こさなかったら、海兵隊と合わせて北部方面軍を叩いただけなので、確実な撃破は稼げなかったかもしれない。

連邦ならば即座に回復する数だとは言え、『作戦が見抜かれて失敗した』という心理ダメージの方が大きいだろう。

相手の積極性を奪い、時間という最も貴重な代価を得たことになる。

加えてこちらが積極性の強い行動に出たことで、よもやインドを捨てる覚悟があるとは思うまい。

 

「シ-マ大佐は以降、フェンリル隊と協力して後方を扼してくれ。海兵隊の動向が不明というだけで、相当数を拘束できる」

「了解です! ビームランチャーは置いていきますので、ご利用ください!」

 ザンジバルからの砲撃は、牽制攻撃以上に宣伝もある。

カタパルトでの緊急展開に加えて、ビームでの砲撃もあるとすれば油断できまい。

例え精鋭六機を使用できないとしても、相手が各方面で備えを残し、合計で十機以上を残すならば十分に元は取れる。

それは結果的に相手が地道な戦線を維持するということで、こちらも負け難いが勝ち難くなる。

最終的にインドは陥るだろうが、こちらも被害を抑えながら下がることが出来るだろう。




 と言う訳でインド戦線での勝利と成ります。
まあこの戦いの後、地味な戦闘の連続で勝てなくなるのですが。
まあ被害出さずに下がってるから、仕方無いですね。

●作戦の流れ
0:シーマ隊は敵の後ろでは無く、ガルマの後方に待機
1:シーマ隊のイメージを利用したり、南部のガンダムが援護に来ない北部狙い
2:北部と地味な戦闘しつつ、中央が来るのを待ち。来なければ海兵隊込みでフルボッコ作戦
3:中央部の援軍・北部の予備が出てきたので、こちらも予備を出す
4:ガルマが長距離砲撃で囮になる
5:北部の隠していた最後の予備でガルマのランチャー狙い
6:判っている流れなので足止め。シーマ隊が動き始める
7:中央部の増援と、北部の予備隊を狙って真フルボッコ作戦

 その後はシーマ隊を隠し、いつ奇襲してくるか判らないイメージ作戦を続行。
フェンリル隊が連邦の後ろで邪魔して居るので、そちらの援護に向かいつつ
海兵隊がやって来る!? というイメージで相手の全力を抑える
後はお互いに地味な戦いで、少しずつ下がって戦線縮小。と言う感じです。
まあ、連邦軍が戦力補充しないならば勝てるのですが、月に十機二十機は楽勝なので。
(連邦にとっても意味があるからこそ、予備を残して全力で戦わない戦術を取ったということです)

 思惑通りとはいえ、かなり地味でストレスのたまる作戦。
主人公もそろそろ、爽快感溢れる作戦を取りたくなってくる御年頃でしょう。
まあその前に動く連中が居るのですけれどね。

●モビルスーツの変遷
ドム:
 インドを失う頃には、ガルマの本隊に増えて行く感じ
ガルマの専用機も、急遽ドムでテスト中。
これで私も無双できるぜ! → そろそろ陸戦ガンダムも……。というオチ。

水泳部:
 南部は危険なので北京・オーストラリアの牽制。
インド失陥後に、再びインドへカムバック。
フェンリル隊やシーマ隊と共に、地味に相手を披露させ補給を寸断するMVP。
やっぱりジオン水泳部は無敵です!
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