カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第二部・第九話:前編

●陥落するインド戦線

 連邦に快勝したものの、翌月には当然の様に数が元に戻って居た。

判って居たことだが連中の物量はどこかおかしい。

とはいえ、小破や中破で後退した機体はともかく、完全に撃破した個体分はその月の間だけでも変化は無かった。

やはり安全に損耗した機体を一から補充し、捕虜ないし死亡したパイロットを補充するのはいかに連邦でも難しいのだろう。

 

 そういう意味では連中に下がらせるくらいに勝てて良かったと言うか、追いかけて撃滅出来ずに残念だったと言うか。いずれによ、後に繋がる感触を得ることはできた。

どうにかしてオデッサで同様の勝利をもぎ取れれば、ジオンにも勝利の目はある。

 

(問題はそこに至るまでの道だな。それすらも容易ではない上に、ちっとも面白くない)

 もちろん遊び半分で戦争をする気は無い。

だが、必然の上に立った作業では面白味が無いのだ。

よく考えれば二度目の人生であり、もっと色々試しても良かった筈だ。

(こないだの戦いでもドダイYSに乗った援軍を用意するとか、もっと前ならマッドアングラーで北京を電撃占拠とか。やろうと思えば色々出来た筈なんだよな)

 当然、そんな事をすれば幾らか博打要素が出て来る。

ドダイYSでの空間戦闘や強襲戦はオデッサ戦に備えて温存して居るし、潜水艦隊は沿岸部の占領や補給分断で忙しい。

特にヒマラヤ級空母を沈めて、相手の航空艦隊を減らせた事は大きいのだ。

北京強襲を行って居れば、その分だけ成果が無かった事は十分に理解できる。

 

 だが、繰り返すようだが楽しくは無い。

自分なりの積極的なアイデアを盛り込み、自分が何かを成し遂げたと言う成果を上げて見たい。

もしかしたら本家ガルマに取りこまれつつあるのか判らないが、現状のズルズルと負けて行く戦いが愉快では無いのは確かだろう。

 

「あれから大きな動きはありませんね」

「インドの攻略を優先したのでしょう」

「勝っている側が博打をする必要は無いからな」

 連邦は数を回復した後、予備戦力を十分に確保して積極性を控えると言う戦術を繰り返した。

そして大きな拠点は輪を縮めるように、複数の方面軍が共同で当たると言う無理せぬ戦いを行っている。

「一応は……予定通りですが不安も残ります」

「仕方無いな。必要以上に味方の士気を下げぬよう、何らかの手を撃たねばならん」

 こちらも前線が後退する折りに援軍として赴き、一閃して打撃を与え、一緒に下がると言う方法で損害を抑えている。

局地的には勝利をもぎ取れているが、それでも拠点は奪われているという状態だった。

大本営発表ではなく、ちゃんと撃破数などは本当だ。

しかし拠点を奪い返されていると言うのは、目に見えて負けていると言うことでもある。

 

 何らかの明るいニュースがなければ士気は下がるし……。

今は協力を約束してくれている民族解放戦線なども、いつ掌を返すか判らないだろう。

 

「ではやはり連中と戦うのですか?」

「それしかないだろう。逃げ回ってばかりでは士気に関わる」

 なんのかんのといって南部方面軍だけは極力避けているところだった。

正確にはガンダムチームを避けており、連中が派閥の壁を越えて移動した時は、そちらを避けて他に行って居る。

だが十字砲火だけで抑え込むのは限界があるし、障害物を使ってガンダムが突出できる戦場では大きく下がらざるをえなかった。

せめて一撃で吹っ飛ぶような火力じゃなければ何とか成るんだが……。

「それに……そろそろ他の連中にもビームライフルが出回るころだ」

「しかし、総司令が自らと言うのは危険ではありませんか?」

 できれば出たくは無い。

しかし他の部隊にもビームライフルが伝わる様になれば、部下に戦うなとは言えない。

一撃で落とされない様な工夫をして、動き回りながら戦えと命じるしかないのだ。

 

 ならば指揮官が率先するしかないし……。

対策手段を用意できたのは、私の機体を除けば数機だけだしな。

 

「だからこそ天候不順を狙うさ。そうすればアレの存在を隠せるかもしれん」

「ビーム撹乱膜ですか……。ビームコート付きの盾がもっと用意できれば良かったのですが」

 流石に無策でガンダムと戦うような馬鹿はしない。

戦う時点で馬鹿な気もするが、それでも今ならば反撃の目はある。

宇宙では無く空気中、更に天候不順の日、そして虎の子である撹乱膜。

これだけ揃えばビーム兵器の威力は削減されるはずだ。

 

 後の時代であればバズーカを重視するだろうが、今の状態ならばビームを信じる可能性は高い。

いや、最初からバズーカだったとしても、実弾ならばそれこそシールドで何とかなるはずだ!

そう自分を励まして南部方面軍と戦うことにする。

 

●闇夜の決闘!

 少しでも装備の露呈を避けるため、夜間戦闘を敢行。

夕方まで睨みあって、相手の気が緩む時間を狙った。

 

「敵の前衛は私達で抑える。お前達は他の連中を叩いてくれ」

「了解です!」

 新しい専用機にはレドーム状の頭部がある為、夜間でもデータが得られる。

もちろん霧雨ということもあって、無いよりマシであるが、相手の能力が著しく下がる状況とあっては十分というべきだろう。

「撃って来る前に少し散らすぞ。クラッカー!」

「ほいさっ!」

 ホバーモドキを吹かして左右にステップを掛けつつ、手溜弾を放り投げる。

光源をなるべく控え、後方からの遠距離射撃を待った。

 

「援護します。測距射撃開始!」

「着弾データを取得。誤差修正、弾道補正を開始するぞ」

 グレーデンからの遠距離砲撃で、火点であるあちらに灯る。

連邦からの反撃でビームが飛ぶが、その距離で当たる筈が無い。

「大将! こいつらエースどもじゃねえな」

「ちっ。できればガンダムと睨めっこがしたかったが、そうもいかんか」

 連邦は本格的にビーム兵器を導入したようだ。

どうやら目の前の敵はガンダムではなく、サポートの陸戦ガンダムらしい。

心に安堵が訪れると同時に、他が大変な事になって居るだろうなという気持ちも強くなる。

 

「ガルマ様! こいつらエースです! うわああ!?」

「今行く! ……言っている傍からこれか!」

 これが天候不順の夜に夜間戦闘を仕掛けた反動と言うやつか。

足止めするつもりの主力はこちらにおらず、逆にこちらの主力を喰いかねない勢いだ。

それともこちらの意図を即座に見抜いて、逆襲に出たとでも言うのか?

「出逢ったら無理せずに後退しろとは伝えてあるが、そうもいかんだろうな。目の前の敵を三位一体で潰して行くぞ」

「ジェットストリームアタック! ってやつだよな。一度やって見たかったんだ」

「調子にのるな。……ガルマ様、お先に行きます」

 新しい専用機は一応、ドム・ベースなので間違っては居ない。

いや、アレは黒い三連星がやるからなので、間違っているのか?

そんな馬鹿な事を言うくらいに、此処にガンダムが居ないという幸せを満喫しておく。

どうせ今から足止めに行かなくてはならないのだ。

 

 そしてシローがビームコートを塗った盾を構えて突進しつつ、マシンガンを連射。

そこへ私がジャンプジェットザックを吹かして強襲すると、三連装に増強したワイヤーロッドを絡めに掛った。

ビームランス? あいつは置いてきた。

夜間で目立つ上に霧雨と来ては、むしろ足手纏いでしか無い。

 

「仕留めろ」

「おーらいっ!」

 シールド越しに浴びせたワイヤーを、一瞬だけ通電。

軽いスパークで怯ませると、後ろからやって来た問題児がヒートサーベルで串刺しにする。

「次に行こうぜ!!」

「止せ。エースと出逢った隊を優先する! 行け、シロー!」

「了解っ!」

 シローのドムがホバーモドキを吹かして、去り際に数発マシンガンを叩き込む。

それに合わせてこちらもクラッカーを放り投げ、マーカーの存在するエリアに向かった。

流石に問題児も一人で残り三機を相手する気は無い様で、同じ様にクラッカーを放ってウサを晴らして居た。

 

 行けるか?

ホワイトベース隊並みの相手にそんな事を思った時のこと。

更なる不運が我が隊を訪れた。

 

「司令! ご覧ください、天佑です!」

「雨だ! これは豪雨になるぞ。助かった!」

「……いかん! 撤収準備に入れ!」

 やったか!? これで有利に立てる。

そんな思いが自分の心を走り抜けた。

だが、それを上回る嫌な予感も同時に感じていた。

「何故です? 今ならばビーム兵器も……」

「だからこそだ。我軍は慢心し、敵は更なる増援で穴埋めしようとする。そして……私ならば一部のエースには、この雨でも使える武器を配備するに違いない!」

 というか、原作で見たから知っている。

ガンダムだと水中で十分に戦えるからな。

流石に射程とか威力は激減してるが、こちらが油断して近づいて行ったら地獄行きなのは間違いが無い。

 

 それに……。今回の目標は少雨までで持久戦闘。

お互いに痛み分けで、こちらはビーム兵機に立ち向かって見せた。と言うだけで良かったのだ。

僅かばかりの戦略目標が失せれば、こんな小さな戦闘で死ぬのは馬鹿らしい。

せめて重要基地を巡る攻防戦であれば、雨天を推しての攻防戦に意味はあっただろうが。

 

「そんな小せえこと言うなって! このまま勝て……」

「ガルマ様! 敵軍、照明弾を上げました!」

「ちっ! 言わんことではない! 撤収を急がせろ!」

 今までは不利になるので、どちらの軍も照明弾を上げて居なかった。

我軍は地形情報がある上に、私の専用機で情報を送れるのだが……。

連邦は連邦で随伴して居る指揮車両にそれなりの索敵機能を有して居るからだ。

これまでは準備した機材と情報の質でこちらが上回って居たが、互角の戦闘で消耗を覚悟するならば向こうの方が上になる。

『自分からやって来て、行かせないってーの!』

「この距離で当てて来る? 頭が悪いが腕は良いな。こいつもエースか」

 照明弾が上がってクリアになった視界に、長距離ビームライフルの砲撃が横切る。

幸いにも雨で減衰して居る事と、ビームコート付きの盾があるのでカスリ傷で済んだ。

こんなにエースが居るとか、絶対におかしいぞ。この部隊!

 

「この状況で相手をして居られるか。二人とも、私の後を付いて来い」

「了解!」

「ちぇっ。御荷物抱えてちゃ、あいつらは分が悪そうだ」

 自分の司令官を御荷物とは凄い事を言うが、本当の事なので黙っておこう。

ビーム撹乱膜の散布濃度を低レベルに絞って、自分が居た場所に垂れ流しておく。

雨と距離を合わせれば、シールド以外で受け止めても、まあ大丈夫だろう。

『そこのレア物! 逃がすか!』

『援護しますよ、フォルドさん!』

「くそ。まだ来る。グレーデン、指定したポイントに曲射で撃ち込め。見て当てる必要は無い」

 シロー達の張ったフラッシャービームでよく確認できないが、二機のガンダムタイプが追撃して来る。

それも移動しながらビームライフルを当てて来るとかいう頭のおかしい連中だ。

雨と撹乱膜がなければどうなって居たか判らない。もし最初からバーズカを選んで出撃して居たら、危なかったろう。

 

 そこで相手にこちらの意図が判らない様に、時間と場所を指定して爆雷代わりに撃ち込ませた。

牽制なので直撃させる必要は無いし、マシンガンでの掃射込みで距離を離せれば良いだろう。

……とか軽く思っていたんだ。

 

『くそっ、何処から撃って来るんだ。このおぉ!』

「うおっ。キャノンが直撃してるのに。よくも当て……。あの色はまさか……」

 自分がいかに恐ろしい場所に居たかを理解してしまった。

白地に赤青黄のガンダムカラーがこっちを狙っている。

(アムロか? アムロなのか!? いや、それならさっきの曲射攻撃なんか当たらないよな。……危なかった~)

 間一髪でガンダムの魔の手を逃れたが、もしかしたらアムロで合った可能性すらあり得る。

おそらくは単に同じ色なだけだろうが、迷惑な奴だ。

カスリ傷ですら寿命が三年は縮んだぞ!

 

「司令、ご無事ですか?」

「なんとかな。全体の状況はどうだ? 何機か喰われている様だが」

「司令の判断が早かったので、パイロットは何とか無事の筈です! 捕虜交換に期待しましょう」

 マーカーが消えているのでやられた様だが、幸いにも被害は少ないらしい。

もちろん回収できなかったパイロット全員が無事とは限らない。

加えて拷問される可能性もあるので、連邦側に回収されたからと言って安全とも言えないのだ。

「無様だな。しかも状況に突き動かされるままにこれか……。まったく気に入らない」

 ガンダムに挑んで無事だったんだからラッキーとは言える。

しかし無理にでも挑まなきゃならない状況に追い込まれ、安全を確保して仕方無く挑んだら、大雨で挑んだ意味が無くなった。

これなら誰でも出来るだろうと言われてしまう可能性の方が高い。

しかもザクとはいえ手持ちの精鋭がやられて、何人かは未帰還の可能性があるというのだからたまらない。

 

 スコア的には高級機の多い相手の方が大きい筈だが、前回の戦いとは違って向こうは引いて無いから直ぐに補充されるだろう。

残念ながら、こちらの実質的敗北と言う他あるまい。

 

「この借りは次の戦いで返しましょう。オデッサに向けての戦いは、順調に進んでいるのです」

「それに、今回の戦いでガンダムとやらの性能は判りました。恐るべき性能ですが、僥倖といえるでしょう」

「判っているさ。できるならば、この手で戦局を動かしたいと。そんな贅沢を思っただけの事だ」

 しかしどうすれば連邦にひと泡吹かせてやれるのだろうか?

しかも連中の中には個人で戦術を、戦術で戦略を覆せるような化け物まで居る。

原作でもその暴力に抗えたのは成長してない序盤くらいだ。

 

 どうにかして逆襲する術を探さねばならない。

逃げ出すようにして立ち去るインドを後に、私達はそう誓うのだった。




 と言う訳でガルマの敗北回です。
可能な限りの準備をして痛み分け = 敗北と言う感じですね。
まあオーストラリア方面軍からすれば、初の大ダメージでもあるのですが。
被害としては回復力の低いジオンの方が分が悪いと言うか……。
最初はそれでも良いと持って居たけれど、大雨が降ったお陰で、プロパガンダも出来なくなった感じですね。
まあ雨の日を狙ったのが悪いと言うか、インドの雨を舐めていたとも言いますが。

 九回後編(または中)はインドから敗退、オデッサに引き込みつつ罠に掛ける話になります。
憑依者なんだから、思い切りやっても良いじゃん。とか考えていた筈のガルマが、ようやくそのことを思い出して好き勝手を始める感じですね。
まあアプサラス計画とか出丸に当たる要塞化とか、いろいろ準備はしてますが、あくまで既存の計画の上なので。

●ガルマ専用機(暫定新型)
 間に合わないので色々オミットして参陣。
ゲルググのガワと炉を使う予定であったが、ドムのガワと炉によるテスト状態のまま。
レドーム状の索敵機能・通信強化機能やビーム撹乱膜などを持ち、ショルダーバインダーは回転式で追加盾になる。
これに手持ちでビームコート付きの盾(ゲルググ用の試作品)を持ち、様々な武装を使用する。
今回はワイヤーアンカーを三連にして絡め易くした物を持ち、腰にクラッカーなどを下げている。
MMPマシンガンは配備の注文をしているが、おそらく届けられるのはオデッサ戦と思われる。
なお、この機体はビームランチャーを撃つ頃は想定してないので、ジャンプジェットザックやオプション追加用のノーマルザックが基本。

●ドダイYSとドダイYS改
 モビルスーツを載せて移動できるサポートフライングシステム。
改はドムの重量でも可能な様に強化された物だが、基本的にドムを載せる予定は無いので試験的な物だとか。
(要するにガルマとか一部の指揮官・エース用ですね)

インド戦線ではザンジバルやファットアンクルを多用して居たのと、オデッサ戦で使用する方が効率的なので温存して居た模様。
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