カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第二部・第九話:後編

●海と目と

 アイナやシローと相談し、段階を経て皆と話し合うことにした。

まずは参謀団の意見で修正してもらい、おおよそ決まったところで将校たちとも話し合う。

前線に出るシローからは全部聞かされると困ると言っていたが、彼が捕虜になる時は一蓮托生な気もするので放っておこう。

 

「今回の作戦に置いて、目的は二つある。一つ目はコレを周知することだ」

「水中用モビルスーツですか? 今まで通り隠しておいた方が良いのでは?」

 まずはサクラとしてイアン・グレーデンが尋ねて来る。

水泳部の活躍は地味ながら強力で、戦果としてはかなりの物だ。

それも秘匿戦力であることが重要であったという面もあり、グレーデンの意見には賛成する者も多いようだ。

「これまで通り、持久戦で凌ぎ続けることを狙うならばそうだろうな。しかし、いずれ逆転の手を打つには隠し続けていては無理だろう」

「逆転ですか?」

「ほう、あの大軍に勝つ手があると?」

 これまでの会議で、役回りと言うのが決まって来た。

シローが頷き役だとするならば、グレーデンは常識を述べる役。

そしてロイ・グリンウッドは採算さえあれば、博打もまた良しというバランス役だ。

 

 ここでアイナに視線を向け、今回用意するモビルスーツを移してもらった。

ペンギンのような不格好な姿を持つ、重モビルスーツだ。

 

「MSM-10ゾックの限定実現型。兄が用意した水中用モビルスーツで、砲撃戦用になります」

「砲撃戦……ということは奇襲攻撃には向かないと? しかしオデッサ戦で海側を防ぐのに使っても良いのでは?」

「このサイズでは水陸両用とはいえ、歩くこともままならないのでは?」

 うん、私もそう思う。

真面目な話、ギレンの視点で計画していいなら100%建造しないからな。

問題なのはギニアスが喜んで研究し、改造までしてくれるのは、このタイプだけなんだ。

「諸君らの意見も当然だな。しかし、ソレでは連邦軍の頭の固さは変わるまい。常に虎の子をそちらに張り付ける必要が出て来る」

「ということは、あえて連邦にこちらの手を見せると?」

「確かに潜水艦隊の神出鬼没ぶりを考えるに、見せておけば海上輸送を諦めるやもしれませんね」

 水中用モビルスーツの脅威は隠して居ても伝わる物だ。

当然ながら上層部は把握するし、画像や音紋なども知れ渡って居る可能性すらある。

つまり秘匿兵器と言っても、たかが知れるのだ。

 

 逆に目に見えた脅威として利用し、何度も使って見せれば相手もまた警戒して選択肢を減らすだろう。迂回して陸上にするか、単に空中を進めば問題無いのに、海上輸送でオデッサに乗り込むなど愚策と判断する可能性は高い。

もちろん隠しておき、何度か襲撃しても問題は無い。

だが連邦がその物量を前提に、四方八方から延々と海上輸送を試みられたら、こちらとすれば全てを遮断することはできない。

そして、いつかはこちらの疲弊と損耗が限界を越え、相手の探査技術と戦術が上回るだろう。

 

「そういう訳だ。加えて現在の戦局に用いることで、時間稼ぎや足止めにも使えるからな」

「そう考えると大型反応炉と水冷式エンジンの組み合わせは良いですね。連邦のビームライフルを越えるモノがあります」

「全身に九門の予定を前面四門にのみ……ですか。たしかにこの方が割り切って運用できますね」

 他と並行した為、ゾックの開発もどちらかといえば実験の一環だった。

全部で九門のメガ粒子砲なんてやる余裕は無く、むしろ安定した水冷式砲台として実現させた。

四門とは言え射程は長く威力も高い、対空砲としても十分に機能する。

あくまでビームライフルと比較しての話だが、ゾックの限定実現型……改ゾックが複数機あればガンダムとて躊躇するだろう。

「これを使って水辺が近い拠点で迎え討つ。改ゾックたちがガンダムを止めている間に、他の部隊を叩く」

「了解です!」

「目に物見せてやりましょうぞ!」

 これが今回の作戦における、重要な目的の一つだ。

将来に置いて相手は海上輸送と言う自ら選択肢を一つ捨て、今に置いて時間と言う最も貴重なモノを稼ぐことが出来る。

そしてビーム兵器を使用するエース部隊を叩けると言う、一石三鳥の策なのだ。

 

 もちろんガンダムならば平気でソレを乗り越えて来るだろう。

一石三鳥が一つも取れず、二兎追う者として一つも獲れないことになりかねない。

だからこそ、こちらはその何倍もの努力を支払うべきなのだ。

そして、より良い策にするべく手は惜しむべきではない。

 

「それで、二つ目の目標は?」

「奴らの目を潰す。今回の目的そのものは、全軍を陽動に使って探索役を除去しておく」

 遭遇戦のプロフェショナルは居られると困る。

暫くゲリラ戦が続くし、奴らが居るかどうかでスムーズさが変わってくる。

だがそれ以上に、オデッサで罠に嵌める時の難易度が大きく違うだろう。

いきなり必殺の罠を掛けようとしても見抜かれるだけだが、今の段階から熟練の探知屋を潰せば可能性が増える筈だ。

 

 もちろん補充は可能だろう。だが有限ゆえに万全でない。

相手が後方から引き抜けば補給部隊を狙うし、他の部隊から回せばそちらを優先するまでだ。

 

●運河の戦闘

 インド北西部を抜けようとした南方軍へ待ったを掛ける。

敵は数日分の天候を予測した上で、当然のように雨期ながら晴れの続く日を選んで来た。

此処を越えられれば後が無いと言う訳ではないが、入り江や水路を使えるのが大きい。

 

 それはゾックの性能を最大限に活かせる場所であると同時に、水に寄って場所の分断がし易いということだ。

奇襲性と安全策の両方を堅持する為に、それほどの戦果は出せまい。

だが、むしろそれで良い。こちらの脅威を持ち帰らせ、作戦を変更させねばならないのだから。

 

『海や運河の方向より感アリ! 何かが浮上してきます!』

『水陸両用という奴か?』

『はっ。ヴォジャノーイだか河童だか知らないが、いいぜ。ここで狩ってやる!!』

 歴戦のエースであり、RX計画機を主力とする彼らは躊躇なく行動に出た。

危険地帯を進むとしたら彼らの役目であるし、それだけの性能と実績ゆえに怯える事も無い。

 

 だが、それも敵が迫ってくればの話である。

 

『なんだ? あのクチバシ野郎動かねえぞ?』

『こけおどしかよ。どういう算段だ?」

『この音は……。メガ粒子砲のチャージ音! 撃って来ます!』

 ゾックの砲門は計画の半分に減らされたことで、増幅器を設置され、十分な射程と威力を秘めている。ガンキャノン用の狙撃ライフルよりも長く、四門まとめてであれば、遠距離でも十分な威力を発揮する。

『くそっ! 陸戦ジムを下げろ。まともにやり合うとヤベエ!』

『ここは僕らで行くべきですね』

『ん~。じゃあフォルド達の小隊で海側に行ってくれる? 俺らは運河に回るからよ』

 ブラック・プリンス中隊の判断と動き早い。

即座に割り振りを完了し、対応を開始した。

もしゾックが撃ち合いを行ったとしても、数分もすれば叩き潰して居ただろう。

 

 だが我々ジオン側が、ニュータイプ(?)相手にまともに戦う訳が無い。

 

「ガルマ様。敵は罠に掛りました!」

「よろしい! 水辺を迂回して残りの連中を叩くぞ」

 ガンダムが動き始めた段階で、ゾックには少しづつ下がれと伝えてある。

二機一組八門で一体の対象を狙う様に伝えてあるし、移動しながらでもそれなりに当たるだろう。

とはいえ倒せるとも思えないので、それに合わせて戦線を押し上げる。

撤退支援用に予備機は控えた上で、一機に動き始めた。

「やはり何機かビームライフルを持って居る機体が……」

「ちっ! やはり配備が始まって居るか。構わん、無理はするな!」

 とはいえ、どうなるものでもない。

もしビームコート付きの盾が増えず、出力の低い陸戦ガンダムでなければ損害はもっと増えて居ただろう。

 

「外見から識別できるならそいつの頭を上げさせるな! 本命以外は、擾乱攻撃で牽制しつつ狙い易い相手に攻撃を集中しろ!」

「了解です!」

「やってみます!」

 今回の本命は探知役への攻撃だ。

全体へ弾幕を張って牽制したと見せつつ可能な限り葬り去る。

それさえ終われば倒せずとも、後は下がっても構わない。

行き掛けの駄賃に集中攻撃で何機か狙うが、倒せれば良いというレベルに過ぎない。

「ガルマ様! 連中も回りこんできました!」

「ええい!」

 ホバーモドキを吹かして制圧に掛る。

カメラが拾った画像でライフル持ちを把握しつつ、そいつにビームランスをぶちかました。

陸戦ガンダム用のバックラー越しに胴を薙ぐが、残念ながらビームライフルを切り裂くことはできない。だが跳ね飛ばして姿勢を崩し、シロー達の砲撃で沈黙させた。

 

「ガルマ様、危険です! 撹乱膜を!」

「まだ早い! まだ悟られる訳にはいかん。いや、使うとしても撤退まで保たせねば!」

 雨期の合間であり、運河の近くとあって増水による水気で溢れては居る。

だがその程度でビームを防げるはずも無く、撹乱膜を使えばバレバレだ。

今使うくらいならば、最初から戦闘に参加して居ない。

(直撃さえ受けねば、まだこの時期のライフルは問題無い。主に弾数の問題だけどな)

 エネルギーCAPの技術はまだ開発されたばかりだ。連邦と言えど弾倉までは開発して居ない。

あくまでチャージ式のライフルを使い回すか、本体のエネルギーでチャージするしかない。

もちろん最初から当てて来る奴も居るが、そうでない場合は牽制で数発使ってしまう。

後は残った数発に当たらない様に、当たるとしてもビームコート付きの盾を使えば何とかなる。

 

「何%だ!?」

「目標の四割に留まって居ます! しかし相当数がガンダムの近くや後方です!」

 上体を可能な限り下げたまま、突撃体制でランスを振るう。

倒れたまま放つ陸戦ガンダムの近くを離れ、シロー達に射線を譲った。

マシンガンの何発かは当たるに任せ、ライフルを優先し、バズーカやミサイルランチャーの機体を次点の目標に振り回して行く。

「五割を確保。これ以上は危険です! ゾック達は既に後退を始めました!」

「止むをえんか! 撤退!」

 粘れば戦えるが、そこまでやって甚大な被害を出しても意味が無い。

オデッサ戦あっての作戦ゆえに、固執する訳にもいかない。

あくまで通常の損耗のレベルに抑えた上で、相手の余力を削らねばならないだろう。

 

 予定としては無事にクリアしたが、奇襲作戦としては失敗なレベルだ。

今後の戦いで少しずつ削って行くしかないだろう。

これに対し連邦は後方から探知屋を引き抜き、代わりに増援の一部を補給基地の守備に当てることで解決。

結果として、開戦当初と同じジム百機のままオデッサ戦が始まる。




 と言う訳でインドから完全撤退。割愛しますがパキスタンでも似たような戦闘。
今後の戦いに向けて、連邦の攻めるルートを減らしつつ、持久戦より上を狙いに行きます。

目標1:海上封鎖を自覚させる
 インド洋にヒマラヤ級空母を数隻とかやられても、面倒なので。
これにより、数方向あるオデッサへの道のりを二ルートくらいまで絞る。
目標2:指揮車両や万能型の戦車の排除
 後の奇襲作戦や、罠設置に向けて探知役の排除。
要するにエレドアさん狙い。
引き抜いて補充しなければゲリラ戦、補充すればフェンリル隊が後方撹乱の予定

 なお連邦も馬鹿では無いので
補充した上で、連邦が増援分で補給基地を護るというオプションを選択して居ます。
そのお陰で百機以上のジムになる予定が、開戦当初とあまり変わらない感じです。
(ジオンは減っているので、十分に脅威ですが)

 とりあえず、今後も似たような作戦を続けて、海上の脅威を周知。
可能な範囲で探知役を削って行きます。


●改ゾック
 以前にギニアスに提案してた、水泳部の砲撃戦機体をヨーロッパで開発する話。
あの時の伏線ですが、ゾックの前後の砲台は乱戦しないなら割りと無駄なので
ビームライフルよりも長い射程もった砲台・対空砲台として割り切り量産の限定実現化。
これでオデッサの水辺側を護ることになります。
イメージ的には銀英伝のイゼルローン要塞の浮遊砲台でしょうか。
大型反応炉と水冷式エンジンの併用で、水辺限定ですが、長大な射程とガンダム並みの火力を有してる感じです。
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