カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第二部・第十話:前編

●オデッサ戦は既視感と共に

 それから一カ月、連邦はオデッサまで順調とは言い難いものの確実に歩を進め続けた。

こちらも抵抗しながら迎撃を繰り返し、戦果は上げたが押し込まれたと言う状況だ。

 

 連邦は後方撹乱やゲリラ戦対策に、補給拠点にそれなりの兵力を置きながらも、オデッサにジムを百機揃えた。ずっと戦ってきたにもかかわらず、戦車や航空機など通常兵器に関しては開戦初期すら上回って居る。

これらは減った分を上乗せしたというか、各地に配備されていた航空機を補給拠点に移動させながら持ってきたのではないだろうか?

何とかできると判って居なければ、軽く絶望して居た所である。

 

「かき集めた戦力を使っている分。これを叩き潰せば連邦の余力が一気に減ると言うことだ」

「この戦いでの勝利が文字通り、天下の分け目と言う事ですね!」

 予定ずくめの撤退戦だったとはいえ、落ち込んだ士気を鼓舞する為にシローが間の手を入れる。

既に航空機対策があると伝えているために、後は実行するだけで士気が上昇する筈だ。

我ながらセコイがカリスマとか欠片もないので、こういった宣伝工作は多様せざるを得ない。

「敵は我軍の誘導で規定のルートでやって来ている。これを支援する航空艦隊も同様だ」

「ではいよいよアプサラス計画を実行に移す時ですね!」

「兄は既に上空で待機。連邦が動くと共に実行する段階です」

 画像として表示されるのは、撤退時に残しておいた情報網からのモノだ。

とはいえ相手に見つからない場所から撮影して居るので、どこまでいっても不鮮明な望遠画像でしかないが。

それでもガンダムであれば背中にビームライフル、両手にバズーカと重武装などなど……。

だいたいの数や、大物であれば簡単な形状くらいは判る。

 

 微妙に違和感というか、逆に既視感を感じるのだが……。

原作のオデッサ戦と比べて、ジムが多いくらいだし、それでミデアもついでに増えてるんだろな。

という程度の物、見慣れた光景に何となくという違和感を指摘しろと言うのは難い。

 

「ユニット・アイラーヴァタは恙無く完成して居るよ。計画に従い艦名をこれよりケルゲレンよりインドラと改める」

「インドラの矢、あるいはインドラの槍を今ここに! というやつですね」

 通信で送って来るギニアスに、私は返答を返しながらふと懐かしい言葉を思い出した。

fateだかFGOで何度も聞いた言葉だ。

しかし私としては、ラピュタの雷というのも捨てがたい。

「上空からの入電です。最新の画像を転写いたします」

「地上と空中を含めたファランクスか。流石に壮観だが……航空艦隊を焼き払えれば逆転できる」

 ……と私は浮かれていた。

ハッキリ言って、これがかの有名な『やったか!?』と同じフラグなどと微塵も思って居なかった。

これまでの戦いで入念な牽制と足止め、隠れた誘導を行いながら転戦して来たのだ。

このルートに導いたことはバレて居ても、精々が罠くらいのはず。

 

 まさか移動して全てを焼き払える事を、相手が想像して居るとは思ってもみなかった。

いや、相手も想像しておらず……単純に別の策が、偶然こちらの策にぶつかっただけなのかもしれないが。

 

「大型対空ミサイルや地上用の大型炸裂弾も用意している様だが、120秒の差で我軍の勝利だ」

(あれ……? オデッサ戦にあんな大型ミサイルあったっけ)

 ギマダガスカルの望遠レンズで撮影した画像を送られて、ようやく怪しいことに気が付いた。

ジェット・コアブースターならぬ、セイバーフィッシュ・ブースターが爆装して居るのは、まあいいさ。

でも何でミデアがコンテナを開放してまで、大型ミサイルを腹に抱えて居るんだ?

あれじゃあまるで後に建造されるガルダか、今だと宇宙用のパブリ……。

「ギニアス! 可能な限り即座に発射を! 連邦は撹乱膜を大量に用意して居る!」

「なっ!? 急速チャージだ! 変換機が焼けついても構わん!」

 馬鹿だ、私は馬鹿だった!

さっきのガンダム、おもいっきり実弾仕様じゃないか!

戦い続けるならライフル複数で良いのに、あんな装備をして居るのは一つしかない。

ビーム撹乱膜でこちらのメガ粒子砲を防ぐからに決まって居る!

 

(何がどうしてこうなった!?)

 こちらの秘策に対してドンピシャの対策を打たれた。

そのことで、混乱が全軍に拡がる中、私は妙に思考が後ろ向きにクリアになって行くのを感じる。

(砲門は大型で有ればある程良く、兄達はグワジンやコロニーの設置砲台で牽制した。ベルファストではビームランチャーを使って私が決着を付けた。ついこの間、ゾックの集団でビームライフルを上回った)

 良く考えたら、原作はともかくビーム兵器で圧倒し続けたのは、連邦じゃ無くジオンだ!

なんで相手がこちらのビーム兵器を脅威に思わないなどと、甘えた考えをして居たのか?!

それはもちろん原作で凄まじかったから。今回の戦いでも陸戦ザクを一撃でふっとばしたから……。そんな風に、言い訳を考える為に、次から次へと状況証拠が脳裏に積み上がっていくのだ。

 

「間も無く第一射が放たれます! 如何いたしましょう!?」

「このまま戦闘しても問題無いでしょうか? ギニアス閣下であれば、何とかしてくださるかもしれませんが……」

「第二線に緊急連絡! 実砲を持つ長射程武器をかき集めろ! 第一線はその時間を稼げ! 当たらない位置であっても可能な限り大型ミサイルは着弾前に落とせ」

 ビーム撹乱膜でソロモンがどんな目にあったか良く知っている。

だからこそ、妙にクリアな思考が次々と指令を出して居た。

良く考えればギニアスの動きを見てからとか、連邦が本当に撹乱膜を使っているか見てからでも良かった筈なのに……。

 

 我ながら怯えたような行動であるが、結果として、これが全軍を救ったかもしれない。

ベストではなくベターであったとしても、何も考えないよりは上が率先して動く方が良いのだから。

 

「斜め上空へ前進! 撹乱膜を持った相手の上に出ろ! 航空艦隊の前衛が射程に入り次第、即座に発射!」

「射程を合わせる為、ケルゲレン出ます!」

 ギニアスはこちらに送って居る通信を切り忘れているようだ。

通信間接している通信機が切れたため、ミノフスキー粒子の影響で飛び跳びにしか聞こえない。

相手はどう出るだろうか?

当然ながら何もしない訳が無い。こちらの手を全て読んで居る訳では無いにしろ、その場で下せる判断を下すだろう。

いや、そもそも下したからこそ相手も撹乱膜の弾頭を発射。

ギニアスはソレを回避する為に上空に出たのかもしれない。

 

 痛いほどの沈黙の後、振り下ろされる手と号令が聞こえた。

 

「コード解放。コード・ヴァサヴィ・シャクティ入力! カウントダウン省略!」

「ハイ=メガ粒子砲! 放て!」

 灼熱の光が空を焼き、斜め上から下に向けて光の帯が拡がっていく。

ソレは航空艦隊の前衛を消し去り、中衛以降は、奇妙な斑模様で穴が拡がって居た。

「……敵前衛消滅! しかし、敵爆撃機隊の過半は無事です」

「ザンジバルの砲撃が効きません!」

「地上からの対空砲撃。半ばが無力化されました!」

「……」

 思わず絶句する事実だった。

対空使用の戦闘機隊は消滅させた。

最低限の仕事をギニアスはしたと言っても良いだろう。

だが急速チャージをやった以上は、砲身がまともに使えるとも思えない。

 

 なら、どうすべきか?

咄嗟には思い付かない。とりあえず優先順位の上から動くしか無い。

あるいは得た情報に飛び付いて、そこそこの精査で妥協し指示を出すしか無なかった。

 

「……待て。対空砲座は使えるのか? なら中途半端な位置で展開して居るのか……。そのまま撃ち続けろ! 一発も落とすな!」

「ふ、不幸中の幸いですね。撹乱膜が消えればまだ戦えます」

「ですが地上に合わせたモノのはず。消えるのでしょ……。いえ! 消えずとも良い方法を探ります!」

 私が可能な事を一つずつ喋り始めたことで、司令部も動き始めた。

効果が薄い可能性もあるが、ミサイルでミサイルを迎撃、爆発で吹き払おうとする試みも行われている。

「待機して居るドップ部隊を突っ込ませろ! この際、突入援護ができないのは諦める! ……戦闘機を潰した分だけマシなはずだ」

「了解です。対空銃座の被害ならば問題無い筈です」

 そんな筈は無い。

ミデアはまだしも、相手にはペガサス級も居るのだ。

だが、司令部としては可能な限り危険は下げた。だから行けとしか言いようがない。

損害がゼロになるはずはないし、可能な手は全て打ったのだから。

 

 だが、敵司令部はもっと果断で……。

強引なほどに効率的な対策を打ってきたのである。

 

『爆装を捨てる!? そんな事をしたら味方に当たってしまいます!』

『落とされたら同じことだ! このまま飛び込まれたら我軍は壊滅するぞ!』

 なんと連邦の航空指令は、爆装しているセイバーフィッシュ・ブースターの対地ミサイルや、爆雷を捨てさせたのだ。

身軽になった機体の内、対空銃座を残して居る機体は戦闘に参加させ、バルカンしかない機は全て後方に下げさせた。

流石に純爆撃機であるフライマンタは逃げ帰るしかないが、セイバーフィッシュ・ブースターは万能機である為に戦うことが出来る。

『た、隊長!? 上から爆弾が!』

『ちくしょう! 何を考えてやがる! この味方殺しが!』

『突撃しろ! このまま味方に殺されるよりはいい!』

 連邦軍の頭上に爆弾が降り注ぎ、設定されてこそ居ないが、それで被害がゼロになる筈も無い。

爆発し始める前線から逃げ出す様に、戦車隊は猛進!

ジムも後を追い掛けて、死に物狂いで我方の前線に飛び込んで来る。

 

 そこから先は地獄だ。

本来ならばあり得ない速度で突っ込んで来る敵に、こちらは効くかも判らないメガ粒子砲を発射。

予備兵器のミサイルを乱れ打ち、あるいはマゼラトップやキャノンザックが撃ち込まれる。

本来であればそこまで攻撃を受ければ止まる相手も、下がれば死ぬのみ。

前方こそが生地と九死に一生を得るために飛び込み続ける。

 

「各ザンジバルは撹乱膜の無いエリアに移動、生き残りと敵ペガサス級を圧迫させろ。それと……シーマ隊に判断の自由を許可」

「海兵隊……いえ、独立降下戦隊宛てですね。了解しました!」

 リリーマルレーンとフェンリル隊は、相手の動きを牽制する為に動かして無い。

後方撹乱し補給を寸断する部隊あってこそ、連邦は残りの基地の戦力を動かして居ないのだ。

航空機がこちらに残らず出払っている以上、動かないだろう。

 

 しかし、それはそれとして、歴戦の海兵隊を捨てるのは惜しい。

特に判断力は腕前以上の価値があり、独立部隊としてシ-マ隊の名前と装備を与えて予備戦力として置いて居る。

その主力は色を塗り替えたドム・マリーネであり、ドダイYSのエンジン改良型だった。

本来は相手がこちらの前陣に乗りこんで来た時に、空爆と共に封鎖する予定だった部隊である。

しかし既に相手が狂乱状態で突撃して居た。

指示を出すならば、今しかないだろう。

 

「場合によっては本隊も出す。それで前衛が下がり、第二線で投入する隊を再編成する時間を稼ぐぞ」

「了解しました!」

 オデッサの前線は、三連の連携によって成り立っている。

一線は防壁と銃座。それを支える部隊より。

二線は移動経路。即座に部隊を移動させ、同時に入り込んだ敵を前後から挟み討ちにする場所。

三線は最も堅く、位置が高い。遠方に居る敵を大型砲の長距離で狙いつつ、入り込んだ敵を第二線で沈める役だ。

その後方にもう一ラインあるが、これは後方で編成・修理する為の場所なので、最後の砦と言える。

 

 その頃、……連邦視点でも混乱と対策が行われていた。

 

『あんな連中に従うんですか!? こっちの被害は上からですよ!?』

『あのまま攻撃を喰らったらヤバイのはこっちだぞ? それに撹乱膜のお陰でデカブツを喰らって無い』

 味方殺しには従えない……そう抗弁する層もあれば……。

果断な判断で味方の損害が減っているという者も居る。

あのまま航空艦隊が完全に撃滅されれば、ジオン側の爆撃でもっと被害が出たのは確かだ。

『そもそも、なんでジオン相手にこれだけ苦戦してるんですか。最初の話だと、とっくに降伏させてるって』

『スパイでもいるんじゃねえか? まあ相手が強いだけって話もあるけどな』

『勝っているとはいえ、被害の大きさと遅れてるスケジュールでレビル将軍の地位も怪しいって話だしな……』

 とはいえこれらは無駄話だ。

現在進行形で勝っているのは連邦だし、混乱が消えれば、最終的に勝つのも大軍である連邦だ。

 

 だが、死ぬのは前線で戦う彼ら兵士達。

仮に勝っても損害を出したレビル閥が突き上げをくらうのは必至。

どうして自分達が、味方殺しの為に戦わなくてはいけないのだろう?

撹乱膜や爆撃隊を組織した航空指令が別派閥であり、地上部隊がレビル閥を中心にして居ると言う事実がギクシャクさせている。

 

『今の事態は作戦を読まれた我々上層部全ての責任だ。我軍にスパイなど居ない。居たとしても汚職官僚の方がよほど怪しいだろう』

『……ワイアット司令』

 綺麗事を口にする司令官の言葉に、一同は苦い顔を浮かべた。

自分達の司令官が後方からの指令に振り回され、同じ様に苦心するレビル総司令官に可能な限り協力して居るのを知って居たからだ。

『この戦いに勝たねば全てが始まらない。汚職対策は後でなんとでもなる。今だけで良い、我々に協力してくれまいか』

『水臭いじゃないですか。俺達は兵士です。勝利の為に死ねと言われたら死ぬのが仕事ですぜ』

『そういうことだ。皆もいいな?』

『勝ち戦で我儘言って負けるのは性に合いませんからね』

『我儘って、僕のことですか? 別に、ちゃんとした指示があるならいいですけれどね』




 と言う訳で、最終話であるオデッサ戦の始まりです。
まずは予告通り、ハイメガ粒子砲で航空戦力の一掃。
連邦が別件で使う予定だったビーム撹乱膜の影響で、全滅はさせられず双方酷い目に。
空はジオン有利になりましたが、地上は酷い有様です。

●ユニット・アイラーヴァタとケルゲレン改めインドラ
 以前に提案した、ザンジバルでアプサラス計画すれば良いじゃない。
という案を元に、ハイメガ粒子砲を完成。撃ち込んでみました。
しかしながら、主人公のガルマは重要な事を忘れていたのです。
ビームの匠を頼り過ぎたために、ジオンの方がビーム職人が多くなってしまった事。
当然の様に警戒されて、ビーム撹乱膜を切り札として用意されて居ました。

「ふはっははは! これが世界を滅ぼした、インドラの矢だ!」
「ビームなんて!」

●セイバーフィッシュ・ブースター
 連邦が用意した航空戦力の一つ。
ティンゴットやトリアーエズでは弱い、かといってコアファイターの量産は間に合わない。
せや、セイバーフィッシュの量産してるんだから、こいつをマルチな万能機にすれば良いんじゃね?
ということで、小型ビーム砲に加えて、各種ミサイルを設置出来るユニットを設計。
頭数は開戦当初から少し増えただけですが、順次、こういうのに変わって居ます。
戦線が長引けば、再設計されたジェット・コアブースターに切り替わる予定。

●シーマ隊
 リリーマルレーンを使って後方襲撃を繰り返し、フェンリル隊と共同で暴れ回って居ました。
時に十機を越える集団で一つの後方基地に襲い掛り、食料は民衆に分け与え、機械は破壊。
次の拠点潰しに行くと言う事をやっていたのですが……。
連邦が後方基地にジムや戦車、それなりの航空機で安全を確保。
じゃあ中断して帰還する……と言う訳にもいかず、フェンリル隊の母艦にザンジバルをレンタル。
自分達だけイラク入りして、ドダイYSのエンジン強化型を受け取り、色を変えて参加して居ます。
まあ、これはザンジバルと降下作戦が目立つから、ソレを逆手に取っただけの話ですが。

●戦後とか、連邦の態勢
 地上で指揮を取って居るのはレビル閥。
開戦初期からジオンを徹底的に叩くべきとか、モビルスーツ開発を! と言っていたワイアットさんは別派閥だけど、原作知識でレビル閥に協力。
連邦政府としては、とりあえずレビルに任せてみっか。
そんな感じに派閥の論理で決まったものの、色々な思惑で連邦は連邦で苦労して居ます。
なお、各地から航空機をかき集め、強力な航空艦隊を結成したのは別派閥です。
トロイホースを旗艦としたビーム撹乱膜散布隊。前衛の対空部隊、爆撃機の部隊とか色々。
まあレビル閥だけに功績を上げさせる訳にはいかない! と言う感じで頑張った結果。
(レビルとワッケインは地上軍なので、ペガサスもあるけど普通にビックトレーに載ってます)
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