カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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外伝:新しき時代

●金と地図上の戦争

 長いので結論から述べよう。

停戦交渉そのものはスムーズにまとまった。

 

 もしあそこで停戦を受け入れず、決着がついた場合……。

ジオンは残った戦力をまとめてユーラシア大陸を落としに向かっただろう。

だからこそレビル将軍は戦力を維持したまま停戦し、こちらにも妥協が必要だと思わせたのだ。

逆にこちらが無理に勝ちに行った場合、実際にはハイ=メガ粒子砲は使えないので、ドダイの援護だけでは部下が死んで人手が足りなくなる。

だからこそ双方は妥協を受け入れなければならなかったのだ。

 

「明らかに後に禍根を残すタイプの停戦だが……。できれば平和になって欲しい物だ」

「可能であれば次の世代にも……ですね」

 アイナと微笑みながら暮らす日々。

苦労はするだろうがそんな日々が続けば良いのにと思う。

同じ苦労ならば子育てや平和の維持の方が何十倍もマシだろう。

日本では従姉弟同士の結婚はアリだが、欧米スタイルではないそうなので、ミネバとの仲とか余計な事を考えなくても良いのが楽だ。

 

 独裁者のギレンは政治上の地位なんて寄こさないだろうし、任された軍管区辺りを無難に納めておけば良いかなー。なんて甘い事を考えていた。

それがまさか、官僚たちによる本格的な講和交渉の中で大きく変更されるなんて思ってもみなかったのだ。

 

「なんですと?」

「ですからそちらの要望である、公王位や総帥位に関して認めても良いとおっしゃられて居ます」

「なん……だと」

 戦争責任を追い、デギン公王とギレン総帥の引退。

連邦が講和の条件に上げた……『これを呑めないだろ? だから他の条件を呑めよ』という無理難題を受け入れたのだ。

代わりにジオン側も、『地球による実質的な植民地政策が、戦いの遠因であると認めよ』……と付きつけることになっている。

お互いに無理難題だからこそ牽制パンチとして成り立っているのだ。

まさかジオン側が受け入れるとは思わず、連邦側の官僚は絶句して居た。

 

「か、仮にです。こちらが植民地政策であると認めると仮定して。その場合、二十世紀の独立事例が例と成りましょう。その場合は膨大な弁済金が必要になりますが」

「当然でしょう。連邦が支払ったインフラ代金の精算無しに、真の独立もまた無いと仰せです」

(「支配された方が支配した方に払うって奇妙だけど……。これが正論なんだよね」)

 支配の為に支払ったのだから、独立に際して払わない。ということはできない。

二十世紀においても、それはそれとして独立した側が支払うのは当然なのだ。

事実、多くの国が支払っている。

そして事例があるならば、ソレを前提に進むのが法律や交渉事である。

精算せねば、いつまでも禍根として残ることになるだろう。

(「無理難題のはずなのに……よくもまあ、これだけ立て続けに呑む気になったな」)

 それもやや有利にあるジオン側が、若干ではあるが不利な状態に在る連邦の要求を受け入れるのだ。弱腰を通り越して不気味ですらあった。

普通ならばジオンに大きな問題があるのだろうと、つけこまれるのが常なのだから。

 

「その代わりですが。占領地域の返還には応じられない可能性があります」

「なんですと!? それでは筋が通らないではないですか。コロニーならばまだしも、北米やヨーロッパは地球連邦政府の物なのですぞ!」

 当然と言えば当然のことだが、連邦政府の高官は色めき立った。

彼らから見ればどうでも良いことが受け入れられても、スポンサーからせっつかれている事を認められなければ意味は無い。

いや、それでなくとも領土問題は重要だ。

このまま穀倉地帯や工業地帯が抑えられたままでは、数年後に連邦政府は崩壊するのだから。

「はて。土地は人民のもの。土地の人々が良いと言うならば、ジオンに属する事もあるのでは?」

「そっ。そんな事はありませんぞ! 占領下にあるからそう口にする事もあるやもしれません。ですが、本来の……」

(「動揺してる動揺してる。そりゃ受け入れられんよな」)

 百戦錬磨の筈の高官たちが面白い様にビビっている。

せっかく交渉にこぎつけたのに、また一から戦争というのは難しいだろう。

ましてや実質的な敗北をしたばかりで、戦力こそあれど次こそ勝てるかどうか怪しいのだ。勝てても何年後になるのか?

その意味では無理難題を受け入れるなどといったギレンの策は、見事に当たって居ると言えた。

彼らにとってそんな事はどうでも良い。だから占領地域を返してくれと、譲歩する態勢に入るのだから。

 

 結果として連邦の言い分を認めつつも、安全保障の問題で地上に土地は残す事になった。

その上で幾つかの占領地域を順次返還する為に、双方で納得のいく条件を出し合う。

例えば連邦政府に旨味が少ない地域……シベリアの封印施設や、アフリカの民族多発地域などは安値で計算。

逆にヨーロッパや北米などの重要地域は高値で計算し、弁済金から差し引くと言うことになった。

住んで居る人間達からすれば激怒物だが、政治上の取り引きとは誠に非情である。

 

「ではシベリアの件は確定するとして、後は案を持ち帰ると言うことでよろしいでしょうか?」

「今はそうせざるを得ませんな。全権大使とはいえ、全てを許されている訳でもありませんから」

「お互いに紐付きというのは笑えませんな。しかし政治とはそう言うものです」

 長い話し合いのすえ、ジオンの土地と言うことにした方が良いとシベリアの封印施設に関して決まった。

ただし管理は連邦側が基準で、こちらにとっての旨味は少ない。

 

 なぜこんなことになったかと言えば、核封印に関してはジオンが勝手にやったこと。

だから仕方ないと今の内に過去からの案件を流してしまおうと言う事に成ったのだ。

ジオンがやったことだから仕方ないが、武装として流用されると危険だから管理権は渡さない。

その代わりに……連邦政府は核物質を持ち込む毎にジオンへ金を払うこと(弁済金と相殺)で決着が付いたのだ。

 

「ではガルマ閣下。今は失礼しますが、今後ともよろしくお願いしますぞ」

「こちらこそ。しかし兄が本気で譲るとは限りません。次もオブザーバーかもしれませんよ」

「それそれとして、誼を通じるのは悪いことではありませんよ」

 今回で唯一決まったことに関して、主導したのは私だ。

そうしていまいち信用のけない上に、頭の切れるギレンよりはこちらを窓口にしたいと言うことだろう。私としては遠慮したいが、胃の痛くなることが続出しそうだ。

「しかし、連邦はどこまで信用おけますかね」

「同じことを向こうも口にして居るでしょうな。まずは接収して居る各社の施設を返せと言ってきそうですが」

 こちらの官僚はむしろ交渉が決裂して欲しい。

そんな口ぶりが窺えた。

だがジオンとて限界は近い。戦うだけでは経済が冷える。

占領下においた待ちは対して税収を上げる訳でも無い。

寄り良いニュースでコロニー間の資金を引き出し、ジオンの国債や関連企業へ投資させなければならないのだ。

適当な所まで妥協しないと成らないだろう。

 

 ジャブローの喉元にナイフを突きつける北米。

支配の歴史があり総合力で言えば国力も大きなヨーロッパ。

少なくともその二つの返還要求は大きな物になるだろうし、こちらとしても返さねば弁済金を支払えない仕組みになる筈だ。

かといって簡単に引き渡せば、再び戦争に成った時にジオンが詰みかねない。

何処か良い妥協点が無いのだろうか。

 

●新たな火種

 全占領地域から核廃棄物質をシベリアに送りつつ、同時にロシアを先行して返還。

そんなお題目でロシア戦線の戦力を東欧に引き上げた。

連邦政府側から全コロニーが独立した場合の弁済金の試算額が送られ、核物質の受け入れとロシア返還分だけ差し引かれている。

 

 この試算を元にまずはジオンが負債を一括管理、盟主としての地位を確立ということになった。

そして各コロニーから送られてくる資金を元手に、まずは経済を回すということになる。

その折に協力した志願兵や武装・物資の分だけ問う資金は増えた扱いになるし、逆に彼らに渡すモビルスーツなどの技術分だけ投資は減った扱いになる。

ここまでは順調に進んで居たし、もしかしたら……平和になるのではないかと言う目もあったのだ。

 

「まさか本当に連邦で内乱が起きるとは」

「以前言ったようにある程度の予想は立って居たが、まさか強硬派が立つとは思わなかったよ」

 最初に予想して居たのは、介入者が自分の野望の為に独立軍を起こすというものだった。

だが融和路線を良しとせず、穏健派の高官やレビル将軍を拘束しての反乱が起きるとまでは思わなかった。

いや、介入者が権力の腐敗を材料に正義を謳う所までは思い付いたので、その追及への先制パンチだったのかもしれない。

「交渉相手はレビル将軍を応援している派閥でもありました。今度はどうなるのでしょうか……」

「あくまでその派閥を正当政府として見なすべきなのかもね。問題は本当に『彼』がそうならば……だ」

「対抗策と宣伝して居ますが……。ガルマ様がおっしゃっていた通り、フォン=ブラウンへ電撃侵攻しましたしね」

 レビル将軍が拘束され、その後継者を名乗るグリーン・ワイアットはオーストラリアで旗揚げ。

そしてルナツーからの照会後に追い出されていた宇宙軍は、かねてからの懸念通りフォン=ブラウンへ進駐。

そこでアナハイム社ほか軍需産業を制圧し、様々な汚職を告発したのだ。

 

 そして宇宙開発に本腰を入れ、戦争などすべきではないと言うキシリア派に賛同。

月面を新たな地球連邦政府の本拠にすべしとまで言い切ったのである。

これがアースノイド至上主義者の反発を買い、強硬派に少なからず人員を走らせることになる。

大人しくオーストラリアを本拠地にして居れば良いものを……と思わなくも無かった。

 

「ある程度は兄上の策でもあるのだろうな。……ワイアット将軍の所に証拠が都合良く集まり過ぎている」

「そうですね。和平案が上手くまとまった場合でも、北米とヨーロッパは返さざるを得なかったでしょうし」

 おそらくギレンは連邦高官や軍需産業から裏取引を受けていた。

そいつらを見放す形でワイアットに情報を提供。連邦の共倒れを狙ったのだろう。

そして連邦の正当政府を手伝う、あるいは根拠地として返還するという名目で弁済金を大幅に減額させるという交渉もして居る筈だ。

実際に返還するかは別として、その交渉を発表するだけでジオンの経済は上を向く。

自分の懐に一切の痛みを与えることなく、連邦の強硬派も穏健派も手玉に取ったのである。

「それはそれとして、我軍は如何いたしますか?」

「強硬派が何処を攻めるかだな。さしあたってユカタン半島やオデッサへの再駐留させる」

 連中はレビル将軍を拘束し、形の上では多数派として君臨して居る。

そこに正式な手続きは無いとは言え、北京やロシア方面の軍を動かすのは問題無い。

それを前回の戦いでの生き残りを合わせれば、ヨーロッパへ雪崩れ込んで攻略するのは難しくないだろう。

 

 電撃的にそれをやられたら防ぎようが無いし、和平と言うことで下げておいた戦力を再集結させるしかない。

こうなると知って居れば即座に戦力を動かしたのだが……。

ギレンはあえて知らせないことで、ジオンは何も知らなかった、むしろ被害者であると言い張るつもりだろう。

 

「第一優先は生命線である北米の維持。次にベルファスト基地とアフリカの維持だ。場合によってはヨーロッパを明け渡しても構わん」

「よろしいのですか?」

 そんな訳は無い。

だが真面目な話、百機のジムをぶつけられたらどうしようもない。

ハイ=メガ粒子砲を使うにしても、それで守れるのは一か所だけだ。

こちらがインドの空間を利用した様に、複数の部隊でヨーロッパに雪崩れ込まれたら全てを護るのは無理だろう。

「再び戦乱となったが、逆に考えれば地球連邦政府と対等な立場に慣れたと言うことだ。ノリスがくれた可能性、護るために戦い抜こう」

「はい……」

 懸念材料としては、何もせずに独り勝ちしたキシリア派。

そして巧妙に泳ぎ回り、宇宙の盟主と成ったギレンだ。

 

 二人がどう出るか判らない。

まともな考えならば協力出来るが、もし支配の為に人類の過半を粛清せねばならんと言い出したら困るどころではない。

場合によっては……やりたくないが新生ジオンを立ち上げる必要があるのかもしれない。

 

 まるでギレンの野望と化した情勢の中で、私は新たな岐路に立った。

だがアイナと一緒ならば戦い抜ける。そう決意したのである。




 と言う訳で、事後の話になります。
基本的にはギレンの狙い通り進み、汚職官僚や強硬派が証拠が詰み上がる前に決起。
それに対してワイアットさんが正統連邦政府を立ち上げるという感じですね。
ガルマは一応ギレンの下で奔走しつつ、ギレンが虐殺する気だったらどうしよー。と悩んでる感じになります。

●独立条件とインフラ弁済金
 第二次世界大戦後にインフラへの弁済金を支払って独立。
そういう国がかなりあるので、このストーリーでもそうしました。
他所のストーリーであったので書かないでおこうか悩んだのですが、実質的な資金の流れに絡めて使いました。

●弁済金の流れ
 一括でジオンが引き受けて、代わりにコロニー間の盟主に。
各コロニーから自治権の代わりに出資金を受け、それをまずは経済回復に。
良好になったところで連邦に返済する流れで、真の独立は弁済最後。
それまでは一応、連邦に従う……という流れです。
 各コロニーは人員や資金・物資をジオン提供して、資金の出資・同時に自治権・発言権を確保。
ザクなどの技術を提供したり地球からの資材を渡す事で、その出資金を小さくする感じですね。
 基本的にはこんな感じで、相殺する事で実際に動くお金が小さくなっています。
同じ様に連邦にも土地を返したり、シベリアで廃棄物を引き受けることで予算を確保。
実際にはその予算は返済に使われ、双方に資金の流れは起きません。
まあ数十年後に完全独立、経済がV字回復すれば、ユニコーンや閃光のハサウェイの時代くらいには独立できるかもです。
 なお、怖いのでハイメガ技術とかガンダム技術の交流は無し。
お互いに相手の技術を盗みながら地道に技術革新に励んで居ると思われます。

●勢力分布。
『連邦強硬派』仮称:ティターンズ
・ジャブロー
・ルナツー
・北京、インド、インドシナ
 ヨーロッパに進行?

『連邦改革派』仮称:プロメテウス
・オーストラリア
・フォン=ブラウン

『正統ジオン』
・グラナダ
(プロメテウスとの同盟で実質、月面全て)

『ジオン公国』
・宇宙要塞x2(ドズル直下)
・一部を除くコロニー
・北米とハワイ、ベルファストとヨーロッパの一部(ギレン影響下)
・北アフリカとオデッサ(ガルマ直下)

●モビルスーツの開発段階
連邦:
 ジムとガンダムの改良型を開発中
ビーム撹乱膜の普遍化を優先

ジオン:
 ゲルググとビグロの開発中
ビームライフルと代用技術(撹乱膜前提)の開発優先

月面政府:
 永野式ガンダム・フレームの開発中
ビームシールドとショットランサーの開発中
(基本的に少数精鋭な貴族主義というかロマン主義)
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