カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第三話

●ルナ2からの影

 この数日、打ち上げポイントでの戦いはジオン軍優位に進んで居た。

しかし増援が上がる予定だから守って居たのであり、次々に連邦軍の戦力は補充されて行く。

そして一進一退の攻防が続く中、事態は風運、急を告げる。

 

「哨戒機からの急報です。後方から敵艦!」

「何っ!? 回り込まれたのか? 何隻だ?」

 スクリーンを確認するが、モニターには何も映っていない。

ミノフスキー粒子を散布しているから当然レーダーなんか役に立たないが、望遠レンズと艦影照合のデータリンクも始まっていないのだ。

「いえ、位置は遥か後方……。おそらくはルナ2からの増援と思われます!」

「馬鹿な早過ぎる……」

 慌てて確認するんじゃなかった。

そう思いつつも、本当に増援が到着したのなら大ごとだ。

敵の数は増えるし、前後から挟撃されてしまう。

 

(しかしこれは本当に増援部隊なのか? 足止めに失敗したとしても……)

 実の所、足止めしない場合の予定よりもかなり早い到着だ。

先ほど迂回を心配したのもソレが一因だし、戸惑うのも勘弁して欲しい。

(可能性は何があり得る? 大規模な場迂回進撃か、それとも無理して足の早い艦だけを送り込んで来た?)

 何のために?

迂回して後方から攻撃というのは、漫画やアニメでも良く見る恰好良い作戦だ。

しかしガンダムの世界は艦数が少ないので、無理して艦を捻出してもそれほど効果がない。

数隻ならばモビルスーツが叩き潰して終わりだからだ。

 

(ならルナ2からの増援だが、無理して送り込む理由があるのか?)

 ギレンの野望でもやったし、銀英伝でも偶に見るが……。

足の早い部隊だけで編成して増援を送り込む、そして戦場をかき回す手は無くは無い。

ゲームならば進撃ルートの問題で最初に送りこめる制限数だったり、生産した戦力を間に合わせる為だ。

銀英伝ならば艦隊編成の不備を突くだとか、別の行動で弱点を造り出した後で一気に突いている。

「哨戒機からの続報です! 敵艦の数は十隻。ないし、それよりやや上とのこと!」

「最大限に見積もって十三というところか。その程度ならば恐れるに足りん!」

 数はいいんだ、数は。

そのくらいならエースを中心に頑張ってくれれば何とかなる。

足の遅い空母とか輸送艦を連れて来たら間に合って無いだろうし、直衛は少ないはず。

 

「エマニエルから発光信号! 迎撃ス、ワレニ続ケ」

「応答を返しておけ。戦隊を組む」

 しかし、何しに来たんだ?

普通に挟み討ちに来たんだとしたら、採算はあるのか?

例えばヨルムガンドがマハルの陰に隠れて、要塞砲の代わりに長距離射撃をしていたとか。

それならば後方から奇襲を掛けて、無理にでも潰す意味はあるだろう。

だがそんな事は無いし、こちらはマハルを使って前面の敵に耐えることが出来る以上は、挟撃も意味が薄いのだ。

「パプワに関してはこちらの陰に隠れて、嵩増しを……。いや、待てよ」

 大前提としてこちらは要塞代わりに使っているマハルがある。

盾に成って居るし、壊れても敵に理由を押しつけてジャブローに落とせば良いので困らない。

 

 だがしかし……。

もし、敵から見てもそれが大前提だったら?

 

(まさか、コロニー落としを知っている!?)

 だとすると説明が付く。

仮定に仮定を重ねることに成るが……。

以前にジオンに別の憑依者が居る事を疑ったが、連邦にも居たら?

意味は違えども、ブリティッシュ作戦と言う名前が同じである以上、そちらを本命に考えてもおかしくはない。

(対戦プレイヤー付きかよ。また面倒な事態に成ったな)

 あくまで可能性論だが、あり得ない訳ではない。

もし相手に憑依者が居て、コロニー落としを知って居たら是が非でも止めたいはずだ。

 

「平文で良い、ギニアス中佐に要請を送れ」

「はっ! 文面はいかがいたしましょう!」

 核弾頭で攻撃するのが現状では最大の火力だ。

ジッコに搭載して居るアンチミサイルも既に使い切って居るだろう。

間に合わない場合はランチャーで狙撃するしかないが、どこを狙っている?

「要請内容は長距離攻撃の準備。対象は核弾頭だと伝えろ。警戒すべき方面は……」

 我ながらウダウダと原因ばかりを考え過ぎた。

よく考えれば理由なんて後で良かったのだ。

どうせ最強の火力は核弾頭以外に無かったのだし、狙撃準備が整っていれば後の被害は抑えられたかもしれない。

所詮はアニメやゲームの中でしか、戦場を知らなかった者の言い訳好きだと言えた。

 

 間近で強烈な閃光が弾け、悩んで居た時間の分だけ致命的なタイムラグを生じさせた。

核弾頭がよりにもよって戦隊内に撃ち込まれ、運が悪ければ自分が吹っ飛んでいたかもしれない。

 

「エマニエル轟沈! 戦隊旗艦を引き継ぎます!」

「フォン・フォーグラーが別れを告げています。ワレ、操舵不能。ワレ、操舵不能!」

「なん……だと……」

 貴重な核弾頭をここで投入する? 意味が判らない。

コロニー落としを避けたいのであれば……。

核パルス・エンジンを壊した上で、横殴りに機動を反らせるべきだ。

なのに、なんでここで使用する? 確かにエマニエルは貴重なファルメル型だが……。

「いや、まさかファルメル型を狙ったということか!? ザクを使って中佐に直接伝達しろ、敵の狙いはドズル中将だとな!」

 ファルメル型はムサイの指揮系統強化を図ったモデルだ。

被害担当艦をグワジンに任せたことで、少し下がった位置から指揮する為にドズル兄さんも使っていた。

当然、貴重で数は限られているから、ファルメルを狙えば兄さんである可能性は高い。

 

 ファルメルとエマニエルを間違えるとは運が良かった。

あるいはザビ家は安全な後方に居ると思ったのかもしれない。

念の為に数発、残りの数発を他のファルメルに……。

いや、連邦の方が保有数が多いのだから、あちらにはまだ十分な在庫があると考えた方が良い。

 

「グレタ・ガルボからファルメルへの射線を空けろ! 戦隊はこのまま総旗艦への攻撃を遮断する!」

「各艦に伝達します!」

「モビルスーツ隊が敵増援に取りつきました!」

 これでもう、余計な手は打てまい。

予め発射したミサイルと、あったとして載せて居たミサイル艇の分だけだ。

足の早い艦だけで間に合わせた以上、高速戦艦と呼べるまでに強化した戦艦がそれほど搭載して居るとは思えない。

巡洋艦が主体である以上は、一応、安心できる筈だ。

「グレタ・ガルボより入電! 迎撃ミサイルを用意されたし。命中率を確保するとのこと」

「なるほど。誘爆させて迎撃範囲を広げる気か。判ったと伝えろ!」

 あるいは単純に、当たらなかった時の保険だろうか?

どちらにせよやって損はあるまい。というか、ミサイル迎撃なんだから、用意しておくべきだったな。

 

 結果として初動における判断の遅れが、後のちまで響く。

敵が足の早く隠匿性に優れたミサイル巡洋艦を用意して居たことで、かなりの被害が出た。

特殊な艦を設計しているなんて思わなかったが、憑依者が他に居ると仮定するならば、警戒しておくべきだったのだろう。

 

「護衛艦が盾に成って……」

「くっ……。以降、対象をジェノサイド型と呼称する。スペースノイドを虐殺しようとする邪悪を必ず見つけ出せ!」

「了解しました! ジェノサイド1から2と思しき対象を捜索します!」

 実際に虐殺用かどうかは別にして、この機会に宣伝用の文句を考えておく。

そうでもしないと自分のポカで死んだ人間に申し訳が立たない。

この期に及んで言い訳を考える自分に腹が立つが、今はそんな事を言って居られないだろう。

「総旗艦より伝達、マハル発進! マハルが敵艦隊に向けて発進します!」

「そうか……。ゆさぶりを掛けるつもりだな。連邦が正気ならば横槍を入れて来る筈だ、マハルに撃つならば構わん。だが決して逃がすな!」

「了解しました! 決して逃しません!」

 コロニーを地球に向けることで、ミサイル艦の選択肢は絞られた。

既にファルメルを沈めても意味がなく、司令官の一人を討ち取るだけにしかならない。

コロニー落としを狙うならば横撃で進路を反らせるしかないし、敵艦隊も修正用エンジンに攻撃を集中するだろう。

ならばマハルは予定通り盾として使い切り、連邦艦隊を叩くと同時にミサイル巡洋艦を確実に葬るほかは無い。

 

 こうしてブリティッシュ作戦とルウム戦役を足した様な、奇妙な戦いが終わりを告げた。




 と言う訳で序盤の山場が終了しました。
次回はブリティッシュ作戦の結果と、余裕があれば地球侵攻作戦回になります。
(戦勝パーティで美女と踊るとか、シャアの表彰式とかすれば二回に分ける感じ?)

●敵増援
 突撃機動軍の遅滞攻撃が成功し過ぎた結果、足の早い艦だけで増援。
残りはルナ2の防衛に戻った結果、挟み討ちとしては微妙、でも連邦の新兵器で苦労したという感じです。

●両軍のミサイル事情と、ミサイル巡洋艦
 国力が違うので、保有している核弾頭の数が違います。
ジオン軍は既に大半を使い切っており、温存して有効的な使い道を探って居る所。
たとえばジッコを利用した遅延作戦に付随させて、ルナ2方面で一発使って脅すとか。
コロニーも原作よりジオンよりなのですが、流石に迷惑なので核弾頭は提供してません。
逆シャアみたいに博物館行きの弾頭は、そのまま眠ったままでしょう。

 これに対して連邦はまだまだ豊富にあるのと、新兵器としてミサイル巡洋艦を用意して居ます。
若干ながらもステルス性が存在し、ミノフスキー粒子でそれを高める。
足が早く燃料も豊富で、コロニーの反乱分子であるとか、ジオンの戦艦を狙う為のモノです。
元ネタは超人ロックに出てきた、ジェノサイド・ワン。
ミサイルが次元潜航しない以外はまんまですが、連邦の現行技術と概念だけで十分なので開発されて居ます。

●両軍の憑依者・転生者疑惑
 まあガルマ一人であるよりも、数人居る方が面白いというのが理由です。
憑依者まずなんていない、居る方が珍しいという考え方。
憑依者が一人いるならば、複数居てもおかしくないという考え方。
どちらもありえるのですが、緊張感を演出する為に後者を取った感じですね。
真面目な話、モビルスーツ登場まではジオン無双というのも面白くないですし。
そして、原作と違う独自の流れに成って居るのは、彼らの影響でもあります。
よってモビルスーツ戦は早めになるかと。
(ガルマは開戦前ですが、もっと前に転生・憑依した人も居るので)
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