●人狼ゲームに挑みますか?
壮行会の会場で笑う人々を見て、思わず人狼が脳裏をよぎった。
銀英伝に出て来る戦艦の事では無く、隠れた相手を探す推理物のパーティーゲームだ。
そのゲームで隠れているのは人に化けた人狼だが、この場合は……憑依者や転生者を含む介入者探しである。
当て物では証拠が揃うまで黙って居るのが鉄板だが、人狼では時間制限がある。
喰い殺されない様にさっさと見付けなければならないし、濡れ衣で殺されることもあり得るのだ。
協力するにしろしないにしろ、完全に放置しておくのは躊躇われる。せめて相手が疑わない程度に、人畜無害を装う必要があるからだ。
(作戦的にも技術的にも隠れた介入者が居るのは間違いがない)
悪手だが勝利の為には必要とされたであろう、核やガスの使用中止。
そしてコロニー落としも原作とは違う方法で成し遂げ、まんまと連邦に原因を押しつけている。
更にモビルスーツと戦艦群の整理は、原作を詳細に知って居ないと無理だろう。
(私以上のガノタなのは間違いがないけど、地位か……コネもそれ以上だよな。まずザビ家。次にその幹部ってところか)
ギレン総帥やデギン公王を始め、特権階級に居る者達。
あるいは秘書のセシリアや、参謀のマ・クベ達と言った……さりげなく口出しできる連中だろう。
一応は名家の出身とはいえシン・マツナガや、漫画によっては名家だったり普通だったりするジョニー・ライデンはギリギリ難しいか?
(サイアム・ビストは……ないか)
彼の人生は劇中作ではないかと思えるほどに、幸運を重ね過ぎている。
その可能性は捨てきれないし、この世界であったように……修正された草案が出回っていない方が奇妙なのだ。
ラプラス憲章にしても、首相の一存で書き加えた文面にそれほど効力があるとも思えないし、各方面の有力者に根回しくらいはやっているだろう。
(ジンバ・ラルとか落ちぶれた連中もだな。……そういう意味でギニアスがシロってのが笑える)
早い段階から介入で来ても、ラル家は権力外である。
才能のあるランバ・ラルを呼ぶことすら一苦労なので、現在の情勢的にありえない。
同じ様にサハリン家も没落しており、介入者である可能性とても低い。
(鶴の一声という意味で、一番怪しいのはギレンとその愉快な仲間達だよな。キシリア達はその次……)
ギレンならば簡単で、情報機関を持ち月を拠点にするキシリアが次点だろう。
だが資料によってはモビルスーツ研究を推したのは、ギレンではなくドズルという説もある。
とはいえ家族の仲が多少でもマシになっているのであれば、デギン公王である可能性もゼロではないか。
(んー。まずはギニアス経由で技術的な会話から初めて、違和感を出さない様に聞くべきか)
形式上は部下になっているからといって、迂闊にマ・クベに聞くと悲惨な事に成る。
キシリア一派に介入者が居ないとしても、疑っているというだけで、粛清対象になりかねない。
せっかくキシリアはガルマに甘い態度を取って居る……はずなので、藪蛇は避けるべきだろう。
(となると、話題はガウとグフだな)
動く前に話題を整理しておこう。
技術的な疑問から初めて、誰がそのアイデアを思いついたのか、ギニアスの方から話させるのが理想的だろうか? その意味で旗艦として受け取ったザンジバル改が早過ぎる事と、開発ツリーのおかしいグフは丁度良い。
(まあ完成品を見て無いから、ザンジバル改の方は何とも言えないけどな)
改ザンジバル級ガウ攻撃空母。
自分がそんな感じで欲しいと要望を出したので、とって付けた改造を施して居る可能性もある。
wikiなんか見れないので詳細なんか覚えていないので、どんな差があるのか判らないからだ。
(グフが指揮官ザクのバリエーションってのも奇妙だが、こっちはハードポイント制ってのが面倒じゃない? まあコレに関しては詳しく開けて、ゆっくり聞くか)
指揮官用のMS-06Sを早期に開発。
エンジン出力やら強化しまくった機体に、色んな装備をくっつけて実験機を再現しているらしい。
腕部ハードポイントに、鞭とバルカン。
基本装備に剣と盾を用意して、モビルスーツに対抗しつつ、一般兵器に対抗する。
それを可能にするのが武装のハードポイント制なのだが……。
この概念はガンダム放映時代に無かっただけで、その後は普通に二次元でも一般社会でも存在するのである。
設計したらこっちで試すのが普通で、無理に建造しなかった可能性もあるのだ。
●なぜなにギニアス先生
さっそく話しかけるキッカケを探して居ると、都合の良いことにアイナを連れて居た。
しかもドレス姿がとても似合っており、魅力度をとてもUPしていた。
「おや、アイナさんを伴って来るとは珍しい。挨拶させてもらえますか?」
「構わないとも。地球に呼び寄せようかと思っているし、こちらから声を掛けようかと思ったところだ」
……なんという原作ルート。
しかし私もこいつもヨーロッパ戦線を本拠にするはずだ。
巻き込まれて死ぬ事は無いと信じたい。
「アイナ。会った事もあるだろうが、改めてガルマ司令官にご挨拶なさい」
「はい、お兄様」
ユーリーにつれない兄妹だが、ガルマには愛想が良い。
スポンサーにはならなかったものの、キシリアに取り入れるキッカケを造ったのが私なので、まあ当然か。
それにアイナを妾にしようとか思っていないのも大きいのかもしれない。
……これほどの美人なんだから、興味ないと言ったら嘘だけどな!
「お久しぶりですガルマ様。サハリン家のアイナを覚えておいででしょうか」
「もちろんだとも。以前にギニアスの研究室で出逢った時は、大した話もできずに申し訳ない」
まあ、そのころは一介の将校である。
話の弾みようもないし、忙しくて通い詰める程の時間が無かったのも大きいだろう。
それこそ一目惚れとか理由を付ければ別だったのだろうが。
「君の兄上にはこれからもお世話に成る。何かあったら言ってくれ、力になろう」
「それでしたら兄に声を掛けてあげてください」
定番のセリフを交わしあって、本題に向けて話題を切り替えることにした。
「そういえばザンジバル級はようやく生産ラインが本格的に成ったと聞くんだが、もう改良型が造られたのですか?」
「自分の船は気になるかい? まあ、あれは手品のタネがあってね」
目礼して去っていくアイナに頷き、ギニアスにザンジバルの件を切り出した。
もらったばかりだし、生産され始めた船がもう新型というのは不思議に思ってもおかしくはないだろう。
「タネ?」
「ああ。持ち込んだビームランチャーがあったろう? あれは私のアイデアというばかりではなくてね」
都合の良い事にギニアスの方から核心に触れてくれた。
アイデアを出したのが誰かを聞くのは時間を開けるとして、どんなものか聞いておくことにしよう。
「確か三種類の傾向があったと思いますが」
「その通り。ザンジバルは最初から三姉妹で建造計画が立っているんだ。もちろんコスト削減以外にも理由がある」
マッドであっても科学者であるギニアスは、話をするのが好きなタイプだ。
研究室に籠ってばかりではなく、元が上流階級出身者で、脚光を浴びたがっているのも影響して居るだろう。
「習熟を兼ねた船、技術検証の船、そして近代化を前提にした船と言う訳だよ」
「なるほど。私が受け取ったのはソレか」
どんな不具合が出るか、どんな改造が必要かを調べる船。
技術開発室が抑え、様々な実験を施す船。
そして得られた技術を次の世代に持ち越す船。
この三隻が同時に造られ、ガウは近代化試験艦だったという訳だ。
「四番艦以降で新技術を導入し、それを用いて近代化を図った。私が預かるケルゲレンが大型炉と搭載量、マ・クベのマダガスカルが索敵と指揮統制機能。そして……。
「シーマのリリーマルレーンが戦闘用として、装甲・火砲を純粋に強化した仕様……ですか?」
ギニアスの言葉を先読みすると、アッサリと頷かれた。
まあカーゴ・タイプと司令部タイプがあるならば、残りは戦闘用しかない。
私は原作知識で予想を立てれたが、判り易い誘導に乗ったと思わせておこう。
「それらの技術をフィードバックしてアップデートされたのが君の船ということさ」
「ということは地上での運用試験も兼ねているようですね。七番艦からまた似たような船が建造され、十番艦以降の技術を取り入れると」
仮に七番艦から九番艦がザンジバルⅡと言う訳だ。
実際のザンジバル改やザンジバルⅡのスペックデータは劣るにせよ、早い段階で手に入るならば時間は何にも勝る宝だろう。
そしてこの考えを聞いた時、軌道修正してザクの件に結び付けれる事に気が付いた。
予め近代化を予定された船だったということは、ハードポイントのような場所が用意されていたという事。
大型炉やカタパルトを導入するならば、その部分が取り外し易い必要があるからだ。
「もしかしてザクの設計も似たような概念なのですか? 新型装備を取り付け易いように」
「正確にはモビルスーツの設計が……というべきかな」
こちらの思惑に気が付いたかは別にして、ギニアスはノリノリで話を続けた。
余計な話にまで飛び火したら止めるか逃げるかするべきだが、今は非常にありがたい。
「第二世代に採用する概念を設計した時。三つのアイデアがあったそうだ。対モビルスーツと既存兵器を想定した物、可能な限り性能を高めた物、そして重装を前提にした物」
「対策兵機が相性良くとも、ピーキーな機体が強くとも、全軍の強化にはつながらない。ゆえに重装型が採用された訳ですか」
よくできましたと教師のように頷くギニアス。
悪いがこちらは原作知識なんだ、すまん。
しかし設計コンセプトを聞くと、ピーキーなイフリートはRザクに通じるものがあるな。
グフはどちらかといえば過渡期に当たるものだし、全体を向上させるならばやはり重装型で済ませた方が楽なのは確かだ。
ホバーが重要とは言われるが、イフリートにもあった筈なので、決め手になったのはその辺だろう。
「いや、君がこの手の話に付き合ってくれるとは嬉しい限りだ。回りには理解者が居なくてね」
「男ならば新兵器には弱い物ですよ」
聞きたいことは聞けたし、ここで『誰が主導したの?』と聞くのも不自然だ。
少しずつ仲良くなったところで、可能ならばザビ家の手の届き難い地上で聞くべきだろう。
「おっと……呼ばれたので、この話はまた次の機会にでも聞かせてください」
「そうか、残念だ。また地上ででも話をしよう」
適当な処で顔を上げて、呼んでいる人に気が付いた風を装っておく。
後から思えばとことん話し合って、仲良くなることでマッドの道を止めさせるべきだったと思わなくもない。
こうして詳しい事こそ判らなかったものの、系統だった関与を確かめることが出来た。
地球に向けて降下する前に、良い検討材料が手に入ったと思っておこう。
と言う訳で幕間的な話ですが、思いついたので入れておきます。
今回は介入者に突いて考察を入れつつ、伏線ポイもの。
そして技術的に早過ぎるモノに関して、実際は微妙な回収であるとの説明になります。
思い付きを入れただけなので、戦闘は次回へ繰り越し。
●ザンジバルの三姉妹設計
1:運用習熟用
2:技術試験用
3:近代化試験用:ザンジバル改として改修予定
4:大型炉・運搬量(カーゴ)
5:指揮・索敵(望遠と通信)
6:重戦闘用(装甲・火力・カタパルト)
4~6のデータで3を再設計
7~9:ザンジバル改として再設計
10以降:実験と実戦が続き、ザンジバルⅡを目指す
と言う感じで生産コストを下げると同時に、後に改修・再設計することが前提に成って居ます。
ガルマが受け取ったザンジバル改は、最初に建造された船の一つというオチです。
(再設計されたものより強くない)
キマイラ・バンパイア・ケルベロスとかが7~9だったりするんでしょうかね。
●Sザクカスタムとモビルスーツ開発ツリー
MS-06S:指揮官・エース用の高性能機。各種試験用
↓
MS-06JS:地上用・対核装備抜きで再設計したS型
MS-06RS:宇宙用・対核装備抜きで再設計したS型
(MS-07~09のコンセプト等を導入)
MS-07:対MS・対既存。設計のみ
MS-08:ピーキーな高性能機。設計のみ
MS-09:重装機。第二世代に決定
まず高性能な機体とハードポイントを使って、07~09に近い形で試します。
その結果、09が量産決定して他は造らない。
という感じで、開発リソース・製造リソースを集中しています。
多少は性能が下がるでしょうが、実機を造って実験する時間が大幅に省かれます。
またSザクの装備バリエーション化することで、グフとかイフリートに近い装備が前線に届けられます。
(再設計された物よりは弱いですが、生産ペースと整備性が大きく変わるので)
またコンパクト・カーが同じフレームで、微妙にサイズの違う車種が造られるように
できるだけメインフレーム・基本装甲は共通化するように申し渡されています(成功したとは言い難いですが)。