カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第六話

●降下開始

 核・ガス・質量兵器を制限する条約だけは結んだ後で、地球上空に移動した。

これより地球降下作戦の始まりだ。

訓示なんてガラじゃないので、『死なない様に頑張ろう』で済ませたくなるがそうもいかない。

ズルをして何とかしておこう。

 

『勇敢なるジオンの将兵諸君、地球方面総司令官ガルマ・ザビである』

 北米上空からの全域通信が始まり、作戦の意義を唱え始める。

パンゲア作戦の第一目標は北米、およびオーストラリア。

コロニーの落下で海軍力・空軍力が低下している間に、一気に攻め立てるということに成っている。

(まあ、半分くらい嘘だけどな。全部は攻めないし、ジャブローは端から無視だし)

 しかし本命は北米であり、広大なオーストラリアはハラスメント攻撃のみだ。

北部から西部沿岸の街のみを確保し、それ以外は表向きは占領するフリで、鉱山資源・穀物・肉類などの生産資源を抑える刈田狼藉を行う。

もちろん統治したり南部を攻める仕草はするが……。

大戦力やモビルスーツがあれば順次縮小する予定に成っていた。

 

 場合によってはゲリラ戦の得意な将と入れ換えることもあるだろう。

その時は第三次目標の一つである北京攻略に偽装した部隊と共に、インドシナ南部にある香料諸島へ集結して、時間稼ぎをする事に成っている。

 

『……ここにパンゲア作戦を開始する! 降下開始!』

 勇ましい声と敬礼が終わると、HLVに自ら乗り込んだ『ガルマ』が降下して行く。

私は此処に居るので実のところ影武者だ。

恥ずかしい訓示を代わってもらうと共に、原作通り北米に居ると思わせる為。

そして本物である私は、介入者が防備を固めているかもしれないオデッサへ、ザンジバルと共に降下するのだ。

「よし。連中の目が北米に引きつけられている間に降下するぞ!」

 もし介入されているとしたらオデッサ。

北米とオーストラリアはコロニーが原作通りに落下する可能性もあった為、原作通りの配備である可能性は高い。

ジオンの第一手をくじく為に、介入された精鋭部隊が居れば、それ以上の精鋭で裏口から回り込むように叩き潰す。

 

「ユーリ。実際の指揮は任せます。シーマは自由に行動していい、かき回してくれ」

「おう!」

「ハッ!」

 ミノフスキー散布用を兼ねた無人のHLVが先行して突入。

次いで最も装甲のあるリリーマルレーンが、本隊の乗るHLV群と共に降下する。

「ギニアス、マ・クベの出す発光信号を見逃さないでくださいね? 我々も降下します!」

「「ハッ!」」

 探知力と発信能力の高いマダガスカルを中衛に置く。

後ろを固めたケルゲレンとガウは、相手の陣形が判った後で、温存した主力を一気に投入する予定だ。

 

 想定する戦力は最大でコジマ大隊。

流石にソレはないと思いたいが、無理やり間に合わせている可能性が無いと過信する訳にもいかない。

 

●脅威の新兵器!?

 強烈な振動を感じながら降下して行く。

その中で対空砲火が響きはするが、そもそも降下ポイントをずらして居るので当たる筈も無い。

 

「ノリス。調子はどうかな?」

グフ・モドキ(イージ-セブン)は十分な性能を持って居ます。相手が誰であれ負けるつもりはありません」

 MS-06S『グフカスタム』は指揮官ザクにグフの装備を付けた物だ。

性能を高めたSザクへ、ハードポイント接続で色々武装を試した結果なのだが……。

(これって要するに、ザクのガンダム化だよな。高価に成っても良いから可能な限り性能の高い機体を造って、そいつで実験する……)

 この事に気が付いた時。

こちら側の介入者の候補が少しだけ絞れた。

ハードポイント性があるから、こうなったそうなった可能性もあると少しは思っていた。

しかし、よく考えて見ればここまで統制されているのもおかしな話だ。ここまで介入されて居るならば、監視され易いデギン公王ではないだろう。

(ハードポイント付きのザクがあったら、次はハードポイント付きのグフやイフリート造るよな。効率的だからといって、設計者が聞いてくれるとも限らない)

 だが実際はSザク万歳である。

惜しげも無くリソースをつぎ込んだことで、諸説あったシャアのザクは本当にSザクだった。

そしてグフを造って試して、そこから更に検証して……。

というステップを踏まずに、ハードポイントへの追加武器や追加装甲板を試していた。

既にホバーの検証は始まって居るだろうし、空を飛ぼうとしないならば爆発する事も無いだろう。

 

「戦車隊が敵陣に突っ込みました。敵戦車はザクの砲撃で既に駆逐されて居ます!」

「油断はするな! 我方に切り札はあるが、敵に無い等と油断はするなよ!」

 希望的観測を悲観的観測で返しておく。

ピンチであれば鼓舞する事もあるが、優勢な間は臆病なくらいでいい。

楽観して死ぬのは遠慮しておきたいところである。

(しかし杞憂だったか。流石にコジマ大隊は無いにしろ、モビルスーツがあるかもとは思ってたんだが)

 こちらのペースが早まっているのだ。

あちらも早まって居てもおかしくは無い。

スパイを使うとか、三十倍の国力比に物を言わせた、ジオンの数倍はある予算を使う事も出来るからだ。

 

 どうやら連邦のトップは頑迷で旧態依然としているようだな。

……そう思った時期もありました。いやあ、フラグっていけませんね。

 

「司令! 前線からの発光信号! 思わぬ反撃があるとのことです」

「マ・クベのマダガスカルで捉えた画像を送らせろ! 通信筒を使え!」

 通信筒には二種類がある。

昔ながらに筒へ紙を入れるタイプもないではないが、この場合は指向性通信機を仕込んだ筒先を、ワイヤー付きで飛ばすという方法だ。

ミノフスキーの干渉が低くなるまで接近させて、指定した筒先同士で通信をさせる。

その場に居たら傍受ができなくもないが、そもそも暗号文を使うし、緊急を要する状態なので問題無い。

「敵の新型戦車だそうなのですが……」

「今更、新型だと? 巨大戦車か、それとも可変でもするのか?」

「少しお待ちください。解析して画像に出します!」

 一瞬、ヒルドルブを疑った。

あれならばモビルスーツに対抗できるし、連邦が旧態依存した兵器重視でも作れるかもしれない。

 

 だが、私の甘さは最悪の形で裏切られることになった。

 

「解析しました。画像に出します!」

「これは……」

「馬鹿……な」

 画像に映し出されたのはコンパクトな戦車だった。

丸みを帯びたフォルムで軽快に動き、前後に分割された無限軌道は、タイヤじゃないのかと疑いたくなるレベルだ。

「補助用の駆逐戦車じゃないのか? あるいは暴徒鎮圧用の転用とか」

「……いや。逆転の発想だろう。既存の技術を推し進め、一回り小さくまとめたのではないかな?」

「可能性はあります。……モビルスーツよりは連邦向きかもしれません」

 戦車砲として最低限機能する火器を持ち、命中率はセンサーと連射で何とかする。

そもそも大型戦車でも動きながら、一台だけだと命中率は微妙なのだ。

かといって動きを止めれば良い的なので、動きながらバンバン撃って苦戦させれば良いというアイデアなのだろう。

連邦の方が数は優勢なのだし、数で火力は補える。戦車砲が必要ならば61式と連動すればいいだけの話だ。

どうせ61式だって、一発じゃモビルスーツは落とせない。

 

「どうなさいますか? モビルスーツならではの優位地形へ先回りされてしまいます」

「ノリス大佐を呼び出せ。……それと腕の良い連中を何人か付けて、彼の腕を学ばせろ」

 こちらの手の内を見せるのはどうかと思うが、時間の方が惜しい。

それにSザクは万能の高性能機だが、どうしても対核・汎用装備の分だけ性能が制限される。

地上のJ型を設計し直す段階で、JS型を設計して居る筈なので、その内にバージョンアップできるだろう。

「良いのですか?」

「アレで我軍の懐を突かれることを想像してみろ。有効だと判断する前に叩き潰す」

 問題は占領作戦の主力は、あくまで通常兵器と言うことだ。

モビルスーツを倒すには奇襲や数機の連動が必要だとしても、マゼラアタックや通常車両はひとたまりもない。

いや正面から戦えばマゼラアタックならばなんとでもなるが、狭い場所に逃げ込みながら戦われたら手を出し難いのだ。

 

「ノリス大佐、聞いての通りだ。一戦して圧倒し、有効性を疑わせよ」

「確保はできれば……でよろしいですな?」

 お互いに頷きながら早急に作戦を開始する。

倒すのは確実だが、時間との戦いが重要だ。

目撃例が多く出れば出るほど、アレを有効と見なして量産しかねない。

逆にここで叩き潰せば発案した奴の思惑を外して、後方で警備用になってくれるだろう。

(後は連邦の派閥抗争に期待するか)

 相手の介入者もフリーハンドではあるまい。

もし自由に采配を振るえるならば、ザニーなり先行ジムが居てもおかしくは無い。

しかし宇宙で見たミサイル艦であるとか、今見たポケット戦車を見ても、旧型兵器を最新の概念でリニューアルした物だった。

上手くやれば相手の階段を外せるだろう。……というか、できれば窓際に行ってくれますように。

 

●ポケットタンクとの戦闘

 ここで視点はノリス達に移る。

臨時のMS参謀として格上げされているノリスは指揮官用のザクであるのは勿論の事。

彼のザクがグフ・スタイルであるのは前述した通りだが、残りの三機も多かれ少なかれ似通った武装をしていた。

一人は両腕のハードポイントにヒートロッドとワイヤーロッド、一人はダブルのハンドバルカン。そして最後は両手にシールドと中々に歌舞いている。

 

 そう……これが実験ならば良いのだが……。

ノリスに随伴する三人は、それぞれに好きな武装を許されたエースだった。

そして色々な組み合わせの中で、色んなスタイルを試す趣味人でもある。

 

「まさかてめえらまで、そーいう組み合わせだとはな」

「ま、お互い様って奴だ」

「それに……圧倒しろって命令だろ? 遊んでる連中にやられる方が屈辱ってもんさ」

 腕前の優れた三人をノリスに付ける意味はただ一つ。

圧倒的な手並みを見せつける事。そして、それ以上に軍人としての動きを見せる為だ。

自分の腕に自信を持つがゆえに、我が強い連中を従えるにはそれが一番の方法だろう。

「ククク……。戦場でアグレッサーを御望みとはガルマ様も御人が悪い」

 ノリスは笑いながらヒートソードを滑らせた。

自然な仕草でビルの隙間に剣を突き刺して行く。

 

 ギョっとする三人が声を上げるよりも早く、引き抜くとビルの向こうで爆発が起きた。

 

「相手は小形だ。戦車が隠れ潜む場所は建物が並ぶ場所……等という幻想は捨てろ」

「ひゅう♪」

「ちっ」

 口笛と舌打ちが同時に響く。

三人目の盾持ちは既に走り出しており、ノリスの言いたいことを実行して居た。

「こう言うことだろ、オッサン」

「大佐と呼べ」

 不意を付けぬと飛び出してきたポケットタンクに、ナックルシールドが見舞われる。

そのまま回転する様にカイトシールドを回し、踊りながら盾使いは連射を防いだ。

一発は回避し、一発は盾に。

そして回転し終わると同時に、もう一度ナックルシールドでトドメを刺す。

 

「やっぱり助走が少ないと駄目だな」

「次の獲物は俺に寄こせよ」

「冗談。早い物勝ちだろ?」

 無傷で倒した筈なのに、盾使いは不満げだ。

残り二人も動き出し、同時に何も無い場所へ振り向いた。

そこに居るのは伏せられた61式たち、ポケットタンクが奇襲した後で襲う予定だった車両だろう。

「右右! 左左! 上上ってか!」

 ハンドバルカン二丁流により、次々に戦車が葬られて行く。

駆け付けた爆撃機もアッサリ沈め、待ち伏せを簡単に迎撃する辺りは流石のエースだ。

 

「おっ。あいつは?」

「オッサンと一緒に工場に入ってったぞ。一機付いて来いってつったの、聞こえなかったのか?」

 見ればワイヤーロッドを駆使して、猿だかターザンだか飛び跳ねている。

正確にはバックパックを軽く吹かせて、ワイヤーで移動経路を修正して居るのだ。

戦車にしては隠れ易いポケットタンクも、隠れた場所を予想され上からみれば丸判りである。

「ヤベ。先行されたらスコア持って行かれちまうじゃん」

「それは諦めろ。どうせ本隊が持っていってるよ」

 慌てて二機が追うのだが、縦で移動する二機には追いつけない。

Sザクとノーマルの差こそあれ、先読みの優れたノリスに追いつくのは容易ではない。

追随した両手鞭の機体も含めて、大きな戦果の差があったという。

 

 こうしてオデッサ作戦は少々の差異があったものの、予定通りに終了した。




と言う訳で筆が乗ったので連日の投稿です。
一回が短めなのもありますが、陰謀とか考えないで良いのは気楽で良いですね。

●降下作戦
第一次:北米。オーストラリアはオマケ
第二次:オデッサ
第三次:アフリカ。北京はオマケ

収束:
 オーストラリアと北京は、東南アジア中心で集結予定で場合に寄り撤退。
香料諸島を拠点にして、生産資源の確保をひたすら邪魔する予定。
穀物は一年に一回、肉類は数年に一回なので、刈田狼藉の効果は非常に大きいと思われる。
(部隊が撃破されないことが前提なので、さっさと戦線収縮する予定)


●オデッサからヨーロッパへ
 影武者を使って北米に行き、原作通りと思わせてフェイント。
全力でヨーロッパを抑えに行きます。
アフリカ方面も中央までで、どちらかといえばオデッサ防衛の為。

●ポケットタンク
 連邦はどうしても既存兵器への介入の方が楽なようです。
代用品として小型戦車が導入されて居ます。
とはいえ通常兵器に対しては猛威を振るうことと、後ろから撃てば十分いけるので、むしろ占領作戦の時はこちらの方が脅威かも。
まあベルファストを目指す前の前座なので、倒す事よりもタイムアタックとイメージ戦略の方が重要として居ます。
 武装は主砲が一門、マシンガンが一門。
この主砲は戦車砲としては最低限のサイズですが、侮れる物ではありません。
小形で局面のある装甲を活かして当たり難くなって居るので、動き回って時間を稼ぎながら(または奇襲で)、連射で圧倒します。
溜弾やスモーク弾も焚けるマルチな武装です。まあ主力と言うよりは市街戦用ですが。

モデルは功殻のタチコマ……ではなく、TRPGのメタルヘッドの同名兵器より。
まあ元は同じ場所に辿りつくとは思いますが。

●ジオン側介入者とモビルスーツの発展
 さすがにデギン公王は暇ではないというか、監視され易いので違います。
普通なら新概念があっても色々したくなるのが人情と言う物。
それらを退けてリソース集中というのは、流石に難しいでしょうから。
もっとも集中の為には細かい管理と時間が必要なので、有効でも反対意見にまとめられ易い武装は全部まとめて却下に成って居る様です。
(イグルー系は使い道次第、発展次第で有効なのも含めてボツ。ヨーツンヘイムとか艦船は、別ルートで採用でしょうけれど)

●エース達
 この武装でずっといくかは別にして、面白そうな武装を試したい御年頃。
やんちゃなので、ノリスに付けて教育中です。
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