カリスマの無いガルマ【完結】   作:ノイラーテム

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第七話(後編)

●シュバルツシルトの戦い:後編

 そして視点はノリス達の元へ。

ブリーフィング・ルームに集められた者たちは、誰もが不敵な面構えをしていた。

 

「あのデカブツを黙らせれば良いんじゃないのか?」

「その程度の用事に貴様らを呼びつける必要はあるまい」

 簡単そうに言う男にノリスが不敵に笑って応える。

スクリーンに映るのは最大望遠で示された大型戦車が四両。

山の稜線に隠れて、二両一組で射撃を行っている。

「誰にでも出来る話に用は無いとさ」

「そりゃそうだ。こんな所で喋ってる間に、一人部屋が欲しい連中が必死で頑張ってるな」

 狭い艦内で個人部屋など夢のまた夢だ。

上級将校と一部の士官……エース達くらいのものだろう。

「なら伏兵でも居るのか?」

「その通りだ。三十点をやろう」

 呑み込みの早い男が尋ねると、ノリスは頷きながら指を三本立てる。

おもむろに指を一つ折り、残り二つを見せつけた。

 

「ってことは伏兵つーのが大前提で、あそこの四台は見え見えの罠つー事だよな」

「戦車は四両だろ。……ははーん、こないだの戦車やゲリラ兵も居るって事か」

「うむ。で、残り一つは?」

 スクリーンに仮定のマーカーが幾つか用意される。

地形的に伏せることが可能な場所が幾つもあり、同時に……あの大型戦車も穴を掘れば隠す事が可能だろうと記載されていた。

確かに言われてみれば、連邦軍の装備が充実して居る事を考えれば、工作車両どころか無数の新兵器があってもおかしくは無い。

「……残る一つは計算された要塞と言うことだ」

「大佐のおっしゃる通りだ。予め測量した場所ならば、諸源を入力するだけで必中できる」

 ノリスが最後の答を告げると、エース達の脇に居た黒人の士官が付け足した。

居並ぶエースに劣らぬ威圧感を持っているのは間違いがない。

 

「必中ってマジか?」

「教えてやれ、グレーデン」

「はっ!」

 グレーデンと呼ばれた黒人の男は、スクリーンをさらに変化させた。

そこにはチェス盤の様なグリッドマップが表示され、それぞれに番号か記載されている。

「マーカーに対応した角度・包囲を設定。数秒以内に射撃。誰にもできる簡単な作業だろう?」

「けっ。皮肉かよ」

 Aポイントに当てたい場合は、Aポイント用の諸源設定。

既定の時間以内ならば、ほぼ確実にその場に着弾すると画像が示されている。

ここに居るエース達ならばともかく、一般兵だと近づく前に全て吹き飛ばされるだろう。

 

「まあ佐官に成るころには嫌でも覚える」

「地雷原に対戦車ランチャー。おまけに小型戦車……」

「古風に落とし穴やワイヤーもありそうだ。確かにオレ達じゃなきゃ突破できねえよな」

 グレーデンと呼ばれた男は砲兵経験があるのだろう。

一方でエース達はその経験がないが、彼が言う様に指揮官になる過程で覚えこまされるだろう。

少なくとも行く先が無限ではない地上戦では、測量射撃やゲリラ戦は多発するのだから。

「そこまでならば作戦会議など開かん。問題はこれをどうやって突破するかだ」

「ウゲ。まだあるのかよ」

「大佐はおっしゃったはずだぞ。腕利きが必要なだけなら、貴様らで無くとも良い」

 単純に腕があると言うだけならば、ここに居る男達は必要ない。

何かの腕が一流以上の職人は、幾らでも居るのだ。

だが彼らほど飛び抜けては居ないし、無茶をやった経験が無いとも言えた。

 

「ガルマ様は以前、あの小型戦車を圧倒せよとおっしゃられた。ならばここでも同様に扱わねば、片手落ちだろう」

「このオッサン、無茶苦茶言いやがる」

「なかなかにロックじゃねえか」

 ノリスは一癖も二癖もあるエース達を圧倒する。

突き抜けた武人と言うモノは、時にパンクでありロックなのだろう。

あの髪形は伊達ではないのだ。

「んじゃあどうするんだ? 回り込んだりしねえんだろ?」

「兵法は詭道なり。相手の考えている事を逆手に取り、相手がまさかと思う事をやればよいのだ」

 だから何をするんだと聞かれれば……正攻法。

ノリスは笑って、『決まって居る』とスクリーンの上で直線的に指を動かしたのである。

 

●カーチャス・ディアボロ

 誰もが笑うお伽話。

もしその日の出来事を語る事があれば、きっと冗談だと思うに違いない。

 

「私が先行する。お前達は適当に散開しろ!」

「この、クソオヤジ!!」

 ノリスは指向性レーザー通信で有言実行。地雷原の中を駆け抜けた。

そこは測量射撃が絶対に来ない場所であり、最初以外はワイヤーも設置されて居ない。

伏兵も爆発で足を止めることが前提で横槍を狙っているので、明らかにワンテンポ遅れた攻撃を繰り返していた。

「何が絶対に直線的な動きは避けろ……だ!」

「最初は親衛隊上がりかと思ったが……ありゃ、教導団だな」

 モビルスーツの平均速度に調整された地雷原。

その上を決して立ち止まること無く、段差など無いかの如く着実に駆け抜ける。

どれほどの技量、どれほどの気力。それを身に付ける為の圧倒的な体力。

それら全てを身に付けた男が、エース達の前に存在した。

 

 しかし彼らも軍団内で反骨心すら見せるほどの腕前と心意気を持って居た。

目の前で超人的な腕前を見せられたとしても、臆する事等できはしまい。

 

「オレが伏兵の前に出る。戦車とトラップは任せたぜ」

 シールドを三枚所持したザクがノリスに続いた。

カイトシールドとショルダーシルドで我身を隠し、比断面積を小さくして突入する。

「あいよ。どいつもこいつも、丸裸にしてやんぜ!」

 続いて仲間の前方へ援護射撃。

ハンドバルカンを付けたザクが走り込みながら連続射撃。

仲間には一発も当てずに。自らも、やや後ろを占有したのだ。

それは前にのみ専念する仲間を守る行動でもあった。

「クソオヤジに負けては居られねえからな」

 そしてワイヤーロッドとヒートロッドを装備した機体が、ジグザグどころかバッタの様に飛び跳ねる。戦車が逃げたと思わしき場所へ飛び抜けて、ワイヤーを絡めて突入して行った。

 

 その頃にはノリス機が最初の大型戦車に辿りつき、大きなステップで横っ跳びするのが見えたのである。

 

「まずは一つ!」

 ヒートサーベルで戦車を貫くと、自重を掛けて強制ターン。

戦車をひっくり返すかのように力を掛けると、元に戻った反動で強烈な振動が中身に伝わった。

「二つ!」

「嘘付け、三台目じゃねえか! 一人で美味しい思いをしやがって!」

 近くに居る車両を無視して、三台目に突進。

上から下に抜ける刺突を浴びせつつ、四台目にワイヤーロッドで放電を浴びせていた。

そしてサーベルを刺したまま戦車を横倒しにして、隠れている他の戦車に対する盾としたのだ。

 

「先ほどな。ガルマ様から激励の言葉があった」

「なんだよ。クソオヤジ」

 他の三機がポケットタンクや装甲車を始末する間に、ノリスは姿勢を低くしてその場を離れた。

大型戦車を盾はしたが、決して立ち止まること無く常に移動を繰り返していたのだ。

「別に倒してしまっても構わんのだろう? と。きっとアレは、お前達が私に追い付くまで待たずとも良いと仰せなのだろう」

「多分……違うと思う」

 指向性レーザー通信を締めるのは、ジョークと苦笑が飛び交う内容だ。

そこには一々戦術や戦法を語る様な事は無く、訓示だとか御説教などありはしない。

エース達は思い描く、『自分ならばこう動く』『こう動きたい』という動作を、完璧なまでに体現している男の姿だ。

 

 やがてノリスが放置した二台目を、エース達が共同で撃破。

当然ながらポケットタンクも全て撃破しており、悪魔と呼ばれた戦車軍団はアッサリと半壊したのである。

その後に塹壕に隠れた戦車達に対し、彼らが苦戦すると思う者はいるだろうか?

悪魔殺し……カーチャス・ディアボロと呼ばれる男たちの、これが最初にして次なる目的が決まった瞬間でもあった。

 

●アフリカ戦線より出遭いを込めて

 戦車軍団を排除した私達の元に、オデッサのマ・クベから連絡が入った。

緊急を要するとのことで、大型戦車を後方で分解テストする命令書を書くと、急いで通信所に向かった。

 

「何があった。いや……察しはついているが、本当なのか?」

「はい。残念ながら……」

 電線によるアナクロな手段でオデッサと通信。

急電の心当たりは無いので、落ち付くまで待つ必要は無かった。

「キリマンジャロにモビルスーツが居たとのことです」

「……仮称はザニー? ザクのパーツでも使っていたのか?」

 同時に送られて来た暗号文を解読すると、見慣れた単語が載って居た。

納得すると同時に、まさかという考えが頭をよぎる。

幾つかのゲームで見られた、ザクとジムの中間の様な試作モビルスーツだ。

ザクに似たモノという意味かと適当な理由を付けて、マ・クベに詳細を確認しておく。

「ビッター司令が本国に指示を仰いだところ、ひとまずそう名前を付けられたとか。あるいはジオニック社が取引でもしたのかもしれませんな」

「そういえば電子部品を納入しているアナハイムは、連邦とも取引があったな」

 マ・クベが目礼を返して、それ以上の言葉を止めた。

大会社の政治的取引である以上は、本国の関与外だ。

それにジオンにとってもメリットのある取引であれば、本国の情報部があえて見逃した可能性もあるだろう。

 

「……腕が砲と盾か。微妙な所だな」

「おそらくは急造品でしょう。本国はまだ間に合うと判断。こちらに向かっている戦力の一部を急遽振り分けたそうです」

 キリマンジャロ攻略を捨てるかどうか。

結局のところ、マダガスカルに搭載した通常兵器のこともある。

こちらに向かうHLVの中で、部品を除いて戦力に成る部隊を割いたのだろう。

「今からオデッサに戻してもこちらのペースは変わらん。仕方無いな」

「はい。ビッター司令の戦力でも十分でしょうが、増援があれば確実なレベルですので」

 ということはアイナとの再会は延期か。

少しだけ残念に思いつつも、RX計画が間に合ってないことに安堵を覚える自分が居た。

 

「キャルフォルニアで手に入れたという潜水艦を動かせ。一部でいい」

「オセアニアですな? 既に向かわせております」

 マ・クベがやはり目礼して応える。

実際にはインドシナの南、香料諸島に基地を建設する為だ。

オーストラリアや北京に向かった部隊をそこに集結させ、オセアニア一帯でゲリラ作戦を行う事に成る。

「予定通りにする為とはいえ、ヨーロッパ戦線は厳しくなるな」

「仕方ありません。これもまたガルマ様に与えられた試練なのでしょう」

 計画の一部ではあるが、神妙な顔をして頷いておく。

キリマンジャロが陥ちた時、それが我々の戦力が集結する時なのだ。

 

 あえて分散した戦力が、再び一つに成る為に動き出す。




 と言う訳で大型戦車を撃破しました。
勝てるのは当然なので、無茶をして相手の友好な兵器を無駄飯食らいだと思わせる作戦です。

 とまあ理由を付けるのは簡単なのですが……。
みんな大好き。「ひとーつ!」が、したかっただけです。
本当の事を言えば、もうちょっとエース達にも個性を付けておきたかったところですね。
とはいえ前回が移動中だったので、酒場で不満を述べているとか、真面目な士官と口論とかやるのは不自然だったのでシーンを入れて居ません。

●形なき要塞
 大型戦車は囮です。
測量射撃のマーカーを設置し、伏兵を用意する事でまともに戦うと大変でした。
ちなみにノリスがやったことはエースの人達もするだけならできますが、どこに相手が何を隠して居るか?
それを理解しないと危険なので、実行は無理でしょう。
 なお、無駄と判って地雷原にワイヤーしかけるとか
ありえない速度で突っ込む敵へのマニュアル造ってるとノリスでも死にますが
そういう相手が居た場合、味方を犠牲にガルマ隊が通り過ぎてから襲うくらいの事はすると思われるので、問題無いとして実行して居ます。

●カーチャス・ディアボロ
 悪魔殺しとか鮫殺しという、船乗りの言葉らしいです。
昔の大航海時代のゲームから流用。

●ザニー
 とうとう登場した連邦モビルスーツです。
コロニーの影響が無く、確実に迎撃できる場所に配置されて居ました。
大型戦車の融合炉とか、このザニー込みで、RX計画に繋がっていく感じですね。
なお本来のザニーより未完成で、右手が砲、左手が大型シールドになっています。
 今回で再開する筈だったアイナ達は、キリマンジャロの援護に向かって不在。
次回以降にザンジバルかギャロップに乗って現れるかもしれません。
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