インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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いわゆる繋ぎ回です。


プロローグ 第11話 オリ主、群馬に立つ

結局俺は死ねなかった。

風呂の中で溺れ死んでやろうと思って、水の中で息を止めていたが苦しくなって風呂から出てしまった。

それなら薬の過剰摂取で死んでやろうと思って、たまたま持っていた錠剤を一気飲みしてみたがそれはフ○スクだった。胃がスースーする。

諦めて寝ようとしたが、胃が冷たくていつまで経っても寝れない。お腹が痛い……トイレ行こう。

 

ケツまでスースーしてきた。

 

いろんなところをスースーさせながらベットでもだえているとベッドルームの扉が開かれ誰か入ってきた。

 

「失礼します、藤木さん起きていらっしゃいますか?」

 

ジジイの秘書の楢崎さんの声だ。時計を見るともう朝の七時になっていた。七時から出勤とは仕事熱心な秘書さんだ。俺はベッドから出て返事をする。

 

「ふぁあい、起きてますよ~。息子も」

 

俺は小粋なジョークで楢崎さんに答える。楢崎さんは何事も無かったかのように手帳を取り出し俺に今日からの予定を伝える。

 

「藤木さんには本日11時より群馬県にある三津村重工業IS兵器試験場にてISの操縦訓練を始めていただきます」

「IS動かした次の日からもう訓練か。早いな、さすがジジイ」

「ジジイ?」

「いや、なんでもないです」

 

心の中が言葉になって出てしまったようだ。気をつけないと。

 

「十一時からIS操縦についての説明、十二時に昼食、十三時から本格的な訓練を始めます。訓練終了予定時刻は十八時を予定しています。藤木さんの訓練は三津村重工業所属のISテストパイロットが監督します、訓練中は彼女の指示に従ってください」

「了解」

「八時にお迎えに上がりますのでそれまでに朝食と着替えを済ませておいてください。これ着替えです」

 

楢崎さんが紙袋を渡す。中にはジャージとTシャツとトランクスが入っていた。

 

「もうすぐルームサービスが来ます。部屋の前に護衛が居ますので、彼に付いていってください」

「わかりました」

 

楢崎さんは一礼すると部屋を出て行った。楢崎さんと入れ違いにボーイが部屋に入り朝食をテーブルに並べる。俺はそれを食べた後、シャワーを浴び着替えた。

まだ八時まで時間がある。少しテレビでも見ていよう。

 

テレビをつけると俺が「IS学園で君と会うのを楽しみに待ってます。(キリッ」と言っていた。俺はテレビを消した。どうやらこの世界は全力で俺の精神を殺しに掛かってきているらしい。

 

俺はベッドでしばしごろごろした後、部屋を出た。ヤクザが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関越自動車道を北へ進む。車窓の風景に飽きてきたころ、隣に座っている楢崎さんが声を掛けてきた。

 

「暇ですか?」

「まぁ」

「では、明日以降の予定を説明させていただきます」

「楢崎さん」

「何か?」

「俺と大泉社長の連絡役って誰になるの?何かある度に社長に直接連絡するわけじゃ無いでしょ?」

「藤木さんがIS学園に居る間の三年間は私ですね」

「やっぱりそうか。じゃあ、楢崎さんに言いたいことがあるんだ」

「私にですか?」

「固い、固いよ楢崎さん。俺達は三年間一緒にやっていくわけだ。ずっとそんなんじゃ息が詰まりそうだ。もっとフランクにいこうよ」

「解ったわ、藤木君」

 

切り替え早っ。楢崎さんも早い。ジジイだけじゃなかったんだ。

 

「いきなりですね。びっくりしましたよ」

「元に戻しましょうか?」

 

本当に早い。三津村はせっかち。

 

「いや、このままでいい」

「ええ、じゃあこのままで」

「そうだ。明日以降の予定だったっけ。説明お願い」

「じゃ、説明するわ。明日は朝七時に起床。朝食着替えの後八時から訓練開始よ。十二時から一時間の休憩、それからは今日と同じね。十九時からはホテルに帰って自由時間よ。温泉があるらしいからちゃんと疲れを取って頂戴ね」

「一日十時間か。きつそうだな」

「訓練は三月二日から四日まで続くわ」

「結局三日だけ?」

「五日の訓練は午前中までね。それから藤木君にはいったん自宅に戻ってもらうわ」

「何で?」

「六日の卒業式に出てもらうわ。ジジイの温情よ」

「ジジイの件はジジイに報告しないでもらえると助かるな、ジジイの俺に対する心象的に考えて」

 

ここぞとばかりにジジイと連呼する。楢崎さんが笑った。

 

「解ったわ。ジジイには秘密にしておいてあげる」

 

楢崎さんはクールビューティーな外見とは裏腹にお茶目な人のようだ。

 

「あっ、運転手さんは……」

 

運転をしているのは今日俺の部屋の前に居たヤクザだ。

 

「このクラスの運転手になると秘密は絶対漏らさないわ。瀬戸君、大丈夫よね?」

 

瀬戸と呼ばれたヤクザは静かにうなずいた。彼はレッサーヤクザではないらしい。

 

「卒業式が終わったら、三津村商事本社に行ってメディカルチェックね。その後は今日のホテルで一泊」

「試験場にとんぼ返りじゃないんですね」

「七日にはIS学園入学試験があるわ。場所は三津村重工業本社地下の特殊実験場よ」

「入学試験ってどんな内容をやるの?」

「試験内容は実技のみね。内容は明かされて無いけど多分模擬戦になるんじゃないかしら。試験はIS学園の教師がするそうよ。誰がするのかはわからないけど……解ったら教えるわ」

「確かブリュンヒルデって今はIS学園の教師やってましたよね?あの人だったら嫌だなぁ」

 

最近のデリバリーはお嬢さんだけではなくIS学園の教師も運べるらしい。時代は変わったな。

デリバリーブリュンヒルデ。さぞかし素晴らしいテクをお持ちになっていることだろう。

 

「それが終わればまたホテルに一泊してここに帰ってくることになるわね」

 

フロントガラスの向こうにうっすらと榛名山が見える。試験場はこの山の向こう側だ。

 

「そういえば、専用機の件はどうなりました?」

「専用機はまだ図面も引いて無いわね。これから行う貴方のの訓練結果や適性を見てから機体コンセプトが決まるみたいね」

「じゃあ、それまで乗る繋ぎの機体については?」

「ああ、それね。それについては中々いいものが手に入ったわ。今のIS学園三年生が卒業制作に作ったカスタム機よ。本来ならコアの状態にまで戻される予定だったらしいんだけど、そこにストップをかけて少々強引に借りる事にしたわ。お陰でIS学園には嫌われちゃったわ。私たち」

「俺、そのIS学園に通うんですが…あまり波風立てないようにしてくださいよ」

「専用機が欲しいって言ったのはあなたじゃない」

「それはそうなんだけどさ……」

「かなり尖った機体みたいよ。詳しくはまだ私も知らないけど、状況次第ではかなり強いって」

「へぇ、それは楽しみだ」

「あ、そうそう。そのカスタム機の開発を主導した子を三津村重工にスカウトしたわ。あなたの機体の整備担当と新専用機の開発チームの一員として働いてもらうことになるわ。整備課の主席らしいわよ」

「エリートですね、そりゃ凄い。」

「これでこの話は終わりね。他に何か聞きたいことはある?」

「今は無いです」

 

早い、俺がISを動かして二十四時間経ってないのにもうこれだ。もう三津村の早さにツッコむのやめようかな。

 

榛名山が左に見える。試験場は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく来たな、待ちくたびれたぜ」

 

俺達が三津村重工業IS兵器試験場に着いた時、一人の女性が俺達を出迎えてくれた。

 

「久しぶりね有希子、元気にしてた?」

「おお、元気だぜ!そうだ怜子、あのジジイはもう死んだか?」

「生きてるわよ、あなたも昨日の会見見たんでしょう?」

「いや、今日死んでるかも知れないってのに一抹の望みを託してみたんだが」

「あなたどれだけ社長のことが嫌いなのよ……」

「当たり前だ。あのジジイアタシをこんな山奥に押し込めやがって自分は都会で料亭三昧、ノーパンしゃぶしゃぶ三昧だぞ。こんな理不尽があってたまるか」

「ノーパンしゃぶしゃぶって……いつの時代よ……」

 

このご時勢にノーパンしゃぶしゃぶは流石に無いんじゃないかな?女性団体が黙ってなさそうだ。

有希子と呼ばれた彼女の見た目はいかにも田舎ヤンキーという感じだ。極細の眉毛とプリン髪がその印象を加速させる。

彼女が俺に声を掛ける。

 

「お前が噂の二人目か。アタシが今日からお前を教える野村有希子だ。アタシのことは有希子様…いや女王様と呼べ」

「わかりました女王様。訓練頑張ったらご褒美に鞭を頂けますか?」

「うわなにコイツ気持ち悪い」

 

乗ってあげたら引かれた。これこそ理不尽だ。

 

「馬鹿やってないで中に入るわよ、有希子も大人なんだからちゃんとしなさい。藤木君、彼女のことは有希子って呼んでいいわ」

 

楢崎さんが試験場にあるビルに入っていく。俺と有希子さんはその後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、今から授業を始める」

 

ビル五階の会議室、その中には楢崎さんと有希子さんと俺が居た。ヤクザは会議室前の廊下に立ち護衛をしてくれている。

 

「オッスお願いしまーす!」

「アタシの持論ではISは習うより慣れろだ! ということでガンバレ!以上!」

 

有希子さんはダッシュで扉まで行き、扉を開け会議室から出て行った。

 

「ええええええええ!?」

「ちょっと有希子待ちなさい!!」

 

楢崎さんがダッシュで有希子さんを追いかける。俺は一人会議室に取り残された。

扉からヤクザが顔を出し、心配そうに俺を見ていた。開け放たれた扉のほうから何か声が聞こえる。

 

「何よ!! さっきのは!! 藤木君ポカンとしてたわよ!!」

「アタシには授業なんて無理だもん! 午後の訓練から頑張るからそれで許して!!」

「許すわけ無いでしょう! 部屋に戻りなさい!」

「嫌だああああああ!! 授業怖いいいい!!」

「人事部に報告して減給させるわよ!」

「お給料が減るのはもっと嫌だああああああ!!」

 

楢崎さんが有希子さんの首根っこを掴んで戻ってきた。心なしか有希子さんが小さく見えた。

 

有希子さんは、渋々俺にISに乗る際の注意事項や心構え、ISの基本動作について説明した。十二時きっかりに授業は終了し、有希子さんは逃げるように会議室から出て行った。

 

昼食後有希子さんと再会する。有希子さんはさっきより元気そうだった。

 

「よーし! これからが本番だ!!」

「よろしくお願いします。」

「まずは運動能力測定だな! まずは握力!」

 

有希子さんから握力計を渡される。俺は全力で握力計を握り締めた。

 

「うおおおおおおおおおっ!」

 

自己ベストタイだ。今日は中々調子がいい。張り切っていこう!

 

俺は運動能力測定のメニューを次々消化していった。

 

「次、上体起こし!」

「フン!フン!フン!フン!」

 

「次、長座体前屈!」

「うにゃ~あ」

 

「次、反復横とび!」

「ズババババババババ」

 

「次、持久走!」

「えっほ、えっほ、」

 

「次、50メートル走!」

「ドドドドドドドドドド」

 

「次、立ち幅跳び!」

「ダンッ!」

 

「最後!ハンドボール投げ!」

「どりゃー!!」

 

 

運動能力測定のメニューが終了した。

 

「お前すげえな。本当に中学生かよ」

「俺が何でこんなに出来るか知りたいですか?」

「ん? 何でだ?」

「何でかって? それは鍛えてるからだああああああああああっ!」

 

俺は叫ぶ。有希子さんは引いていた。俺は構わず有希子さんに聞いた。

 

「うわぁ」

「さあ! 次は何ですか!?」

 

有希子さんが考える素振りをする。

 

「う~ん、何しよう?」

「そろそろISに乗ってみたいですね」

「そうか? じゃあそれでいいや。」

 

うわこの人適当。

 

「では、これから三十分の休憩だ、私はそれまでにISの準備をしておく。お前はそれまでにISスーツに着替えて来い」

「ISスーツ? 持ってませんよ?」

「あれ? そうか、仕方ない。ならジャージのままでいいか。まぁ、準備に時間が掛かるからそれまで待ってろ」

 

俺がISを動かして約二十五時間。そんな物あるわけが無い。

 

「ISスーツ、あるわよ」

 

楢崎が言う。そんな物、あった。

 

「あるの!?」

「三津村繊維が一晩でやってくれました」

「三津村スゲエ!!」

 

うん、やっぱり早い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか妙にぴっちりする部分とごわごわする部分があって着心地が良くない。あと臍出しって……俺のギャランドゥが丸見えじゃないですか」

「一晩で作ったものだからしょうがないわ。今後試作を重ねていくから今はそれで我慢して頂戴」

「IS学園に入学するまでにはまともな物付作ってくださいよ。あと臍出し禁止ね」

 

ISスーツに関しては今後に期待だ。

ビルの隣の格納庫から有希子さんの呼ぶ声が聞こえる。準備ができたようだ。

俺は楢崎さんと共に格納庫に向かった。

 

格納庫の中には二つのISが並んでいた。一つは打鉄、もう一つは見たことあるけど名前が解らない機体だ。

 

「もう一つのISはラファール・リヴァイヴよ。フランスの機体よ」

「ほうほう、おフランス製ですか」

 

俺の意図を察してくれたのか、楢崎さんが解説してくれる。

有希子さんがもったいぶったように口を開く。

 

「ここに二つのISがあるじゃろ」

「打鉄でお願いします」

「早いな、もっと乗って来いよ」

「乗ってきたら引かれたんでやめときます」

「つまんねぇの」

「もう乗っていいんですか? 打鉄」

「ああ、好きにしろ」

 

俺は打鉄に背中を預ける。打鉄が動きだし、俺に装着されていった。

以前のような感覚はない。しかし体が軽くなるような感覚。この浮遊感にまだ慣れない。

 

「おおー」

「何かおかしいとこでもあります?」

「男がISに乗ってること自体がおかしいんだよ」

「確かに」

 

格納庫のシャッターが開き俺は外に出る。有希子さんが俺に言う。

 

「よし、とりあえず好きに動かしてみろ。ISを動かす感覚を体で覚えるんだ」

「了解」

 

好きに動かしてみろといわれても何をすればいいのか、とりあえず踊ってみるか。

 

「~♪~~~~♪~~♪~~~」

「何やってんだ」

 

鼻歌を歌いながら適当に踊っていると有希子さんが言った。俺はそれにボックスを踏みながら答える。

 

「好きに動かしてみろって言うから、踊ってみたんですけど」

「アホ」

 

やっぱり有希子さんは理不尽だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、基本の動作は今日のところはこのくらいでいいだろう」

「うーっす! あざーっす!」

 

あれから俺は、有希子さんの指示の元、ISの基本動作の訓錬を行っていた。

なんか必殺技的なものは無いんですか。と有希子さんに聞くと有希子さんは瞬時加速(イグニッションブースト)というものを見せてくれた。よし、あれ覚えよう。

 

「よし、次の段階に行くぞ」

「次は何するんですか?」

「次は……試験勉強だ」

 

試験勉強?ああ、模擬戦のか。しかし有希子さんが試験勉強って言うと……

 

「有希子さんから試験勉強って言葉を聞くとすげえ違和感ありますね」

「言うな、アタシだって解ってんだ」

「まぁ、その見た目じゃあ。」

「だから言うなって。ほら、始めるぞ」

 

有希子さんのラファール・リヴァイヴが飛び俺の打鉄から距離を取る。

 

「じゃあ、始めるぞ」

「ちょっとタンマ!武装チェックさせて!」

「おう、あくしろよ」

 

さっきまでの訓錬で武装を使って訓錬していなかったので今初めて打鉄の武装を確認する。

どうやら刀とアサルトライフルしかないらしい。初心者にはこれで十分ということか。あれ?これどうすりゃ呼び出せるんだ?

 

「有希子さーーーーん! 武装ってどうやって取り出すのーーーーーー?」

 

有希子さんがずっこけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は刀を装備して有希子さんと向かい合う。有希子さんも刀を装備していた。

 

「いつでも掛かってきていいぞ」

「うーん、戦いなんて初めてだからどう攻めたらいいのかさっぱりで、有希子さんどう攻めたらいいと思います?」

「アタシに聞くなよ……」

「おっ、大きく飛び上がってそのまま落下しながら唐竹割りとかいいと思いませんか?なんか格好良さそう、特撮ヒーローみたいで」

「アタシに言うなよ……」

「じゃあ、行きますね。唐竹割りの後は適当に刀振ってみますんで、上手く合わせてくださいね」

「わかったよ……」

「よし、どりゃーーー!!」

 

俺は宣言どおり二十メートルほど飛び上がり、重力に従い落下していく。正直怖いが、打鉄が俺を守ってくれる。それを信じて有希子さんに向かって行く。

俺の唐竹割りを有希子さんが受け止める、俺は少し後ろに飛んで距離を取る。

その後距離を詰め、袈裟切り、胴薙ぎ、その後一回転してまた袈裟切りを繰り出す。そして少し下がって突き!

 

しかし有希子さんはそれを全ていなしていく、片手で。やっぱり武道習っておくんだった。

近接戦では全く勝ち目はなさそうだ。仕方ない、射撃だ!

 

俺は後ろにカカッとダッシュし、距離を開ける。そして刀を捨てアサルトライフルを展開する。

有希子さんは全く動いていない。蜂の巣にしてやる!

俺はアサルトライフルをフルオートで発射する。有希子さんはラファール・リヴァイヴに装備されている盾でそれを防いでいる。

 

しかしフルオートで撃つと気持ちがいいな。テンションが上がってくる。あっ、折角だしあの台詞言っておこう。

 

「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ」

ボラーレ・ヴィーア(飛んでいきな)!」

「グワーッ」

 

一瞬の出来事だった。調子にのってアサルトライフルを撃っていた俺に有希子さんは瞬時加速(イグニッション・ブースト)で近づいた。そして盾をキャストオフさせ、隠されたとっつきで俺をとっついた。

とっつかれて俺は飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「有希子! あんた何やってんのよ!!」

「いや、あいつが余りにも調子に乗ってたからさ……」

「当たり前でしょう! 彼は昨日IS操縦者になったばっかりで今日初めてISに乗ったのよ! それも含めてあなたが指導しなきゃならなかったんじゃないの?!」

「だって……ムカついたんだもん…」

「あなたはムカついたらからって初心者にパイルバンカー打ち込むの!?」

「うっ……それは……」

「とにかく藤木君に何かあったらあなたに責任を取ってもらうから!」

「何かって……何?」

「後遺症とかあった場合とかね」

「藤木、大丈夫かな……」

「知らないわ」

 

気づいたら俺はベッドの上に居た。模擬戦の途中からの記憶が無い。

部屋の全部が白で統一されており思わずカズトさんを思い出してしまう。部屋の外から楢崎さんと有希子さんの声が聞こえる、何があったのだろうか。

 

しばらくして二人の話が終わったようで部屋に入ってきた。二人とも驚きベッドに駆け寄ってくる。

 

「藤木君! 大丈夫!?」

「記憶が無いんだ……」

「いやあああああああああああああ!!!」

 

有希子さんが叫んだ。楢崎さんは俺がとっつきを食らって気絶したことを教えてくれた。それが原因か。

こうして俺の群馬生活一日目は終わった。

その後、模擬戦途中以降の記憶しか忘れてないことを楢崎さんと有希子さんに伝えた。有希子さんはそれを知り、心底安心したような表情を浮かべていた。そしてまた楢崎さんに怒られていた。

 

ホテルに帰り、風呂に入るのも忘れ泥のように眠った。翌日になり朝食を食べまた試験場に行く、朝食に出された豆腐がやけにうまかった。そして試験場に行くまでの道路にやたらタイヤの跡が目立つ、ここには走り屋が多いのか。

 

二日目から有希子さんは妙に丁寧に俺に指導してくれるようになった。訓錬はきつかったが、有希子さんがよく俺を気遣ってくれる。その甲斐もあってかなり成長できたと思う。空を飛び回るのも、もう全然怖く無いし戦いに対する心構えや技術も少しは上達してきた。有希子さんも三日でここまで出来るようになるなんて、中々筋がいいと褒めてくれる。そして、ついに三月五日の昼を迎えた。

 

「ということで訓錬はここで一旦終了だ」

「うーっす、あざーっす」

「そうだ、さっき怜子から聞いたんだけど、お前の入学試験の内容はやはり模擬戦らしい。あと相手が決まったそうだ」

「へぇ、誰なんですか?って言ってもブリュンヒルデ以外、俺IS学園の教師知りませんけど」

「まぁ、お前はそうだろうな」

「もしかして業界的には有名人って感じの人?」

「正解だ。名前は山田真耶、元代表候補生だ」

「やまだまや…中々お洒落な名前ですね」

「アタシは直接やりあったわけじゃないが……かなり強いらしい。少なくともアタシよりは」

「ご謙遜を、有希子さんも中々強いですよ。少なくとも俺よりは」

「当たり前だ。15のガキが何人来ようが負けるつもりは無い、しかしアタシより強い奴は沢山居る。そしてそのアタシより強い山田真耶より強い奴も沢山居る。お前が行くIS業界はそんなところだ」

「へぇ、そりゃ不安になるな」

「まぁ、相手も手加減してくれるだろ。ああ、これが三津村が作った山田真耶のプロフィールだ。何かの足しになるかも知れん、一応読んでおけ」

 

有希子さんから数枚の書類とクリップに付けられた写真が渡される。おお、おっぱいすげえデカいな。もはや凶器だ。

書類をめくり、内容を確認する。元代表候補生だけあって輝かしい経歴だ。そして最後に書かれた特記事項に目が留まる。

……なんだこれは、ふざけてるのか? ……いや、これは勝利の鍵になるか知れん!考えろ、考えろ俺!KOOLになれ!

オリ主頭脳が高速回転をはじめる。

 

……答えは決まった。

 

大きな賭けに二つ勝たないといけないが、これに成功すれば勝利を収めることが出来るかもしれない。可能性はゼロではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と楢崎さんとヤクザは有希子さんに一時の別れを告げ、車に乗り試験場を後にした。三時間か四時間もすれば俺は自宅に帰ることが出来るだろう。

明日は卒業式で明後日は運命のIS学園入学試験だ。IS学園は試験に失敗しても入れるだろうが、出来ることなら勝ちたい。

待っていてください有希子さん、あなたに山田真耶の倒し方を教えてあげますよ。

試験管である彼女に男の戦いを見せ、華麗に勝利を手にしよう。

 

俺の手には山田真耶のプロフィールが握られている。特記事項にはこう書かれていた。

 

特記事項:たぶん処女

    :たぶんムッツリ




模擬戦の対戦相手が判明するまで書こうと思って書いたらいつも以上に長くなってしまいました。

プロローグの書き溜めが終了しました。オリ主のヒロインって誰にすればいいんですかね?(申し訳ないがホモはNG)


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