インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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また繋ぎ回です


第9話 チャイナアドバイス

今日も今日とて打鉄・改の習熟訓錬が終わり、俺は夜道を寮に向かって歩く。

打鉄・改を操る上での特殊技術である空中ドリフトは未だに完成していない。

空中ドリフト……高速移動中にPICで姿勢制御し強引に行きたい方向へ体を向ける。

言葉にすれば簡単だ、実際体を行きたい方向へ向けること自体は難しくない。

しかし問題はその後だ、方向転換後機体は慣性と推力の力が別方向に働き機体が安定しない。打鉄・改のPICは高速移動の慣性を打ち消すことが出来ないのだ。

安定しない機体はそのまま上空高く飛んでいくか、地面に激突するかの二択を迫られる。そして運悪く地面に激突してしまったら俺は気絶してそのまま訓錬終了となる。唯一の救いは最近記憶喪失の頻度が落ちてきたという位だ。

操縦者保護と姿勢制御と減速にしかPICを使えないという不動さんの言葉に嘘は無かった。嘘であって欲しかった。

 

そんな事を考えながら歩いていると最近ようやく見慣れた人間の姿をみつけた。鈴だ。

彼女はベンチに座り俯いていて、その姿がやたらと哀愁を誘う。何かあったのだろうか?

 

「おう、何してんだ?」

「あっ……なんだ紀春か」

「一夏じゃなくて悪かったな。ああ、そういえばクラス対抗戦の初戦ってお前と一夏だったよな。どう? 訓錬とか順調?」

「…………」

 

なにか地雷を踏んでしまったのだろうか。鈴は全く喋らないし、この場の空気が重い。

原因は……多分一夏だ。我らが主人公様はまた何かやらかしてしまったのだろうか?

 

「それどころじゃない、って感じだな」

「なんでアンタには解るのよ……一夏は全然解らなかったのに……」

「男全員が一夏みたいなのだったら大変なことになるぞ」

「……確かにそうね」

 

織斑一夏、我らが主人公様は相当なフラグ体質だ。しかし建設したフラグをそのまま放置する癖は何とかしてもらいたい。俺がとばっちりで酷い目に遭ったことも数知れない、本当に何とかして欲しい。

 

「その口ぶりからするに、一夏と何かあったのか? いや、話したくないなら別に話さなくてもいいけど」

「…………」

「…………」

 

重い、空気が重いよー。誰か助けてー。なんか俺も逃げられない雰囲気だしー。

 

「昔、一夏にね……」

 

来た! この状況を鈴自身が打破してくれた! よーし、ここはご相談に乗ってこの重い空気から脱却しよう!

 

「料理が上達したら毎日酢豚を食べてくれる? って約束したの」

 

なんで酢豚なんだ? しかも毎日? そりゃきつい約束させられたもんだな。

 

「でも一夏は約束を間違えて覚えててさ、料理が上達したら毎日酢豚をおごってくれる。って事になってた」

 

一夏……お前毎日酢豚を食う気でいたのか。ある意味漢だな。

しかし一夏も一夏だが、俺は鈴にも問題が無いようには思えない。

 

「一応確認なんだけどさ、その毎日酢豚発言は毎日味噌汁を。ってな感じのニュアンスで言ったってことでいいのかな?」

「うん……それで合ってる」

 

やっぱり鈴にも問題があった。どうしよう、優しく慰めることも出来るがそれではコイツは進歩しないだろう。厳しく俺が思うことを言えばいいのか、どう言おう。

いやここはいっそ鈴に選んでもらおうか。

 

「なぁ、鈴」

「……何よ」

「今俺はお前にどう言うべきか悩んでる。お前に中身は無いけど優しい言葉を掛けるべきか、厳しいけど本当に言いたい言葉を言うのか。どっちがいいと思う?」

「明らかに選択肢が一つしか無いんだけど」

「まぁそうだな、さっきのは枕詞みたいなもんだ。という事で今からお前に厳しい事を言う。怒らずに聞けよ」

「解った、聞くわ」

 

あんまり人に説教するのは好きではないけど、やらないといけない時が来たようだ。心に残るSEKKYOUをしよう。

 

「仮に俺が一夏で、お前に毎日酢豚を食べてくれるかって聞かれたとしよう。その時俺は多分こう言う。『毎日酢豚なんて食えるか』ってね」

「え?酢豚ダメなの?」

「お前さぁ、毎日酢豚ってどうよ?幾ら酢豚が好きでも毎日酢豚食わされてたら流石に嫌いになるぞ」

「酢豚じゃダメだったんだ……」

「なにを勘違いしてるか知らんが、麻婆豆腐でも青椒肉絲でも回鍋肉でもダメだからな」

「だったら何だったらいいのよ。」

「そもそも主菜が毎日同じってのが駄目なんだよ」

「え!? それが駄目だったの!?」

 

コイツ馬鹿だ。

 

「まだ他にもあるぞ、酢豚を食べてくれる?って言ったせいで毎日味噌汁的なニュアンスがかなり解りにくくなってる」

「やっぱり酢豚のせいか……」

「そして最後だ、そもそもそんな遠まわしの告白が一夏に通用すると思っていたのか?」

「うっ」

「総合的に判断すると、最初から最後までお前の告白は駄目駄目だ! そんなんじゃ一夏は落とせないぞ!」

「…………」

 

鈴に指をビシッと突き立てて言う。鈴はまた俯いていた。

 

「一夏に告白したいんならもっと直接的に行け! あいつはお前の予想以上に鈍感だぞ! 少しでも遠まわしに言ったら完全に意図を履き違えられるぞ!」

「た、確かに……」

「現在一夏の周りにはお前を含めて三人の女が鎬を削っている。そしてそれはこれから多くなる可能性が大いにある。ぐずぐずしていると取られるぞ。……いやそれは無いな、一夏だし」

「確かにそれは無いわね」

 

さて、すっかり目的の重い空気からの脱却を忘れて語ってしまったが。もういい感じだろう。

 

「と、いうことで俺からのアドバイスは終了だ。なにか質問はあるか?」

「……仲直りの切欠が思いつかないのよ、どうしたらいいと思う?」

「そんなこと俺の知ったことか。と言いたいとこだが、切欠ならあるだろうが。お前と一夏二人だけの特別イベントが」

「……クラス対抗戦ね」

「と、いうことで今度こそアドバイスは終了だ、俺は帰るから」

「ん、ありがと。紀春、アンタ思ってたよりいい奴だったのね」

「当たり前だ。俺は地元では、仏のノリ君と呼ばれた男だぞ?」

 

もちろん嘘だ。俺は仏のノリ君ではなく紙一重のかみやんだ。そして最近はのりりんだ。

 

「何それ、かっこ悪い」

「うるせー、俺はもう帰るからな」

 

そんな事を言い、俺は今度こそ寮に帰る。これで少しは過ごしやすくなればいいんだが……


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