インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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第11話 Aブレイク・ナイト

目を覚ますと目の前には割りと知ってる天井が見えた。

俺はどうやら気絶するたびにお世話になる保健室に居るらしい。

 

枕元に置いてあったスマホからもう夕方だということが解る。

そして、カーテンを隔てた隣からなにやら音が聞こえる。なんだろう?

 

カーテンの隙間から隣を覗くと、鈴が今まさに寝ている一夏にキスをしようとしていた。

俺はスマホからカメラを起動しその姿を激写した。

 

「へっ?」

 

シャッター音に気づいたのか鈴がこちらを振り向く。

 

「鈴ちゃん……仲直りはバッチリみたいやね」

「あああ、あんた……」

「いやー、なかなかいい物が撮れましたなぁ。これからカメラを趣味にしていこうかな?」

「けっ、消しなさいよ!」

「そんなケチケチすんなって、モデル料なら払ってやるから。100円でいいか?」

「いいわけないでしょ!」

 

鈴が俺につっかかる、彼女の顔は保健室に差す夕焼けの日差しより赤かった。

その時、寝ていた一夏が身じろぎをする。そろそろお目覚めの時間のようだ。

 

「おっと、王子様はお目覚めのようですな。ではごゆっくりー」

 

そう言ってカーテンを閉じ、再びベッドに潜り込む。

一夏と鈴がカーテン越しに話しているのを聞く。色々と話を聞いているうちに、酢豚の話題に変わる。

どうやら、一夏にも毎日味噌汁的なニュアンスを感じていたらしく、そのことについて言っていたがそれを鈴が否定した。

 

俺は唐突にカーテンを開け、鈴に言った。

 

「鈴よ! お前はそれでいいのか!?」

 

一夏と鈴が俺に驚愕の表情を向ける。

 

「紀春!? なんでここにお前が居るんだよ!?」

「そんな事は後回しだ! それより鈴! お前はそれでいいのかと聞いてるんだ!」

「えっ……ちょっ……」

 

おお、慌てておるわ。今までは篠ノ之さんを中心に弄ってきたが、中々期待の持てるニューフェイスが登場したようで俺も嬉しい。とりあえず今後コイツはあの写真のネタで弄くってやろう。

 

俺はスマホを操作し、さっき撮影した画像を鈴に突きつける。

 

「これは本気じゃなかったってことかよ!」

 

鈴の顔がまたしても赤く染まる。

 

「えっ?何の画像だ?俺にも見せてくれよ」

 

一夏が興味ありそうな顔をして俺達に言う。

 

「いやああああああ!」

「ゴギァ!!」

 

俺は鈴の右フックを顎に受けそのまま自分のベッドに倒れる。そのまま眠るように意識を失っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ますと目の前には割りと知ってる天井が見えた。

俺はどうやら気絶するたびにお世話になる保健室に居るらしい。ってまた気絶してたのか。

記憶の方は問題ない、鈴に殴られた瞬間までちゃんと覚えている。

鈴のあのパンチからまた花沢さんを思い出す、顔も体も似てないがアイツには何か花沢さんに通じるものがある。なんでだろう?

ふと横を見ると彼女が椅子に座って俺の方を見ていた。

 

「たっちゃん……」

「あっ、気がついた?こんな夜中まで寝てるなんて、最近寝不足?」

 

俺は起き上がり、たっちゃんの話に答える。

 

「いや、むしろ寝てばっかりだよ。寝すぎて頭が痛いぐらいだ。」

「あら、そうなの」

「うん……」

「……」

 

会話が続かない……やはりまだたっちゃんとの間にわだかまりがあるからだろうか。

謝るのは今を置いて他になさそうだ、チャンスを逃してはならない。

頑張れ、俺。

”男なら”潔くだ。

 

「たっちゃん。」

「ん? 何かな?」

「最初に会ったとき、怒鳴ったりして本当にゴメン。後になって思い返してみると、あれはただの八つ当たりだった。その後も色々配慮してくれてたようだし、最後には俺の命まで助けてくれた。でも俺はたっちゃんに何も返せてない、本当に自分が情けなく思うよ……」

 

俺はたっちゃんに頭を下げて謝る、そしてたっちゃんが口を開くのを待った。

 

「絶対に許さない」

「ええっ!?」

 

俺は思わず頭を上げてたっちゃんを見る。

いやさ、俺が悪いのは百も承知だけど許してくれないのかよ。たっちゃんの心狭くない?

 

「……なんてね」

「へっ?」

「いやー、さっきの顔結構面白かったよ。ちょっと笑いそうになったわ」

 

たっちゃんも中々お茶目な人のようだ。

 

「あんまりからかわないでくれよ、ちょっとびびった」

「あはは……ごめんね?」

「絶対に許さない!」

 

俺がそう言うと、二人で笑う。たっちゃんとのわだかまりも解消できたようで嬉しい。

 

「まぁ、与太話はこれくらいにしてちょっと真面目な話をするわよ」

 

一通り笑った後、たっちゃんの顔つきが変わる。俺のオリ主シックスセンスがこの話は茶化してはいけないと警告する。

 

「何かな?って大体予想はついてるけど」

 

多分俺を襲った黒いISの事だろう。

 

「あの黒いIS、どうやら無人機みたいね」

「無人機!?」

「今学園が調べてる最中なんだけど、中に人間が入っていないらしいわ」

「それっておかしくない?ISは女しか動かせないって事が前提条件なのに、そもそも人間が入ってないって」

「まぁ、最近は男でも動かせるようになったけどね」

「その話をしだすときっとややこしくなるからやめておこう。しかし、無人機か……これヤバくね?」

「そうね、かなりヤバいわね」

 

無人機が登場したってことは、ISを動かせる前提条件が変わるってことだ。そしてあの無人機はかなり強かった、たっちゃんレベルの人間なら足元にも及ばないだろうが俺のような普通の技量しかない操縦者ではまともに太刀打ちできない。

ISを動かす上で一番高価な部品は操縦者だ、それにある程度の強さになるまでの育成の時間もかかる。

その問題をクリアできる無人機の存在は、世界を変えるような大事件だ。

 

「まだあるわよ、あの無人機に使われていたコアは現存する467個のコアの中に存在しないものらしいわ」

「うえっ!?」

 

ISのコアは完全にブラックボックスになっており、それは篠ノ之束にしか作ることが出来ないと言われている。

つまり篠ノ之束があの無人機を作ったか、他の誰かがISのコアを作り出してしまったか。

可能性が高いのは前者だろう。

ここで俺に一つの疑問が浮かぶ。

 

「たっちゃん、何でこんな話を俺にするのかな?これって簡単に人に漏らしていい話じゃないでしょ」

「そうね……ノリ君があのISに襲われたからってのもあるけど、その事でお願いがあるの」

 

お願いか、嫌な予感がする。

 

「何? もしかして更識の一味になれって事?」

「似たようなものよ。お願いって言うのは私達更識と三津村を繋ぐパイプになってほしいの」

「三津村? 何でまた?」

「私達は裏の世界では大きな力を持ってるけど、表の世界じゃそうもいかないわ。一応表としての顔も持ってるけどそれほど大きな力を振るえることは出来ないの」

「そこで俺の登場ってわけですか」

「そういうこと、無人機の登場で世界は今後一気にキナ臭さを増してくるわ。その時力不足で何も出来ませんでした、って訳にはいかないの」

「解った、たっちゃんは悪い人じゃなさそうだし協力したいと思うけど、それを決めるのは俺じゃない。とりあえず三津村に連絡はしてみるけど、その後はたっちゃんにお任せするよ」

「解ったわ、それで充分よ」

 

そういえば、更識の親玉って誰なんだろう? 三津村の親玉はあのジジイだが対暗部用暗部の親玉という位だからやっぱり似たようなジジイなのかな?

 

「たっちゃん、更識の親玉ってどんな人なの?」

「親玉? ああ、それ私」

「ええええええええ!」

 

たっちゃんがドヤ顔で答える。えっ?たっちゃんってまだ16、7でしょ?何でヤクザの親玉なんだよ、おかしくない?

 

「え? マジ? 嘘だろ?」

「マジマジ、これでも結構偉いんだから」

 

更識楯無、IS学園最強にして生徒会長、そしてロシアの国家代表(これは布仏さんに聞いた)さらに極めつけは更識の親玉。

 

「すげえ役職掛け持ちしてるね。忙しくない?」

「うん、超忙しい。そのせいで睡眠時間が足りなくて」

 

たっちゃんの顔に影が差す、その表情から疲れの色が見えた。

 

「今日の戦闘中も何回か寝オチしそうになって、正直死ぬかと思ったわ」

 

今日の戦闘、たっちゃんは余裕そうにこなしていたが実際はたっちゃんもピンチだったのか。

 

「やばすぎるよたっちゃん、いつか本当に死ぬよ?」

「大丈夫!今日は三時間も寝れる予定だから!」

「三時間もって、全然大丈夫じゃないね……」

 

たっちゃんはどうやら組織の奴隷で、その奴隷根性が心根まで染み渡っているようだ。

多分たっちゃんが死ぬ時の死因は過労死になるだろう。正直その奴隷根性に引いた。

 

「わかった、俺との話はもういいから早く帰って寝たほうがいいよ」

「うん、そうさせて貰うわ」

 

そう言いたっちゃんは席を立ち保健室から出て行った。

 

たっちゃんが出て行った後、俺は楢崎さんに電話し更識が三津村に接触したがってるという事を伝え、IS学園の生徒会室に強○打破1ケースを差し入れするようにお願いした。

ついでにさっき撮影した鈴の画像を探してみたが、どうやら鈴に削除されてしまったようだ。

鈴、お前がその気ならこっちにも考えがある。絶対にお前を追い込んでやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別室に帰りパソコンとスマホをUSBで繋げる。パソコンで画像修復ソフトをダウンロードし、スマホの削除画像を修復した。すかさず鈴にその画像を添付したメールを送る、とりあえず反応が楽しみだ。

 

「すいませーん、お邪魔します」

 

おずおずとした感じで山田先生が特別室に入ってきた。

 

「邪魔するんなら帰って」

「はい、すいませんでした」

 

山田先生は特別室から出て行った。何だったんだろう?

 

「ちょっと! 藤木君!」

 

山田先生が戻ってきた。

 

「何なんですか、山田先生。出て行ったり入ってきたりして忙しい」

「藤木君が追い出したんじゃないですか」

「はて? ……そうだったっけ?」

「え? そうですよね?」

「山田先生の勘違いじゃないですか? で、何の用です?」

 

山田先生が不満そうな顔をするが、俺には落ち度は無いはずだ。

 

「ええとですね、とりあえず付いてきてもらえますか。向こうで説明しますので……」

 

と言うと、山田先生が特別室を出て行った。俺もその後を追う。

しばらく歩くと1025室に到着する、一体何があるのだろうか?

 

「あのー、篠ノ之さんと織斑君、いますかー?」

 

山田先生がそう言い、1025室に入っていった。俺もそれに続く。

 

「紀春に山田先生? どうしたんですか?」

 

一夏の問いに俺が答える。

 

「いや、俺も何がなんだかサッパリでさ。山田先生にとにかく付いて来いって言われてさ。山田先生、そろそろ説明してもらえますか?」

「あ、はい。お引越しです」

 

引越し? 誰がだ? っていうか俺はそれの手伝いか? 今日は戦闘で疲れてるのに、山田先生も案外容赦ないな。

 

「えっと、お引越しをするのは篠ノ之さんです。部屋の調整が付いたので、今日から同居しなくてすみますよ。それに伴い藤木君にこの部屋に入ってもらいます」

「ま、ま、待ってください。それは、今すぐでないといけませんか?」

 

篠ノ之さんが反論をする、しかし山田先生はその言葉が以外だったようで驚いている。

 

「それは、まぁ、そうです。いつまでも年頃の男女が同室で生活をするというのは問題がありますし、藤木君をいつまでも特別室に押し込めておくわけにもいけませんし」

「うっ、それは」

 

山田先生の反論に篠ノ之さんが口ごもる。すまんな篠ノ之さん、俺も毎回シャワーを借りに行くのが面倒なんだ。俺の快適生活のためにも出て行ってもらいたい。

 

「ということで今日からここは織斑君と藤木君の部屋です! 篠ノ之さんは引越しの準備をしてください!」

「うわーい、やったあ!」

 

山田先生が珍しく強気で言う、ビシッと指した指先に力強さを感じる。

俺はその山田先生の号令と共にベッドにフライングクロスボディの要領で飛び込んだ。

ベッドはふかふかで特別室のベッドとは大違いだ。

 

「おい!それは私のベッドだぞ!」

「たった今から俺のベッドだ。というわけでさようなら篠ノ之さん、別の部屋に行ってもお元気で」

「くっ!」

 

篠ノ之さんが悔しそうに俺を見つめる。おれはその間もベッドを堪能していた。

 

「ああ、あったけぇし柔らけぇなぁ。そしてそこはかとなく篠ノ之さんのの匂いがするよう」

 

軽いセクハラをしてみたら案の定篠ノ之さんが怒る。俺が篠ノ之さんを見ると彼女は木刀を振り上げ俺に向かって振り下ろしてきた。

 

「この変態が!」

「おっと!」

 

その振り下ろしを俺はオリ主回避力でひらりと避ける、しかし俺はまだベッドの上だ。その後繰り出される怒涛の突きの連打も体をクネクネさせながらかわし続ける。

 

「くっ、何故当たらん!」

「ふぉっふぉっふぉっ篠ノ之さんよ、怒りで剣が鈍っておるぞよ。それでワシに当てようとは笑止千万じゃ」

 

舞い上がる羽毛布団の羽の中、俺はまだ余裕だ。オリ主回避力は伊達ではないのだ。

俺は突きを避け続ける中でうつ伏せになった。

 

後々考えるとこの体勢になったのがいけなかったんだと思う。

 

「食らえっ!」

「え?」

 

俺はその突きを避けることが出来なかった。うつ伏せになったせいで篠ノ之さんがよく見えなかったからだ。

 

そして、ブスッという音を立てて木刀が刺さった。

 

「アッー!」

「えっ?」

 

刺さってしまった、俺のア○ルに。

篠ノ之さんの木刀が。

 

「ほっ、箒! お前なんて事を!!」

 

一夏が叫ぶ、俺の目の前は真っ白に染まる。こんな感覚は初めてだった。

俺の意識が白く染まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? ここはどこだ?」

「やっと起きたか、紀春。もう朝だぞ」

「あれ? 一夏? 何で俺ここでで寝てるんだ?」

 

何気ない質問をしたつもりだが、一夏は気まずそうな笑みを浮かべる。

 

「紀春、昨日の事どこまで覚えてる?」

「えーっと、山田先生が俺の部屋に来たところまで」

 

そう言いながら、俺はベッドから出る。その瞬間、ケツに突き刺すような痛みを覚えた。

 

「ぐっ、痛てぇ。何があったんだ?何故かケツが痛いんだが。」

 

一夏が焦ったような顔をする。

 

「紀春、昨日あったことは無理に思い出そうとするな。忘れたほうがいい」

「??? 何だよ? 余計に気になるんだが」

「いいから、忘れろ。その方がお前も幸せになれるはずだ」

「はぁ、そうか……」

 

凄く気になるが、一夏は頑なに答えようとしなかった。一体昨日の夜に何があったんだろうか。

 

教室に行くと、篠ノ之さんが木刀をくれた。これで剣術の訓錬をしろってことなのかな?

そして篠ノ之さんの態度が妙に優しい、このIS学園に入ってからというもの一夏のことで常に不機嫌そうな態度ばっかり取っていたから違和感を感じる。一応篠ノ之さんに昨日の夜何があったかを聞いてみたのだが、篠ノ之さんも焦った表情をした後話をはぐらかした。

 

昨日の夜何があったというんだ……凄く気になる。


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