インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
部活、それはここIS学園にも存在していた。
篠ノ之さんは剣道部に入っていたし、セシリアさんはテニス部、鈴はたしかラクロス部だったかな?
俺はセシリアさんとの対戦のための訓錬や打鉄・改の習熟訓錬でそんな事をやっている暇はなかったのだが、無人機との戦いで空中ドリフトを体得した今習熟訓錬も一段落を迎え少し時間に余裕が出来てきた。
そんなわけで俺も部活をやってみようと考えたわけである。
しかし、俺の得意な野球はチーム競技であり俺一人では出来ない。
やっぱり部活をやめようと思っていたが、このIS学園にはソフトボール部があるらしい。
というわけで、一度見学させてもらおうと今俺はソフトボール部のグラウンドに向かっている。
もしも良さそうだったら、彼女達の手伝いでもさせてもらおうと思っている。どんな感じなんだろう。
「すいませーん、見学させてもらっていいですか?」
ソフトボール部のグラウンドに到着し、ソフトボール部の皆さんに声を掛ける。俺の声を聞いた彼女達は急に騒ぎ出す。
「ええっ!? キミは藤木君!?何でこんな所に?」
「ちょっと興味があって、見学させてもらえますか?」
俺が爽やかな笑顔を浮かべ、そう言うと途端に黄色い歓声が飛ぶ。
「きゃー、藤木君が私達のために来てくれるなんて!」
「私、ソフトボールやっててよかった……」
「ねぇねぇ藤木君、彼女とか欲しくない?」
以前言ったかも知れないが、俺は一夏に劣るとはいえかなり整っているオリ主フェイスの持ち主だ。
この程度の歓声には慣れっこなのだ。
「ああ、ごめんね。見学は大歓迎よ。ちょっとこっちに来てもらえる?」
最初に俺に話しかけてきた人がそう言う。……どうやら彼女が部長らしい。
俺は彼女に近づいた。どうやら彼女は日本人ではないらしい。
「私は部長のディアナ・ウォーカー、よろしくね」
「ディアナさんですか。失礼ですがどこの国の人ですか?」
「アメリカよ」
「アメリカ……たしかソフトボールの発祥の地もアメリカでしたよね。俺野球専門なんでたいした事は知りませんけど」
「それだけでも十分よ。えっと見学だったわね、そこのベンチで見学してもらえるかな?」
「はい、解りました。では練習頑張ってください」
彼女グラウンドの隅にあるベンチを指差す。俺はベンチに座った。
そして俺は彼女達の練習風景を見学した。
十分位経っただろうか、俺はもう限界だった。
何が限界なのか?彼女達の練習風景だ、正直見てられない位にレベルが低すぎる。
ここはIS学園でISの操作技術を学ぶために彼女達はここに居るのは解ってる、もちろんソフトボールの練習がISより優先順位が低いのも仕方の無いことだろう。
しかし、彼女らのあの練習は何だ?高い身体能力を持っているはずなのに全くそれを活かせてはいない。
彼女達はソフトボールの練習をしているのではない、ソフトボールで遊んでいるだけにしか見えなかった。
俺はベンチから立ち上がり、グラウンドを出ようとする。
その時、ディアナさんが俺に声を掛けてきた。
「あれ?藤木君、もう帰っちゃうの?」
その言葉を聞いた部員たちが不満そうな顔を見せる。
「はい、もう帰ります。砂遊びを見に来たわけではないので」
「……どういう事かな?」
ディアナさんは笑顔を俺に向けるが、背中から怒りのオーラを全開にしている。
ここははっきりと言ってやらねばなるまい。
「見てられないんですよ。はっきり言って貴方達のレベルが低すぎる。ISのために部活は二の次かもしれませんがそれを考慮しても酷い」
「何? 喧嘩売ってるの?」
ディアナさんの顔が険しくなる、しかしそんなものでは俺は止められない。
「正直な感想を述べたまでですよ。もしかして当たってましたか?」
「そこまで言えるってことは、ソフトボールに関してさぞかし自信があるんでしょうね?」
「自惚れるなよ、ディアナ・ウォーカー。お前なぞ俺の足元にも及ばんわ」
ソフトボールをやったことはない、しかし彼女らの練習風景を見るに確実に俺より実力は低い。
「打席を空けて頂戴、今から藤木君と勝負するから」
ディアナさんが振り返りそう言う、こういう展開は俺も望むところだ。
金属バットを借りて打席に立つ、太郎に初めて会ったときを思い出した。
ああ、アイツともこんな感じで勝負したな。
「球審くらいは公平にやってくれよ」
「ええ、そこは心配しないでいいわ」
ディアナさんが投球モーションに入った、ウインドミル投法というソフトボール独特の投げ方をする。
ボールは真っ直ぐ飛び、キャッチャーのミットに突き刺さった。
「ストライク!」
球審が声高らかにストライクを宣告する。ディアナさんの表情が綻ぶ。
「あら、強気に言った割には手も出してこないのね」
「悪いが、アンタのボールは今ので充分見切った。次ストライクを投げた時にはもう俺の勝ちだ」
決して自惚れで発言したわけではない、これは単なる事実だ。
カズトさんが俺に勝手に付与した野球チートはまだまだ健在だ、そしてそれはソフトボールにも適用されているらしい。
「その自信、打ち砕いてあげるわ」
「さっさと投げろ、時間の無駄だ」
ディアナさんが次の投球モーションに入った。
投げられた球は俺から見て右方向に変化する、どうやらスライダーのようだ。
ソフトボールでスライダーを投げるのはかなり難しいと聞いたことがある。しかし、俺には充分見切ることが出来た。
俺はバットをスイングする。
カキーン! という音を響かせながらボールは外野の頭上の遥か上を飛んでいく。このグラウンドにはスタンドはないが誰から見てもホームランだった。
「これで気は済みましたか? 俺は帰らせてもらいますよ」
ディアナさんは信じられないと言わんばかりの表情で俺を見る。
キャッチャーにバット渡し、帰ろうとするとまたディアナさんが声を掛けてきた。
「藤木君! いえ藤木さん! 私達に練習を教えてもらえませんか?」
俺は振り返りディアナさんを見つめる。彼女の瞳に闘志の炎が宿っていることを俺は確かに感じた。
俺は彼女の瞳を見て心変わりしてしまった。
「俺の練習は死ぬほど厳しいぞ、これは比喩なんかじゃない。それでもやるか?」
「はい! お願いします藤木さん!」
「お願いします!」
周りを見るとソフトボール部の全員が俺に頭を下げていた。
俺は笑う、そこまで言うのなら仕方が無い。彼女達には地獄を体験してもらおう。
これが今から一週間前の出来事である。
「紀春、クラスの子から聞いたんだけどソフトボール部に入ったんだって?」
食堂で俺と一夏、そして一夏にイカれた女達、つまり篠ノ之さんとセシリアさんと鈴と飯を食っていると一夏がそんな話題を振ってきた。
ちなみに今日の俺の昼食はカレーだ、ソフトボールの事を考えていたらそのまま野球の事を考えるようになり、昼食に日本が世界に誇る野球選手である一郎を真似したくなったからだ。
「うん、まあね。彼女達を鍛えてやろうかと」
「鍛える?何でそんな事を?」
「それにお前は野球だろ?何でソフトボールなんだ?」
一夏の質問に更に篠ノ之さんが質問を加える。
「ああ、質問に質問を重ねるな。ややこしくなるだろうが。まず篠ノ之さんから、IS学園に女子野球部がなかったんだ。だからソフトボールで妥協した。次に一夏、ソフトボール部の練習見てたら余りにレベルが低かったもんでクソミソに言ったら勝負を挑まれてね。コテンパンにしてやったらコーチを頼まれたってわけ」
「へぇ、そうなんだ。ソフトボールか、俺もちょっとやってみたいな」
一夏がそう言うと篠ノ之さんの表情が変わる。
「一夏、やめておけ」
「何でだよ? 毎日ISの訓錬があるわけじゃないしたまにはいいじゃないか」
「一夏、私はお前のためを思って言ってるんだ。この言葉に何の含みも無い、あれはやめておけ」
「どうしたんだよ箒、急に真剣な顔になって……」
篠ノ之さんの言葉に一夏、セシリアさん、鈴の頭の上に疑問符が浮いている。
「まぁまぁ、とりあえず今日入部テストがあるからそれを見に来ないか?それから決めればいい」
「入部テスト?」
「ああ、俺がソフトボール部に入ることになって入部希望者が続出してね。流石に多すぎるんで振るいに掛けさせてもらおうかと思ってるんだ」
「へぇ、流石は男性IS操縦者だな」
「お前もだろ」
「ははっ、そうだな。とにかく放課後は楽しみにさせてもらうよ」
一夏の言葉にセシリアさんと鈴も反応した。
「わたくしもご一緒させていだだきますわ!」
「だったらあたしも!」
同時に言葉を発した二人が睨み合う、二人の間に火花が散る。
そんな二人を他所に一夏が篠ノ之さんに話を振った。
「箒も一緒にどうだ?」
話を振られた篠ノ之さんは考え込むような表情をする。
「いや、私は遠慮しておく。あれは何度も見たいものじゃない」
「そうか、なら仕方ないな。俺達だけで行ってくるよ」
「ああ、そうしろ」
そんな会話をしているうちに昼休みが終わっていった。
放課後は頑張ろう、一夏達に俺の晴れ姿を見せてやるのだ。
放課後のグラウンドには多くの生徒が集まっていた。
その中に一夏達も居て、余計に騒ぎが大きくなる。
「えー、これからソフトボール部の入部テストを始めます」
俺が言うと、生徒の中の誰かが言った。
「テストって何をやればいいんですか?」
「テストは自体は簡単です、今から行われる練習を見学して下さい。それだけで結構です」
入部希望者の子達が騒ぎ始める。確かに入部テストが見学だけとは前代未聞だろう。
しかしこれで充分だ、身体能力なんてものは二の次だ。
この練習に耐えうる強い心さえ持っていれば今はそれでいいのだ。
俺は部員達の方向へ振り返り、声を上げる。
「いよおおおし! 準備運動は終わったかああ!!」
「おおおおおっ!」
部員たちが大声で叫ぶ、彼女達もこの一週間で大分マシになった。
元々彼女達の身体能力は高い、俺がやったことは彼女達に砂遊びを辞めさせ戦う集団に変えたことだけだ。
心なんて変えようと思えば一瞬で変えられる。そして彼女達は変わった。
正直、この一週間で一人も退部者が出てきていないのが不思議な位だ。
「今日は入部希望者もみとるけぇの! 恥ずかしい練習すんじゃねえぞ!!」
「はい!よろしくお願いします!!」
野球をするときって何故か広島弁になっちゃう、何でだろう?今からするのは野球じゃないけど。
「いよっしゃあああ! 最初は定番の千本ノックじゃ!! 死ぬ気で取れよ!!」
部員の一人が守備に就く、俺はそこ目掛けてノックを打った。
ズドォン!という爆撃音と共に守備に就いた部員が土煙に包まれる。
土煙が晴れたとき、その場に部員が倒れていた。
「チッ、情けない。ありゃあ練習するまで起きんの。おい!次行くぞ!」
倒れていた部員は他の部員に引きずられてどこかへ行ってしまった。
代わりの部員が守備に就く。
「お前達! 情けない姿見せんなや!! 次こそは取れよ!」
「はい! お願いします!!」
その後の練習の光景はジゴクめいたものだった。
舞い上がる土煙と累々と積みあがる部員達の死体、いや実際は死んでないけど。
そしてついに部員達のストックはディアナさんを残して全てなくなってしまった。
「ふぅ、これじゃもう練習にならんの。ディアナさん、後は頼みます」
ちなみにディアナさんは、ソフトボール部で唯一千本ノックに耐え切れる人間だ。実際凄い。
「はい、藤木さん。ありがとうございました」
入部希望者の待っている所へ行く俺をディアナさんが頭を下げて見送る。
俺が入部希望者の前に立ったとき、俺は恐怖の視線に晒される。
「えー、入部テストは以上です。入部したい人居ますか?」
「…………」
誰も言葉を発しなかった、やっぱりダメだったか。
その時一夏と目が合った、一夏はどうだろう?
「一夏、ソフトボールやらないか」
「スイマセン俺が調子に乗ってました。入部は勘弁してください」
一夏の態度が余所余所しいものになってしまった、そんなつもりじゃなかったのに。
こうしてソフトボール部入部テストは全員不合格のまま終了してしまった。
後日、俺は一部の生徒からこう呼ばれるようになる。
『ソフトボール部の支配者』と……
この話で私が言いたいことは唯一つ、オリ主がソフトボール部に入部したよってことです。
これからまた書き溜めを始めます、再開は一週間以内を目処に頑張ります。