インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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山のような金塊が欲しい……解る人だけには解れ


第15話 簒奪者の野望

「ぐわっ!」

「うっ!」

「うぼぁ!」

 

俺達は織斑先生から一撃を食らう、チ○コ談義で盛り上がっていたら完全に遅刻してしまったためだ。

今回は気絶はしなかった、しかし当然だ。俺だけは拳骨ではなく、ボディーブローを食らったからだ。

そのことを織斑先生に聞いてみると、どうやら織斑先生なりの配慮らしい。

織斑先生の優しさに俺はこみ上げるものが抑えきれない、しかしそこは何とか我慢した。

そんなオープニングが終わり、授業が始まった。

 

「本日から実習を始める。藤木、前に出ろ。お前に戦闘の実演をしてもらう」

 

早速のご指名だ、そういえば以前も指名されたな。そろそろ指名料を頂きたいところだ。

そんな事を考えながら、俺は織斑先生の下へ向かった。

 

「何で俺なんですか?」

「IS学園一年生最強なんだろう?」

「その話には迷惑してるんですけどね……誰ですか? そんな事言い出した人は」

「実際に織斑、篠ノ之、オルコット、凰の四人を相手に圧倒したそうじゃないか」

 

周りの生徒達が騒ぐ、ああ……また話が広がっていく……

 

「運が良かっただけですよ、それに最後は負けましたし」

「運も実力の内と言うだろう、それに四人相手にして二人倒せるなんて普通は出来ないぞ」

「運も実力の内ですか……正直その言葉嫌いなんですけどね。ところで俺は誰と戦えばいいんですか? 流石に四対一をもう一回なんて言わないでくださいよ? 公開私刑にしかなりませんからね」

「ああ、一対一で構わない。しかし、四対一より厳しいかもしれんぞ?」

 

その時だった、キィィィンと甲高い音が響き渡り、その後轟音と共に土煙が上がった。

土煙が晴れると、そこには一夏と山田先生が居て一夏が山田先生を押し倒している状態になっていた。って言うか一夏が山田先生のおっぱいを揉んでいた。

一夏が羨ましい、俺も揉みたいなぁ。

 

その後、いつもの痴話喧嘩が起こる。レーザーとか剣とかが飛び交うがただの喧嘩だ、IS学園での喧嘩は他より少々物騒だがいつものことだ。

そして模擬戦の開始が告げられる。

 

対戦相手は山田先生、俺の初陣の相手だ。

きっと山田先生はあの時のように手加減をしてはくれないだろうし、きっとあの時山田先生に使用した必勝の策、コンバットパターン・ロミオ(今名前を考えた、それにコンバットパターンじゃないだろうと言う突っ込みは禁止ね)は通用しないだろう。

もしかしたら通用するかもしれないが先生をもう一回抱きしめることは出来ないだろう。

しかし、俺もあの時より格段に強くなったはずだ。どれだけ強くなったかは山田先生に後で聞こう。

 

さぁ、俺が望んだ闘争の始まりだ。全力で戦い、山田先生に再び男を見せよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くぜ行くぜ行くぜええええっ!」

 

いつものように突突と盾を構え、山田先生に突撃する。

そしていつものように突撃を回避される。しかしそれは折込み済みだ、その勢いのまま俺は天空高く舞い上がる。

模擬戦の開始地点は地上であり打鉄・改の性能を活かす為には地上ではでは狭すぎる、全速力で飛べばあっという間にグラウンドの壁が迫るからだ。

 

上空で山田先生を待っていると、弾丸と共に山田先生のラファール・リヴァイヴが突撃してきた。

その姿に懐かしさを覚える、初めて俺が打鉄に乗った時訓錬の相手をしてくれたのも有希子さんが乗っているラファール・リヴァイヴだった。

 

弾丸を盾で防ぎ後ろに大きく後退する、そして俺はサタデーナイトスペシャルを両手に展開し山田先生に向けて乱射した。

それをうねる様な機動で避け続ける山田先生、もちろんこの銃が当たるなんて期待していない。

必要なのは山田先生の機動を読むこと、先生の機動の癖を少しでも理解できれば勝機が見えるかもしれない。

 

が……駄目っ……! 山田先生の機動を初見で読みきるなんて不可能だった。そしてそんな考えをした俺が浅はかだった。

 

空中ドリフトを駆使しながらヒロイズムを展開し山田先生に撃ってみるがこちらも全く当たる気がしない。

それに対して山田先生はアサルトライフルによる正確な射撃をドリフトの切れ目に打ち込んでくる、少しづつではあるが俺のシールドエネルギーが削れていく。

 

マズイ、このままでは確実に負ける。実力差は圧倒的だし、負けるのも致し方ないとは思う。

しかし、このまま何も出来ないで負けるのだけは嫌だ。このままだと俺は一年生最強(笑)と呼ばれてしまうだろう。

何とかして状況を打開せねば……

そんな事を考えている間にも俺のシールドエネルギーは削れていく。

 

しかし簡単に状況を打開できるものでもない。意を決し、弾丸の雨を受けながら接近してもすぐに距離を取られる。

山田先生は徹底的に射撃戦の間合いを取り続けていた。やはりコンバットパターン・ロミオを警戒しているのだろうか……

 

しかし、唐突にチャンスは訪れた。俺が動きを止めた瞬間アサルトライフルの連射に襲われ大きくバランスを崩す、それを見た山田先生はグレネードランチャーを展開した。

だがその瞬間に確かに隙が生じたのだ、山田先生が展開したグレネードランチャーを振り回して構えようとするその瞬間に。

 

以前もそうだった、入学試験で山田先生は俺にトドメを刺す為に近接ブレードの大振りを繰り出した。

どうやら山田先生にはトドメをさす時格好付けちゃう癖があるようだった。

きっと先生が格闘ゲームをやるとしたらトドメはゲージ消費技で決めるのだろう。

そしてその隙を見逃す俺ではない、瞬時加速(イグニッション・ブースト)で俺は山田先生に、いや山田先生のおっぱい目掛けて特攻した。

 

「その隙、貰ったっ!」

「えっ?」

 

激突する二体のISから凄まじい衝撃音が聞こえる、俺達は瞬時加速(イグニッション・ブースト)の勢いそのままグラウンド目掛けて落下していく。

俺の戦いはまだ終わらない、先のことを見据えて俺はレッドラインを山田先生に装着しようとする。

しかし、山田先生の抵抗に遭いそれを行うことが出来ない。

 

「このままやらせはしませんよ!」

 

山田先生は体勢を入れ替えようと必死でもがく、このまま俺を下敷きにして落下し勝負を決めようという算段なのだろう。

一か八かの賭けに出るしかないようだ、下敷きにされては負けてしまう。

しかし、このまま行けば負けるのだ、失うものは何も無い。

 

さて、アレ、やるか。

 

「山田先生! 好きだああああああっ!」

「ええっ!?」

 

俺の言葉を聞き驚愕した山田先生の抵抗が緩む、そして顔は赤い。

その瞬間俺はスラスターを全力で吹かし、山田先生を下敷きに地面に激突した。

 

コンバットパターン・ロミオはまたしても成功した。

俺は土煙から脱出し、約十メートル後退した。そして山田先生の登場を待つ。

 

土煙が晴れ、山田先生の姿が見える。

山田先生の表情は心なしか怒っているように見えた。

 

「藤木君! 卑怯ですよ! 女の子の純情を弄ぶなんて!」

 

そんな山田先生に俺はヤンキーっぽい笑みを浮かべてこう返す。

 

「卑怯? ハッほめ言葉だぜ! 俺は藤木君だぞ?」

 

外道高校の生徒っぽく言ってみたがどうだろうか?

そして山田先生、流石に女の子ってどうだろう?俺的に拡大解釈しても女の子って成人までが限界だ。

巷では女は死ぬまで女の子って言う人も居るらしいが……

 

さて、そんな事より緊急事態だ。山田先生が完全に怒っていらっしゃる。

 

「藤木君……もう許しませんよ……」

「俺が思うに教師に最も必要なのは寛容さだと思うんですよ、だから怒らないで。ねっ☆」

 

その俺の理論からすれば、最も教師失格なのは織斑先生だろう。あの人の辞書に寛容という言葉があるように思えない。

 

「私は教師である前に女です! その言動や行為、もう許しておけません!」

「行為?」

 

俺は前傾姿勢になり腰をカクカクさせながらそう返す。

 

「もういいです、決着をつけてあげます」

「へぇ、そうですか。でも気付いてますか? この赤い糸に」

「えっ?」

 

俺と山田先生の間にレッドラインのケーブルがある、もちろん山田先生には手錠をプレゼントしておいた。

 

「いつの間に!?」

「地面に激突した直後ですよ、隙だらけだったもんでついやっちゃいました」

 

俺は霧雨を展開し山田先生に突きつける。

 

「山田先生、格闘用の武装は積んでますか?」

「いえ、持ってませんね」

「なら俺の勝ちだ」

「どうでしょう?」

 

その瞬間、瞬時加速(イグニッション・ブースト)で山田先生が迫り、俺は先生の膝蹴りを顔面で受けた。俺は完全に勝った気でいたのでその行動に驚いた。

意識が遠のきそうになるが山田先生の連撃が止まらない、のけぞった俺の顔面に容赦なく拳が浴びせられる。

山田先生は格闘でも強かった、射撃戦ばかりしていたから勘違いしちゃったよ。

 

そんなこんなで俺は意識を失っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぇっ!?」

 

意識を取り戻すと目の前には青空があった、どうやら俺はグラウンドの隅に持ち込まれたベンチに寝かされているようだった。

 

「あっ、気がつきましたか」

 

そこには山田先生が居た。ヤバイ、戦闘中のこととはいえ大変な無礼を働いてしまった。

俺は山田先生の足元で高速土下座をし、許しを請った。

 

「先ほどは大変な無礼を働きまして、申し訳ありませんでした!」

「藤木君……私、怒ってるんですからね」

「ごもっともでございます! しかし、一つ言い訳をさせていただけないでしょうか!?」

「……」

 

沈黙は肯定、確かそうだったはずだ。つまり山田先生は俺の話を聞いてくれるらしい。

 

「あの戦い方が俺のやり方なんです! 足りない実力を補うのであれば俺はなんだってします! その結果がこれだよ!」

「はぁ……藤木君っていつもそうですよね」

 

そうだ、俺はいつだってそうなのだ。でも仕方ないじゃないか、山田先生には効くんだもん、ロミオ。

 

「勝つためだったら何だってってしますよ、俺は」

「はぁ、解りました。とりあえずもう土下座はやめてもらえませんか?」

 

そう言われ、俺は土下座をやめベンチに座る。グラウンドではまだ授業が行われており、一夏がクラスメイト達とイチャイチャしていた。

俺と山田先生はそれを眺めていた。

 

「さっき、勝つためなら何でもするって言ってましたけど……何故そんなことを?」

 

何気なく山田先生が聞いた。

 

「……」

 

俺はその問いに何も返せない、勝つために何でもすると言ったが何故俺はそんなにも勝利にこだわるのだろう? いや、勝利にこだわってるのか? 少なくとも四対一の戦いの時考えていたことは格好良く負けることだった。

そうか……俺はただ格好付けたいだけなのか。しかし何故格好付けたいのか?そんなもの決まっている、俺がオリ主だからだ。

 

俺はオリ主としてこの世界に転生した、しかし現在の俺はそのオリ主としての役割を果たしているのだろうか?

以前の無人機戦中に思った事、俺は主人公の周りの登場人物であってはならない。一夏から主役の座を奪い取れ。

その思いを俺は持ち続けることが出来るのだろうか? 奴らの周りで生きていると居心地が良過ぎてそんな事を忘れてしまいそうになる。

 

ならば今一度心に刻もう、俺は一夏から主役の座を奪い取る。

一夏は大切な友達だが、同時に俺にとって最大の敵でもある。

せっかくだ、山田先生にもこの思いを聞いてもらおう。もし俺が忘れてしまっても誰かがそれを覚えていてくれれば思い出させてくれるかもしれない。

 

「山田先生、俺は主人公になりたいんですよ」

「主人公? どういうことですか?」

「自分で言うのも恥ずかしいですけど、俺は特別な人間だ。世界で二人しか居ない男性IS操縦者だ、いや今は三人目か……」

「そうですね」

「俺は自分の特殊性を認識した時、ある思いが沸きあがりました。自分だけの栄光を掴み取りたいと」

「自分だけの栄光?」

「俺は特別だ、ならばその特別な力で何かを成し遂げたい。ヒーローになりたい、世界を自分色に染め上げたい、世界で一つだけの自分だけが持つ価値を手に入れたい、そう思ってるんですよ。どうですか? 俺って欲深いでしょう?」

「それで、主人公になりたいですか……でもよく言うじゃないですか、自分だけが自分の人生の主人公だって」

「俺は欲深い人間ですからね、もうそれだけじゃ満足できなくなってしまったんですよ。俺は大衆に対しての主人公でありたいんです、多くの人に夢を見せる存在でありたいんです」

「それは、大きな野望ですね」

「ええ、自分でもそう思います。だからそのために強くなりたい、何者にも負けない強い力を持ちたいんです。先は長そうですけど……」

 

以前有希子さんが言っていた言葉を思い出す。

自分より強い人間はたくさん居て、そのたくさんの人間より強い人間もたくさん居ると。

俺は今、どの位置に居るのだろうか?

 

「山田先生、俺はあの時より強くなれましたか?」

「ええ、藤木君はあの時より格段に強くなりましたよ」

 

そうか、良かった。俺の努力はちゃんと報われているようだ。

 

「そうですか……ということで俺、寝ますんで授業が終わったら起こしてください。あと、この話は誰にも話さないでくださいよ。恥ずかしいんで」

 

そう言い、ベンチに寝転がる。

 

「駄目ですよ! 起きたんだから授業に参加してください」

「うおぉっ! 今になって山田先生に殴られた顔面が痛い! 痛くて授業に参加できないぞ!」

「それについてはやりすぎたと思ってますからっ」

 

そんな山田先生の言葉を無視し、俺は目を閉じる。

 

「パトラッシュ、僕はもう疲れたよ……」

「藤木君! 死ぬ気ですか!?」

 

そんな言葉を聞きながら俺はまた眠り始めた。


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