インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
「あっ、楢崎さん? またまたお願いがあるんだけどいいですか? はい、すいませんね。いつもいつも。ええとですね、ちょっと調べてもらいたいことがありまして……ググれって、それで解ることなら電話しませんよ。はい、ちょっと気になることがありまして。ドイツ軍のラウラ・ボーデヴィッヒについて出来るだけ詳細なプロフィールをお願いします。ええ、今日彼女が転校してきましてちょっと気になることが……はぁ!? 惚れてませんよ。俺は奴にいきなりブン殴られたんですよ! お陰で最近は女性不信気味ですよ。女には苦労させられるばかりで……ええ、とにかくお願いしますね。遅くても明日中には……はい、期待してますよ。では……」
そんな会話をし、電話を切る。さて、そろそろシャワーでも借りにいこうか。
シャルルが一夏の部屋に入ってから、好きな時間にシャワーを浴びれるようになって気が楽だ。
篠ノ之さんが部屋にいたころは、シャワーの使用時間に厳格なルールが求められていた。
なんでも、寮に入った初日に一夏はバスタオル一枚の姿で現れた篠ノ之さんとご対面してしまい、木刀で殴られたらしい。
さすが主人公だ、ラッキースケベも完備されているとは。俺もラッキースケベがしてみたい。
そういえば先日も山田先生相手にラッキースケベしてたな、本当に一夏が羨ましい。
そんな事を考えながら廊下を歩き、1025室に到着する。
ドアを捻るとドアが開いた。俺は部屋の中に入る。
部屋を見渡すが誰も居ない。無用心な奴らだ、まぁ俺の特別室はもっと無用心なので人に言えた義理ではないか……
まぁ、居ないのなら仕方ない。勝手にシャワーを借りてしまおう。
そう思いながらシャワールームへ続くドアを開けた。
「えっ?」
「……」
脱衣所には金髪の女が居た。
しかも全裸だった。
とりあえずドアを閉める。
ヤバイ、部屋間違えたのかな?
そう思いながら、廊下に出てルームプレートを確認する。
1025、間違いない。ここは一夏とシャルルの部屋だ。
つまり俺は悪くない、悪いのはあの金髪の女だ。
俺は強気なる、また部屋に入り脱衣所のドアを開けた。
「テメェ、何モンだコラァ!」
「うわああああっ!?」
もしも、ハニトラがまた現れて一夏やシャルルの毛を拾いにでも来てたとしたら一大事だ。
俺の行動にはそんな理由があったのだ。決してまた全裸を拝みに来たわけではない。
しかし、この金髪の女が誰であるか俺は知ってしまった。
やっぱり転校生は厄介事を運んで来るらしい……
「シャルル……なのか?」
「……」
シャルルはバスタオルで体を隠して俯いており、その表情は読めない。
まぁ、この状況でずっと居るのもいたたまれない。
「着替えたら出て来い、話をしよう」
そう言い、俺はドアを閉めた。
うおおおっ!!ヤバイよヤバイよヤバイよ!まさかシャルルが女だったとは!本当にヤバイ!なんで性別を偽ってIS学園に入学して来たんだ?いやそれよりこの事実を知ってしまった俺の方がヤバイ!何かを偽ってここに来ているということは後ろ暗いことがあるからに違いないそんな事を知ってしまった俺はどうなってしまうのか!?ヤバイ!今度こそセプクか!?もしかしたらネギトロめいた死体にされるかもしれない!僕の隠し事を知ったな!?死ね!って感じにになりそうだ!そういえばシャルルってフランスの代表候補生だよな?ってことはこの一連の事件にフランス政府がガッツリ絡んでるってことじゃんうわああああヤバイよヤバイよヤバイよ!つまりシャルルのバックには国家がついてるわけで三津村がどんなに絶大な権力を持ってたとしても太刀打ちできる気がしない!これはマジで俺死んでしまうかもわからんね父さん母さん先立つ不幸をお許しくださいって駄目えええええええっ!僕まだ死にたくないよおおおおおっ!
「紀春……なんでベッドの上で悶えてんだ?」
「一夏ああああっ、助けてええええっ」
気がつくと一夏も部屋に帰って来ていた。
しかし、一夏ではなく俺にラッキースケベが発動してしまうとは……俺もオリ主として成長したな。
「紀春……」
「あっ……」
シャルルが脱衣所から顔を出す、彼、いや彼女は暗い顔をしている。
自分の運命は今俺が握ってると思っているのだろうか……
そうだ、今俺は彼女の弱みを握ってるのだ。これを利用してあんなことやこんなことを……グヘヘヘヘってアホか。
そんな事したらマジで殺される、落ち着けKOOLになれ俺。それでも今の状態のシャルル相手なら会話の主導権を握るのは容易なはずだ。
彼女の裏に居る人々はおっかないが、彼女自身とは話し合いの余地がありそうだ。気を引き締めていこう。
「シャルル、ここで話してもらいたい」
「えっ、一夏も居るのに?」
「俺にばれたんだ、いずれ一夏にもばれる」
俺のオリ主ラッケースケベ力でばれたんだ、主人公のラッキースケベ力ではシャルルの正体がばれるのは時間の問題だろう。むしろ俺が先にシャルルの正体を知ったこと自体が奇跡的なのだ。
「……確かに、そうだね」
「お前達何の話をしてるんだ?」
わけがわからない、そういった様子で一夏が聞いてくる。
「シャルル、俺から話そうか?」
「……ううん、自分から話すよ。一夏、僕ね……実は男じゃないんだ」
その後シャルル、自分の事を語っていった。
自分が愛人の子であり母が死んでから父出会ったこと、調査の一環でISの適性が高いことが解りデュノア社でテストパイロットをしていること、父の本妻から疎まれていること、デュノア社の第三世代IS開発が停滞しており、イグニッション・プランの選考に外されそうなこと。
そしてその選考から漏れれば、会社は決定的な打撃を受けるらしい。それから脱却するため、デュノア社はシャルルを男性IS搭乗者として俺と一夏の元に送り込んできたというわけだ。
そうすれば、男性IS搭乗者のデータと一夏のISのデータを簡単に入手できるかも、ということらしい。
「あれ? 紀春のISのデータは必要ないのか?」
「俺のISのデータは既に公開されているようなもんなんだよ。あれ、前年度の整備課の卒業制作ってこと忘れてるな?」
つまり俺のISのデータは前年度整備課全員が共有しているってことだ、俺の搭乗データまでは公開されてはいないが別段特別なものでない。
「ああ、そういうことか」
「それに比べて白式は謎だらけだからな。一次移行でワンオフ発動しちゃう位だし」
「確かに、そう言われれば納得できるな」
「とまあ、こんなところかな。でも二人にばれちゃったし、きっと僕は本国に呼び戻されるだろうね。デュノア社は、まぁ……潰れるか他企業の傘下に入るか、どのみち今までのようにはいかないだろうけど、僕にはどうでもいいことかな」
シャルルは諦めたような顔で笑いながら話す、それを聞いた一夏は憤っているようだった。
「いいのか、それで」
一夏が口を開く、親から捨てられた一夏は織斑先生と共に二人だけで生きてきたと言う。
親を持たない二人には相当な苦労という物があり、故に親をもつ者の心情を理解できないのだろう。
シャルルもそうだ、片親で生きてきてその後死に別れ、父親にあそこまでの扱いを受けたのなら親に対する思いが薄いのも当然に思える。
故に俺は二人の心情を完全に理解することができない、俺は最高の両親の下に生まれたと思う。
俺の両親は親の務めというものを完璧に果たしてきた、俺も転生オリ主であるが故に両親に逆らって生きては来なかった。分別の解らないガキの時代や、反抗期などは前世に置き去りにしてしまったのだ。
強くなるために奇行に走ったりもしたが、それでも俺の両親は俺を全て受け入れてくれた。
つまり何が言いたいかというと、俺にとって両親は何よりも重い存在だということだ。
これがオリ主と物語の登場人物との差だとでもいうのか。
この差は俺にとって果てしなく大きいものに感じたのだ。
そして一夏の話は進み、シャルルの今後についての話になった。
「シャルルは、これからどうするんだよ」
「どうって……時間の問題じゃないかな。フランス政府もこのことの真相を知ったら黙っていないだろうし、僕は代表候補生をおろされて、よくても牢屋とかじゃないかな」
あれ? さっきの言葉、ちょっとおかしいぞ?
「シャルル、さっきフランス政府も真相を知ったら黙っていないって言ったか?」
「うん、そうだけど……」
「つまり、フランス政府はデュノア社に騙されたってことか?」
「そういうことになるね」
これは使える! つまりフランス政府は第三の男が出現したと言うデュノア社の言うことを鵜呑みにし、騙されたたってことだ。
「これは、もしかしたらいい材料になるかもしれんぞ」
「えっ? どういう事かな?」
「しかし、この問題を解決するには時間が少し足りないな。一夏、特記事項で何かなかったっけ? 確か、在学中の学生はどこの組織の介入も受けないとかいうのがあったように思うんだが」
「ああ、あるな。特記事項21だ、本学園における生徒はその在学中においてあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする。って奴だ。つまりこの学園に居れば、少なくとも三年間は大丈夫ってことだ」
よし、これで時間稼ぎができる。そしてこの問題を解決するのに三年なんて必要ない、長くても一年で解決出来る。早さが売りの三津村ならもっと早く解決出来るかもしれない。
しかし、これは飽くまで三津村が動いてくれたらの話だ。
俺の考えてる事は、三津村を使って世の中に波風を立てることとなる。
三津村はあくまで俺の雇い主であり、俺が三津村を動かすことは出来ない。
俺に三津村を動かすことが出来る材料なんて全く無い、しかし言うだけなら無料だ。
友人のためだしやれるだけやってみるか。
「三年間は大丈夫か……でもそれって根本的な解決にはなりませんよね?」
「いや、そうなんだけどさ……」
一夏が俺を怪訝な表情で見る、流石に今の発言は空気読めてなかったか。
「しかし解決策があるかもしれない!」
「えっ!? 紀春……そんなものあるの!?」
「ある、と言いたい所だが実はこの解決策、問題もある」
「どういうことかな?」
シャルルが俺の話に耳を傾ける。
「すまないが出来ると決まってるわけでも無いんだ。故に詳細は話せない、出来るかも解らない事を言うのは少し気後れするからな。そして一つ質問だ、そしてこれが問題点だ。シャルル、自分のために親を切り捨てる事は出来るか?」
シャルルは少し考えるような素振りをして、答えた。
「……うん、出来るよ」
……やはりそうか、俺達との間で親に対する考え方に根本的な違いがあるのを再確認する。
しかし、シャルルがそう決めたのなら仕方が無い、俺は友人のために全力を尽くすだけだ。
実際に全力を尽くすのは俺ではないが……
「解った、お前はそれでいいんだな?」
「うん……それでいいよ」
「なら俺のほうでも動いてみる、期待しないで待っててくれ。とりあえずシャルルは今までどおり女であることは隠して生活してくれ、それだけでも十分時間稼ぎになる」
「うん」
そう言い、俺は1025室から出て行った。もちろん目指すは特別室、俺は三津村を説得できるだろうか。
特別室に入り、まず壁の穴に耳をすませる。
何も聞こえない、お隣さんは部屋にいないようだ。しかし、これは好都合。俺はスマホを取り出し楢崎さんに電話を掛ける。
「楢崎さん……お願いがあるんだ」
「何かしら?ラウラ・ボーデヴィッヒの情報ならもう少し掛かるわよ、後一時間は待って頂戴」
俺が前に楢崎さんに電話してから一時間も経ってはいない、三津村の早さは相変わらずだった。
「それじゃないんだ、もう一つお願いがあって」
「何かしら?」
「デュノア社、買ってくれないかな?」
本来こんな話を電話ですること事体非常識だろう、しかし返ってきた答えはもっと非常識だった。
「ええ、いいわよ」
「はぁ!? いいんですか!?」
俺の考えたシャルルの問題を解決する策はこうだ。
シャルルがデュノア社によって男性IS操縦者であることを正式に公表される前にデュノア社の口を封じる。
実はデュノア社はシャルルが男性IS操縦者であることを現在公表していない、っていうか公表していたらシャルルがここに来る前に俺はシャルルの存在を三津村から教えられていたはずだ。三津村も、シャルルの存在を知ったのはIS学園転入後のことだ。
さて、話を戻そう。手は色々あるだろうが最初に考えたのがデュノア社の買収だった。
フランス政府に対しては問題ないはずだ、フランス政府はデュノア社の言うことを鵜呑みにしてシャルルが男性IS操縦者であるということを信じてしまった。
これは政府の失態だ、そしてシャルルが男性IS操縦者であることが公表された後に女性であるということがばれたらフランスの国としての信用は落ちる。
何故落ちるか、それは自分が間抜けだと宣伝しているようなものだからだ。
それはなんとしても避けないといけないところだろう、国家のメンツ的に考えて。
そしてこのことは俺の考えたデュノア社の買収にも繋がる、企業とは国に対して雇用を生み出す存在だ、デュノア社はフランスでのIS製造において最大手で多くの従業員を抱えている。
さらにそこから支払われる法人税も莫大なものになり、それがフランスを支えているものの一つになるのだ。
つまりデュノア社を抑えればフランス政府に対して大きい発言権を持つことができ、シャルルの処遇を何とかすることは比較的容易になると俺は考えたわけだ。
しかしこうも簡単に事が進むとは予想だにしなかった。
「何でそんなに簡単にOKが出るんですか?」
「三津村によるデュノア社買収の計画が以前から決まっていたのよ」
「どういうことでしょう?」
「それにはね藤木君、キミが大きく関わってくるのよ」
「さらに意味が解りませんね、詳しく教えてもらえますか?」
「デュノア社のIS、ラファール・リヴァイヴは世界中で生産されてるのは知ってるわよね? 実はこのIS日本でも生産されてて、ライセンスを持ってるのは三津村重工なの。開発中の藤木君の新専用機はこのラファール・リヴァイヴの設計をちょっとパクった第三世代のISで今のところかなり順調に開発が進んでいるわ」
「俺の新専用機がラファール・リヴァイヴの設計をちょっとパクったのは解りましたけど、それとデュノア社買収に何の関係があるんですか?」
「この専用機、かなり出来がいいのよ。思わずイグニッション・プランに参加したくなるくらいにね」
つまり、楢崎さんが言いたいのはこういうことだ。
俺の専用機の設計が想像以上にいいものになったから、思わずスケベ心が出てイグニッション・プランに参加したくなった。
しかし、イグニッション・プランに参加するには欧州の国家の後押しが必要になる。
そこで考えたのがデュノア社買収ということか、あの位の大企業を乗っ取り三津村謹製の第三世代をフランス政府に突きつければイグニッション・プランに参加するのは可能だと三津村は考えたわけだ。
その影で多数の交渉や説得、または脅迫などがあり三津村の支払う金も莫大なものになるだろうがそれでも三津村は利益を得ることができると考えてるというわけか……
「というわけで、キミにも色々やってもらうわよ。私達三津村は男性IS操縦者藤木紀春及びシャルル・デュノアとイグニッション・プランでIS業界の覇権を取りにいくわ」
いつの間にかシャルルの三津村入りが決定している!? これは止めないと!
「ええと、そのシャルル・デュノアのことで少しお話が……」
「……何の話かしら?」
「シャルル・デュノアって実は女なんですよ」
楢崎さんの反応が無い、約一分くらいでようやく反応が返ってきた。
三津村なのに遅い、そんな風に思った。
電話の向こうで楢崎さんはどんな顔をしているのだろう?
「マジ?」
「うん、マジ。彼女の全裸を目撃してしまったんですよ」
「藤木君、ちょっと電話切らせてもらえるかしら。急に仕事が入ったの」
楢崎さんは俺が返答するより先に電話を切った。
その後、楢崎さんから電話が返ってきた。
シャルルが男性IS操縦者である確証が全く掴めなかったということ、その情報をもたらしてくれた俺に対する礼として俺のもう一つの願い、フランス政府を脅迫しシャルルの扱いに対しては最大限配慮するということが叶った。
再度確認したがデュノア社はシャルルが男性IS操縦者であることは公式に発表してないらしく、何とか揉み消すことは可能だと伝えてくれた。
政府に関してはシャルルの正体を見破れなかった件で脅迫しておくということで落ち着いた。そして三津村がデュノア社を手に入れることが出来れば、もうフランス政府としてはシャルルに対して大きく出ることは出来なくなるだろうとのことだ。
それともう一つ、ラウラ・ボーデヴィッヒに関する資料が送られてきた。
期限は明日までと言っていたがそこは三津村、相変わらず早かった。
とりあえず今シャルルに対して俺が出来ることはない、もう一つの懸念であるラウラ・ボーデヴィッヒに集中しよう。
俺は資料を読み進めていく、その中で俺の気を引く事柄があった。
遺伝子強化試験体として生み出された試験管ベイビーであるということということだ。
なるほど、いかにも”らしい”じゃないか。
俺はラウラ・ボーデヴィッヒに対する懸念を益々強める、しかし未だ確証に至ることが出来ない。
コイツに関しては間違ってはいけない、篠ノ之さんのヤクザ疑惑や、鈴のワキガ疑惑、シャルルの粗チン疑惑とは訳が違うのだ。慎重にいこう。
資料を読み終わった所で一息つく、気がつくともう消灯時間を過ぎていた。
明日も早いし、シャルルのことやラウラ・ボーデヴィッヒの懸念のこともあるし忙しくなるはずだ。
早く寝てしまおう。
「おやすみ……」
「おやすみ藤木君! 自家発電はしないの?」
「うるせえよ」
お隣さんはいつの間にか帰ってきていたようだ。
オリ主がラウラに感じている懸念、これがこの一連の話の主題になります。
予想禁止ね。ただでさえ面白く無い話がもっと面白くなくなるから。