インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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第19話 ラウラ・ボーデヴィッヒの正体

タッグパートナーを探している俺だったが、それは難航していた。

以前から持ち上がっている、俺が一年生最強であるという噂が俺に簡単にパートナーを決めさせてくれないのだ。

一年生最強であるとされている俺は無様な負けは許されない、つまりパートナーにする人間にもかなりの実力を求めるとなるとその選定は難航した。

 

しかし、学年名簿を見ると中々の実力者の名前を発見した。

俺はたまたまその人と交流を持っている人物と交流があるので、その人に仲介を頼もうととある所に訪れていた。

 

「たっちゃん! 妹さんを紹介してください!」

「えっ? 何でいきなり?」

「強いタッグパートナーが欲しいんや!」

 

そう、俺が訪れたのは生徒会室だ。

そして今俺が狙っている人物、それはたっちゃんの妹である更識簪だ。

更識簪……日本代表候補生であり、たっちゃんの妹。実力は代表候補生ということで高いものが期待されるし、たっちゃんの妹と言うことで仲介もしてもらいやすい。

俺的には言うこと無しだった、彼女の意見を聞いてはいないがもし良ければタッグパートナーになってもらいたいと思う。俺も一年生最強と大手を振って歩けるような自信や実力を身につけてる訳ではないが、それでも一年生の中では上位の実力を持っているとは思う。

彼女が優勝を狙うのであれば俺は悪い物件では無いと思うのだが……

 

「ゴメン無理」

「ええっ!? 何でさ?」

「私、簪ちゃんに露骨に避けられてるのよね……理由はなんとなく解るんだけど、解っている分余計に私からは近づきづらいっていうか……」

 

簪ちゃん? 更識簪のことでいいのだろうか? 

しかし、俺には兄弟姉妹は居ないがなんとなく解る。多分更識簪はいつも姉と比較され続けていたのではないだろうか? 

確かにたっちゃんは凄い人だと思う、更識のトップとロシア国家代表とIS学園生徒会長を兼任している人だ。

他人なら凄い人という評価でいいのだろうが、それが身内となるとあまり心地良いものでも無いのかもしれない。

 

「なんだか、デリケートな話っぽいね。深くは聞かないでおくよ」

「そうしてくれると助かるわ」

「しかし、困ったぞ。だったら誰に仲介を頼めばいいのだろうか……」

「本音ちゃんに頼んでみたら?」

「本音ちゃん? ああ、布仏さんのことか。布仏さん、どう?」

 

そう言って横を見る。

布仏さんは、俺の横でクッキーを貪っていた。

 

「かんちゃんとのりりんがタッグを組むのは無理じゃないかなぁ?」

 

かんちゃん? 出会ってもいない更識簪の呼び方のバリエーションばかり知ってしまうなと思う。

 

「あれ? 何でだ?」

「かんちゃんはもうタッグ組むひと決めてたはずだよ」

「それ先に言えよ」

「え~、だって聞かれなかったし~」

 

お目当ての更識簪に出会う前から振られてしまった。

更識簪が駄目となると、他に居る実力者は……篠ノ之さんか?

 

しかし、ア○ルの一件以来どうも篠ノ之さんと距離感を感じるし近接戦闘では役立つが射撃を含む戦闘となると正直力不足な感が拭えない。

セシリアさんと鈴はトーナメントに出れないし、残る実力者となると……奴か。

 

正直気乗りしないが、奴のことを見極められるチャンスかもしれない。

嫌なことから逃げ続けても俺は進歩しないだろう、それに俺の懸念が正しければ奴は俺にとって一生付いて回る問題になるはずだ。

 

「解った、他の人に当たってみるよ」

「誰か当てでも居るの?」

「多分今一年生で一番強い奴に会いに行くよ」

「一年生最強ってノリ君じゃないの?」

 

たっちゃんがニヤニヤしながら言う、こいつ解ってるのにそんな事言うのか。

 

「あれはたまたまだよ、ラウラ・ボーデヴィッヒに話を持ちかけてみるよ」

「そうね、性格には難がありそうだけど彼女の実力は本物よ。勝ちたいのなら彼女と組むのが一番でしょうね」

「性格に難がありすぎるような気もするけどね。では、お邪魔しました」

 

そう言い生徒会室から出た。

さて、ラウラ・ボーデヴィッヒは何処に居るだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは簡単に見つかった。

たまたま廊下を歩いているところに出くわしたのだ。

 

「何の用だ? 藤木紀春」

「あれ? 一夏以外の男は眼中に無いと思っていたが俺のことも知っていたとはね」

「……」

 

ラウラ。ボーデヴィッヒは俺を睨みつけ、そこから去ろうとする。

 

「おい、待てよ。お前に話がある」

「……手短に言え」

「俺とタッグを組め。一夏と戦うのが何時になるかは解らんが俺とお前が組めば確実に上まで上がれる」

「興味ないな、タッグパートナーなど誰でも良い。私一人で充分だ」

「やっぱりそう言うと思ったよ。なら俺と勝負しろ、俺が勝ったら俺とタッグを組め」

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは呆れた顔で言葉を返す。

 

「益々興味ないな、第一私とお前が勝負して私に何の利益がある?」

 

奴はそう言い捨てまたそこから去ろうとした。

 

「逃げるのか少佐殿? 敵前逃亡は銃殺刑じゃなかったか? それともドイツ軍は腰抜けの集まりか?」

「貴様っ!!」

 

その言葉に怒ったラウラ・ボーデヴィッヒは俺に詰め寄る。

 

「おお、怖い怖い。でもそう言われても仕方ないだろ? お前は腰抜けの臆病者なんだから」

「貴様……どうやら死にたいようだな?」

 

奴は俺の挑発に思いっきり乗ってくれている、結構単純な奴で俺も扱い易い。

このまま俺のペースで交渉を進めてしまおう。

 

「悪いがまだ死にたくはないんだ、死ぬ時は腹上死って決めてるんでね。それに俺を殺したら愛しの織斑教官に嫌われちゃうよ? 俺は貴重な男性IS操縦者なもんでね」

「……くっ!」

 

奴の目からは殺意が発せられるが、本気じゃないこと位俺にもお見通しだ。

 

「で、勝負するのか? しないのか?」

「いいだろう、その話乗ってやる。ISでの勝負でいいか? 死なない程度にいたぶってやるぞ?」

「お前、織斑先生の話聞いてなかったの? ISでの私闘はトーナメント終了まで厳禁だって」

 

俺が気絶している間に決められた話だが、一夏からそんな話を聞いた。

 

「……だったら何をする気だ?」

「もっと平和にいこうぜ? そうだ、スポーツなんてどうだ?」

「いいだろう、私とお前の差を教えてやろう」

「よし、決まりだ。明日の放課後ソフトボール部のグラウンドまで来い。そこで野球で勝負だ、ルール知ってるか?」

「大丈夫だ、知っている」

「そうか。じゃ、明日の放課後待ってるからよろしくねー」

 

そう言い俺はその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は過ぎ翌日の放課後となった。

 

「来たようだな……」

「ああ、始めようか」

 

俺はマウンドに立ち、ラウラ・ボーデヴィッヒを見つめる。

ソフトボールのマウンドは野球のマウンドよりホームベースに近く作ってあるため、昨日ソフトボール部にお願いして特別にマウンドを作ってもらっておいた。

ソフトボール部の支配者である俺に逆らえる部員は居ない、そのため彼女達は嫌な顔一つすることなく俺に協力してくれた。

塁はそのまま使用している。俺が奴と行うのは一打席勝負であり、塁間の短さはあまり関係ない。

 

「さて、ルールを説明しよう。今から俺と一打席の勝負をしてもらう、このままのルールだと俺に有利すぎるので守備に就く人間は俺とキャッチャーとファーストのみだ。守備に参加できる人間は俺のみ、キャッチャーとファーストは球を俺の投げた球を取ることしかさせない。多分これでお前の不利はあまりなくなったと思うのだが質問や要望はあるか?」

「いや、このままのルールでいい」

 

このルール、別に公平になるように決めたわけではない。ただラウラ・ボーデヴィッヒに不公平感を感じさせなければそれで充分だ。

別に守備要員なんて最初から必要ない、奴のバットに俺のボールが当たることなんてありえない。

なぜなら俺は野球のチートの持ち主なのだから。

 

「じゃ、行くぞ……」

 

俺はマウンドの上で投球モーションに入り全力のストレートをド真ん中に投げた。

 

バチィィィン! という音と共にボールがキャッチャーミットに収まる。

 

「ス、ストライク!」

 

球審が大声でストライクを宣告する。

 

「何……あれ……」

「160キロ出てる……あんなの高校生が投げれる球じゃないでしょ……」

 

俺とラウラ・ボーデヴィッヒの勝負を観戦していたソフトボール部員達がざわめく、スピードガンも用意していたらしくその球速に更に驚いているようだった。

 

「どうした、振らないと打てないぞ」

「……」

 

ラウラ・ボーデヴィッヒは俺の挑発を無視する、さてもう一球いってみるか。

そうして俺は立て続けにストレートを投げた、今度は球速を少し抑え目に投げてみたがその効果は覿面だった。

奴はタイミングを外し、またストライクとなった。

 

「もう追い込まれてるじゃないか、本気出せよ」

 

俺は相変わらず挑発を続ける、言葉で奴の心を掻き乱し少しでも自分に有利な状況を作るためだ。

 

「……ああ、そうだな。藤木紀春、私は正直貴様を侮っていた。そして貴様の実力は高い、それも認めよう。しかし勝つのは私だ、私の本気を見せてやる」

 

そう言い、ラウラ・ボーデヴィッヒは眼帯を取った。

眼帯の下からは金色の瞳が輝いていた。

 

「へぇ、オッドアイか……結構お洒落さんなんだな」

 

あの眼帯を取った瞬間からラウラ・ボーデヴィッヒの纏う空気が一変した気がする、そして俺の懸念は確信に変わる。奴は――いや、今はこの勝負に集中しよう。

追い込んではいるがきっと勝負はここからだ、むしろ追い詰められた感覚さえ覚える。

 

「……」

 

無言のまま投球モーションに入る、今度の球はフォークだ。

素人にこの球が捉えられるはずがない、俺は渾身の力を込めて投球した。

 

しかし、奴のバットがボールに当たる。

打球はファールゾーンに入り、俺は胸を撫で下ろすが追い込まれてるのが自分だと再確認させられたような気分で焦る。

ヤバイ、昔次郎さんと俺が戦った時と同じような展開になってる。このままあの時の展開をなぞるような事になったら俺の負けは確実だ。

俺は奴に負けるわけにはいかない、俺には野球のチートを持つものとしてのプライドがあるし、何よりオリ主としてコイツだけには負ける訳にはいかないのだ。

 

「変化球か、詳しいことは解らないがあれだけ曲がるものだとは思わなかったぞ」

「随分余裕そうだな、相変わらず追い込まれてるのに」

「言っただろう、勝つのは私だと」

「……」

 

決めた、次で絶対にアウトをもぎ取ってやる。このままファールを打ち続けられていては俺が徐々に不利になるだけだ。

俺はオリ主パワーと野球チートの全てを込め、ボールを投げる。

投げる球種はスプリット、某マークンのシーズン24連勝を支えた決め球だ。

 

「くうっ!」

 

そんな声と打球音が同時に聞こえた、その時世界がゆっくりと動き出す。

放たれた打球はセカンド方向にライナー気味に飛んでいく、俺は左方向に飛んでいくその打球を俺は見逃さなかった。

まだ勝負はついてない、これを捕ることが出来れば俺の勝ちだ。

俺はオリ主跳躍力を全開にしボールに飛び掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「……」

 

腹が痛い、ボールに飛びついてそのまま地面にうつ伏せの状態で落ちたからだ。

グローブを見ると、そこにはラウラ・ボーデヴィッヒが打った打球が確かに存在した。

俺はこの勝負に勝つことが出来たのだ。

 

「はぁ、勝てたのか。俺」

 

立ち上がり、ラウラ・ボーデヴィッヒを見ると奴は目を丸くしていた。

 

「あんなのが……取れるのか」

「悪いな、俺は野球の天才なんだ。そして俺の勝ちだ、俺と組んでもらうぞ」

「……ああ、いいだろう。素直に負けを認めよう」

 

俺は手を差し出す

 

「何だ?」

「馴れ合うつもりは無い、しかし最低限のコミュニケーションぐらい取ってくれよ? 少佐殿」

「解った、私のことはラウラでいい。少なくともお前に対して軍人ぶるつもりはない」

「了解。じゃ、よろしくなラウラ。俺のことは藤木でいい」

「ああ、しかしお前の指図も受ける気は無い。そこを忘れるな」

「別に構わないさ、俺がお前に求めてるのは強さだけだ。それ以外は俺の迷惑にならなければ何も言うつもりはない」

「それでいい、ではよろしく頼む」

 

そう言い、ラウラは俺の手を握り返した。

この瞬間、一年生タッグトーナメント最有力の優勝候補チームが誕生した。

そして俺は手を解きソフトボール部員の方へ向いた。

 

「お前達! 俺とラウラがチームを組んだことを絶対に口外するなよ! もしこの話が漏れたら全員に地獄を見せてやるからな!」

「はい! 解りました!」

 

口止めはこれ位でいいだろう、俺が求めるのは勝利だ。勝利の可能性を少しでも大きくするためなら俺は手段を選ばない。これもその一環だ。

 

俺はラウラと別れ、ソフトボール部のグラウンドに設置された野球用のマウンドを部員と共に撤去し寮へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別室に帰り、ラウラ・ボーデヴィッヒについて考える。

今まで彼女を見てきて、俺の懸念は完璧なものとなっていた。やはりあいつがそうなのだろう。

銀髪、15で少佐というありえない階級、試験官ベイビーなのは親の存在を邪魔だと思ったからなのだろう。そして極めつけは今日見たオッドアイ。

 

もうこれは確定でいいだろう、奴は俺と対を成す存在だ。

 

そう、ラウラ・ボーデヴィッヒは踏み台転生者に違いない。




この話を書くためにオリ主に散々勘違いをさせてきたり、野球チートを付与させたりしてきました。長い前置きだった……

そして、大台突破。皆様ありがとうございます。

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