インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
「織斑一夏アァァァァ!!」
「ラウラ・ボーデヴィッヒイィィィィ!」
ラウラと一夏が激突する、一夏の獲物は零落白夜を展開した雪片弐型、ラウラの獲物は二つのプラズマ手刀だ。
ラウラの獲物結構カッコイイな。不動さんにお願いして新専用機につけてもらいたいな。
二人は激しく剣を打ち鳴らし、一進一退の攻防を繰り広げている。
俺の射撃技術では援護するにも不安がある、かと言って霧雨であの格闘戦に参加するわけにもいかない。一夏の攻撃で霧雨はボロボロなのだ。
まあ、いいタイミングで援護に入ろう。
そのタイミングがすぐに訪れた、一夏の振り下ろしをラウラがAICで止める。
俺はそれを見て
ラウラのAICが切れ、一夏が吹っ飛び壁に激突する。
「貴様! 邪魔をするな!」
「こっちはもう始末しておいた、あまりに暇だったもんでついやっちゃったよ」
「織斑一夏は私の獲物だと言っているだろう!」
「仕留めるのが遅すぎるんだよ、これは遊びじゃないんだぞ少佐殿」
ラウラが本気を出せば一夏をAICに磔にして瞬殺することだって可能なはずだ。
しかしラウラはプラズマ手刀での斬り合いを選択した。これは怠慢以外の何物でもない。
「ぐ……っ」
一夏が土煙の中から姿を現す。
「紀春……お前……」
「シャルルはもう倒した。二対一のこの状況、お前に勝ち目は無いぞ」
一夏に勝ち目はあるのだろうか、主人公の本領はピンチになってから現れるものだ。
そして、俺だってオリ主だ。シャルルにとっつきを食らおうかというピンチの状況で逆転してみせた。
つまり、主人公である一夏に闘志がある限り油断は出来ない。
俺は突突を展開し構える、この武器に不安が無いとは言い切れないが今の俺に一夏に対抗できる武装もこれ位しかない。霧雨……もう一本あればよかったのにな。今度不動さんに言ってみよう。
「じゃ、これで終わりだ」
一夏が構える所に、俺は突撃を決める……はずだった。
ラウラのワイヤーブレードが足に絡みつき俺は突撃の勢いで転倒する。
そして俺を飛び越え、ラウラが一夏に突撃していった。
「テメェ!! 何しやがる!?」
「邪魔をするな……次邪魔したら、殺すぞ」
ラウラは相変わらず踏み台だった、飽くまで自分本位に物事を進めたいらしい。
流石に俺もイライラしてくる、タッグパートナーでなければブン殴っているところだ。いや、この試合が終わったら絶対ブン殴ってやる。
女だからって知ったことではない、以前も篠ノ之さんを襲ったことだってあるんだ。
俺はその辺は男女平等主義だからね。
ラウラはああ言ったが、今更アイツの言うことなんて聞くわけが無い。
殺す? 上等だ、織斑先生に言いつけてやるからな。
二人は近接戦闘でまた一進一退の攻防を繰り広げており、目まぐるしく体勢が入れ替わる。
そんな中俺が倒れている場所からちょうど一夏が背を向け立つような格好になる。
これはチャンスだ、勝利をモノにすることとラウラに嫌がらせをすることを同時にこなすには、俺が一夏を倒せばいいのだ。
俺はヒロイズムを展開し、一夏の背中を狙う。
そしてトリガーに指を掛けようかという瞬間、ラウラの怒号が響く。
「いい加減にしろおおおっ!! 藤木紀春うううっ!!」
ラウラの肩に装備されているレールカノンが俺に向かって火を噴いた。
「う……ぁ……っ……」
「紀春! 大丈夫!?」
少しの間気絶していたようで、俺はシャルルの居る所まで吹き飛ばされていた。
「俺は……」
「紀春はラウラ・ボーデヴィッヒのフレンドリーファイアを受けてここまで飛ばされてきたんだ」
その言葉を受け、混乱していた頭が整理されていく。
そうだ、俺はラウラの砲撃を食らってここまで吹っ飛ばされたのか。
目線を前に遣ると、ラウラと一夏が剣戟の応酬を繰り広げている。
それを見ると沸々と怒りがこみ上げてくる、何だアイツは。
許せない、ラウラ・ボーデヴィッヒが許せない。
奴はこの戦闘で自分勝手な振る舞いばかりをしてきて、あろうことか俺に砲撃まで食らわせてきた。
許せない、許せない、許せない、許さない!
踏み台の分際でオリ主たる俺に歯向かおうとは許しておけない! 貴様に自分の立ち位置をしっかり教え込んでやる! 貴様はおとなしく俺の踏み台になっていればいいんだよ!
「ふざけんなよ!! クソ餓鬼がああああああっ!!」
怒り込めて
俺は怒りのままに飛び、鍔迫り合いをしている一夏の背後からラウラに照準を合わせる。
「何っ!?」
「死ねや糞があっ!」
俺は躊躇することなくトリガーを引き、レインメーカーの直撃を受けたラウラが吹き飛ぶ。
「紀春、お前どうして……」
呆気に取られた一夏が戦闘中にも関わらず俺を気遣うような素振りを見せる。
「一夏、手を出すな。邪魔したら殺すぞ」
「――っ!」
一夏は俺の殺気に気圧されたようで一歩後ずさる、俺は四つんばいで咳き込んでいるラウラに向かって悠然と歩き出す。
「貴様……どういう事だ」
「うるせえ、死ね」
俺はラウラに急加速で接近しその腹にトゥーキックを食らわせ、ラウラは宙に浮く。
更に追撃として放つパンチは宙に浮いたラウラの顔面を捉え、ラウラはそのまま遠くに吹き飛んで行った。
「ぐっ……はっ……」
もうこの戦いは対戦の体など微塵も残してはいなかった。
そう、この場はオリ主たる俺が踏み台であるラウラに制裁を加える場に変貌したのだ。
そんな時だった、ラウラの様子がおかしくなったのは。
「ああああああっ!!!!」
突然、ラウラが絶叫する。その雄叫びに呼応するようにラウラのISが紫電を帯び、俺はそれに激しい圧力を感じた。
そうしてラウラのISが変形していく、いや変形とは違う。
ラウラのISはぐちゃぐちゃに溶け、それがそのままラウラの体を覆っていく。その真っ黒な姿はまるで粘土で作った出来のいい人形のようだった。
「なんだよ、あれ……」
一夏が慄く、しかしそれに引き換え俺の心は高揚していた。
「第二形態ってわけか……面白れえじゃねーか!」
踏み台にしては粋なことをしてくれると、今更ながらにラウラを褒めたくなってきた。
「良いよ! 来いよ! 今度こそぶち殺してやる!」
レインメーカーを再び構える、残り装弾数は17発。奴を仕留めるには充分すぎるほど弾は残っている。
ヒロイズムもエネルギーの心配はない。大丈夫だ。
サタデーナイトスペシャルはあと二丁残ってる、でもこれは多分使わないな。
霧雨はボロボロだが後一発位の打撃なら充分使えるはずだ。
突突は……いいや。
俺の気合に当てられたのか、ラウラ第二形態が刀を振り上げ突撃してくる。
俺は足を止めレインメーカーを二発発射したが、ラウラ第二形態はそれを無視するように猛然と突っ込む。
俺に袈裟切りが迫る、俺はそれをレインメーカー本体でとっさに防ぐ。
ラウラ第二形態はレインメーカーをまるでキュウリでも切るかのようにいとも容易く切り裂き、返す刀で俺を切り上げようとするが俺は突突を展開しそれを防ぐ。
しかしここで俺はまた驚愕する。
「零落白夜だと!?」
一夏の零落白夜を受けた時と同じように突突は火花を散らしながらじりじりと切り裂かれていく。
そしてそれに気を取られていた俺はいつの間にかラウラ第二形態の空いていた右腕で強烈なボディーブローを食らい、大きく吹っ飛んだ。
「ちきしょう! あのクソ餓鬼がああっ! 絶対にぶっ殺してやる!」
俺は体勢を立て直し、ラウラ第二形態に向き直る。
シールドエネルギーは底を突きそうだし、打鉄・改のあちこちから火花が散っている。
しかしまだ殺れるはずだ、根拠はないけどそんな気がする。
しかし、歩を進めようとすると肩をつかまれ強引に動きを止められる。
俺の後ろには一夏とシャルルが居た。
「一夏、邪魔すると殺すって言ったはずだが」
「いい加減にしろ! 今のお前じゃ死にに行くようなもんだ!」
「煩せえっ! アイツは俺が殺らなきゃいけないんだ!」
「いい加減にしろって言ってんだよ!」
そんな言葉と共に一夏の右ストレートが俺の左頬に炸裂する。今ので地味にシールドエネルギーが削れる。ついに残量は一桁にまでなってしまった。
「紀春、お前どうしちまったんだよ。いつものお前とは大違いだ、普段のお前ならどんな時でも余裕ぶっていたはずだ。何があったんだよ」
一夏の言葉にマグマの様に沸騰していた心が少しばかり冷めてくる。
確かにそうだ、俺は踏み台に心を囚われていていつの間にか自分を見失っていた気がする。
深呼吸を一回、二回、三回と続ける。俺の熱い吐息と共に心の熱が徐々に収まってくるような感覚があった。
「……すまない、熱くなりすぎていたようだ」
「で、何があったんだ?」
どう説明したらいいのだろう? オリ主としてあの踏み台の暴虐が許せなかったとでも言うか? いや、これは俺が墓場まで持っていくべき秘密だ。
しかし、今はいい答えが見つからない。
「……それは言えない」
結局言えない事を正直に話した。
「そうか……それならそれでいい。でもアイツを倒したいんだろう? 何か良い案とかないかな?」
何も聞こうとはしない一夏の優しさが身に染みる。
「どうした? 俺を諌めた割にはやけに好戦的だな」
「お前とラウラの戦いを見て確信した。あれは千冬姉の動きだ」
「解るのか?」
「ああ、姉弟だからな。あれは千冬姉のデータが使われている、それは千冬姉だけのものだ。そんなのを使うアレを俺だって許せはしない」
「お前の性格から言って、そうなったら俺より先に飛び込んでいくもんだと思っていたが、なぜそこまで冷静なんだよ?」
「荒れているお前をみて逆に冷静になっちまったんだよ」
「そうか、そりゃ悪かったな」
俺達は笑いあう、ついさっきまで命のやりとりをしていたはずなのに心は晴れやかだ。
これが主人公の魅力とでもいうのか……いやこのまま引き摺られていけばホモルート一直線だ。気を引き締めないと。
『非常事態発令! トーナメントの全試合は中止! 状況をレベルDと認定、鎮圧のため教師部隊を送り込む! 来賓、生徒はすぐに非難すること! 繰り返す!』
「だそうだ、紀春。俺達がやらなくても何とかなりそうだぞ」
「そりゃ良かった。じゃ、さっさと奴をぶっ飛ばしますか」
心に心地よい闘志の火が灯る。そうだ、俺はアイツを乗り越えなければならない。一夏だって気持ちは同じはずだ。
「どうすればいい? 俺にはさっぱり奴を倒す方法が思い浮かばないが」
「一夏、やっぱりお前が決めるのが良いと思う。俺はレインメーカーも壊されちまったし、ここで一番攻撃力があるのはお前だ。シールドはどれ位残ってる?」
「零落白夜一回分ってところだな、お前は?」
「一桁」
「そりゃやばいな、お前は引いておくか?」
「少々心もとないが大丈夫だ」
「あの、紀春。僕のエネルギーを使ってよ」
俺と一夏の掛け合いの中、妙に影が薄かったシャルルが言う。
「お前のエネルギーってもう無いだろ」
「紀春に倒されてから結構時間が経ったからね、少し位なら回復してるよ。こうやって動けるのが何よりの証拠だと思うけど。僕のリヴァイヴならコア・バイパスでエネルギーを移せると思う」
「マジか、なら頼む」
「けど!」
「けど?」
「けど、約束して。絶対に負けないって」
「おっけー、もしも負けたら鼻からスパゲッティ食ってやるよ」
俺はシャルルに笑顔でサムズアップして答える。
「あっ、それはいいね。ついでに目でピーナッツを噛んでくれないかな?」
「お前俺に勝ってほしいんじゃないのかよ?」
軽いジョークトジャイアニズムの応酬で場が和む。
シャルルがISからコードを取り出し、俺の右腕に装着する。
すると、一桁だったシールドエネルギーが50くらいまで回復していき、シャルルのISが消失した。
「50か、一桁よりは随分マシか」
「で、作戦はどうする?」
「そうだな……」
俺は両手に最後のサタデーナイトスペシャルを展開し、一夏に使用権限を渡す。
「まずはお前がコイツでラウラの気を引いてくれ」
「俺がトドメを刺すんじゃないのか?」
「まぁ、聞けよ。お前が気を引いた後、俺が攻撃してデカイ隙を作ってやる。最後にお前が零落白夜でドカッと決めれば作戦成功だ」
「なんとも大雑把な……」
「シンプルと言ってくれ、複雑すぎる作戦はちょっとしたことで破綻するもんだ。これ位で丁度いいんだよ」
「そんなもんか……」
「そんなもんだ、あとお前が撃ったら奴はお前の方に向かってくるが絶対にその場から離れるな。俺が何とかするから」
「解った。紀春、お前を信じてるからな」
「おう、俺を信じろ。じゃ、俺は配置に付くから俺が合図したら作戦開始な」
「紀春、一夏、頑張ってね!」
シャルルが応援してくれている、かっこ悪い所は見せられないな。
「おう、危ないからお前は出来るだけ遠くに行ってろ」
「うん、解った」
シャルルがその場から走り出す。
その間、ラウラは俺達の様子を棒立ちで窺っているだけだった。
以前戦った無人機のことを思い出す、ラウラの変貌はあれと何か関係があるとでもいうのだろうか……
俺はラウラの廻りを大きく迂回し、ラウラの後方に着地した。
「一夏、作戦開始だ。その銃は当たりにくいからよく狙って撃てよ」
「了解!」
一夏の放つ発砲音と共に俺達の作戦は開始された。
一夏の射撃によって気を引かれたラウラ第二形態は真っ直ぐに一夏を目指す、そしてそれを俺は
射撃を続ける一夏にラウラ第二形態が迫る、そしてラウラ第二形態が一夏に刀を振り下ろそうとした瞬間、俺はラウラ第二形態の真後ろに到着し、後ろから抱きしめる。
「ラウラ、教えてくれ。お前はこの技の外し方を知ってるか?」
俺はラウラを持ち上げそのまま後ろにブリッジをする。
そう、俺がラウラに仕掛けた技はプロレスにおいて基本とされ故に至高とされる技であるジャーマンスープレックスホールドだ。
俺は見事な人間橋、いやIS橋を描き、ラウラ第二形態の頭を地面に突き刺す。
しかし、まだラウラ第二形態は元気なようでホールドされた状態でもがく。
「ちっ、まだ威力が足りないか!」
やはりこれだけでは仕留められないか、仕方ない。
ではISであるが故に使える大技で決めてやろうか、本邦初公開である俺のオリジナル技だ!
俺はブリッジした首を基点に、PICで姿勢制御しラウラ第二形態の上で一回転しもう一度ラウラ第二形態を後ろから抱く体勢になる。
「一夏、後は頼んだ」
そう言い、俺は
もちろんラウラ第二形態も一緒だ。
ラウラ第二形態はもがき、俺の頭に肘打ちで攻撃してくる。古典的なジャーマンスープレックスに対する防御法だが、その程度では俺のシールドエネルギーは削りきれない。
しかし、一桁だったら危なかったな。シャルルに感謝だ。
そんな事を考えながら俺は空中で回転し地面に頭を向ける。
これでこのままラウラ第二形態と共に地面に落ちれば俺のオリジナル技の完成だ。
折角なのでこの技に名前を付けよう。
そうだな……ここはシンプルに、オリ主ドライバーっていうのはどうだろう?
俺はオリ主ドライバーを食らわせるため再度
そんな歪んだ視界から見た俺達が目指す地面は、まるで地獄の入り口に見えた。
「ラウラ、俺と一緒に地獄に堕ちよう」
そんな台詞が自然と口から出る、ちょっとやさぐれ過ぎただろうか?
そんな事を考えながら俺とラウラは地面に激突し、俺は意識を失っていった。
一夏、後は頼んだ……マジで……