インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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第22話 Twister

毎度お馴染みの保健室の天井は今日も白かった。

俺がこうして五体満足で生きてるってことは、一夏はうまくやれたのだろう。

いや、強ち五体満足とは言い切れないな。体中が痛くてうまく動かないし、体のあちこちに包帯が巻かれている。

さながらミイラにでもなった気分だ。前世で厨二病を発症した時だってこんなに包帯を巻いたことはなかった。

 

そんな中カーテンを隔てた隣のベッドから話し声が聞こえた。

どうやら織斑先生とラウラが隣には居るようだ。

正直今の状態でラウラに会うのはきまずい、俺は息を潜めて二人の話を聞いた。

 

二人の会話を盗み聞きしていると色々なことが解った。

あのラウラ第二形態ってのは、ヴァルキリー・トレース・システムというもので過去のモンド・グロッソのヴァルキリーの動きを再現するシステムらしく、御禁制の品だったらしい。

 

それはラウラの状態やダメージや意思によって発動するものらしく、ラウラが望んだからあの姿になったというわけだ……

 

「力が欲しいか? 力が欲しいなら……くれてやるっ!」ってか、まるでARMSだな。少し憧れちゃうね。

 

しかし、この話はどうやら機密らしいのだがいきなり俺に漏れてしまったのはどうなんだろう? 織斑先生、もう少し気を配ったほうがいいですよ。

そんな事を考えていると織斑先生が保健室から出て行った。

 

保健室に静寂が訪れる……どうしよう、このままもう一回寝てしまおうか。

いや、こいつと一緒の空間なんて耐えられない。見つからないように俺も出て行こう。

全身は相変わらず痛いが、俺は気合でベッドから抜け出す。

 

そろりそろりと忍び足で歩いていると声を掛けられる。

 

「おい」

 

ああ、見つかってしまった。俺のオリ主スニーキングセンスはコイツに通用しなかったらしい。

とりあえず無視するわけにもいかないだろう。

 

「……何だ?」

「あの時は……すまなかった」

 

何だ? この態度の変化は、まあ今はどうでもいいや。早くこの部屋から抜け出すのが先決だ。

 

「おう、そうか。こっちも悪かったな」

 

そう言って俺は保健室から抜け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、その体で大丈夫なのかよ?」

「あいつと一緒の部屋に押し込まれてる状態の方が悪影響だよ」

「そういうものなの? あ、一夏、七味取って」

「はいよ」

「ありがと」

「病は気からって言うだろ、シャルル、七味俺にもくれ」

「はい、でも紀春のは病じゃなくて怪我でしょ?」

「さんきゅ、でも心の状態ってのは体に影響してくるもんだよ」

「そういうものかなぁ?」

「そういうもんだ、多分」

 

保健室から抜け出すと、食堂終了ギリギリの時間になっていたので慌てて食堂に行くと丁度一夏とシャルルに出くわし、俺達は三人で食事を摂ることになった。

ちなみに俺が今食べてるのはきつねうどん。今の状態であまりガッツリしたものは胃が受け付けないのでこれを選択した。

 

テレビからはトーナメントは中止するという旨が発表されており、それを聞いた女子達が酷く落胆している。

それを見た一夏は戦艦大和のような沈みっぷりだなと評していた。

 

「一夏! 大和ちゃんを馬鹿にするな!」

「えっ!? どうしたんだいきなり?」

 

大和ちゃんを侮辱した一夏を怒鳴る。おれは大和ちゃんが好きすぎて広島県呉市まで行った男だ。

そして大和ミュージアムでたっぷり大和ちゃんを堪能し、締めは大和温泉物語で大和ちゃんが居た海を温泉に入りながら堪能したのだ。ヤマトギャラリー零はスルーしたけど。

そんな大和ちゃんを侮辱する行為は俺を侮辱する行為と同じだ。

 

「なんかよく解らないけどごめん」

「最初からそう言えばいいんだよ、もう二度と大和ちゃんを馬鹿にするなよ」

「はぁ、解った……」

 

女子達は俺達の会話が聞こえてなかったらしく、泣きながらどこかへ行ってしまった。

そういえばトーナメント優勝者には一夏と付き合えるってのがあったな、あれって一夏はどう思ってるんだろうか?

女子が去った後、一人呆然と立ち尽くしている篠ノ之さんが居た。

それを見かねた一夏が篠ノ之さんに近づき声を掛ける。

 

「そう言えば箒。先月の約束だが、付き合ってもいいぞ」

 

え? 付き合う? 付き合うってあの付き合うってことでいいんだよね?

放課後+夕焼け+屋上 の付き合うってことだよね?

うおおおおお、マジか!? 一夏と篠ノ之さん付き合うのか!?

しかし、一夏は漢だな。俺達の目の前で告白の返事をするとは……

あれか、箒は俺の女だから手を出すんじゃねぇぞってことか。

もちろんだ一夏! 俺は篠ノ之さんに手なんて出さないぞ! 以前足なら出したことあったけどな!

おめでとう一夏! 篠ノ之さんのおっぱいはお前だけのものだ! いやあ、羨ましいなぁ!

 

「おめでとう篠ノ之さん! 俺も自分の事のように嬉しいよ!」

 

俺は痛む体を無視し、篠ノ之さんの手を取りブンブンと振り回す。

 

「ありがとう藤木、私絶対に幸せになるからな!」

「ああ! これからも応援してるよ!」

 

篠ノ之さんが笑顔で俺に言葉を返す。その時一夏が言葉を発する。

 

「大袈裟だなぁ、高が買い物に付き合うくらいでそこまで喜ばなくても……紀春も一緒に行くか? 買い物」

 

その瞬間、俺達の世界が凍りついた。

 

「……え?」

 

その時俺は確かに感じた、握り締めていた篠ノ之さんの手から体温が失われていくのを……

 

「藤木、手を離せ……」

「駄目だ! 今この手を離したら篠ノ之さんが犯罪者になってしまう!」

 

俺は篠ノ之さんに手を離さないように力を込める。

俺は、この人の手を離さない。一夏の魂ごと離してしまう気がするから。

 

「邪魔を……するなぁ!」

「ぐぉふっ!?」

 

俺は篠ノ之さんの膝蹴りを鳩尾に食らい悶絶し、その手を離してしまう。

俺は倒れ、今まさに一夏に襲いかかろうとする篠ノ之さんを見上げる。今日は白か。

 

「紀春! 大丈夫!?」

 

シャルルが走り寄り、倒れた俺を抱える。

 

「銀……兄さん……僕が、まちがってたよ」

「紀春っ! それ死ぬ人のセリフだよ!」

 

鳩尾はシャルルにとっつきを食らったり、ヴァルキリー・トレース・システムにボディブローを食らった所なので痣が出来ており想像以上にダメージがでかい。

俺はシャルルに抱えられたままガクッと気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷い目にあった……」

「お前のせいだからな、何で俺までとばっちりを受けなきゃならないんだよ」

「何で俺のせいなんだよ、箒のせいだろ。俺はちゃんと買い物に付き合うって言ったのに何で殴られなきゃならないんだ? 意味わかんねぇよ」

「お前一回病院行ったほうがいいよ、アスペか?」

「紀春、お前俺のことを何だと思ってるんだよ」

「アスペ。シャルルさん、コイツのことどう思います?」

「一夏、流石にさっきのは酷すぎるよ。いい加減にしないと刺されるよ」

「お前ら……俺が悪いのか?」

「うん」

「うん」

「あー、訳解んねー」

「マジで病院行って来い、精神科な」

「俺の精神はおかしくないっての!」

 

気絶した状態から復活した俺は一夏とシャルルとテーブルを囲む。

一夏が鈍感だとは思っていたが、ここまでひどいとは思わなかった。ってかこんな性格なのに一夏は何でここまでモテるのだろう? 一夏と俺の差に、俺の女性不信がまた加速しそうだ。

そんな時、山田先生が現れた。

 

「あ、織斑君にデュノア君。此処にいましたか。……えっ? 何で藤木君までここに居るんですか?」

「俺は自由を求める戦士、つまりフリーダムファイター・ガンボーイなんですよ、保健室のベットにいつまでも俺を縛り付けておけると思ったら大間違いですよ。山田先生」

「いやいやいやいや、二、三日は居てくださいよ!」

「お断りだ! 二、三日もラウラと一緒に居たら、俺達はまた殺し合いを始めるぞ!」

「そこは我慢してもらえませんかね……」

「我慢しませんよ、で何の用です?」

「何で藤木君が仕切るんですか……」

 

しかし、山田先生の話はいつも前置きが長いな。どうにかしてもらいたいものだ。

 

「ええとですね、今日から男子の大浴場使用が解禁です!」

「おお! そうなんですか!? いやー楽しみだな!」

「へぇ」

「へぇ」

「あれ? お前達テンション低いな」

 

山田先生の言葉に喜んだのは一夏だけだった。

それに対して俺とシャルルの反応は冷ややかだ。

 

「いや、俺怪我してるから今日入る気出ないし」

「僕、湯船に入るお国柄の人じゃないから別にいいや」

 

そんな感じで俺とシャルルは入浴を拒否する。

 

「そうですか、一応消灯時間までお風呂場の鍵を掛けないでおきますので、気が向いたら入りに来てくださいね」

 

そう言って山田先生は去っていった。

 

「さて、俺も疲れたし部屋に帰るかね。相変わらず体痛いし早く寝よう」

「そうか、なら俺は一人で大浴場を堪能してくるよ」

 

一夏が不満そうに言う、こいつ本当にホモにでもなってしまったのか?

 

「仕方ないだろ? 俺の都合も考えてくれ」

「そうだよ一夏、無理言っちゃ駄目だよ」

 

不満そうな一夏を他所に俺は自分の部屋まで帰る。今日は本当に疲れた、こんなに忙しい日は俺が初めてISを動かした日以来だ。

そんな事を考えながら特別室のドアを開ける。

 

「ただいま……」

「お帰り藤木君! 今日は大活躍だったね!」

「お陰様で体中が痛いよ、今日はもう寝るからあまりうるさくしないでね」

「うん、解った。おやすみ~」

「うん、おやすみ……」

 

そう言い、俺はベッドに潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

「うおおおおっ! やっぱり気持ち悪い!」

「うわっ、いきなり大声出さないでよ! びっくりしたー」

「ああ、ゴメン。やっぱり風呂入らないで寝ると気持ち悪いな。特に今日はIS乗ってすげえ汗掻いてるわけだし……今から風呂入ってくるわ」

「そう言えば今日は男子が大浴場使っていいって言われてたね、ここの大浴場は結構いい所だよ」

「へぇ~、そうなんだ。ちょっと期待しちゃうな。ということで、行ってきます」

「いってらっしゃい」

 

俺はいつも一夏の部屋に持っていくお風呂セットを持って大浴場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いーい湯ーだな♪ハハハン♪いーい湯だーな↓ハハハン♪」

 

ここは北国登別の湯ではないが本当にいい湯だった、デカイ湯船にジェットとバブルがついた湯船に檜風呂にサウナに全方位シャワーに打たせ湯までついている。まるでスーパー銭湯だ。

しかもこれを独り占めにしているわけだから俺の機嫌も上々だ。

もちろん湯船に入る前にちゃんと体は洗っておいた、体はすげえ痛かったけど……

ちなみに俺は固形石鹸派だ、あの匂いが俺を風呂に入っているって感じを更に加速させる。髪がバリバリになるのが嫌な為、洗髪にはシャンプーを使ってはいるが。

いやぁ、本当にいい風呂だ。こんなにいい風呂なら一夏の誘いを断るんじゃなかったな、いや一人でこの風呂を堪能するのも乙なものだ、これでもいいか。

 

そんな時、脱衣所の扉が開く音が聞こえた。

噂をすれば影、一夏の登場だろうか? 

しかし、現実は俺の予想を遥かに高く飛び超え空中で後方伸身宙返り4回ひねり、つまりシライをして俺の前に降り立った。いや本当は歩いてきたんだけど……

 

「えっ……紀……春?」

 

湯気の向こうから現れたのはシャルルだった。

俺は女の子と風呂場で遭遇するというF難度のラッキースケベを犯してしまったのである。

 

「あ? ……え? ……うえぇ!?」

 

俺はあまりの混乱に言葉にならない言葉を発していた。

 

「あんまりじろじろ見ないでよ……えっち」

「あ、ああすまん――あいでででっ!」

 

シャルルに言われて体の向きを変えるが、ちょっと捻るだけで俺の体は悲鳴を上げる。

 

「だっ、大丈夫!?」

 

シャルルは心配そうに俺に駆け寄り、湯船の中まで進入してくる。

 

「だっ……だいじょうぶだぁ」

 

俺はうろたえ過ぎて志村けんのモノマネみたいな返答をしてしまう、もちろん意図してやったわけではない。

 

「なにそれ、全然似てないよ。でもそんな事出来る元気があるなら大丈夫だね」

 

そう言いながらシャルルは湯船に浸かる、えっ? これって混浴じゃん!? 混浴なんて前世でお店のお姉さんとしかしたことないぞ!? あ、母さんはノーカンね。

 

「じゃ、そろそろ俺上がるから……ごゆっくりー」

 

正直、お店のお姉さんでもない人と混浴なんて耐えられない、主に息子が。

お店だと耐える必要もなかったんだが……

 

「もう少し……いいかな? 紀春に話しておきたいことがあるんだ」

「うぇっ!?」

 

シャルルの誘いに戸惑う、コイツ何考えてるのだろうか? ここは風呂場で俺達は全裸だ、話しておきたいことがあるにしてもこの状況は非常識すぎるだろう。常識的に考えて。

 

「明日ね、デュノア社がなくなるって三津村の秘書さんが教えてくれたんだ……」

 

シャルルは俺の心を無視するかの様に話を進める、これは腹を括るしかないのか……

ガンバレ、息子☆

 

「そうか。で、お前はどうするんだ?」

「だから、僕は三津村に入ることを決めたよ。このままじゃどうしようもないし、紀春だって居るしね」

「俺が居るからって……些か短略的すぎやしないか? これはお前の人生を決める選択なんだぞ? 誘った俺が言うのもなんだけどさ」

「……短絡的なんかじゃないよ、これでも考えて決めたことなんだけどな」

 

背中に何かが当たる、何かって何だろうとは考えはしない。考えればそれだけ息子に悪影響を及ぼすからだ。

……やっぱ無理、考えないようにすればするほど考えてしまう。そんなジレンマに俺は陥る。

 

「……」

「僕ね、紀春にすごく感謝してるんだ。こんな僕を助けようと頑張ってくれたし」

「別に頑張ったわけじゃないさ、俺がやったのは電話一本掛けたことぐらいだ」

「それでも、結果的に僕を助けてくれた。それだけで充分だよ」

 

なんでこんな話をこの状況でしなくてはならないんだろう? 俺はそんな事ばかり考える。

 

「そういえば、なんでまた風呂に? 別に入りたがっていたわけじゃないだろ?」

「一夏が推してきてね、あの風呂には絶対入るべきだって。一夏と一緒に入るわけじゃないから別にいいかなって思ってきたんだけど……」

「そこには思わぬ先客が居たということか」

「うん、そういうこと」

「……」

「……」

 

会話が続かない、気まずいのにも程があるのでそろそろ出ようか。

息子もよく耐えてくれたと思う、これ以上息子に負担を掛けるのは親としても忍びない。

 

「さっきさ、紀春は自分が居るからって三津村に入るのが短略的って言ってたけど」

 

シャルルの話が突如再開され、俺はまたしても風呂から出るタイミングを外してしまう。

息子よ、情け無い父ちゃんでゴメンな。もう少し頑張ってくれ。

 

「僕にとっては大きな意味を持つんだ……だって……僕は」

 

シャルルが急に口ごもる、耐えろ! 耐えるんだ! 息子よ!

しかし、どうしたことだろう。背中越しにシャルルの緊張感が伝わるような気がする。

 

「僕は……紀春のことが好きだから……」

「……えっ?」

 

……俺がシャルルに好意を向けられているだと!? 既に沸騰気味の頭が益々加熱させられる。

俺の頭脳ははもうぐちゃぐちゃになってしまい、自分でも何を考えているのか解らなくなってしまう。

そんな俺のことをシャルルはお構い無しと言った感じで、俺を後ろから抱きしめた。

 

「紀春が僕を助けてくれた時、本当に嬉しかった。紀春は僕のためにデュノア社だけじゃなくフランス政府だって相手にして戦おうとしてくれた。普通の人じゃこんなこと出来ない、でも紀春は違ったんだ」

「俺の力じゃない、あれは三津村が全部やったことだ」

「でも、秘書さんから聞いたよ。紀春が僕を守るためにでフランス政府を脅迫しようとか考えていたこと、それにタッグトーナメントで戦っていた紀春、格好よかった。それで僕が紀春を好きになったらおかしいかな?」

 

シャルルが言葉を続ける、俺の頭脳はマグマのように煮え滾っていた。

しかし、何故かそれとは裏腹に心が徐々に冷えていくのを感じていた。

 

人から好意を向けられるのは嬉しい、シャルルは可愛いもんだから尚更だ。

しかし、この状況が俺の心を冷ましていく。

なんで告白するのに裸で迫る必要があるんだよ、俺は今のシャルルに虎子さんの姿を重ねてしまっていた。

 

「シャルル……」

「シャルルじゃないよ、僕の本当の名前はシャルロット。それが、お母さんがくれた本当の名前」

「そうか、シャルロット。一つお願いがある」

 

冷え切った俺の心はこの状況を打開するのに、一つの外道な選択を提示した。

そして、熱くなりすぎてまったく機能していない頭脳はその選択を何も考えることなく受け入れた。

 

「俺に触れるな」

 

そう言い、俺はシャルロットを跳ね除ける。シャルロットの顔は驚愕に染まり、俺を見つめる。

そんなシャルロットを無視し、俺は湯船から脱出した。そして頭に乗っけたタオルは腰に装着され息子を守る。

 

「……えっ……僕……」

「ふざけんなよ、なんでこの状況でこんなこと言うんだよ」

「……違う、違うんだ」

「うるせえ黙れ。お前が俺を好きなのは解った、でもこんな状況で言われて嬉しいとでも思ったのかよ。以前似たような状況があった、でもその女はハニートラップだったんだよ! はっきり言おう、裸で迫られてそんな事言われても俺はお前のことを信用できない」

 

シャルロットが湯船の中で俯く、我ながら酷いことを言ったと思う。

多分俺はシャルロットのことが好きだったんだと思う、故にこの状況で告白されているのが不快だ。

恋愛経験がなさ過ぎて童貞を拗らせている、自分でもそう思う。でも、好意と性欲は俺の中で別物なのだ。そんな童貞理論をどうか理解してもらいたい。

 

「まあ、お前のことは嫌いじゃなかった。でも今の俺じゃどうやったって無理がある、だからさシャルロット、もう一回頑張ってほしい」

「えっ?」

 

そう言い、シャルロットは顔を上げる。その頬には水滴が付いている、それが涙か湯か、それは謎だ。

 

「俺はこれを忘れる、次はうまくやってくれよ。もちろん俺のことを諦めてくれても構わない、どうするかはお前に任せる」

「紀春……何を?」

 

俺はお風呂セットから固形石鹸を取り出し、床に放る。石鹸は濡れた床を滑るがそれを俺は右足で止める。

童貞を拗らせたクズが怖くて逃げ出す、これから行うのはそんなことだ。

 

「じゃあな、一夏を呼んできてくれ。お前じゃ俺を運べないだろう」

「のっ――」

 

シャルロットの言葉を聞く前に俺は石鹸を強く踏みつけ、滑った勢いで後頭部を床に打ち付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぁ? ここは……」

 

目の前にあるのは見知らぬ天井、そんな俺に反応したのか一夏が俺に声を掛ける。

 

「おお、気がついたのか紀春。大丈夫か?」

「一夏か? 俺は……」

「風呂場で倒れてる所をシャルルが見つけたんだ。床に石鹸が落ちてたからそれを踏んで滑ったんだろう」

「なんとも間抜けな……お恥ずかしい所を見せてしまったようだな」

「シャルルに礼を言っておけよ、あのまま気絶しっぱなしだと風邪をひいてたかもな」

「あれ? シャルルは風呂に入らないんじゃなかったのか?」

「俺が勧めたんだよ、まあ結果的には勧めてよかったよ」

「そうだな……」

 

俺は起き上がりその場に居たシャルルの方を向く。

 

「シャルル、ありがとう。助かったよ」

「う、うん。紀春が無事な様で僕も安心したよ」

 

そういうシャルルは笑顔を作る、しかし俺にはどこかシャルルが悲しげに見えたんだ。

 

「紀春、記憶とかは問題ない?」

「いや、やられてるな。風呂場に入ってからの記憶が全く無い」

「……そうなんだ」

「まあ、その位なら何の問題もないだろ」

「俺は記憶喪失すること事態に問題があると思うんだがな……」

「その問題は考えないようにしてるんだ、配慮してくれ」

 

俺は起き上がり、俺達は脱衣所を後にする。

 

「今日は踏んだり蹴ったりだよ、最悪な一日だよ全く」

「そうだな、タッグトーナメントも荒れたし、今日は大変だったな。な、シャルル」

「うん、そうだね……」

 

そんな会話をしながら俺達は部屋に帰っていった。




オリ主は童貞拗らせて超理論を語った末自爆しました、本当にクズです。チンカスです。ウンコマンです。
だって恋愛描写苦手なんだもん、仕方ないじゃないか。

以前、二十二話で終わるといったな。あれは嘘だ。
次回がこのタッグトーナメント編の最終回です。そして番外編も出来ました。

明日はクリスマスイブです、私はリア充のフリをしたいので明日明後日の投稿はお休みさせていただきます。

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