インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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番外編 大人たちのお仕事

「シャルル・デュノアって実は女なんですよ」

 

藤木君と電話している時、私はそんな事を言われた。

いやおかしいだろう、公式発表はされていないもののシャルル・デュノアはフランス政府お墨付きの男性IS操縦者で代表候補生だ。

いや、私の聞き間違えということもあるかもしれない。最近はデュノア社買収の仕事で忙しいし、藤木君に頼まれたラウラ・ボーデヴィッヒに関するレポートもまだ作成中だ。

ここのところ睡眠時間が明らかに足りていないのか、些細なミスが目立つようになってきた。

とにかく聞き間違えの可能性がある。もう一回聞いてみよう。

 

「えっ? もう一回言ってもらえるかな?」

「シャルル・デュノアは女です」

 

聞き間違えじゃなかった……いや、藤木君が勘違いしている可能性もある。

私はそれに一抹の望みを掛けた、シャルル・デュノアが本当に女ならば私の仕事は確実に増える。

それだけは避けたい。

 

「マジ?」

「うん、マジ。彼女の全裸を目撃してしまったんですよ」

 

マジだった……今日は久々に残業が八時までの予定で明日は休みを取れるはずだった。

有希子が東京まで来ているので、今日は久しぶりに二人で飲み明かす約束をしていた。

しかし、この男性IS操縦者様は私のささやかな願いを粉々に打ち砕いてくれたのだ。

残業延長、この四文字が私の心に重くのしかかる。

 

「藤木君、ちょっと電話切らせてもらえるかしら。急に仕事が入ったの」

 

私はとりあえずそう言い、電話を切り再度電話を掛ける。

数回のコール音の後彼女は電話に出た。

 

「ん? どうした怜子? 待ち合わせまであと二時間はあるだろ?」

 

電話の相手は有希子だ、群馬からはるばるやってきた友人に私は残酷な事実を告げた。

 

「ええ、悪いんだけど今日の飲み会中止ね」

「はぁ!? こっちはわざわざあのクソ田舎から出てきたっていうのにそりゃないぜ!」

「こっちだって飲み会行きたいわよ、でも急に仕事が入ったの」

「仕事って言ったって、お前の今の仕事は藤木の子守だろ?」

「人をベビーシッターみたいに言わないでくれるかしら? 一応他の仕事だってあるわよ」

「ああ、デュノア社買収のプロジェクトってお前も一枚噛んでたっけ」

「あなた、今何処に居るの? そういうことを外で話しちゃいけないって言われなかったかしら?」

「ごめんごめん、今東京駅だ。で急な仕事って何なんだ? 藤木がおっぱい欲しいって泣き出したのか?」

「あなた、ウチの広告塔に何言ってるの? いい加減にしないと重工の人事部に報告するわよ」

「すいませんでした、減給だけはご勘弁を」

 

有希子には人事部の話をするのが一番効果的だ、そんな事を私は入社以来の付き合いで学んだ。

 

「とにかく、私は飲み会には行けないわ。代わりに瀬戸君に頼んでおくからそれで我慢しなさい」

 

瀬戸君とは私と藤木君が一緒に群馬まで行った時同行した運転手だ、彼は警備課のエースであり私達の同期でありながら既に警備二課の主任の座が内定しているという超エリートだ。

警備二課は、幹部クラスの護衛を専門にしている部署で体力だけではなく高い教養も求められている、三津村商事の中では国際営業部、秘書課に次いでのエリートの集まりだ。

実際には国内営業部や人事部のトップクラスの人間の方が能力的に優れているとは言われているが、部署全体の能力を平均するとやはり際立つのがこの三つの部署だ。

 

話を戻そう、実は群馬に行った時、有希子と瀬戸君がいい雰囲気になっているところを目撃したことがある。

私としてはこれを機に二人に急接近してもらって、有希子にもう少し落ち着きを持ってもらいたいと思う。

彼は超エリートであるだけではなく、ハードボイルド小説から飛び出してきたようないい意味で渋い顔と、寡黙な性格から女子社員の人気も高い、わが社で非公式に行われているお婿さんにしたい男ランキングでトップ10に入っている強豪だ。

有希子もなんだかんだ言って、三津村重工のISテストパイロットでグループの中でもトップクラスのエリートだ。釣り合いは取れていると思う。

 

「ええっ!? 瀬戸だって!?」

「ええ、瀬戸君。あなた、以前いい感じになってたことあったじゃない」

「いい感じって……なんでお前がそれ知ってるんだよ……」

「いい感じだったことは否定しないのね、とにかく瀬戸君に今から頼むから」

「いや、その」

 

有希子の反論が終わる前に私は電話を切った。

次は瀬戸君に電話を掛ける。

 

瀬戸君は一回目のコールが止む前に電話に出た。

 

「楢崎さんですか? 何か御用でしょうか?」

「緊急の案件が入ったわ、お願いできるかしら?」

「解りました、で、内容は?」

「東京駅で待っている対象の護衛をお願いします。対象の名前は野村有希子、三津村重工開発部のテストパイロットよ」

「了解しました、では部下を向かわせます」

 

拙い、そんなことされたら私の計画が台無しだ。

 

「ちょ、ちょっと待ってもらえるかしら。この案件は瀬戸君一人にお願いしたいんだけど……」

「訳ありですね、では私が向かいます。時間の指定はありますか?」

 

彼がエリートで助かる、一流の護衛たるもの依頼の趣旨に興味など示さないものらしい。

 

「二十時ちょうどね、詳細な場所は彼女から聞いてもらえるかしら?」

「了解しました、では」

 

そう言い瀬戸君は電話を切った。

さて、私は新しいお仕事に専念しないと、今日は終電までに帰ることが出来るかしら?

私は直属の五人の部下、通称藤木係に命令を下しシャルル・デュノアが男性である確証を探るように命じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楯無さん、これじゃお話にならないわ。藤木君の頼みだからこうして会っているわけだけど、こんな条件じゃ到底無理ね」

「いやー、やっぱりそうですよねー」

 

ノリ君に仲介してもらった三津村との交渉は難航を極めていた。

私達が得ることの出来る情報そして人員と三津村が使える権力や人員や技術、それらの交換が交渉の中心になっているわけだが確かに私達に有利すぎる内容を提示してると思う。

しかし、これからが交渉の本番だ。それは相手の楢崎さんも承知のはずだろう。

 

「では、本格的な交渉を始めましょうか?」

 

楢崎さんが微笑む、その笑顔に何故か私は寒気を覚える。

この人、只者じゃない。気を抜いていると尻の毛まで毟り取られてしまいそうだ、生えてないけど!

 

「ええ、お願いしますよ。楢崎さん」

 

ああ、今日の交渉は長くなりそうだ。そして、今日は眠れるだろうか? そればかりが心配だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、不動奈緒はとても暇だった。

普段はIS学園から貸し出された開発室の一角で藤木君のデータを取ったり、やたら壊れるサタデーナイトスペシャルの修理をして過ごしているのだが最近とても暇なのだ。

私は三津村重工に入社後すぐにIS学園に派遣されここで藤木君のサポートとして働くよう命令された、藤木君も最初のうちはこの開発室にちょくちょく顔を出してはいたのだが、最近は他のことで忙しいのかこの開発室に来るのも週に一回くらいなものだ。しかもやることといえば生徒会室からお菓子を盗んできて二人で食べるといったこと位だ。

 

藤木君が空中ドリフトを完全にマスターした今、私はやることがほとんどなくなっていた。

しかし、仕事をほとんどしないでお給料がもらえる現状はとても美味しい。私はこの現実を満喫していた。

 

いつもの放課後、私は散歩がてらに整備室を訪れていた。

約半年前までは私もここで打鉄・改の製作に没頭していたもので懐かしさを感じると共に、一抹の寂しさを感じていた。

私と共に汗を流した同期もこの学園にはもう居ない、相変わらず此処に留まっている私はこのままで良いのだろうか? そんなことを感じる。

 

そんな時、一人の少女を見つける。彼女は両手でキーボードをせわしなく叩き続けている、モニターを見るとかなり複雑なプログラムを書いているらしいということが解る。

 

「キミ、ちょっといいかな?」

「え? 私ですか?」

「うん、こことここ。間違えてるんじゃいの?」

 

私はモニターを指差し、問題のあるコードを指摘する。

 

「あっ、確かに間違えてますね……」

「えーっと、もしかしてキミ一年生? 見たことない顔だけど」

 

私の特技の一つに一度覚えた顔と名前は絶対に忘れないというのがある。

彼女の顔は記憶に無いのでまだ覚えていない一年生だと思うのだが……

 

「え、はい。四組の更識簪です」

 

それが私と彼女の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、ここのエネルギーバイパスでなんやかんやあってだね」

「質問でーす、なんやかんやって何ですか?」

「なんやかんやは、なんやかんやです!」

「へー、そうなんだー」

 

更識簪さん、通称かんちゃんに色々教えていくうちに周りで整備している子が集まってきていつの間にか放課後の整備室で私が授業を行うようになってしまった。

この授業には通称が付けられており、不動塾と呼ばれるまでになってしまった。

私としても暇を潰せるし、後輩たちの成長を感じることができて結構なやりがいがある。もし三津村を退社することがあればIS学園で教師をやってみたいとも思う。いや、辞めるつもりはないけどね。三津村ってお給料いいし。

 

「おい不動、お前何やってるんだ?」

 

そんな時だ、恐怖の大魔王が表れたのは……

 

「これは織斑先生、何の用でしょうか?」

「質問しているのは私だ、お前は何をやっている」

「えっと……塾? いやいや、お金とか貰ってないですからね。あくまでこれはボランティアでして……」

 

織斑先生は苦手だ、在学中彼女の拳骨や出席簿を食らったのは一度や二度ではない。

藤木君もよくそのお世話になっており、よく愚痴をこぼしていた。

 

「そうか、しかしお前は三津村の人間だ。普段の行動にあまり制限を掛けるつもりはないが、そこの所は自覚しておけよ」

「はいはい、解ってますって。機密とかには触れるなってことでしょ?」

「私に対して随分大きな態度に出るようになったんだな」

「もう私はIS学園の生徒じゃないんで、一応三津村の一員として自覚を持って行動しろとの会社からのお達しでしてね。と言うことで今まで通り出席簿とかは勘弁してくださいよ、面倒なことになりますから」

「ふん、好きにしろ」

 

そう言い恐怖の大魔王は去って行った。

 

「……怖かったよ~かんちゃ~ん」

 

私は恐怖から解放され、かんちゃんに抱きつく。かんちゃんは私の最初の教え子で塾生の中で最も飲み込みが早い私のお気に入りだ。

 

「え、えーと。よしよし」

 

そんな感じで私の日常は続く、しかし平和な日々はそう長くは続かなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、お話になりませんね」

「しかし、我々にも面子と言うものがありまして」

「我々はその面子を守ってやろうと言っているのですよ! 間抜けな貴方達のね! それにデュノア社がMIEに変わった今フランスのIS産業を担っているのは我々だ、その事を貴方達は理解しているのか!?」

 

現在私はフランス・パリにあるブリエンヌ館で交渉を行っている、交渉の目的はシャルロット・デュノアの未来に関してだ、政府を騙したシャルロット嬢に対して何らかの制裁を行いたい政府と、それを防ぎたい我々三津村。

しかし、この役人どもは頭が固いようだった。

 

「しかし、このままデュノアに対してお咎めなしと言うのも些か問題が……」

「何か言ってくる奴には金でも握らせておけばいい、貴方達ならば出来るはずだが」

「いえ、そんな事を言い出したらキリがないですよ」

「それでもやるんだ、我々はイグニッション・プラン参入を目論んでいる、これに成功すれば貴方達の利益も莫大なものになるはずだ。悪いことだけではないはずだが」

「しかし、なぜそこまでしてシャルロット・デュノアを?」

「藤木紀春が望んだからですよ」

「藤木……もしかして……」

 

そう、私の息子は藤木紀春だ。

紀春、父さんが頑張ってお前の友達を守ってやるからな。

 

「とにかく、我々の望みが叶えられなければ三津村は他国からイグニッション・プラン参入を画策します。この意味よく考えてくださいよ」

 

そう言い、私は部屋から出る。もちろん現在フランス以外でイグニッション・プランに参入する金など三津村に出せるわけがない、今回のデュノア社買収や政府の根回しに金を使いすぎた。

今回の一連のプロジェクトは三津村の未来が掛かっている、これに失敗すれば首が飛ぶ人間は千や二千では済まないだろうしプロジェクトの中心に居る私に関しては物理的に首が飛ぶかもしれない。それほどの大事業なのだ。

 

部屋から出ると、部屋の前に居た護衛の瀬戸君が私に話しかける。

 

「終わりましたか?」

「まだまだ終わらないだろうね、息子も厄介なことを言い出したものだ。兎に角今日はホテルに帰ろう、待つのも戦略の内さ」

「解りました、しかし藤木さんがわざわざフランスまで来る必要があったのでしょうか?」

「あれ? 今日はやけに饒舌だね、瀬戸君」

「いえ、失礼しました……さっきのは忘れてください」

「いや、いいよ。フランスに行くのを私が志願したんだ」

「どういうことでしょう? 藤木さんは紀春君の父で三津村全体でも屈指のVIPです、狙われる可能性が非常に高いのに何故フランス行きに志願を?」

「あえて言うなら、息子にかっこいい所を見せたかった。かな?」

 

私と瀬戸君はブリエンヌ館の廊下を歩く、私の戦いはまだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああああ! 忙しいよおおおお!」

「不動さん、手伝いましょうか?」

「流石に手伝ってもらうのはまずいね、一応これって三津村の機密でもあるわけだし」

 

平和な日々はタッグトーナメント終了と共に崩れ去った、藤木君はタッグトーナメントでラウラ・ボーデヴィッヒが変化したVTシステムと戦い、打鉄・改を半壊させ、その武装のほとんどを破壊してくれたのである。

 

「ああ、レインメーカーが……これって私が作ったんじゃないのに、ここまで破壊されてたら最初から作る方が簡単だよ……」

「ええと、最初から作る方が簡単なら最初から作り直せばいいんじゃないんですか?」

「私、レインメーカーにはほとんどノータッチだったんだよね、コンセプトを考えたくらいしかこれには関わってないし……設計図ももう無いんだよね……」

「そうなんですか……だったら諦めるしか……」

 

諦める? そうか! 諦めればいいんだ!

 

「そうだ! 諦めよう! もうこの際壊れた武装は全部汎用武装にチェンジだ!」

「でもそれって打鉄・改の特性の攻撃力を大きく損なうことになりませんか?」

「大丈夫! 藤木君お気に入りの近接武装なら簡単に作れるから、汎用武装に替えるのはサタデーナイトスペシャルとレインメーカーだけでいいや! ヒロイズムは壊れてないし!」

「不動さんがそう言うのなら私は別にいいんですけど……」

「かんちゃん! 悪いんだけどIS武装系のメーカーのカタログ取り寄せてくれないかな? 私打鉄・改の修理で忙しいし」

「まあ、その位ならやってもいいですけど……」

 

私は打鉄・改の修理に取りかかる、私の仕事はまだまだ終わりそうない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やらかしてくれたわね、藤木君……」

「誠に、誠に申し訳ありませんでした!」

 

例のタッグトーナメント終了二日後、俺は楢崎さんに面会した。俺は楢崎さんに会った途端、高速土下座をして謝った。

タッグトーナメントの俺は本当に酷かった、ラウラからフレンドリーファイアを受けた後俺は怒りのままにラウラを攻撃し、最終的にはVTシステムと戦いあんな感じだ。

VTシステムとの戦いで有耶無耶になっていると思っていたが、そうでもなかったようだ。

 

そして有耶無耶にしてくれなかったのはIS学園も同様だった。

タッグトーナメントの翌日、つまり昨日俺はラウラと兄弟盃を交わした後織斑先生に生徒指導室に呼び出され、二時間にも及ぶお説教を食らった後反省文原稿用紙十枚を書くように言われた。

もちろんこの反省文、本当の事を書くことなど出来ない。そんなことすれば俺は即刻黄色い救急車に乗せられ鉄格子の付いた病院に連れて行かれるだろう。

そして全ての責任をラウラに押し付けるような反省文を書くことも出来ない、だってニコポされたんだもん。

 

「謝るのは私じゃないでしょう? 日本政府とドイツ政府から抗議が来てるわよ」

「日本だけじゃなくドイツもっすか、あんなことやらかしておきながら大きく出たもんだ」

「それはそれ、これはこれよ。あなたがドイツ代表候補生に手を出したのは周知の事実よ、一応関係者各位に金を握らせて事態の沈静化を図っているけど今回の一件で各国からの三津村のイメージはまた悪くなったわ。私達は利益を求める集団よ、貴方のために必要以上にお金を使うようなことがあれば貴方をクビにすることもあるかもしれないわ、貴方に幾らのお金が掛かってるのか解ってるの?」

 

クビはマズイ、俺の両親を守っているのは三津村で俺が三津村からクビにされるようなことがあれば三津村は俺の両親を守る義理もなくなってしまう。

しかし、俺に幾らの金が掛かっているのだろう? 俺が三津村に求めた金は契約金と年俸くらいだが……

 

「ええと、二億?」

 

契約金+年俸+両親の護衛代+諸々で計算してみたがこれくらいじゃないだろうか?

 

「はぁ!? 貴方馬鹿じゃないの!? 少なくともその十倍は掛かっているわよ! 新専用機の開発費用まで加えるとその二千倍は軽く超えるわよ!」

「高っ! ISってそんなに高いんですか!?」

「安い量産機でも二百億は超えるのよ、専用機を開発から始めるんだからもっとするに決まっているでしょう? これでもラファール・リヴァイヴをパクったお陰で結構開発コストが下がっているんだからね」

 

新型の開発に最低四千億か……そりゃデュノア社も傾くわけだ。

しかし、たまに横綱相撲気分で模擬戦している量産機ですら二百億オーバーか、もちろん普段戦っている専用機はそれ以上のお値段だろう、今後模擬戦するのが怖くなってくるな。

そして、俺にも既に二十億も掛かっているのも驚きだ、もっと自分を大事にしよう。

 

「とにかく! 今後あんな真似はしないこと! あと以前撮影したCMあるわよね、あのギャラ全部没収だから」

 

実は、休日に時々俺は三津村電機と三津村自動車のCMを撮影をしていた。拘束時間半日で一千万という破格のギャラでウハウハだったのだが、こんなことになるとは。

 

「はぁ!? 確かあのCM二本で二千万のギャラですよ! それ全部取るんですが!?」

「今回の一件で使ったお金に比べれば微々たるものよ、それとも会社辞める?」

 

つまり楢崎さんはこれで納得しろと言ってるようだ、納得しなければ俺は会社をクビになり両親は護衛を外されすぐさまテロリストに拉致されることとなるだろう。

そう言われれば俺に逆らうことは出来ない。

 

「……解りました、納得しますよ。クビをつらつかされれば俺に逆らう術はありませんからね」

「そう、解ればいいのよ」

 

そう言う楢崎さんは悪魔の笑みで俺に微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チキショー!!」

 

私は怒りのあまり眺めていたモニターを殴る、しかしその結果は私の拳を痛めただけだった。

 

「ううっ、なんなんだよあのクソガキ。最後はいっくんが決めたけど、それ以外のおいしいところ全部持ってきやがって……」

 

モニターにはあのクソガキ、藤木紀春がVTシステムにジャーマンスープレックスホールドを仕掛けている場面で止まっていた。

 

「かくなる上は、束さん直々にあのクソガキを成敗しなければならないようだね……」

 

次の計画は既に考えてある、それに少し手を加えればあのクソガキを捻り潰すことが出来るはずだ。

 

「ふふふっ、待ってろよクソガキ。いつだって正義は束さんの下にあることを思い知らせてやる。それに箒ちゃんを襲ったお仕置きもしないといけないしね」

 

私は笑いながらキーボードを叩く、そんな時だった。愛しの妹から電話が掛かってきたのは……




これからまた書き溜め期間に入ります。
年末年始は尋常じゃないほど忙しいので次回投稿は一月以内としか言えません。

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