インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
カズトさんが言っていた『時期』がついに来た。
「緊急速報です!! たった今防衛庁から入ってきた情報によりますと、日本近辺及び近海のミサイル基地から突如として多数のミサイルが発射され、その全てが東京に向かっているとのことです!!」
テレビの中のアナウンサーいつも見る様子と明らかに焦った様子で告げる。
隣でテレビを見ている母さんの顔が青ざめる。父さんは今家には居ない、父さんの会社は今まさにミサイルが飛んできている東京にあり、大混乱の渦中にいるのだろう。
「続報です! ミサイル発射を受け防衛庁は陸海空全ての自衛隊にスクランブルを発令、在日米軍も政府の要請によりスクランブルが発令される模様です。さらに警察、消防、海上保安庁にも緊急配備が敷かれる模様です」
「また続報です! 自衛隊の弾道計算によると、ミサイルは国会に向かっているとのことです」
国会だと!? ますます父さんがヤバイ!! 父さんの仕事場である三津村商事本社ビルは東京駅の目の前に在り、国会議事堂とは目と鼻の先だ。カチグミサラリマンである父さんは本社勤務であり、ミサイルが国会に着弾すれば巻き添えで確実に本社ビルごと木っ端微塵にされてしまうだろう。
そんなことを考えていると、母さんが突然倒れ伏す。衝撃的な出来事の連続で気を失ってるようだ。幸いソファーに座っていたため、体勢を整えそのまま眠らせておく。呼吸もしているし、苦しそうな様子もない。多分大丈夫だ。
倒れてしまった母さんを見たためか、逆に俺は冷静になってしまう。『時期』が来た。今の状況で一番可能性がありそうな作品はあれだ。
「北斗の拳か」
このまま世界は大混乱に陥り、世界は核の炎に包まれるのか。そして俺は世紀末救世主の仲間の一人になり、荒廃した世界でモヒカンたちを虐殺する日々を送るのか。
正直、まだネオサイタマの方がよかった。あっちはいくらかの秩序と社会がある。
もう決まってしまったものは仕方が無い、残念だが父さんのことは諦めよう。
そして唯一の家族である母さんを守るため、南斗聖拳を覚えよう。戦いの途中で死んでしまうか元斗皇拳のファルコに殺されてしまいそうな気がするが、今はそれ所じゃない。多少の死亡フラグは持ち前のオリ主パワーで何とかしよう。オリ主パワーがどんな物なのかは全く解らないが。
しかし、南斗聖拳はどこで教えてもらえるんだろう? 月謝は足りるだろうか? 父さんの死亡がほぼ確定したことだし、今後は節約して暮らさないとならないな。
「只今、東京湾上空をヘリで飛んでおります!!」
テレビの画面が切り替わる。
おいおい、この人たちは報道に命を掛けすぎだろ。と心の中でツッコむ。
どうやら東京滅亡の瞬間を生中継でお茶の間に届けてくれるらしい。かのピーター・マクドナルドに勝るとも劣らないマスコミ魂だ。自分達の下にミサイル郡が殺到しているのにも関わらず、そこから逃げることなく自分の職務に殉じている。まぁ、どこにも逃げる場所なんて無いんだろうけど。
「ミッ、ミサイルです!! ミサイルが見えて来ました!!」
よほどいい望遠レンズを積んでるのだろうか、こちらに飛んでくるミサイルをカメラが映し出す。
ああ北斗の拳が始まるんだなと思いながらテレビを見る。次の瞬間、空に一筋の線が引かれ更に一瞬の後ミサイルが爆発四散した。
「「 な、なんだってー!」」
俺とヘリに乗っているレポーターの声は完全にシンクロしていた。
線はうねりながらミサイルの間を縫うように走る。その後を追うようにきたねえ花火が追随していく。
どうやらミサイルの第一波は終わったようで、線は止まった。
線の先をカメラが捉える。そこには白い人らしき物があった。人の形をしたものがメカメカしい鎧を着込んでいる。背中にはこれまたメカメカしい羽が浮かんでおり、天使を想像させる。そして何より目立つドデカイ剣、モンスターをハンティングするのにはちょうど良さそうだが普通に振り回すにはいささか大きすぎるんじゃ無いだろうか。そして顔はヘルメットのようなもので隠れている。
あっ、こいつおっぱいがある。女だ。なら人間が乗ってるのかな?
「機械天使……アクエリオンか!?」
違う。
大きさから見て明らかに違う。デザインも違う。
しかし、確かに機械の天使のような見た目である。アクエリオン(仮)と呼ぼう。
アクエリオン(仮)がまた動き出す。目にも止まらぬ速さできたねえ花火が量産される。
きたねえ花火が作られる度に俺は興奮し、「ワザマエ!」とか「タツジン!」とか叫ぶ。
どのくらい時が経っただろうか、興奮しっぱなしの俺には短く感じられた。その間にアクエリオン(仮)により沢山のミサイルがきたねえ花火に作り変えられた。そしてついにミサイルは打ち止めになったようだ。
かっこいい、ただただそう思う。そして俺は確信する。
これだ。このアクエリオン(仮)はこれからこの世界に大きく関わってくる。俺もアクエリオン(仮)に乗ってバトルできるかと思うと今からワクワクする。これからは益々勉強と鍛錬に励もう、そしていつかアクエリオン(仮)に乗って無双しよう。誰相手に無双するのかって? 知るかそんなこと。
テレビは未だアクエリオン(仮)を映している。そこにまたミサイルが飛んできた。
あれ?なんでだ?ミサイルは打ち止めじゃなかったのか?
今度は自衛隊や米軍の戦闘機からミサイルが発射される。飛んできたミサイルに対しアクエリオン(仮)は剣を一振りし、きたねえ花火に作り変える。
なんて奴らだ! アクエリオン(仮)はみんなを助けてくれた正義のヒーローなのに! いや、あいつ女だからヒロインか? まあそんなことはどうでもいい。
アクエリオン(仮)はミサイルを切り伏せ機銃の弾を回避し戦闘機に襲い掛かる。戦闘機は爆発炎上し墜落していく。
「インガオホー!」
俺は叫ぶ、そしてアクエリオン(仮)は戦闘機を無双していく。しかし自衛隊や米軍の偉い人は何考えているのだ。
アクエリオン(仮)が剣の一振りで撃墜していく戦闘機一機にどれだけの税金が使われているのか解らないのだろうか。そして、税金を払うのが誰だか解っているのだろうか、少なくとも俺ではない。
ああ、戦闘機を粗方撃墜し終わったからだろうか、今度は海上にある船を襲いだした。船も応戦するが機動力が違う。戦いの基本がスピードにある事ぐらいは知らないのか、某挟まっちまった戦闘機乗りもそう言ってたぞ。
しかし、ここまで徹底的に甚振っている様を見ているとアクエリオン(仮)が正義のヒーローに見えなくなってきた。
まるでニンジャスレイヤー=サンだ。敵になったら皆殺し、周囲のことはお構いなし、そんな感じにも見えてくる。
アクエリオン(仮)の剣が船を一刀両断にする。
あれ、明らかに長さが足りて無いのになんで一刀両断できるんだ?
そんな俺の疑問を他所にアクエリオン(仮)は次々に船を切り裂いていく。ついに東京湾上空に飛んでいる物体は、アクエリオン(仮)と報道のヘリだけになった。
アクエリオン(仮)はヘリを一瞥すると沈む夕日に向かって飛び去った。
ここに機械天使によるヒーローショーは幕を閉じた。
そんなこんなで転生オリ主藤木紀春6歳の夏は過ぎていっていかなかった。
ダイニングに備え付けてある電話が鳴り出した。
カレーを作る手を止め、電話に駆け寄る。ナンバーディスプレイを見ると父さんからだ。俺は受話器を取る。
「もしもし、父さん?どうしたの?」
「紀春か? 母さん居るか?」
「母さん? 居るけど、今寝ちゃってるんだ」
「寝てる? 母さんに何かあったのか?」
「テレビ見てたらびっくりしすぎて気絶しちゃったみたい」
「ああ、あんな事があればそうなるのも無理ないか」
「それよりも父さんは無事だったんだね? 国会議事堂にミサイルが飛んでくるって聞いたから、父さんが死んじゃうんじゃないかって心配したよ」
「死んじゃうって、大袈裟だなあ」
「いやいや、大袈裟じゃないよ。ミサイルが落ちてたら、父さんはミサイルで爆死してたか瓦礫に潰されて圧死してたんじゃない?」
「やけに表現が生々しいな……」
「で、何? 無事の確認だけ?」
「最近お前冷たくない?」
「ソンナコトナイヨー」
「まぁ、それはいい。いまこっちは大混乱でな」
「そうだろうね」
「ああ、それで今日は帰れそうにないんだ」
「いわゆる帰宅困難者ってやつだね」
「ああ、その通りだ。と言うことで今日は帰れそうに無いから……紀春、母さんを頼むぞ」
「解ったよ、父さんも気をつけてね」
「解った。明日には必ず帰ってくる」
「はーい、じゃあまた明日ねー」
「ああ、また明日」
受話器を戻す。するとリビングから物音が聞こえる。母さんが起きたようだ。
慌ててリビングに向かう。
「母さん、大丈夫?」
「あれ?私、なんで寝て――ッ! ノリ君お父さんは!?」
「大丈夫、さっき電話があったよ。それにミサイルは落ちてこなかったよ。」
少々わざとらしく笑顔を作る、母さんは安堵してくれたようだ。
「父さん今日帰って来れないって。帰宅困難者って奴だってさ。」
「そう……良かった」
「父さんに電話しておきなよ。やっぱり不安なんでしょ?」
「ええ、そうするわ」
「電話が終わったら晩御飯を食べよう、いまカレーを作ってるから」
「えっ、作ってくれたの!?」
前世での俺の得意料理はカレーだ。ありきたりだと思われるかも知れないが、振舞ってきた人々のほとんどに絶賛を受けてきた。多少のお世辞がも含まれているとは思うが……
しかし自分で食べて凄く旨いと思う。こんなことがあった今日だからこそ旨いものを食べて明日を迎えよう。
キッチンに戻ってカレー作りを再開する。リビングからは母さんの涙声が聞こえる。
愛だね、愛。
その後電話を終えた母さんとカレーライスを食べる。母さんも絶賛してくれた。
こんな日でも俺は夜九時に寝る。そろそろ九時以降にも起きていたいが、両親は許してくれない。
ベットに潜り込むとすぐに眠くなる。子供の体って便利だ。
そんなこんなで転生オリ主藤木紀春6歳の夏はまだ過ぎていっていかなかった。
「インフィニット・ストラトスか……」
翌朝見たテレビのニュースで多くのことが解った。
あのアクエリオン(仮)はインフィニット・ストラトスというものであり白騎士という名前だそうだ。
「インフィニット・ストラトスねぇ……」
インフィニット・ストラトスは昨日のミサイル撃墜事件以前に発表されていたようだが、全く注目されていなかったが、昨日見事再デビューし世界中に大いに認知された。
「インフィニット・ストラトスだったのか……」
そう、俺が転生した世界はインフィニット・ストラトスの世界だったのだ。
「インフィニット・ストラトス……知らないなぁ」
いや、一つ知っていることがある。主人公の声がバナージであること、それは知っている。
逆に言うと主人公の名前も知らない。
「インフィニット・ストラトスかぁ……どんな話なんだろう。」
そんなこんなで転生オリ主藤木紀春6歳の夏は今度こそ過ぎていった。
少し長い文章が書けるようになりました。
これからもがんばります。