インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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第28話 Sky High

「ヒャッホオオオオオオオゥ!」

「紀春さん! ちょっと早すぎますわよ!」

「早い? 当たり前さ! それにコイツの全力はこんなもんじゃないさ!」

「まだ余力を!? わたくしはこれで全速力だというのに……」

 

翌日、オレとセシリアさんは海の上を飛行していた。

今日はISの各種装備試験運用の日、俺も三津村から送られてきた高機動用パッケージを装備し試験飛行を行っていた。

セシリアさんも高機動用パッケージを持っているため俺と同じく飛行訓錬を行ってるというわけだ。

 

水面スレスレを水しぶきを上げて飛ぶ俺とセシリアさん、俺の気分は上々だ。

最初コイツの見た目には不安を感じていたが打鉄・改と違ってPICもよく効く、流石に超音速までスピードを上げるとロールでの旋回が必要になるがそれでもこのスピードは魅力的だ。

 

俺達は水面から急上昇し、天高く舞い上がる。

 

「ああ、いい感じだ。このまま宇宙まで飛んでいけそうな気がする」

「流石に宇宙まで行くのは無茶じゃないですか?」

「言葉の綾だよ、でも成層圏まで行って地球の丸さを感じることぐらいは出来そうだ」

「紀春さんのパッケージの最高速度ってどの位ですの?」

「マッハ4。ちなみに巡航速度はマッハ0.9らしい」

「三津村って、変態企業でしたのね……」

「巡航速度は普通のと変わらないらしいけどね」

 

最高速度マッハ4は打鉄・改の三倍以上の速度だ、速さの桁は一緒だが俺の爽快感は桁違いだ。

そんな俺は笑いながら空を飛ぶ、俺は急加速を掛けセシリアさんを引き離していった。

 

セシリアさんのISが俺を追う、追われる俺のISは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紀春、大丈夫なのか?」

「いつまでも部屋に篭ってるわけにもいかないだろ、それに今日は三津村から装備が届いてるはずだしな。流石にそれを無視したら怒られるだろうし」

 

昨日は色々な事があって大丈夫とは言い難かった、しかしそれでも俺は大丈夫な振りをして一夏に返す。無職兎に殺されかけたし、シャルロットから特大のラッキースケベを受けたりしたが……

ちなみに部屋に一夏達が来た後、シャルロットは部屋に帰らせた。しばらくすると一夏も俺の部屋に帰ってきた。

 

俺は三津村から今日使う追加装備を受け取るために海岸へとやってきた、海岸には様々な大きさのコンテナが置いてある。

その中に一際デカイコンテナが置いてあった、しかもそれには三津村重工のロゴマークが描かれている。非常に嫌な予感がする。

不動さんが臨海学校に行く前に言っていた、格好いいパッケージを用意しておいたと。

格好いいって言っても何でも限度がある、主に大きさとか……

 

コンテナの前に到着するとISスーツをきたシャルロットが待っていた。

 

「これ、もしかして俺の?」

「うん、紀春のだよ。僕のはこっち」

 

俺のコンテナの隣にも三津村重工のロゴマークが描かれたコンテナがあるがこちらは他のと比べても大差ない大きさだった。

 

「僕のはラファール・リヴァイヴ用の砲戦パッケージだね。紀春のは高機動用パッケージって聞いてたけど、ここまで大きいのは予想外だよ」

「高機動用? 打鉄・改でも充分高機動だろうにまだ速さが足りないのか」

 

シャルロットのラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡも様々な射撃系武装が積んであるし、俺の打鉄・改だって充分に速い。

しかし三津村的にはまだお気に召さないとでも言うのだろうか? 贅沢な話だと思う。

 

「まあ、ここで管巻いてても仕方ない。俺の装備とご対面しましょうか」

 

俺はそう言ってコンテナの扉を開けた。どんな格好いいパッケージなのだろうか?

 

「マジかよ……」

 

格好いい、マジで格好良かった。格好いいんだけどこれは……

俺もコイツは好きだ、前世や現世でもゲームの中で非常にお世話になっていた機体が目の前にあった。

 

「何でF-15なんだよ……」

 

コンテナの中には名機F-15が一機収められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと、パッケージ名『ストーム・ブレイカー』。高機動戦用パッケージだね。わぁ、イメージインターフェースで直感的な操縦だって! 紀春のISもこれで第三世代の仲間入りだね!」

「へぇ、そうなんだ」

 

ストーム・ブレイカーと共にコンテナに入っている説明書をシャルロットが読む。正直あまり嬉しくない、言い方は悪いが戦闘機なんて今じゃ過去の遺物だ。

ISが登場してからというもの今まで戦場の主役だった戦闘機や戦車は数を減らし戦いの舞台の隅に追いやられている。ISの数は現在467機、数が少ないのでそれらの居場所は完全になくなったわけではないのだが、それでもISには絶対に勝てない。

三津村はこれで俺に何をさせようというのか、戦闘機の復権でも狙っているのだろうか?

 

「はーい、みなさん。試験用装備の確認は済みましたか? 装備の装着後に指示されたテストメニューに沿って行動してくださいね」

 

山田先生が俺達に声を掛ける、織斑先生は何処に行ったんだろう? 引き篭もっていた俺が言うのは何だが俺が殺されかけて以来全く姿を見ていない。

 

「あれ? 織斑先生はどうしたんです?」

「織斑先生は……徹夜で書類整理をしてまして、今は寝ているはずです」

 

明らかに無職兎と俺の一悶着の事後処理だろう、でも俺は悪くないはずだ。悪いのは全てあの無職兎だ。

 

「へぇ、そうですか。ええと、俺はセシリアさんと一緒に試験飛行か。イメージインタフェースってどう使えばいいのか解らないし教えてもらう」

「僕は鈴とラウラと一緒に射撃武装の試験だね、そう言えば一夏は?」

「俺か? 俺は……何も届いてないからな……どうすればいいんだろう?」

「そう言えば、白式の拡張領域って埋まってたんだっけか。打鉄と一緒に剣でも振ってればいいんじゃねーの?」

「そうするしかないのか……」

「悪いな一夏、俺のパッケージ一人乗りだからお前は留守番していてくれ」

 

実際は二人乗りも出来るらしい、そう説明書に書いてあった。

 

「スネ夫みたいなこと言うなよ……」

 

というわけで俺はそんな感じでセシリアさんと空へ飛び立ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、空はいいもんですな。嫌なことも全て忘れられる」

「ええ、わたくしもそう思いますわ。しかしそろそろ試験終了時間の10時ですわね、一度海岸まで戻りましょうか」

「ああ、もうそんな時間か。楽しくて時間のことなんて忘れてたよ」

 

そんな会話をしながら俺達は海岸を目指す、ちなみに成層圏までは一人で行ってきた。

地球と宇宙の両方を見ることができ、結構感動的な光景だった。彼女ができたら二人で行ってみたいものだ、あそこで口説いたらどんな女でもイチコロな気がする。

 

そんな俺達が海岸まであと10キロという所まで差し掛かった時、ハイパーセンサーの視界から爆発が起きるのを確認した。

爆発したのは海岸の岩場付近、射撃試験はあそこで行われているはずじゃなかったんだが。

 

「爆発? セシリアさん、射撃試験場はあの岩場じゃなかったよね?」

「ええ、そことは逆側のはずですわ。私達にはそう知らされていますし」

 

俺達飛行試験組は流れ弾に当たらないよう射撃試験組とは真反対の空域で飛行していた、つまりあそこで爆発が起こるなんてありえないのだ。

 

「ちょっと待て……何だあのISは?」

 

爆発地点に視界をズームさせると見たこともない赤いISが居た、しかもそれに乗ってるのは……

 

「箒さん!?」

 

セシリアさんが俺の思っていたことを口にする、赤いISに乗っていたのは篠ノ之さんだった。

 

「ちょっと嫌な予感がするな……セシリアさん、急ごう」

「了解しました」

 

俺達は全速力で海岸を目指す、全速力といってもセシリアさんの全速力でだけどね。

 

嫌な予感は止むことはない、突如現れた新しいIS、しかも乗ってるのは篠ノ之さん。

多分あそこには奴が居る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナイスだね! 箒ちゃん!」

「ええ、ありがとうございます」

 

俺と箒、いくらかのクラスメイト達が山田先生の監督の下で岩場で剣を振るっていると空から束さんがやってきた。表現的におかしいところがあるとは思うが実際そうなのだから仕方が無い。

そんな騒ぎを聞きつけて鈴やシャルロット、ラウラもこの場にやってきた。

束さんは箒に専用機を作ってきたと言った途端、空から菱形の物体が落ちてくる。

そしてその中から出てくる赤いIS。

 

山田先生が色々言いたそうな顔をしているのだが、束さんはそれを完全に無視し箒にISを装備させ起動させる。

ものの数秒でフィッティングを済ませ、現在は試運転ということで箒が飛行したり、束さんの放つミサイルを撃墜したりしていた。

 

次の瞬間、俺達の頭上を大きな黒い影が通り過ぎる。見上げると岩場の崖の上にF-15とセシリアが居た。

 

「おい、どういうことだ? 何でここにコイツが居る?」

 

崖の上から跳び降りて華麗に着地を決めた紀春の声は背筋が凍るくらい冷たいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、どういうことだ? 何でここにコイツが居る?」

 

やはり嫌な予感は当たっていた、やっぱり無職兎が居た。

 

「そうだ、箒ちゃん。おなか空かない? 束さんが愛を込めて箒ちゃんにおにぎりを作ってきたんだよ!」

 

無職兎は俺を無視し、どこからともなくおにぎりを取り出す。

 

「いや、姉さん……」

 

篠ノ之さんにしてみれば全く訳の解らない状況だろう。

知り合っても居ないはずの俺と無職兎が対面した途端俺が激怒しているわけなのだから。

 

「はい、味わって食べてね。そうだ、いっくんのも用意したんだよ」

 

そう言い無職兎は篠ノ之さんと一夏におにぎりを渡す。

 

「おい、クソガキ。お前の分も用意してやったから食べろよ」

 

今度は俺におにぎりを放り投げる、受け取ったおにぎりは何の変哲も無い普通のおにぎりだが絶対に食べたらマズイ物が入ってるに違いない。

おにぎりを眺めていると内部から赤い光が点滅している、食べたらマズイもの所か食べられない具材が入ってるようだ。

 

俺はオーバースローのフォームでおにぎりを天高く放り投げる、放り投げられたおにぎりは空中で爆発した。やはり無職兎は俺を殺したいようだ。

 

「死ね」

 

俺はガルムを展開し無職兎にフルオートで弾薬が尽きるまで放つ、俺は二度も殺されかけているのでこれくらいは正当防衛の範疇だろう。まぁ罪になるようなことであっても全く構わないわけだが……

 

無職兎が煙に包まれる、煙が晴れたとき無職兎は余裕そうな表情でこちらを見ていた。

 

「そんなんじゃ私には傷一つ付けられないよ」

「そうか、篠ノ之さん。危ないから下がってた方がいいよ」

 

ISを装備している篠ノ之さんが別に危ないというわけではないのだが、一応無職兎の後ろに居たので警告しておく。

俺は左手にバズーカを取り出し、もう一度無職兎に向かって撃つ。しかし無職兎の前に篠ノ之さんが立ちはだかりバズーカの砲弾を切り裂いた。

 

「姉さんがやったことは褒められたことではないだろう、しかしこんなのでも一応自分の姉なのでな」

「わー! 箒ちゃん格好いい!」

 

無職兎は篠ノ之さんの後ろで目を輝かせて拍手をしている、その時ついに織斑先生がやってきた。

 

「お前達! 何をしている!?」

 

織斑先生の目に映るのは、ISを装備して対峙している俺と篠ノ之さん。そしてその後ろで拍手している無職兎。

ぱっと見意味不明な状況だろう。

 

「あっ、ちーちゃん。このクソガキ酷いんだよ! いきなり束さんに銃撃ってくるんだもん!」

「どうせお前が何かしたのだろう、それに藤木はお前に殺されかけたと言っていたしな」

「ついさっきもう一度殺されかけましたよ。織斑先生、こいつ殺していいですよね? っていうか友達なら責任もって殺しておいてくれません?」

「もう一度殺されかけた? 藤木、どういうことだ?」

 

篠ノ之さんが疑問を口にする、俺が最初に殺されかけたことは教員以外では一夏とセシリアさんとシャルロットしか知らない。

 

「もしかして兄が昨日海岸に来なかったのは」

「殺されかけた直後に遊んでいられるほど図太くはねーよ、俺は」

「やはり、あの爆発はそういうことだったのか……」

 

視線が無職兎に集中する、たぶんこの場に無職兎の味方をするものは居なくなったはずだろう。

 

「姉さん、どういうことだ。何故藤木を狙う?」

「箒ちゃん、邪魔なクソガキを始末しようとして何が悪いのさ」

 

そう、一番の疑問は何故無職兎が俺を邪魔だと思うかということだ。この疑問が解消されない限り俺に安寧はない。

 

「束、とにかくお前を拘束させてもらう。藤木は問題児だが、お前がそういう態度な以上危険な存在であることは間違いない」

「あ、別に拘束しなくてもいいですよ。どうせその無職ならすぐに逃げ出しそうですし、それに俺もう帰りますんで」

「帰る? 何処にだ?」

「学園にですよ、こんな所に居たら命が幾つあっても足りやしない」

 

俺は大きくジャンプし、ストーム・ブレイカーの上へ降り立つ。

 

「おい、逃げるのかクソガキ」

「ああ、逃げるんだよ。それともアレか? もう次の俺を殺す算段でも用意してあるのか? ってか俺に喋りかけんな、無職が移る。ってか死ね」

 

そう言い俺はストーム・ブレイカーを起動させ、その背中に乗って空へ飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、僕も帰らせてもらいます。あの状態の紀春を一人きりにさせるのは危ない気がしますし……」

 

そう言い、シャルロットはお辞儀をした後、紀春の後を追って空へ飛んで行った。

その後この場は少しの間沈黙にに包まれるが、それを千冬姉が破る。

 

「兎に角、束。お前が危険な存在であるのは変わりない、それに以前の殺人未遂の件で警察を呼んである。おとなしくお縄につけ」

「えー、ちーちゃんだけは最後まで束さんの味方だと思ってたのに……でもそれなら仕方ないね。私も忙しいからここで帰らせてもらうね。シュワッチ!」

 

そう言った束さんはウルトラマンのような姿勢でどこかへ飛んで行った。


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