インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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今回短め


第35話 美しきフランスの人間破壊

「そうそう、出待ちのファンが居るから対応よろしくね」

 

メガフロートから飛行機に乗りフランスへと到着寸前に楢崎さんがそう言った。

 

「はい?」

「君は世界的な有名人なの、当然でしょう? それにテレビで到着の様子も撮影されるから精々格好つけなさいよ」

「誰がそんな情報流したんですか……」

「君の公式ツイッターからよ」

 

公式ツイッター? そんなことやった覚えは無い、前世では昔流行ったmixiとかはやっていたが結局ソーシャル疲れを起こしてしまい半年くらいで退会してしまった。それ以来SNSの類は一切やってはいないのだが……

 

「公式ツイッター? 俺そんなのやってませんよ」

「三津村が勝手にやってるわ、君にツイッターなんてやらせたら『う○こ』『ち○こ』『ま○こ』とか書くでしょうから」

「マジかよ……」

 

俺は俺の知らないうちに世界中に呟きを発しているらしい、はっきり言って迷惑以外の何物でもないが三津村に逆らえる訳がないので何も言えない。

 

「もちろん認証マークも付いてるわ」

「へぇ、そりゃすごい」

 

まあ、世界に名を轟かせている以上この手のものが付いて回るのは仕方ない。代表候補生や国家代表は半分芸能人みたいなもんだしそういうしがらみからは逃れられないのだろう。

身近に居る代表候補生の事を思う、セシリアさんに鈴にラウラはどうやってこんな仕事を乗り切っているのだろう。

セシリアさんは外見もいいしその手の仕事は慣れていそうで問題ないと思う。鈴も外見だけはいいほうだし、結構社交的な性格なので問題はなさそうだ。しかし、問題はラウラだ。あいつがにこやかに取材に応じている場面が全く想像できない、あいつはどうやってこの手の仕事をこなしているのだろうか……

 

ちなみにシャルロットはデュノア社がお取り潰しになった際に代表候補生の座を剥奪されたらしい、その事をシャルロットに聞いたら別に気にしてはいないようだった。むしろ、面倒な仕事をしないで済むと喜んでいた。

そんなシャルロットとは違い俺はこの面倒な仕事をしなくてはならない。

 

いつの間にか飛行機は空港に着陸していた。よし、今日もお仕事頑張りましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ポンジュース!」

 

空港のロビーに出たと同時に大きな声を張り上げ群衆に向かって挨拶をする、ガイドポールで仕切られた通路の向こうにはカメラを構える報道陣がフラッシュを焚き続け、それの隣には多数のファンが黄色い歓声を上げ、俺を歓迎してくれた。

 

俺はまるで海外からやってきたスーパースターのように報道陣やファンに笑顔を向け、ファンから握手責めをされたりサインを書いたり写真を撮ったりした。

 

結局空港を出るのに要した時間は1時間、正直これだけで疲れてきた。俺は空港からMIE本社ビル(旧デュノア社本社ビル)までに乗っているリムジンで愚痴を零す。

 

「疲れた……」

「たった一時間でしょ、そんなので疲れてどうするの? 体鍛えてるんでしょう?」

「いやいやいやいや、こういう疲れは体の疲れとは別物ですよ。言うなれば精神的な?」

「精神修行がまだまだのようね、一回滝行でもやってみたら?」

「滝行なら中学生の時にもうやりましたよ、しかも真冬に」

「本当に? だとしたらアホね。あなたは」

「アホで悪かったですね、あの頃はあれで強くなれるって勘違いしてたんですよ」

 

楢崎さんが溜息をつく、ふと窓から空を見上げると今にも雨が降りそうな曇天模様だ。シャルロットもこの灰色のフランスの空の下でヴァーミリオン一号機にボコボコにされていると思うと俺も頑張らなきゃいけないと思わされる。

俺のフランスでのお仕事はまだ始まったばかりだ。

 

「そういえば藤木君、何で最初の一言がポンジュースだったの?」

「洒落ですよ、洒落」

 

俺の潤いは仕事途中にいかにふざけるしかない、一夏からメールがあったのだが一夏は明日鈴とプールに行くのだとか。

正直羨ましい、別に鈴とどこかに行きたいというわけではない。しかし、俺もどこかで優雅にオフを過ごしたいものだ。

閑静なリゾート地で誰にも知られずのんびり過ごしたい、そんな爺臭い願いですら今の俺には叶えられないのだろう。

ああ、一夏が羨ましい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうおしごといやぁ」

 

俺はフランスはパリにある高級ホテルのベッドに倒れ伏しながらそう言った。

 

「取材の類はこれで終わりよ、よく頑張ったわね」

 

3日間俺は働き通しだった、雑誌取材にテレビ取材、トークショーがあったかと思えばサイン会。

しかもサイン会は俺が書いてもいない自伝のサイン会だ。俺のプロフィールを斜め読みしたゴーストライターがこれを書いたらしい。

俺の野球の活躍やIS学園での苦労をおもいっきり誇張して書いてあるそれは読んでるだけでも恥ずかしくなる、そして本の中で書かれている一夏や代表候補生の踏み台っぷりが哀れすぎて涙を誘う。

これ、織斑先生あたりに読まれたら確実に殺されそうな気がするんだけど……

俺が世界に発信している情報は俺が一切関与していないものだらけでなんだか嫌になる。

 

「ああ、自由が欲しい……誰にも縛られない自由を……」

「そんなものあなたにある訳ないじゃない、でも明日からはドイツ入りだから少しは楽になるかもね」

「もうドイツ行きですか……仕事の量は減るんですか?」

「ええ、ドイツに行く移動時間は全く働かなくていいわよ。ただし明日は全部移動に費やすことになるけど」

 

全部移動? 飛行機ならそんなに時間は掛からないはずだ。なにせお隣の国だし。

 

「何で全部移動なんですか? 飛行機だったら丸一日掛からないでしょう?」

「ええ、そうなんだけど郊外にあるMIE兵器試験場でイグニッション・プランの提出機体を受け取ってからトラックで移動することになるから時間が掛かるの。ISを操縦者なしに運ぶなんて危ないでしょう?」

「MIEにパイロットは居ないんですか? シャルロット位しかMIEのパイロット知りませんけど……」

「居ないことはないんだけど、正直言ってとある一人を除いて技量は低いわね。旧デュノア社のパイロットはデュノアさんを除いたらIS乗って半年の君の方が技量高いわよ」

「何やってんだデュノア社は、そんなんだから潰れるんだよ」

 

もう存在しないデュノア社に愚痴る、しかし愚痴っても空しさが募るばかり。

 

「とにかく、明日は車に乗ってるだけでいいんですね?」

「ええ、車の中だけどゆっくりして英気を養っておきなさい。選考会の会場に到着したらまた忙しいから」

 

そんな事を言う楢崎さんは笑顔だ、しかしその笑顔が俺にとっては鬼の形相に見える。

 

明日は移動だ、思いっきり寝よう。

そんなこんなで俺のフランスでの最後の夜は過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「燃えたよ……まっ白に……燃えつきた……まっ白な灰に……」

「シャルロット……大丈夫か? いや、全然大丈夫じゃなさそうだな」

 

翌日の朝、パリ郊外のMIE兵器試験場で俺と楢崎さんを待っていたのは大きなトラック数台と元気そうな有希子さん、そして真っ白なシャルロットだった。

 

「あっ、有希子さんお久しぶりです。何でこんな所に有希子さんが居るんですか?」

「んぁ? ああ、そうか。お前には言ってなかったな。あたし、MIEに移籍することになったんだ。そういうわけでヴァーミリオンのテストパイロットやってるってわけだ」

「へぇ、そうなんですか? で、なんでシャルロットは真っ白になってるんですか?」

「いやー、あたしも初めての専用機ってことで気合が入っちゃってさ。ノリノリで戦ってたらいつの間にかあんなことに……」

 

シャルロットがふらふらとトラックの方向へ歩いている、まるでゾンビだ。あっ、こけた。

 

「シャルロット、本当に大丈夫か?」

 

俺はシャルロットを助け起こそうとする、顔を覗き込むと目から光が失われていた。いわゆるレイプ目ってやつだ。

シャルロットは俺が居ない間有希子さんに陵辱の限りを尽くされたのだろう、見ていてかわいそうになってくる。

 

「えっ、あっ……はい……」

 

声も虚ろだし反応がおかしい。ヤバイ、お医者さんを呼ばないといけないかもしれない。

 

「あの……どちら様ですか?」

「有希子さん、あなた何やったんですか?」

「ごめん、反省している」

 

シャルロットの精神はボロボロだ、俺のことすら忘れてしまう位に擦り切れている。もう洒落にならないようだ。

 

「仕方ない、医者はドイツに到着したら呼ぼう。時間も無いし早速出発するぞ」

「有希子さん、アンタ鬼ですね」

「よせやい、照れるぜ」

「褒めてねぇよ」

 

俺達はそんな感じでドイツへ向けて出発するのであった。

 

シャルロットは道中俺の素人カウンセリングでまともな会話をすることが出来るくらいに回復したが、再び有希子さんを見ると怯えてもとの常態に戻ってしまう。

後々、この件で有希子さんは楢崎さんから始末書と減給を言い渡され絶望することになる。




次回も短め



ヴィーグリーズ始まりますね。

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